資料第2-2号
Ⅰ 核融合開発の意義
-核融合開発は人類にとってどのような意義を有するのか
-現時点で核融合開発を更に進める理由は何か
Ⅱ ITERの実現可能性
-ITERは技術的に実現できるのか
-ITER計画の科学技術上の意義は何か
-ITER計画は核融合開発上適切な選択肢であるのか
-ITER計画が国際共同プロジェクトであることに起因する困難さはあるのか
Ⅲ 我が国の対応方針を検討するための基本的視点
-ITERを立地する場合のプラス面・マイナス面は何か
-我が国がITERの誘致を進めることは妥当な選択肢か
Ⅳ 検討に当たっての配意事項
-現在進展中の国際的話し合いの進捗状況等にどう対応するか
-計画の実施段階は次世代の人々が担うことについてどう考えるか
-国民の理解を求める努力が必要ではないか
Ⅰ 核融合開発の意義
-核融合開発は人類にとってどのような意義を有するのか |
(懇談会での議論・論点)
②核融合エネルギーは、将来のエネルギーの一つの選択肢として非常に有力なものと期待される。
特徴 資源の豊富さ
原理的な安全性
環境保全性
③核融合開発の意義については、将来のエネルギー社会がどのようになり、その中で核融合がどのように貢献できるのかを提示できるかどうかがポイントであろう。
④核融合開発により可能となるエネルギー問題の解決がアジア地域を始めとする国際社会が抱える緊張感の緩和に大きな影響を与えるのではないか。
⑤ITER計画についての検討は、科学者のためのものという発想ではなく、人間社会の底辺の問題を解決するのにどう資するのかという発想で進めるべきではないか。
⑥世界が抱える問題に対して将来的な解決の可能性を求め、参加国が団結して突破口を作っていこうとITER計画の努力は、大きな政治的効果があるのではないか。
⑦核融合開発の意義は、他のエネルギー源にはない優れた特徴を有する可能性がある将来のエネルギー源を探索することであり、現実のエネルギー源との比較において、どの程度の魅力が見込まれるか否かが検討のポイントであろう。(現在の核分裂炉と同じ原子力の体系のなかで議論していくことは適当であるのか。)
-現時点で核融合開発を更に進める理由は何か |
②核融合開発のためには長期間を要するものであるからこそ、今から着実に技術の蓄積を図っていくことが必要ではないのか。実用化が21世紀後半であるからと言って技術開発を止めたり、遅らせたりすると、いつまで立っても実用化の見通しが得られないのではないか。
③技術開発の開始時点ではある程度心配な点、不確かな点があることは当然であり、それを理由に研究開発を進めるべきでないという考え方は適当ではないのではないか。核融合技術が将来の基幹技術になりうるのであれば、開発戦略に間違いがあっては取り返しがつかないものとなろう。
○エネルギー確保では少なくとも数百年の間は太陽エネルギーの有効な使用など環境に優しく危険性の少ない方向を目指し、早急に核融合の是非を決定すべきではない。
○我が国は核分裂による原子力平和利用の技術体系こそ完成させるべきである。太陽光利用のようにあと一歩のところまできている技術開発もある。核融合の実用化は100年先であることを考えると、重要なのは誤りのない優先度の判定である。
-ITERは技術的に実現できるのか |
②核融合研究開発におけるこれまでの経験則がITERに外挿できるのか。(今後10年程度でITERが実現できるのであろうか。)
③核融合については、開発開始当初の予想に比し、実現が遙かに難しいとの声もあるようだが、どこがどのように難しいのか。
④ITERについては現在は各要素毎の技術開発であり、今後、一つのシステムに統合することによって新たな難しさが生じるのではないか。
⑤技術的難しさについても科学者が率直に明らかにし、解決の見通しについて説明することが必要ではないか。
⑥ITER計画の進め方に関する議論を進めるためには、ITERの技術的なリスクと不透明さを明確にすることが重要である。
○ITERで採用するDT燃焼では、強力な中性子が発生し、連続運転すると炉壁は1年前後で保たなくなるのではないか。この結果、膨大な放射性廃棄物が発生し、長期間にわたる厳重な管理が必要になるのではないか。
○ITERでは大量のトリチウムを使用するが、トリチウムは閉じ込めが難しく安全性に問題があるのではないか。また、事故で大量に環境中に放出される恐れがあるのではないか。
