参考資料

 


参考資料1

ITER計画懇談会の設置について

平成8年12月20日
原子力委員会決定
1.開催の目的
 国際熱核融合実験炉(ITER)については、日、米、EU及び露の協力により、平成4年より工学設計活動が進められ、本年12月には詳細設計報告書が提出されるなど平成10年7月の取りまとめに向け、計画が進められているところである。
ついては、我が国として今度の国際熱核融合実験炉(ITER)計画の進め方について、社会的・経済的側面を考慮し、長期的展望に立った国際社会の中での役割も見通した幅広い調査審議を進めるため、ITER計画懇談会(以下、「懇談会」という。)を設置する。

2.審議事項
(1)国際熱核融合実験炉(ITER)計画の進め方
(2)その他

3.構成
別紙のとおりとする。

4.運営等
(1)懇談会は、必要に応じ懇談会構成員以外の者の意見を聞くものとする。
(2)懇談会は、検討に当たり、核融合研究開発に関する計画の総合的推進等に関し調査審議を行う「核融合会議」と十分な連携を図るものとする。
(3)懇談会の活動は、当面2年間とする。
(4)その他、懇談会に関し必要な事項は、座長が懇談会に諮って定める。


(別紙)

ITER計画懇談会構成員

座長 吉川 弘之       日本学術会議会長
   荒木 浩        東京電力(株)会長(第11回より)
   飯田 経夫       中部大学経営情報学部教授
   飯吉 厚夫       中部大学学長
   伊藤 正男       理化学研究所脳科学総合研究センター長
   井上 信幸       核融合会議座長
   猪口 邦子       上智大学教授
   今村 治輔       (社)経済団体連合会国土・住宅政策委員会共同委員長
                                 (第11回より)
   井村 裕夫       科学技術会議議員(第11回より第14回まで)
   大河原 良雄      (財)国際協力推進協会理事長
   大田 弘子       政策研究大学院大学助教授
   木田 宏        新国立劇場運営財団顧問
   草間 朋子       大分県立看護科学大学長
   クラーク グレゴリー  多摩大学学長
   伊達 宗行       大阪大学名誉教授
   苫米地 顕       (財)電力中央研究所名誉研究顧問
   豊田 章一郎      (社)経済団体連合会会長(第10回まで)
   中里 良彦       (社)日本電機工業会会長(第10回まで)
   那須 翔        東京電力(株)会長(第10回まで)
   西室 泰三       (社)日本電機工業会会長(第11回より)
   平田 賢        芝浦工業大学教授
   平山 郁夫       日本画家
   藤原 正巳       核融合科学研究所所長(第11回より)
   増本 健        (財)電気磁気材料研究所長
   宮  健三       東京大学教授
   宮島 龍興       核融合会議座長(第10回まで)
   村上 健一       日本原子力研究所理事長(第11回より)
   森  亘        科学技術会議議員(第10回まで)
   吉川 允二       ITER理事会共同議長


ITER計画懇談会審議経過


参考資料2

核融合エネルギーの研究状況

文部科学省研究開発局
核融合開発室

 1932年、英国のコッククロフト、ウォールトンによるリチウム-水素の核反応実験によって初めて核融合反応に伴い膨大なエネルギー(核融合エネルギー)が放出されることが発見された。その後、ワイゼッカーとベーテにより太陽(星)の中で生まれるエネルギーは水素の核融合反応によるものであることが理論的に示され、第2次大戦以降、人工太陽を地上に作ろうという核融合反応を用いたエネルギー源の開発研究が米国、旧ソ連、英国で開始され、その後先進各国で行われるに至った。
 我が国においても、日本原子力研究所、国立試験研究機関、大学、核融合科学研究所(大学共同利用機関)などにおいて各種研究が行われてきている。
 核融合研究は、磁場閉じ込め核融合研究(以下、磁場核融合という。)と慣性核融合研究とに大きく分類される(別紙1参照)。磁場核融合は、磁場を利用して高温プラズマを安定に閉じ込め、そのプラズマに核融合反応を起こさせようとするものである。一方、慣性核融合は、強力なパルスレーザーを照射して、球殻状の燃料を超高密度に圧縮加熱し、瞬間的に核融合を起こさせるものである。以下に、それぞれの研究の現状と課題を簡単に紹介する。

