資料第4-1号

第3回 ITER計画懇談会議事要旨(案)



1.日 時  平成9年5月9日(金) 14:30~17:00

2.場 所  科学技術庁第1、2会議室

3.出席者

 (原子力委員)
伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員
 (専門委員)
吉川(弘)(座長)、飯田委員、飯吉委員、伊藤委員、井上委員、猪口委員、 大河原委員、大田委員、草間委員、伊達委員、苫米地委員、中里委員、 那須委員、平田委員、増本委員、宮委員、宮島委員、森委員、吉川(允)委員
 (事務局)
今村官房審議官、田中核融合開発室長

4.議題
  (1)国際的話し合いの状況等について
  (2)核融合開発の意義について
  (3)その他

5.配付資料
   資料第3-1号 第2回ITER計画懇談会議事要旨
   資料第3-2号 ITER建設等の段階に関する国際的話し合いの状況等 について
   資料第3-3号 21世紀のエネルギー供給
   資料第3-4号 ITER計画と産業界の取り組み
   資料第3-5号 ITER計画に関する主な論点について(案)
   資料第3-6号 ITER計画懇談会の当面の検討スケジュール(案)

6.概要

(1)
会議の冒頭、座長より、今回は長期エネルギー需給と核融合の関係及びITERについての産業界からの捉え方について議論が進められることにしたい旨の発言があった。

(2)
資料3-1号に基づき、前回の議事要旨が確認され、了承された。

(3)
資料3-2号に基づき、事務局より、ITER計画及び核融合研究開発に対する各極の取り組み状況等について及び現在国際間で進められている建設段階に向けての予備的な話し合いの状況について報告があり、現時点における各極の状況等を踏まえ、平成10年7月以降の協力活動について、想定される選択肢のうち、現行工学設計活動協定を3年間程度延長し、その間に設計活動及び研究開発を実施するとともに、建設に向けた話し合いを進捗し、期間内に合意を目指すことを内容とする選択肢について、当面事務的な作業が進められる見通しである旨報告がなされた。
その後、各委員から述べられた意見等の概要は以下の通り。

○ITER事業主体の設立方法については、国際的に如何なる取り扱いがなされていくのか、法的主体の設立の枠組みについては、我が国が中心的に参画していく上で重要であると考えられるため、我が国としての対応方針について当懇談会としても検討していく必要がある。

○ITER事業主体には、駐在・派遣の問題、参加の問題等の観点からの議論も必要であり、国際的な検討の進捗に応じ、具体的ケースを想定しつつ、今後当懇談会としても検討していく必要がある。

○欧州においては、イタリアだけが立地可能であるのか、また、カナダが検討の対象となっている理由は何か。(事務局から、欧州の動向、カナダの取扱いにつき説明)

○平成10年7月以降の活動に関する選択肢の実質的な違いは何か。(事務局より建設判断の有無等につき説明)

○今回、国際的話し合いにおける文書が直接当懇談会に提出されたことは適当であり、今後とも出来る限り、国際的に議論されている文書そのものが提出されることが理解を進めるために有用である。

○現在のITER計画に関する組織は、整っていない印象があるが、今後事業主体の検討とも関連して議論されていくことが必要。

(4)
事務局より、現在財政構造改革会議で進められている検討に関し、核融合等の大型プロジェクトについて、集中改革期間中(今世紀中)の新規立ち上げは困難ではないかといったような議論が出されていること、今後議論が進められ、5月中にも報告としてまとめられる予定である等事務局として把握している状況について紹介があった。

(5)
以上の議論を踏まえ、座長より、国際的には、ITER建設の判断がやや先に延びていくという状況にあること、また、財政的な検討も進められているという状況を踏まえ、座長より、当懇談会としては、財政問題も一つのファクターとして、科学技術全体として見たときの側面、社会的側面、文化的側面、国際的側面等あらゆる角度からITER計画の進め方に関する議論を進めており、今後ともかかる観点からの議論を続けていくという基本的なスタンスに変更はない旨の確認がなされた。

(6)
資料3-3号に基づき、平田委員より21世紀のエネルギー供給と核融合に ついて概要以下の通りの説明があり、質疑応答がなされた。

(説明概要)
①21世紀後半に核融合が立ち上がるまで、地球環境制約の下でのエネルギー供給をいかに乗り切るかが課題
②二酸化炭素濃度と地球温暖化との相関の如何に拘らず二酸化炭素削減への取り組みが必要
③我が国が、地球温暖化防止条約上の責任を果たし得るか疑問。
④長期を見通したエネルギー供給の予測と見通し
・21世紀は「気体燃料」の時代へ移行せざるを得ない
・21世紀後半の水素までのつなぎは、天然ガスと核分裂型原子力発電であるが天然ガスへのシフトが必至
・アジア・太平洋地域諸国のエネルギー需給が深刻化する中での日本の役割が重要である
・21世紀後半に核融合の立ち上がりが重要

