資料第8-1号

第7回ITER計画懇談会議事要旨(案)



1.日 時  平成9年10月8日(水) 14:00~16:00

2.場 所  科学技術庁第7会議室

3.出席者
  (原子力委員)
    田畑委員、藤家委員
  (専門委員)
    吉川(弘)(座長)、飯田委員、飯吉委員、伊藤委員、井上委員、大河原委員、
    木田委員、伊達委員、苫米地委員、増本委員、宮委員、宮島委員、森委員、吉川(允)委員
  (事務局)
    加藤原子力局長、今村長官官房審議官(原子力局担当)、坪井原子力局核融合開発室長
  (説明者)
    下村ITER共同中央チーム首席副所長

4.議題
  (1)国際協力としてのITER
  (2)ITER計画懇談会における議論とまとめ(案)
  (3)その他

5.配付資料
   資料第7-1号  第6回ITER計画懇談会議事要旨(案)
   資料第7-2号  国際協力としてのITER
   資料第7-3号  ITER計画懇談会における議論とまとめ(案)
   参考資料1    EUの核融合政策に関するCCFP
            (核融合計画調整委員会)答申
   参考資料2    米国大統領科学技術諮問委員会(PCAST)
            エネルギー開発計画パネル報告
   参考資料3    JETに係るプレス発表文
            (核融合反応で世界最高を達成)

6.概要
(1)
会議の冒頭、座長よりITERの共同中央チームの下村安夫首席副所長(米国サンディエゴ)から、国際的な立場からITER工学設計活動の現場の作業や他国の動向等について説明があるとの紹介があった。また、適当な時期に中間まとめのような形でこれまでの議論をまとめておくほうが良いのではないか、本日はそのために役立つ議論をしたいとの発言があった。

(2)前回議事要旨(案)の確認
 事務局より、資料第7-1号に基づき、前回の議事要旨(案)の説明があり、原案どおり了承された。

(3)国際協力としてのITERについて
 ITERの共同中央チームの下村安夫首席副所長より、資料第7-2号に沿って、実際にITER工学設計活動の現場で作業の指揮に当たっている立場から、国際協力としてのITERについて、各国の動向も含めた以下のような説明及び意見交換等があった。

 (説明概要)
①国際協力としてのITER計画を、以下の6項目に沿って説明する。
 ・ITERに至る土壌、核融合の歴史
 ・ITERの国際協力としての形態の特徴
 ・ITER工学設計活動に見られる様々な現象
 ・建設期或いは運転期を迎えた場合のITERの国際協力の在り方
 ・国際協力としてのITERのこれまでの成果と今後期待される成果
 ・共同中央チームメンバーの所感による各極のITERに対する考え方

②トカマク開発上の重要な研究課題としては、高温のプラズマの閉じ込め、ダイバータによる閉じ込めの改良、燃料の加熱方法、定常化の研究の4項目がある。日、米、EU、露の四極は、これらについてお互いに同じような水準、規模で研究を行い、相互に成果を吸収しあい、共通の目標を構築し、共通のデータベースを築くことによって、各国それぞれの研究開発を進展させ、現在のトカマク炉の概念を構築するに至った。

③ITERは、現在の設計活動の規模が、既にそれぞれの国内の研究規模とほぼ同程度になっており、将来の建設運転段階になるとその規模は各国の研究規模をはるかに越えるものである。この意味からも、国際協力としてのITER計画は世界にとって初めての試みである。

④ITER工学設計活動の長所、短所に関しては、ITERの各極の利害関係、文化習慣の相違による摩擦の恐れ、能率の良い運営の是非、海外長期滞在への不安、リーダー国の欠如による次段階への決定の遅れ等が視点として挙げられる。これまでは大きな問題もなく順調であったが、今後はホスト国の重要性を再認識すること等の課題もある。

⑤ITERの建設、或いは運転期の国際協力においては、生活基盤を始めとした長期計画の保証、非ホスト国の実験炉以降の開発能力の確保とそれらの国に対する負担に応じた利益の保証、各極のニーズにあった実験運転を保証すること等が重要である。

⑥ITERのこれまでの成果としては、国際チームでITERを推進できる確信が得られたことにより今後の建設実現への自信に繋がったことが挙げられる。また、今後期待される成果については、産業界の技術の蓄積やホスト国における世界規模の協力事業運営のノウハウが得られるであろうこと等が挙げられる。

⑦共同中央チームのメンバーから感じるITERに対する印象は、①米国はエネルギー資源が豊富なので、ITERは重要であるものの急ぐ必要はないとの認識が強い、②EUは核融合開発は重要であり、次のステップとして是非ともITERを国際協力により建設することが重要であるが、すぐには建設に入れないため延長期間を用いて準備を進めたいとの意向がある、③ロシアは核融合開発が重要だとしているが、ITERを自国内に作る意思がないようであるということである。

 (意見交換)
○現在のITERは各極の要求事項を満たす設計となっているため、コストが大きくなっているのではないかとの議論が本懇談会でなされている。現在の設計目標はどのような経緯で決定したのか。

○当初、各極の要求事項が異なっていたため工学目標に関する調整の議論がなされ、最終的には各極がそれぞれ妥協した結果、比較的合理的なものとなっている。一極のみの要求だけであればもう少しコンパクトになるケースもあると考えられる。

○当事者である共同中央チームメンバーは、ITER計画を今後前進させるためにはどのようにすればいいと考えているのか。

○計画を推進するにあたっては、遅れを最小限にし、能率的に遂行することが重要である。また、ITERは特定の一国にしか建設できないことや建設期間も含めて30年間という長い期間を考慮すると、ホスト国が安定しているということが非常に重要であると思う。

