資料第3−2号


ITER建設等の段階に関する国際的話し合いの状況について


平成9年5月




1.建設等準備協議(Exploration)について

1)目的
○ITER建設のための枠組みに関する「建設協議(Negotiation)」が合理的な時期までに合意に達することを可能とする十分な共通の理解を構築する(平成8年7月に開始を合意)

2)経緯
○これまで3回(第1回ロシア・サンクトペテルブルグ、第2回東京、第3回パリ)開催
○主な検討事項
      ・ITER計画に関する各極の状況
      ・98年7月以降のITER計画の進め方
      ・建設等に向けての検討課題
○第3回会合において、これまでの検討状況等に関する報告書(ドラフト)を作成


2.ITER計画に関する他極の状況

EU

1)昨年12月の各界有識者による核融合研究評価報告書に基づき、核融合を将来エネルギー源の選択肢として実現することが重要であり、ITERについてもEU域内に立地すべく諸方策を検討中

2)第5次研究開発フレームワーク(1998年から2002年までの方針を規定)を作成中
○現在正式提案がなされた段階
○同フレームワークの下策定される個別分野計画である核融合計画は来年策定
○正式提案によると、期間中における核融合及び核分裂への資金配分は現計画とほぼ同レベル全体の7%であり、核融合についても大凡同レベル(年間約500MECU)の見込み

3)現在のところ、EU域内でのITER立地可能国はイタリアのみであり、具体的候補地に関する技術調査を開始予定。なお、立地の判断に重要な、低開発地域への開発援助基金「構造基金」の利用可能性については、検討に時間がかかる模様。

4)現時点では、直ちに長期の財政的コミットを伴うような建設の判断は困難であるが、第5次フレームワークの後期部分(大凡2001年以降)であれば立地の判断は可能との意向

5)ITERのサイト状況を加味した調整設計検討に関しては、カナダに対しても実施を検討中

米国

1)現在ITERに関する技術的評価を実施中
エネルギー省核融合エネルギー科学諮問委員会(一般からの意見も聴取)
米国科学アカデミーに対してITERの科学技術的意義等を照会

2)本年10月を目途に大統領科学技術諮問委員会にて核分裂・核融合をも含む次期エネルギー開発戦略に関する報告書を策定の予定

3)98年予算案においては、前年度と同規模の核融合予算を計上($225M)。現在下院において審議中。科学委員会としては、$15Mの増額を決議(総額$240Mが限度)

4)98年度予算との関連もあり、明年2月までに、エネルギー省から議会に対して、建設段階におけるITER計画への米国の取り組み方に関する方針を報告
○現時点では、建設段階においても制限された貢献が現実的との意向(現在米国のITER計画予算は年間約60億円)



1)ITER計画は宇宙ステ−ション計画と並び連邦研究開発資源を集中してきた連邦計画
2)ITERについては早急に建設に向けての具体的動きにすることが国内支持を維持していくために重要

3.平成10年7月(現行EDA協定期間)以降の計画の進め方についての検討状況

○平成10年7月以降の協力の枠組みに関し以下の選択肢を検討中

I  EDAの延長

1)終了期限のみ延長
2)終了期限を延長の上、サイト対応調整設計検討等を規定する議定書を締結



II  EDAを終了し建設までの準備活動を行う暫定取り決めを締結

ITER工学設計活動と建設活動をつなぐ暫定協定(新規)を締結の上、建設準備(サイト対応設計等)活動を実施



III  EDAを終了し建設、運転等を見通した取り決めを締結

1)30年程度を見通したITERの建設、運転等を規定した包括的国際協定を締結
2)ITER建設、運転等への取り組み全体を包含する傘協定を締結し、その後の具体的活動については漸次議定書により具体的協力を実施



IV  ITER協力活動の終了



○ITER設計活動の進捗状況、現時点における各極の状況、協議期間の制約等から検討を行い、選択肢I(延長)については98年7月までに実現されうる選択肢である旨の非公式な共通認識が得られた。(なお、選択肢IIIは、現時点における不確実さにより、実現が困難。選択肢IIは、広範な交渉が必要。)

○選択肢I及びIIに関する作業計画について

○準備協議期間中  ・実施すべき協力活動の具体的内容・規模等の検討
          ・合意文書の準備

○98年7月    ・約3年間の協定延長または暫定取り決め締結(署名)

○約3年間の内にITERの建設決定に必要な全ての技術上、運営上、財政上必要な措置の完結を目指す(98年の約2年後に評価を予定)

○建設サイト、費用分担、調達方法、ITER事業主体の設立等に関しては、98年7月以降も国際的話し合いを継続し、かかる事項に関する合意が得られた時点で、建設等に関する包括的取り決めが締結される。

4.98年7月以降の主な協力活動

○サイト対応設計、コスト解析
○安全解析を含む安全規制上手続きの準備
○製作及び運転上の裕度の適切化

 
5.その他の検討状況

1)ITER事業主体の設立方法
・国際法または国内法により設立
・一段階方式及び二段階方式を想定
・立地国のイニシアチブによる設立も可能

2)他国及び国際機関の参加    
・現行四極以外の国及び国際機関の参加の 形態を検討(建設段階からの参加についても視野)