1.磁場核融合研究の状況

 磁場を用いてプラズマを閉じ込めるにあたり、閉じ込め磁場の形状は別紙1に示すようにドーナツ状の磁場を用いるトーラス磁場方式とミラー磁場方式とに分類される。トーラス磁場では、ドーナツ状に沿った磁力線を捻ることが必要となるがその捻りの作り方によってさらにトカマク方式、ヘリカル方式、逆磁場ピンチ方式等に分類される。

(1)トカマク方式
 トカマクは、1950年頃に旧ソ連で考案された方式であり、トーラスに沿ったトロイダル磁場とプラズマ中をトーラス方向に流れる電流が作る磁場で軸対称のプラズマを閉じ込める方式である。当初は、専ら旧ソ連で研究されていたが、1968年にT-3トカマクが他の方式の成果を大幅に上回る性能を有することが英国の研究チームによって確認されるに至って世界的に注目され、米国、欧州、日本などでも研究されることとなった。
 我が国においては、プラズマの安定な閉じ込めを目標として、原子力委員会の策定した第一段階核融合研究開発基本計画の遂行にあたり、中核装置としてトカマク型装置が選択され、JFT-2が設置された。JFT-2では、当時世界最高の閉じ込め時間の達成や世界初の高周波による電流駆動等の成果をあげた。
 その結果を踏まえ、臨界プラズマ条件の達成を目標とした第二段階の核融合研究開発基本計画の遂行においても、トカマク型装置による臨界プラズマ条件の達成を目指すことを中核の計画とした。米、欧、露においてもトカマク型装置を建設し、臨界プラズマ条件の実現を目指す計画がほぼ並行して進められるようになった。
 特に、三大トカマク装置と呼ばれる我が国のJT-60(1985年完成)、EUのJET(1983年完成)、米国のTFTR(1982年完成)が建設され、実験が進められ、閉じ込め性能の向上、電流駆動やダイバータ研究、各種のプラズマ現象の解明などが進み、炉心プラズマ物理の研究が飛躍的に進展した。これらトカマク装置で得られた主な成果としては、イオン温度5.2億度、閉じ込め時間1.2秒、数多くの改善閉じ込めモードの発見、高周波による駆動電流360万アンペア、高自発電流率(70~80%)高性能完全電流駆動プラズマの実証、負イオンNBIによる加熱・電流駆動の実証、ダイバータによる熱・粒子制御の実証などがある。また、定常化については九州大学の超伝導装置TRIAM-1Mにて、高周波による2時間の定常電流駆動が実現されている。これらの結果、核融合炉の運転に必要なデータベース及びプラズマの制御方法が確立された。また加熱技術の耐高熱負荷材料等の工学技術開発も大きく進展し、第二段階基本計画の目標であった臨界プラズマ条件*1) をJT-60とJETで達成した。また、TFTRやJETでは、実際の核融合炉用燃料となる重水素-トリチウム(三重水素)を使った実験が行われ、1600万ワットというエネルギーの発生を実証するなど、他の閉じ込め方式による研究に比べ飛躍的に進展した成果をあげることとなった(別紙2及び別紙3参照)。
 これらの物理研究を通じて蓄積された炉心プラズマ研究成果、炉心プラズマデータなどを基に比例則が導かれ、また、大型装置の建設を通じて蓄積された技術的知見を踏まえ、物理的にも工学的にも臨界プラズマ条件の次段階である自己点火条件*2) の達成を見通せる段階に至った。
 我が国においても、第三段階の核融合研究開発基本計画が策定され、自己点火条件(エネルギー増倍率が20程度)の達成及び長時間燃焼の実現などを目指して、良好な成果と豊富なデータを有するトカマク方式による実験炉開発の推進が決定した。また、その時点で、その他の核融合炉研究については、トカマク方式を相補する役割を果たすとともに、引き続きそれぞれの方式の優位性の可能性を探る研究開発を行うこととなった。
 こうした状況を背景として、日、EU、米、ロシアの4極の国際協力の下に、核融合エネルギーの科学的・技術的な実現可能性を実証するためにトカマク方式による国際熱核融合実験炉(ITER)計画が進められることとなった。
 ITER計画は、①実際の核融合燃料を用いた制御された点火と、最終的には定常状態を目標とする長時間燃焼の実証、②核融合炉に必要な技術を総合システムで実証、③核融合エネルギーの実用化のために必要な機器の総合試験、を通じて核融合エネルギーの技術的可能性を実証することを計画的な目的として定めた。概念設計活動(CDA)に引き続いて、1992年からは機器の詳細な設計や工学技術に係る研究開発を行い、建設に必要な主要な技術情報を整えることを目的とした工学設計活動(EDA)を実施している。EDAは当初6年間の予定で実施されたが、参加極が建設の判断を行うには至らず3年間の延長を行い設計の見直しを行っている。そこではトカマク研究の進展を踏まえて、計画目標を保ったまま技術目標の見直しを行い、無限大から有限値のエネルギー増倍率の実現を目指す選択に重点を移すことによって大幅なコスト低減を図っている。2001年2月には当初設計に対してコストを約50%まで低減した最終設計報告書案がとりまとめられた。ITER計画では、建設に約10年、運転に約20年を見込んでいる。ITER以降の計画としては、ITERの建設、運転結果を踏まえて核融合によるプラント規模での定常発電を実証する段階(原型炉)に進むことになる。
  なお、ITERに関しては、比較的中性子の積算発生量が少ないため、実験炉容器等の材料としては十分な実績を有し、中性子照射データが他に比べて十分蓄積されているオーステナイトステンレス鋼が選定されている。ITER以降の核融合発電プラント等では、さらに中性子の積算発生量が多くなることから、1000~1500万ワット年/平方メートル*3) の中性子照射に耐え、かつ放射化の少ない新材料の利用が必要である。このような低放射化材料の開発には長い期間が必要となるため、ITERの開発と並行した開発が急務となっている。

