資料第7-1号

第6回ITER計画懇談会議事要旨(案)



1.日 時  平成9年8月1日(金) 14:00~16:00

2.場 所  科学技術庁第1、2会議室

3.出席者
  (原子力委員)
    田畑委員、藤家委員
  (専門委員)
    吉川(弘)(座長)、飯田委員、飯吉委員、伊藤委員、井上委員、
    大河原委員、木田委員、伊達委員、苫米地委員、中里委員、那須委員、
    平田委員、宮島委員、森委員、吉川(允)委員
  (事務局)
    加藤原子力局長、今村官房審議官(原子力局担当)、
    坪井原子力局核融合開発室長

4.議題
  (1) 最近の国際的な話し合いの状況等について
  (2) ITERの安全性について
  (3) 論点の整理について
  (4) その他

5.配付資料
   資料第6-1号    第5回ITER計画懇談会議事要旨(案)
   資料第6-2号    最近の国際的な話し合いの状況等について
   資料第6-3号    ITERの安全性について
   資料第6-4-1号  ITER計画懇談会の検討の流れ
   資料第6-4-2号  論点の整理について(案)
   資料第6-5号    当面の検討スケジュール(案)

6.概要

(1)会議の冒頭、座長よりITERというプロジェクトの取扱いに関する決定の プロセスに、当懇談会がある種の参画をしている観点からは、今後も引き続き忍耐強く技術の話も色々聞いて判断の根拠にしていきたい旨発言があった。

(2)前回議事要旨(案)の確認
 事務局より、資料第6-1号に基づき、前回の議事要旨(案)の説明があり、原文どおり了承された。

(3)最近の国際的な話し合いの状況等について

 事務局より、資料第6-2号に基づき、7月23、24日フィンランドで開催されたITER第4回建設等準備協議及び第12回理事会の結果について報告があり、工学設計活動を3年間延長すべきことが四極により了解されたこと、昨年12月に提出された詳細設計報告に対する各極のレビュー結果が報告され、今後これを踏まえ、来年2月にとりまとめられる予定の最終設計報告に向けた作業が進められること等について説明が行われ、これに対して以下のような質疑応答があった。

・工学設計活動の延長は、日本が財政構造改革のために3年間誘致を凍結したことが原因なのかという質問があり、必ずしもそうではなく工学設計活動から建設段階に円滑に移行させるためにはサイト対応設計活動等を行うことが必要との共通認識を各極が持ったためであり、このような活動も現行工学設計活動の協力協定の対象と考えられることから、協定を延長すべきとの了解に至った旨の説明があった。

(4)ITERの安全性について

 日本原子力研究所鹿園理事より、資料第6-3号に基づき、ITERの工学的な安全性について、核融合そのものの安全性、設計段階から安全の確保を考慮すること、安全設計と安全評価の考え方について説明があり、これに対して以下のような発言等があった。

 (説明概要)
①ITERは、燃焼プラズマの物理や自己点火を実証するための実験炉であると同時に、工学的に色々な実証を行う必要があるという観点から製作自体が一つの実験であると考えられる。また、実際に作ってから安全を確かめるわけにはいかないので、設計の段階から安全というものを十分に確保しておく必要がある。
②ITERの安全性については、核融合炉の特徴を生かし、国際的な基準やALARAの考え方に基づいて設計を行うとともに、事故等の異常時における深層防護の考え方を採ることを基本方針としている。
③核融合炉の安全上の特徴として、止める及び冷やすことは極めて容易であるので、トリチウム等の放射性物質を閉じ込めるということが設計上の一つの大きな課題であると考えている。また安全の確保については、安全設計とその設計の妥当性を見るための自主的な安全評価(規制当局の実施する評価と区別して)の両方が行われている。
・安全設計については、通常状態と通常状態を逸脱した状態である異常状態の2つの場合に分けて、トリチウム、磁場、中性子と構造物の放射化、超伝導磁石、ディスラプション、地震等の個別の事項について検討を行っている。
・安全評価については、安全設計と同様に通常状態と異常状態の2つの場合に分けて評価を行っており、概ね妥当であることを確認している。

