ITERに関する最近の動向について

平成 1 2年 7 月
科学技術庁原子力局

1.ITER計画の経緯

 国際熱核融合炉(ITER)計画は、人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性を実証することを目標として進めている国際共同プロジェクトである。
 日本、米国、EU及びロシアの4極により実施された1992年7月から6年間の工学設計活動(EDA:1992年7月〜1998年7月)を経て、建設に移行する計画であったが、約1兆円という建設コストがネックとなり、建設に至らなかった。そのため4極は、1998年7月からEDA協定を3年間延長し、設計の見直し(建設コストを約50%に低減化)を行うEDAを実施することとした。しかしながら、米国は、議会の承認が得られず、1999年7月に計画から撤退した。
 現在、日本、EU及びロシアの3極によりEDAを継続して実施(2001年7月迄)しているところである。2000年6月のITERに関する3極会合においては、ITER概要設計報告書がとりまとめられたところであり、今後、最終設計報告書のとりまとめに向けてEDAを進めていく。

2.ITER非公式政府間協議(EX:Exploration)

 ○EXは、ITER共同実施取り決めの主要事項に関する共通理解を構築することを目的とする、日、EU、ロシアに3極の政府の代表者によるノン・コミッタルな協議である。また、EXはITERに関心のある極間による会合とし、一定の能力を有する第三国からEXへの参加に関心が表明された場合には、オープンな態度で臨むことととする。
 ○2000年6月の第2回目のEXにおいて、中間報告書を取りまとめたところであり、本年12月を目途に最終報告書を取りまとめる予定。

3.我が国における検討

 (1)原子力委員会ITER計画懇談会での審議

我が国としての今後のITER計画の進め方について調査審議を進めるために、1996年12月20日に設置された「ITER計画懇談会(座長:吉川弘之日本学術会議会長)」は、我が国への誘致の意義は大きいとしつつも、「核融合エネルギーの技術的実現可能性の検討」「代替エネルギーのフィージビリテイスタデイ」等6つの課題を提示した中間とりまとめを1998年3月に行った。
この程、これらの課題についての報告書がとりまとめられたこと、本年4月よりITERの建設に関する国際協定のための非公式政府間協議が開始されたこと等から、最終的な結論を得るための審議を本年7月より再開。

4.EU及びロシアの状況

 (1)EUの状況

 1998年12月に第5次研究開発フレームワーク計画(FP5)(1999年〜2002年)が承認され、その中にEDAの継続が盛り込まれている。また、建設については、次期計画(FP6)に盛り込むため、FP5期間中に最終的な判断がなされる予定。
 1999年2月に派遣した欧州調査団(団長:宮健三東京大学教授)の調査結果によれば、ITERの欧州域内建設は、資金負担の問題、原子力を巡る複雑な状況等により難かしい状況であり、欧州の資金的貢献には限界はあるものの、日本のITER誘致を期待している状況。但し、イタリア等は低開発地域振興の問題と絡めて自国内建設について検討中。
 なお、カナダは当初よりEUの準メンバーとの位置づけでITER計画に参加している。カナダにおいては、民間非営利会社である「ITERカナダ」が、ITERのカナダ建設を推進している。

 (2)ロシアの状況
 EDAの延長については、1998年12月に連邦特別科学技術プログラムとして承認されている。

5.今後の取り組み

 ○日本、EU及びロシアの3極により、2001年7月までEDA活動を着実に実施する(建設コストを約50%に低減化)。
 ○ITERの建設計画に関する「非公式政府間協議(Explorations:EX)」を進め、「公式政府間協議(Negotiations)」を行うために必要な共通理解を得る。
 ○我が国への誘致については、上記のような活動の進捗状況等を踏まえ、適切な時期に判断を行う。