○(これまでの実験から)20年程度のITERの運転では炉壁の崩壊は起こらない。また、核融合の特徴の一つは高レベル放射性廃棄物が発生しないことである。
-ITER計画の科学技術上の意義は何か |
②国際協力によるITERの実現は、各極の科学技術英知を広く集めて、確実かつ早く目的を達成するものであり、科学技術分野の国際共同のモデルにもなるのではないか。
③ITERが我が国の学術的、工学的活動において、将来どれだけ広い範囲で利用されていくのかについて検討を進めることが国際的環境の中でITER計画に対する取り組みを議論していく上で重要である。
○巨大科学技術研究は、他の科学技術研究の推進を圧迫する可能性があるのではないか。
○核融合は、プラズマ制御を中心とした総合技術プロジェクトであり、実現することを通し、幅広い分野の技術的知見が蓄積するのではないか。
○ITERについては、これからの長い人類の発展に対して無尽蔵のエネルギー源となり得る核融合技術の科学的原理の実証を確実に実現することでその意義は十分であろう。
-ITERは核融合開発上適切な選択肢であるのか |
②核融合については、これまでの科学的な実証を踏まえて、実用化に向けて進めていく段階にあり、工学的実証を行わなければ全体が完結されない。ITERはそのための役割が重要であろう。
③ITERは実用炉を直接指向する研究開発であり、これを着実に進めると同時にITERにおいては実施できない、大学レベルにおける補完的あるいは先行的な研究についても適切なバランスを持って進められるべきではないか。ITERだけ進めればよいというのでは核融合全体の推進が図られず、核融合の実用化は達成されないのではないか。
④「炉」の開発を進めるためには、周辺の技術開発も重要であり、それらを含めた全体の計画を作成する必要がある。
⑤技術開発の進展について必ずしも楽観的な面ばかりではないと思われるが、解決できる見通しがあれば勇気を持って技術開発を開始するべきではないか。但し、解決できないことが判明した場合には速やかに計画を中止する決断が必要である。
⑥ITERだけを対象として実現可能であるとの議論を進めても、それが核融合実用化全体に向けてどのような位置づけであり、意味を持つのかについての説明がなされないと意味がないのではないか。他の方式(トカマク方式以外の方式)との関連をどう考えるのか。
○核融合技術開発では、まだまだ要素技術や材料の開発が成熟段階に達しておらず、核融合動力炉開発が、自己点火の科学実証後直ちに、一本道で実用化が進むとは到底考えられない。
○初代核融合炉はITERの延長上にあるコンベンショナルなトカマクで提案されるのが現実的であるが、その場合もアドバンス炉に発展できる可能性が示されている必要があろう。
-ITER計画が国際共同プロジェクトであることに起因する困難さはあるのか |
②安全文化(Safty Culture)、設計思想が違う国々が集まって共同作業を進めることにより、どのような困難さが予想されるのかについてあらかじめ十分な検討が必要ではないか。
③長期間の計画であり、計画開始時点においては予想し得ない各極の動き、変化にある程度柔軟に対応できることが計画の安定性を確保するために必要なのではないか。
④諸外国と我が国では文化的背景・基盤が異なり、ものの見方・考え方も異なる。そのような中、諸外国の核融合計画、エネルギー開発計画に大きく影響を与えるITER計画を我が国のリーダーシップで実施していくことができるのであろうか。
⑤核融合は我が国が欧米と横一線になって議論が進められる数少ない科学技術分野であり、この分野で国際的イニチアチブを取れないとすると、我が国がイニチアチブを取れる分野があるのであろうか。
⑥我が国が国際協力の枠組みの中でITER計画を進めていくためには、計画段階から他極と伍して議論を進めていく必要がある。
-ITERを立地する場合のプラス面・マイナス面は何か |
②施設の建設・運転に直接携わることによるノウハウの取得は、従事した者でないとわからない面があり、立地することにより、より多くのノウハウが蓄積されるのではないか。
③我が国の原子力産業界のポテンシャル維持を図る観点からもITERの立地は有効である。
<米国・技術評価局(OTA)報告書(1995.7)>