 (質疑応答)
・ITERにおいて、将来的には運転しながら燃料となるトリチウムを増殖させることも考えていると聞くが、その場合の安全性の検討はなされているのか、トリチウムに対するセーフティ・コンセプトはどの程度考慮されているのか、放射化廃棄物の量はどの程度であるかについて質問があり、まずトリチウムの増殖は当面は行われない予定であり、それらを考慮した安全性の検討は、それまでの情勢等を勘案して今後検討されること、トリチウムについては常時分散しておくことを基本方針としていること、また万一のことを考え多重閉じ込め系を備え、それぞれの系にトリチウム回収装置を設けていること、放射化廃棄物については、運転期間中にブランケットの取り替え等により約4千~5千トン、廃炉を含めると全体で約4万~5万トンの放射化廃棄物が出ると考えられるが、ほとんどが金属(ステンレス)であることから、移動性がなくかつ半減期が短いため、約百年程度管理すればよいなど容易に扱える旨の回答があった。
・ITERの中性子重照射に関する検討状況及び材料に関する基礎研究の状況について質問があり、ITERは現在の既存の材料で設計が可能であることを前提としており、一番損傷のひどいブランケット部においても安全性は概ね大丈夫であること、構造材の取り替えについては遠隔操作で行い、システムとして安全性が十分考慮されていること、高速中性子による重照射の研究は行っているが、14MeVもの大きなエネルギーを持った中性子に関しては実験施設がなく、国際協力の下で検討が行われているとの回答があった。
・安全性は重要だが、ITERに係る基礎的なデータは、これまでの装置等による実証データを基にしているのか、あるいは類推による架空の数字であるのかとの質問があり、ITERは実現性を重視した保守的な設計を行っているので工学的なものについては現在のレベルで大部分が実証データであり、新しい面については検討を進めている旨の回答があった。
・危険の可能性に対して、本当にあらゆる側面から安全確保が必要なのかとの質問があり、非常に多くの検討項目があることは、危険性が多く存在するということではなく、ITERの安全確保に係る検討がかなり進んでいることを示しているとの回答があった。
・(再度それに対して)原子力の問題はあまり大きな問題でないことが大騒ぎになっているが、本当に何が重要で何をすればいいのか、次の手順をどう進めるべきなのかという質問があり、我々のもっている技術開発に関する安全思想、すなわち保守的な設計により安全係数を算出し、それによって安全を評価するといった手法に基づく技術開発論が本当に適切であるのかということに問題が起因するのではないかとの発言があった。
・(これに対して)核分裂の場合、安全に対する考え方は、40年間の研究開発を経て相当変化してきており、必ずしも経験主義、実証主義に基づいているわけではない。安全に対する評価は、開発者の自信と誠意の見せどころであり、社会に対してそれをどのように表現していくかが安全が抱える問題である。安全には工学的な面と物理的な面があり、核融合は主として物理的な本質部分、すなわち「反応が暴走しない」、「冷やすことが容易」、「閉じ込めが容易」といった部分で安全性を相当強く主張でき、この点で十分世論に対しても理解が得られるのではないかとの発言があった。
・実用的なプラントをいつ作ったらいいのかを説明する観点から、材料の開発を加速して推進すべきである状況を踏まえ、全体技術の進歩との相対で、ITERを作る妥当性を強調する必要があるのではないか。
・新しい大型プロジェクトは、ポリシーをしっかり持ち、プログラムを如何に魅力的にかつ説得力のあるものにしていくかということが重要である。ITERは、今後の核融合研究開発における主要課題をほぼ含んでいるが、材料に関する開発の検討があまりなされていない。今後は、ITERをコンパクトにする、材料を含めた裾野の広い計画にするなどの、計画をより魅力的にするといった観点からの検討も必要ではないか。

(5)論点の整理について

 事務局より、資料第6-4-1号、資料第6-4-2号に基づきこれまでのITER計画懇談会による議論を踏まえた検討の流れの整理と、今後の議論の方向性について説明があり、これに対して以下のような意見等があった。
・ITERは、技術的にできるからやるというものではない。国の金を使ってやるものであるならばアカウンタビリティーが重要であり、ITERの必要性に繋がるシナリオ、道筋を描くこともまた重要であることから、今後は日本全体を如何に説得できるかということに議論の方向を向けていくべきであるとの発言があった。
・日本が何らかの判断をする際に、各極のITERに対する考え方等踏まえておくことは参考になるであろうから、他国の動向をよく把握するべきであるとの意見があった。

○次回は、10月8日(水)に開催する予定とされた。