(質疑応答)
○21世紀後半は核融合で、そのつなぎが天然ガスを経て水素エネルギーとのことであったが、当懇談会としては、エネルギー資源量などの観点から核融合の必要性について、更に議論を進めるべきではないか。

○今から懸命に技術開発を進めても、核融合の実用化は21世紀後半になら ないとできないことを認識する必要がある。

○エネルギーに関する新技術については、実用になるエネルギーが生産されることと、開発のスケジュールとは異なることを十分認識のうえ、今後定量的検討を進めることも必要ではないか。

○日本では、企業における省エネルギー努力等やるべきことはやったと言え、これからのエネルギー需要の増加は抑えられないのではないか。

○エネルギー関連の技術については、設備を作るエネルギーとそれによって得られるエネルギーとの比を検討する必要があるのではないか。

○CO2が地球温暖化の原因となることは証明されたわけではないものの、フロンの拡散によるオゾンホールの問題も同様であるが、因果関係が証明されてからでは手遅れであり、問題がありそうだという段階でCO2の排出は抑制すべきである。

(7)
資料3-4号に基づき、中里委員より産業界から見たITER計画について 概要以下の通りの説明があり、質疑応答がなされた。

(説明概要)
①実用化までの期間、人材育成等を考慮したエネルギー需給の観点から核融合は必要
②産業界としての核融合の取り組みとITER計画への期待
・国際的リーダーシップの涵養・活性効果
・システム統合技術、巨大プラント建設等の技術の振興・波及効果(他分野技術との相乗効果)
・国際貢献(世界との連携、日本の技術貢献、アジアからの信頼)
③日本の産業界が最も力を発揮できるのは、日本に建設される場合である
④日本への誘致を決めてから実施体制あるいは組織の検討を始めるのでは遅く、誘致活動と並行して産学官で検討をしておく必要がある
・製作についての知見がある産業界が、組織の中枢部に参画する必要がある
・スケジュールについては、計画通りとすることが、人材の維持・確保上重要である
・スケジュールあるいは資金の規模を無理のないものとするべきである
・合意を得るためには国としての考えの内外への表明が必要になる
⑤日本がITERについてリーダーシップを発揮することは、今後の国際プロジェクト推進のための大きな経験が得られる。
⑥ITERに対しては、国がポジティブなビジョンを示し、積極的に取り組むことが必要であり、産業界としては、その方針に従いプロジェクト完成に向けて大いに努力

(質疑応答)
○ITERについては、短期的な景気対策、経済浮揚効果の観点からの議論ではなく、長期的な観点から重要性を考慮すべきであり、公共事業的効果を期待することは適当ではないのではないか。

○当懇談会としては、ITERがJT-60の次の装置として適切なステップであるか否かについて更に議論を深める必要があるのではないか。

○(これに対し、)ITERはこれまでの燃えていないプラズマの制御技術から 実際に燃えているプラズマの制御ができるかどうかを技術的、工学的に実証することが目的であり、技術的には十分見通せる状況にあると考えている旨の説明がなされ、本件については、科学的・技術的な妥当なステップの組み方として後日改めて議論することとされた。

○エネルギー問題を通しアジア諸国とどのような役割をもっていくかといった視点が、我が国がITERの問題を考えるうえで必要。また、今後世界的な「大協調・大和解」の時代を迎えていくことに対して、四極が開発を担当し、他の地域が実用に供していくという考え方が、ITER計画の検討に当たって重要ではないか。

○財政的な状況を踏まえると、計画の重要性について議論を進めるより、ITERを進めるという事の積極的意義をどのように位置づけるかということに重点を置いた作業をするべきではないか。

(8)資料3-5号に関して、座長より主な論点については、今後も引き続き案として意見を求めていく旨説明があった。

(9)資料3-6号に基づき、事務局より、当面の検討スケジュールについて説明があり、次回は、核融合開発にとってのITERの意義、長期エネルギー需給の観点から議論を進めること、本年末を目途に中間的なとりまとめを進めることなどが了承された。

(10)次回は、5月26日(月)に開催することとされた。