(例) 立地した場合のプラス面 ・科学技術及び政策的プレステージ高揚
・経済効果(運転経費等)
・地域振興(産業の集積等)
立地した場合のマイナス面 ・ハイテク部分は参加極間で分配
・通信技術によるアクセスの容易さは変わらず
・放射性物質の取り扱い責任
<OECD・メガサイエンスフォーラム(1995.6)>
(例)立地国の利益 ・政策的プレステージ、管理運営に有利
・経済効果
・産業面(地域産業、産業技術の進展)
立地国の不利益 ・計画からの非撤退
・負担増
・国家計画の圧迫
-我が国がITERの誘致を進めることは妥当な選択肢か |
②無資源国の我が国がエネルギー問題に対応していくという考えは世界にとってわかりやすく、人類社会にとって有益な発想ではないか。
③我が国の核融合研究能力は国際的にも高い評価を得ており、その進展に我が国が貢献することに対する期待も大きいのではないか。我が国は近年、学術的、技術的に大きな進展があり、ITERを進めるための十分な技術力があるといえるのではないか。
④ITERに対する資金的な面での厳しい意見もある中、ITERにどれだけの投資をすることが適当であるのか、人的な面、資金的な面、その他の面における貢献の程度について検討が必要であろう。
⑤ITERについては参加国間の誘致合戦になるのか。ならないとすると他極はITERをどのように認識しているのか。他極は、できれば計画にタダ乗りをしようとしているのではないのか。
⑥ITERの誘致を検討する際には、我が国の安全規制、立地について諸外国も理解を示し得るものであるという見通しがある程度必要ではないか。
○(ITERの建設が)絶対にできるならば、なぜ他国がやらないのだろうか。金額も2兆、3兆と膨らむのではないか。
-現在進展中の国際的話し合いの進捗状況等にどう対応するか |
②新たなエネルギー源の開発について、国際的観点から我が国の果たすべき役割を鑑みると、外部から言われて動き出すのではなく、人類のために自主的に動き出す必要があるのではないか。
③建設に向けての資金問題について、各極ともITERのための資金をコミットできる段階にあるのか見極めが必要ではないか。
④ITERのような長期的かつ大規模な計画は、立地国が主力となって計画を進める必要があるが、我が国にその意欲があるだろうか、また、その意気込みを実現できる能力があるのだろうか。
⑤ITERについては、過去の国際協力、国内開発プロジェクトの経験が十分生かされることが必要である。
○(我が国立地の方針を選択する場合は)応分な資金負担に対する欧米の確約も前提条件である。
-計画の実施段階は次世代の人々が担うことについてどう考えるか |
②核融合の開発は次世代の人々が最終的に締めくくる責を負うことになるため、懇談会としても、若い人々の考え方をくみ取る機会を設ける必要があるのではないか。
③核融合開発は、非常に息長く継続していく必要があるため人材育成が重要であり、大学等の教育過程においても、我が国あるいは人類全体への問題意識として、開発の必要性を明確にしていくことが必要ではないか。
-国民の理解を求める努力が必要ではないか |
②核融合は科学技術の課題であっても、社会的、経済的な支援がなければ実現され得ないものであり、ITER計画についても、国民一般の理解を得られよう、各事項に関して判りやすい説明ができるように努力を継続していくことが重要である。
③将来のエネルギー選択肢の幅を示すとともに、核融合が人類として追求すべき方向であるのであれば、そのことを国民一般に的確に説明することが重要である。
④技術的な側面だけでなく、人類のための計画として、人材の面を含め全体を工夫しながら進めるということであれば、国民的合意が得られるのではないか。
⑤核融合の実用化までには長期的観点に立った開発努力が必要であり、国のイニチアチブにより進めることでなければ、実現され得ず、また国民からの理解も得られないのではないか。(民間の研究開発には馴染まないのではないか。)
⑥国民一般からの理解を得ていくためには、できる限り多角的な面からの検討が必要である。
⑦我が国への立地に当たっては、科学技術分野以外の分野(Out of Science)での議論が重要となるのではないか。
⑧懇談会としては、ITERへの取り組みに関し、国民が決定できるだけのシナリオを描くことができるかが重要である。