7 安全解析及び環境の影響評価

7.1 ITERは安全に運転が行われ、また、核融合エネルギーの婉然性及び潜在的な環
   境保全性を実証できるように設計される必要がある。この目的のために、ITER/
   EDAではITERの安全性及び環境に対する受容性を確実にし、並びに、各極で固
   有な規制に適合する上で最小な設計変更を行うことによってITERが参加極のいず
   れにおいても建設できることを保証する様に、精力的に設計及び評価活動を実施して
   いる。この活動において、詳細な安全性に関する設計要求は、国際的に認識されてい
   る評価基準、放射線被ばくに対する規制及びとりわけALARAの原則に則って行わ
   れるよう作業が進められた。現在実施されている評価活動においては、施設、系統及
   び機器の設計が要求に合致するか否かが検討されている。

7.2 ITERの設計及び運転に関し、最初の総合的な建設サイト非依存安全性及び環境
   影響に対する評価が、ホームチームの安全問題に関する専門家によって行われた。本
   評価は、

   を網羅している。

7.3 本評価は、ITERの設計が充分にITERの安全性に関する設計要求に合うもの
   であることを示した。さらに、この評価では、ITERの建設及び運転に含まれる安
   全性に係る課題が十分に認識されかつ解析されており、これらの課題に対処するため
   に設計が行われている。既に確立され設計に反映されたITERの安全性に関する設
   計上の要求の広い国際的重要性を鑑み、設計はいずれの潜在的ホスト国の固有の安全
   上の要求にも、その地域固有の規制を満足するためにわずかな変更のみで対応できる
   と結論された。さらに施設は、作業従事者及び一般公衆に対して健康上及び安全上の
   高度な防護が得られるよう、並びに、環境に与える影響を最小にするよう建設され運
   転されるべきである。

7.4 ITERに関連した安全設計に係る課題の多くは、将来の核融合炉にも関連するも
   のである。ITERを安全に運転することは、従事者被ばく、放出管理及び機器制御
   の分野で核融合の持つ一般的な安全性及び潜在的な環境保全性を示すことに役立つで
   あろう。運転を実施していく過程で取得されるデータは、安全性データ及び解析の実
   証に有用となるであろう。さらに、ITERの運転を通じて取得されるデータ及び経
   験は、将来の核融合施設の安全設計を行うための基礎となる情報を提供するであろう。

7.5 ITERは初期段階の商業炉として考えられている炉と同程度の大きさをもつもの
   であるが、ITERは研究施設である。ITERは実験炉であるため、柔軟性のある
   運転ができ、実験が容易であり、かつ、適切な変更を可能とするような設計上及び安
   全上の配慮が必要である。変更項目としては、例えば種々のダイバータの設計、プラ
   ズマ対向壁の材料、トリチウム増殖ブランケット等が挙げられる。これらの必要性に
   より、実兼用機器及び実験用装置は如何なる安全上の機能にも属さないという強力な
   安全思想に基づく設計が推し進められた。

7.6 ITERの設計は、他のエネルギー源と比較して核融合固有の安全上の特性を利用
   することによって、また、深層防護の設計方針を追求することによって安全上の要求
   に合致する。

7.7 プラズマの燃焼を維持するための条件が厳しいこと、及び如何なる場合においても
   プラズマ中に保持される燃料が少量であることは、一般的に異常事象における受動的
   な燃焼反応の停止をもたらす。適度なエネルギー密度と小さな放射性物質の崩壊熱密
   度は緊急冷却系を必要とせず、また、すべての冷却が喪失される仮想的なケースにお
   いてさえも対処する時間を与える。さらに、ITERにおける放射性物質の可動なイ
   ンベントリ、トリチウム及びプラズマ−第一壁相互作用により発生する放射化ダスト
   あるいは冷却水中の腐食生成物は、平常運転中及び想定された事故シークエンスにお
   ける流出量及び放出量は国際的に受け入れられる勧告値の保守的な範囲に納まってい
   る。

7.8 核融合が潜在的に有する安全上の利点を完全に実現するには、中性子束によって起
   こる放射化を抑制するための低放射化構造材料の使用が必要である。しかしながら、
   このような材料の開発は、ITERの設計に適用できるほど十分には進展していない。
   特に、プラズマに近い機器では、主としてステンレス鋼及び銅合金を使用しなければ
   ならないであろう。このことは、商用核融合発電プラントにおいて使用が期待される
   材料と比較して、より大きな崩壊熱とより長い半減期を持つ放射化生成物を作り出す
   ことになる。例えそうではあっても、崩壊熱除去はITERの設計においては通常施
   設の冷却系を使用することによって解決しており、全く起こり得ないような事象にお
   いても、緊急冷却系を使用することなしに受動的な冷却が可能である。放射化した物
   質の放射能は、約100年後には極めて低いレベル待て速やかに減衰する。

7.9 深層防護は、故障を避けるために保守的な設計を用いることによって、並びに、緩
   和系を破損し難いように設計することによって、既に運転に必要とされる装置から最
   大限の安全上の利得を引き出すことにより達成される。これらの概念は異なる想定事
   象のシナリオの包括的な解析を通して評価された。結果は想定事象に関連する放射性
   物質の放出が、一般公衆の被ばくに対して設けられた包括的な制限値を充分下回るこ
   とを示している。さらに施設の安全裕度についても仮想的な事情の解析によって調べ
   られた。仮想的な最も悪い事象で考えられる事故の究極のケースでさえも、リスク評
   価における放射性物質インベントリからの地表面での放出は、初期の被ばく量の点に
   おいて、サイト外住民の避難不要の目的で定められている制限値を下回るであろう。

7.10 総合的な安全性及び環境影響に関する解析は、さらなる詳細な設計作業の進展並び
   に機器及び系統のR&Dプロジェクトからの安全性に関連した結果を通し、変更、拡
   張及び更新されるであろう。これらの情報はまた設計過程に間断なくフィードバック
   されるであろう。変更された解析及び評価は最終設計報告書に組み込まれ、ホスト極
   の安全規制のために必要な安全性及び環境影響に関する情報ほ提供するであろう。

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