資料第6-1号

第5回ITER計画懇談会議事要旨(案)

1.日 時 平成9年6月17日(火) 14:30~17:00

2.場 所 科学技術庁第1、2会議室

3.出席者

 (原子力委員)
田畑委員、藤家委員
 (専門委員)
吉川(弘)(座長)、飯田委員、飯吉委員、伊藤委員、井上委員、大田委員、木田委員、草間委員、伊達委員、苫米地委員、中里委員、平田委員、平山委員、増本委員、宮委員、宮島委員、森委員、吉川(允)委員
 (事務局)
今村官房審議官、田中核融合開発室長

4.議題
  (1)核融合開発の意義について
  (2)その他

5.配付資料
  資料第5-1号 第4回ITER計画懇談会議事要旨(案)
  資料第5-2号 核融合開発とITERの意義
  資料第5-3号 ITERの課題と対策 -プラズマ関連事項-
  資料第5-4号 将来のエネルギー資源について(補足説明)
  資料第5-5号 ITER詳細設計の国内評価
  資料第5-6号 これまでの検討の状況(ドラフト)
  資料第5-7号 ITER計画に関する主な論点について(案)
  資料第5-8号 ITER計画懇談会の検討スケジュール(案)

6.概要

(1)会議の冒頭、座長より、当懇談会としては出来るだけ幅広い側面からの検討を進めていきたいとの発言があり、今回はITER以外の核融合研究を進めている立場からの意見も伺うことにしたいなどの発言があった。

(2)資料第5-1号に基づき、前回の議事要旨が確認され、若干の修正(「将来のエネルギー資源について」に関する質疑応答のとりまとめ部分のうち、「定量的議論」を「その様なシナリオに関する議論」に修正)の上了承された。

(3)資料第5-2号に基づき、飯吉委員より、核融合の研究開発の意義とITER計画について、大学において核融合研究を実施している立場、トカマク以外の方式の研究を進めている立場からの説明があり、質疑応答がなされた。

  (説明概要)

①核融合研究開発は、エネルギー開発と新しい学問領域の開発の二つの側面を持っている。

②エネルギー開発が強く期待されるという点では、核融合の研究は他のビッグサイエンスとは性格が異なるところがある。また、ITERは世界で初めての四極による設計段階からの国際共同事業であり、希有な例。

③我が国のエネルギー開発計画としては、原子力委員会で策定された第三段階核融合研究開発基本計画があり、実験炉(ITER)の建設、補完的・先進的研究、炉工学技術・安全性を三本柱としており、これに従って開発を進めることが妥当と考える。補完的・先進的研究として、核融合科学研究所では、我が国独自のアイデアによるヘリオトロン方式の研究を推進している。

④新しい学問領域の開発という面では、核融合研究開発にはプラズマ科学、核融合科学、核融合炉工学など、種々の幅広いすそ野の広がる新しい学問領域があり、豊富な研究材料を提供し、現在発展しつつある。

⑤ITER計画は次世代の人達に魅力あるものである必要があり、次世代の人達の創意が生かされる様にすることを考えるべき。

⑥産業界には、これまでの装置作成の技術が蓄積されており、この技術を分散させることなくITERにつなぐことが大切。

⑦ITER工学設計に関しては、設計の内容は妥当と考える。自己点火実験は核融合の実用化へ向け越えねばならないステップであり、実験炉が実現することを期待する。それには、そろそろ日本の国情に合わせて、オプションを考えて対応すべき時期と考える。

⑧我が国としては、第三段階基本計画を基本として全体戦略を構築し、核融合分野で国際的なリーダーシップをとれるかが問われている。

  (質疑応答)

・実験炉にヘリカル方式ではなくトカマク方式を採用する理由について質問があり、ヘリカル方式はまだ学術的な研究の段階であり、エネルギー開発を進める上で最もデータも多く、実用に近い方式がトカマクであり、次段階の実験炉にはトカマク方式が適していること、また、将来の核融合炉の設計にはヘリカル方式の成果を反映させ得ると考えている旨説明があった。

・これに関連して、核融合研究は、エネルギー源の開発としてITER計画を進めていくという方向と、広範囲な学術としての基礎研究の両方を進めていくことが重要であり、どちらかだけを進めることは適当でないとの発言があった。

