資料第2−1号
第1回 ITER計画懇談会議事要旨(案)
- 日 時 平成9年2月10日(月) 10:00〜12:15
- 場 所 科学技術庁第1、2会議室
- 出席者
(原子力委員)
(専門委員)
飯田委員、飯吉委員、猪口委員、大河原委員、大田委員、草間委員、伊達委員、苫米地委員、中里委員、那須委員、平山委員、増本委員、宮委員、宮島委員、吉川(弘)委員、吉川(允)委員
(事務局)
加藤原子力局長、今村長官官房審議官、田中核融合開発室長
- 議題
(1) 座長の選出について
(2) 核融合研究開発計画について
(3) ITER計画の概要について
(4) 今後の検討の進め方について
(5) その他
- 配布資料
資料第1−1号 ITER計画懇談会の設置について
資料第1−2号 原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について(平成8年9月25日 原子力委員会決定)
資料第1−3号 国際熱核融合実験炉(ITER)と第三段階核融合研究開発基本計画上の「実験炉」について
資料第1−4号 第三段階核融合研究開発基本計画等
資料第1−5号 ITER計画の概要
資料第1−6号 ITERに関する国内外の取り組み状況について
- 概要
(1)事務局(科学技術庁)より開会宣言が行われた後、伊原原子力委員長代理より開会の挨拶が行われた。引き続き、事務局より配布資料の確認が行われた。
(2)資料第1−1号に基づき、事務局より本懇談会の目的、審議事項について説明がなされた。
(3)座長は互選により吉川弘之委員が推薦され、各委員に承認された。座長より本懇談会において、我が国では、規模、国際性等において例がないITER計画について国民各般の様々な意見を反映させ、議論を尽くしていきたい旨の所信表明が行われた。
(4)資料第1−2号に基づき、本懇談会は、平成8年9月25日の原子力委員会決定に基づき公開する旨説明があり、了承された。
(5)資料第1−3号及び資料第1−4号に基づき宮島委員から我が国の核融合研究開発計画について説明があった。
(6)資料第1−5号に基づき吉川允二委員からITER計画の概要について説明があった。
(7)資料第1−6号に基づき事務局よりITER計画に関する国内外の取り組みの状況について説明があった。
(8)(4)〜(7)の説明についての主な質疑は以下の通り
- これまでの経験に照らし、ITERの実現についての技術的確立性はどの程度の見通しかとの質問に対して、これまでのJT−60等の実験から得た経験則などから総合的に見て十分なITERの技術的確立性は見通せるのではないかとの回答があった。
- ITERを誘致した場合に、蓄積効果のようなものが認められて、それ以降の炉もその国に立地するという考え方がとられるのかとの質問に対して、ITER以降の計画については未定であるが、次段階以降の技術を修得する上で、誘致することは重要であるとの回答があった。
- ITERの技術的リスク及び各国の取り組み状況についての質問があり、前者については、技術的には非常に大きな困難はあるかもしれないが、克服できないものではないと思うとの回答がなされた。また、後者については、現在米国はエネルギー事情、財政状況から立地は困難であるも、非立地国として参加していく方向であり、また、ロシアも同様であること。また欧州についてはITER誘致を視野に入れて取り組みを検討中であるとの説明があった。
(9)各委員より今後の検討の進め方について自由討論が行われ、概要以下の意見が述べられた。
- 出来るだけ多角的な検討が必要。
- 我が国核融合の研究の成果は対外的にも評価が高まってきている。最終的には次世代の人達が最後の締めくくりをしなければならず、若い人達の意見を汲み取ることも必要。また、トカマクで実用炉の研究開発を行い、更に大学でバックアップをしていくというバランスのとれた進め方の検討が必要。
- ITERについては科学者として知りうる範囲で誠実に問題を指摘して欲しい。人類的な問題として国際協力の視点が重要。日本の科学技術面での国際貢献は、政策的にも魅力的。エネルギー問題への貢献は、日本のような無資源国としてはわかりやすい議論。
- 当懇談会の検討は、国際的な話し合い、予算編成スケジュール等に十分対応していくことが必要。また、財政との関連を考えながら検討を進めることも必要。
- 日本への誘致については、プラス面とマイナス面(例えば財政的な面)等について、白紙の状態で両方を見ていくことが必要。また、核という言葉に対する国民の懸念というものもあり、議論を公開するだけでなく、分かり易く説明することが必要。
- 立地については、科学的な問題だけでなく、アウトオブサイエンスとしての議論が必要。今までは要素として研究してきたものが、システム全体となると新たな問題が出てくるのではないか。また、将来の人材確保等も重要。
- 国際協力で行っていく上で、日本はリーダーシップをとって進めていくことが必要。また、ITER計画は、大変大きな計画であり、これが一般的な学術、技術に将来どれだけインパクトを持ちうるのかについての議論も必要。
- 核融合が、将来のエネルギー問題にどのように貢献でき、どのような可能性があるのかとの観点をふまえた核融合研究開発の必要性を振り返り、21世紀半ばごろのエネルギー源としての見通しについての議論が必要。また、ITERへの人的及び資金的投資の適正な規模についての議論も必要。
- ITERの実現のためには、パブリック・アクセプタンスが重要。核融合は、将来のエネルギー問題を解決する大きな手段となりえ、長期間の開発努力を必要とすることから国のイニシアチブで進めることが必要。また、原子力分野の民間の技術者の維持のためにも重要。
- 技術開発を進めていくうえで、必ずしもバラ色の面ばかりではないかもしれないが、解決できないことはないのではないか。まずは、始める勇気が必要である。但し、解決への困難さが生じた場合は、やめる勇気も必要。
- 学問的・研究的にITER計画が進むべきものであるならば、研究自体を国際貢献として支援することが国の方針とすべきではないか。人材育成も重要。原子力の平和利用は不可避のものであり、技術的な問題だけでなく、国策あるいは人類のためにという観点から、教育問題その他も含めて検討していけば、国民的合意が得られるのではないか。
- 技術的な問題と政策的な、特に社会経済上の問題との兼ね合いについての検討が必要。技術的課題であっても、社会あるいは経済的サポートがないと、完成しない。ITERは工学的実証段階にきており、これを行わなければ、核融合の全体計画を完結できない。また、本体施設のみではなく、周辺技術が大事。ITERの建設、誘致に関する問題だけではなく、そのような広い意味での検討が必要。
(10)座長より、今後の進め方等に関し、各委員より述べられた意見に関し、以下のまとめがなされた。
- ITER計画のリスクと不透明な面について明らかにしていくことが必要。
- 核融合の推進が、人材育成を含めて、科学技術レベルを押し上げるという意味も重要。
- 核融合は、科学にとどまらず、人類の課題に科学技術がどう貢献するかといった典型的なテーマの一つであり、とり進めに関する哲学を明らかにしていくことが必要。
- 国際的な中ではじめて主導権をとって日本がどこまでできるかが課題。
- ITERは、決して専門家だけのものではなく、科学者でも行政者のみでもなく、人々一般に広がりを持つ問題。
- 核融合が人類にとって、何を意味するかのシナリオをある程度明らかにすることが必要。
(11)座長より、本日の議論を踏まえ、懇談会としての今後の検討に当たっての論点について、事務局が整理の上、次回会合に提出するよう要請があり、次回以降、論点に従い順次議論を進めることとされた。なお、ITER計画の取り扱いに関する状況に適切に対応するため、本年内に、中間的なとりまとめを行うこととされた。
(12)次回は4月9日(水)の13時から15時まで開催することとされた。