○核分裂炉の場合は実験炉、原型炉、実証炉と次第に規模を大きくしていくのに対し、核融合炉の場合はそもそもある程度の規模でないと核融合反応が持続しないという性質があり、実験炉の規模が必然的に大きくなってしまう。

○将来の実用炉に向けたコスト面での見通しについては、各国で何十基、何百基と作られるようになればコストダウンも図られることになる。実際、実験炉の成果を踏まえて実用炉は小さくなるという見通しである。

○工学設計活動の3年間延長の議論が行われている中で、将来のITER建設の判断等について、どのような見解を持っているのか。

○建設の判断に対しては、人によって考え方が異なるが、各極から手が挙がらなければ、米国の提案のようにミッションを限ることでコンパクトなものにするといった考えもある。

○ITERがまだ大きすぎる、コストが高すぎるといった疑問については、核融合の専門家のみならず広い議論が必要であろう。例えば、日本で行われたインターネット等による詳細設計報告の情報公開や意見募集といった取り組みは世界で初めての試みであるとともに、各極とも核融合以外の有識者も委員となっている本懇談会の結果に関心を持っている。共同中央チームとしても、今後様々な場でITERについての説明を行っていく必要があると考えている。

○ITERについては、その目標、採用する方式を含めオプションを考える時期にきていると考えるがそれを考慮するのは困難なのか。

  

○現在のITERの目標は、四極の合意に基づいており、目標の変更については、四極の合意が必要であるとともに、ITER工学設計活動の最高の議決機関であるITER理事会で議論がなされる必要があると考えられる。

○核融合のミッションについては、まずは、将来核融合が非常に有力なエネルギー源になるかどうかを確認するために、現時点で技術的に一番可能性の高いD-T燃料で核融合エネルギーの出力を取り出せるということを確かめることが重要である。実際に、現時点で具体的なデータを多く持ち、科学的に設計が可能であるのはトカマクしかなく、トカマクで実験炉を作ることについては、専門家の間でも了解されているところ。

○日本にITERを持ってくるメリットはどういったことか。海外に持っていった場合の日本のデメリットとあわせてきちんと議論する必要がある。

○ITERを日本に持ってくれば、装置の基幹技術の確保と基幹部品の製作が出来ること、総合的なシステムの把握が可能であること、メーカーの技術力の涵養とその人材基盤の蓄積に繋がっていくといったことがメリットと考えられる。

○ITERのコンパクト化の進め方については、以下のような2案が考えられる。
  ①
ある極が変更案を提出し、かつ各極の了解を得る。この場合、米国は後押しするかもしれないが、全極の了解を得るのは困難であろう。
  ②
国際共同で本格的にコンパクト化の検討を行うためには、現在の工学設計活動と同程度の大きな組織が必要であり、現行の工学設計活動と並行して行うことは困難である。
 いずれにしても、妥当ではないのではないかと考えられる。
(4)ITER計画懇談会における議論とまとめ(案)について

 座長より、現在のITER工学設計活動が3年間延長されることとなるような現状を踏まえると本懇談会での議論の集約時期に若干の余裕ができていることから、ITERの国際的な進行に対応した形で懇談会としての中間的な取りまとめを行い、主に我が国が取るべき態度や基本的な方向性を中心にある程度方針をまとめておいてはどうか、そしてサイト対応設計が進んだ時点等を目安に工学設計活動の進捗にあわせた形で議論を再開することが適切ではないかとの発言があった。
 その後、事務局より、参考資料に基づいて最近の他国の状況を説明するとともに、資料第7-3号に基づいて中間的な取りまとめに資するような資料の案として、核融合研究開発の意義及びITER計画の意義から構成される取りまとめ案について説明があり、これに対して以下のような発言があった。

○核融合のエネルギー源としての必要性を幅広く理解してもらうことが重要であるから、現在の環境問題を絡めてエネルギー源としての意義をもっと強調していいのではないか。

○中間取りまとめの大きな柱は、①将来のエネルギー問題への展望、②人類としての対応、③ITERの必要性、④日本に誘致する必要性の4項目であり、本日提示された取りまとめ案は②と④が抜けている。また、ITERありきでまとめてはいけない。

○ITERが、本当に核融合の実用化への道を拓くのかといった疑問について記述すべき。

○日本へ誘致する場合の意義については、メリットとデメリットの数値的な比較や、予算的にはどの程度であれば日本が引き受けられるかといったような判断材料が必要ではないか。

○ここでの結論を誰に対して主張するのか、あるいは国内に向けてだけでなく世界に向けて言うことも必要ではないか、といったことも考えるべきではないか。その考え方としては、①エネルギー問題は一国のみではなく世界的な問題であり、②この問題解決に資するITER計画を進める必要性を主張し、③各国の平等負担と平等受益の原則を出発点とした上で、④日本としてどう対応するのかを議論する、というような考え方もあるのではないか。

○日本の科学技術のプロジェクトの中で何を選択するのかが国の戦略であり、プライオリティーに関する議論も必要ではないか。

○上記意見を踏まえ、座長が以下のようなとりまとめを行った。
 本懇談会は自由な議論を行う会議であり、偏った立場ではなく、できるだけ幅広い検討を行うことが重要である。どのようなロジックで報告書を取りまとめるのがよいのかについて、次回までに各委員から意見をいただき、事務局が再度提示する資料を基に、引き続き議論していきたい。

○次回は、12月1日(月)に開催する予定とされた。