(2)ヘリカル方式
 ヘリカル方式は、トーラス状の容器に沿ってらせん状に巻き付けたコイル(ヘリカルコイル)によってできる非軸対称のらせん磁場によってプラズマを閉じ込める方式である。ヘリカル型装置による研究は、1950年代初頭に米国プリンストン大学でステラレータ研究がはじめられ、我が国においては、1960年代初頭に京都大学で独自のアイデアによるヘリオトロン研究がはじめられ、現在核融合科学研究所等に引き継がれて研究が行われている。
 ヘリカル方式は、プラズマの閉じ込めにプラズマ電流を必要としないため、電流破壊不安定が起こらないこと、外部電流駆動源が不要であること、さらには還流するエネルギーが少なく効率的であること、定常運転が容易であることを特長としており、経済性の高い炉形式になる可能性を有している。
 平成10年より、世界最大の超伝導コイルを有し、日本独自のヘリオトロン方式である大型ヘリカル装置実験が開始され、これにより、イオン温度4100万度、電子温度5000万度、エネルギー閉じ込め時間0.3秒を達成している。閉じ込め性能はトカマクにおける閉じ込め改善(H)モードと同等であることが示された。核融合プラズマの総合性能を示す核融合積は現在2.3億度・秒・兆個/cm3であるが、これらの性能が1分を超える長時間保持においても劣化せず、定常運転への容易な伸張を展望できることを示している。加熱パワー及びダイバータ排気の整備を進めており、まもなく大型トカマクと比肩できる領域に手が届くようになっている。なお、ドイツにおいてもLHDとほぼ同規模かつ超伝導コイルを備えたW7-Xが建設中である。
 また、中規模のヘリカル装置として京都大学にヘリオトロンJが建設され、新しいヘリカル軸配位の実験が始まっている。