3)今後の検討事項の例
・98年7月以降の協力活動に関する法的基礎及び必要な資源
・ITER協力活動体制
・建設等に向けての検討事項
    ・サイト選定方法
    ・費用分担
    ・廃棄物の取り扱い 等

6.今後のスケジュール

○現段階において協定延長の実現可能性を追求する方向で当面具体的作業を進展させ、実現のための具体的課題等の検討並びに各極内での受容可能性を検討

○7月末、11月に再度準備協議を実施。方針(協定延長)の検討・確認

○来年2月の協定レベルでの協議開始に向けて、極内検討を集約





ITER建設等準備協議参加者


日本   今村 努     科学技術庁官房審議官(原子力担当)97/1から
     興  直孝    同上               97/1まで
     田中 敏     科学技術庁核融合開発室長
     吉川 允二    日本原子力研究所理事長
     佐竹 宏文    日本原子力研究所理事
     このほか、外務省、日本原子力研究所からの専門家出席

EU   J.ラウッティ  EU第12総局長
     C.メゾニエ   EU核融合特別顧問
     E.カノビオ   EU核融合国際関係顧問

ロシア  P.ベリホフ   科学アカデミー副総裁
     Y.ソコロフ   原子力エネルギー省研究局長
     N.チェベレフ  原子力エネルギー省研究局顧問
     L.ゴルブチコフ 原子力エネルギー省核融合部長

米国   J.デッカー   エネルギー省エネルギー研究局次長
     A.デービス   エネルギー省核融合エネルギー科学部長
     M.ロバーツ   エネルギー省国際及び工学課長







EU第5次フレームワーク研究開発計画(正式提案)における核融合(制御熱核融合)について



1,EU第5次研究開発フレームワークについて

期間 1998年から2002年までの科学技術基本方針を対象

現状 4月上旬に正式提案はEU・クレソン委員から行われ、明年早々に閣議決定

予算
・同計画の範囲が新たな経済構造下における期間を包含していることから現段階では明確な提案はされず。但し、EU全体の対GNP比との関連で前期計画を下回ることがない旨を記述
・核融合は、核分裂と併せて全体の7%を配分

 
2,核融合分野の位置付け

1)ユーラトム(欧州原子力共同体)における研究開発目標の唯一の重要計画

2)長期的目標は将来の社会のニーズ、すなわち、運転の安全性、環境との整合性、経済性に合致する核融合動力炉のためのプロトタイプを共同して開発すること

3)かかる長期的目標を達成するための戦略は、実験炉(「the Next Step」)を開発し、次に実証炉(「DEMO」)を開発すること

4)開発のスケジュールを考えると、次の10年間においては「the Next Step」の建設は技術的に可能であり、かつ戦略的に必要。かかる取り組みは、国際協力プロジェクトであるITERの枠組みにおいて実施されることが望ましい。

5)1998年から2002年までの間の戦略は以下の通り。

・加盟国と欧州産業界が「the Next Step」を建設し、運転する準備をするための能力を開発するために必要な核融合の物理及び技術面での活動は、ITERが建設まで実施されるという見通しを有して設計活動に参加すること

・核融合装置の基本概念を向上するための物理実験を実施すること

・核融合を進展させるために必要な長期的観点に立った技術開発活動を進めること

6)JET(欧州共同トーラス装置)のフルスケールでの運転は期間中に終了される予定。終了後は、「the Next Step」の運転に関する知見を修得するために使用。

7)安全性及び環境面での解析、社会経済面からの検討、加盟国における民生用慣性核融合の研究開発との調整、一般公衆への成果の普及と情報の開示について配慮していく。



参考


欧州第5次研究開発フレームワーク提案について


1 第5次研究開発フレームワーク(正式提案)の概要

 
1)対象期間 1998年から2002年までの科学技術基本方針をカバー
    (計画の実施は1999年から)

2)計画の骨格 分野別計画 世界の資源と生態系
              利用者側に立った情報化社会
              競争力のある持続可能な成長

        横断的計画 欧州研究開発活動の国際的役割
              中小規模産業の技術革新と参入
              人類の可能性の高揚

3)予算
第5次フレームワーク内期間の過半は新たな財政見通し(2000年から)の下、実施される。
従って、現時点では、フレームワーク全体の支出について明確な記述はせず、総額をEU全体のGNP比において第4次フレームワークにおける値を最低限度と確保すべし。但し、各分野間割合は第4次フレームワーク内と同様とする

4)政策上の方針  ・EUの科学技術上の優位さの維持
          ・EU全体の政策との整合
          ・欧州への付加価値

5)政策上の目的  ・雇用創出、生活の質の向上、EUの競争力維持

6)個別分野への資金配分
        EC(欧州共同体)計画   91%
       内訳  世界の資源と生態システム   28%
           利用者側に立った情報化社会  28%
           競争力のある持続可能な成長  28%
           国際的役割           3.5%
           成果の普及と利用        2.5%
           研究者の訓練等        10% 
           共同研究センター        5%

         欧州原子力共同体     9%
                 核融合及び核分裂  7%
                 共同研究センター   2%

2 今後の予定
          5月  研究担当相理事会
         11月  研究担当相理事会
         明年早々 EU閣僚会議を経て決定の予定