・核融合研究における日本原子力研究所と大学との間の連携について質問があり、計算機シミュレーションや超伝導等の技術等、多くの分野で共通性があり、ITERで開発した技術は他方式の装置開発にも利用が出来る。また、日本学術会議でも核融合研究連絡委員会において学術的な交流を図っている旨説明があった。

・大学における研究では、ITERのように10年以上の期間を要するプロジェクトの運営は難しく、規模的にも現在のLHD計画が限界ではないか。また、我が国が核融合分野においてエネルギー源としての実用化の開発と並行して、大学で学術的な広がりを持って基礎研究を行う形をとっていることは国際的にも評価されている旨の発言があった。

(4)資料第5-3号に基づき、吉川(允)委員より、ITERの技術的実現性との関連において、閉じ込め比例則の経験式の外挿性に関して想定される課題と対応策についての説明があり、質疑応答がなされた。

  (説明概要)

①課題の中で大きいものとして、大型装置でプラズマの密度を高めると閉じ込め特性が劣化する傾向があるが、プラズマの粒子補給の最適化、先進的運転モードの導入による改善を検討中。また、ダイバータの成立を確証するために、現在の大型実験装置での実験による実証を予定。

②ITERの設計においては、種々の課題に対して最大限に柔軟に対応出来るよう配慮。

  (質疑応答)

・経験の外挿は、その実現の為の技術の積み重ねにより実現に近づくという理解で良いのかとの質問があり、ITERの外挿式を実証するための実験によるデータ蓄積を行っているとの説明があった。

・また、経験則を用いるということは、細部まで理論的に解明されていない場合であっても、大型飛行機の設計を小型モデルの風洞実験で確かめていることでも例があり、大きさ等に依存しないような無次元数へ変換して設計していくことが可能であり、それを確証するために種々の装置による実験や計算機解析が行われている。

(5)資料第5-4号に基づき、苫米地委員より、前回の「将来のエネルギー資源について」の説明に対する補足説明があり、質疑応答がなされた。

  (説明概要)

①将来のエネルギー消費量のグラフにおいて、原子力・再生可能エネルギーの消費が一旦フラットになってその後急激に伸びている理由は、検討の前提条件としてこれらのエネルギー消費を化石エネルギーが不足するまでは総消費量の10%に仮定したことによるものである。

  (質疑応答)

・資源量の観点からは高速増殖炉でウラン資源を利用していけば千年以上のエネルギーが供給できるということと、核融合エネルギーの開発の必要性について質問があり、エネルギー利用の実際は量的な側面でない議論が重要であり、核融合については、核拡散、廃棄物、安全性の観点からみても進めるべきと考えるとの考え方が示された。

・座長より、当懇談会ではエネルギー供給・需要、可能なエネルギー源、環境等を含めた、基本的な議論を進め、その中で我が国の果たすべき役割や貢献について、またはエネルギーセキュリティの問題等について議論を深めていきたい旨の発言があった。

(6)資料第5-5号に基づき、井上委員より、核融合会議の下で行われているITERの詳細設計報告の国内評価について説明があり、質疑応答がなされた。

  (説明概要)

①核融合会議の下、ITER/EDA技術部会においてITERの詳細設計報告を検討し、今後の設計に反映してもらうための評価を行った。評価は、物理、炉工学、安全の3つのワーキンググループに分かれて行うとともに、詳細設計報告書を一般公開して関連分野の研究者からの意見も取り入れることで実施した。評価結果は核融合会議でとりまとめられ、ITER理事会へ提出される予定。

②核融合会議としては、1)立地地点の諸条件を考慮して設計の修正が行われることでいずれの締約国でも安全に立地される、2)詳細設計は次段階へ進展させる適切なレベルに到達、3)ITERの技術目標である自己点火と長時間燃焼が達成されることに十分な確信を持てる、とまとめている。

  (質疑応答)

・座長より、当懇談会としては、計画の決定に加わっていく立場から、技術的な観点からの議論を更に進めていくことが重要との発言があった。

・ITERのコストに関して、今後の報告書への記載がどの位の信頼性を持っているのかについての質問があり、座長より本件は当懇談会として改めて議題に取り上げていきたいとの発言があった。

・材料などの観点から、不確実な点は無いかといった点について更に説明を受けていきたい旨の意見があった。

(7)次回は、8月1日(金)に開催することとされた。