(3)逆磁場ピンチ方式
 逆磁場ピンチ方式は、トカマク方式同様にプラズマ電流を発生して閉じ込める方式で、プラズマ電流の立ち上げ時に、トロイダル磁場の向きを反転させることによって、プラズマの中心部と周辺で磁場の向きを反転させ、プラズマ自身に安定な閉じ込め配位を自立的に形成させるところが異なる。
 この方式では、強力なトロイダル磁場を必要としないため、装置の構造を単純化でき、原理的にプラズマ電流を大きくすることが可能であり、その結果として閉じ込め性能の向上、外部からの追加熱装置が不要になるなどの可能性も有する。現在、プラズマの閉じ込めを維持するための技術開発等が課題となっている。
 我が国においては、電子技術総合研究所(4月1日からは産業技術総合研究所)を中心として研究が行われており、これまでに、イオン温度800万度の達成、電子温度1000万度の達成、改良閉じ込めモードの確認、プラズマ-容器壁相互作用を制御するダイバータ配位の最適化などの成果をあげている。しかしながら、現状の逆磁場ピンチ装置は、トカマク装置と比べて規模も小さく、トカマク方式の成果と大きな隔たりがある。なお、臨界プラズマ領域と小型装置の実験領域との中間的なパラメータの実現を目指した次段階高性能装置TPE-RXが1998年末完成している。

(4)ミラー方式
 ミラー方式は、他の方式と異なり直線系で、プラズマ閉じ込め領域の両端部の磁場を強くすることにより、端部からのプラズマ粒子の漏れを軽減する方式であり、装置構造が単純、取扱が容易という特徴を有する。
 しかしながら、端からの粒子の漏れが大きく、エネルギー回収効率が極めて悪いため、1970年代末に、ミラー磁場の両端部にコイルを追加して正負の電位を作り、両端において粒子を電気的に跳ね返して閉じ込めるタンデムミラー(複合ミラー)方式が提案されている。
 この方式は、磁力線に垂直な方向の閉じ込めには磁場を用い、磁力線に沿った方向の閉じ込めは電場の効果で行うという、磁場と電場の双方を用いた閉じ込め方式である。
 最近の研究は、タンデムミラー方式が主体で、筑波大学が中心になって行われており、筑波大学のGAMMA10装置は、世界最大のタンデムミラーで、ミラー端部に千ボルトを越える電位を形成し、1億度以上のイオン温度を達成して熱核融合中性子を観測している。また、ほぼ一様な閉じ込め領域の磁場や装置への良好なアクセス性を活かして高温プラズマの物理の解明や計測技術の開発にも貢献している。さらに高い閉じ込め電位の形成とそれによる高密度プラズマの達成及び電子に関するエネルギー閉じ込め性能の改善等が今後の課題となっている。

(5)その他(球状トーラス方式等)
 近年トカマクのアスペクト比を小さくした球状トーラス方式の研究が進展しており、コンパクトな高温プラズマの閉じ込めが期待できることから、基礎的な研究や装置の大型化が進められている。

2.慣性核融合研究の状況
(1)レーザー核融合
 レーザー核融合は、強力なレーザー光を球殻状の燃料ペレット表面に照射し、表面で発生するプラズマの圧力で固体密度の千倍程度にこれを爆縮して、瞬時に核融合反応を起こさせる方式である。
 このレーザー核融合ではプラズマ閉じ込め用の磁場が不要で、また不純物の問題もないので超高真空技術が不要となるため、この観点からは炉を作りやすいといえる。しかし、レーザー効率が炉としての効率に大きく影響するため、レーザー効率の向上を図ること、1秒間に数回の割合で燃料ペレットを炉に供給し、これに高出力レーザーを照射する技術等が技術的開発課題である。
 我が国においては、大阪大学を中心として研究が進められており、激光ⅩⅡ号による炉心プラズマ発生研究では、1億度以上の高温発生と固体密度の600倍以上の超高密度圧縮が実証され、現在自己点火への実証へ向けて点火等価プラズマの発生のための研究が行われるとともに、新しい点火方式として、最近新しく開発された超高強度レーザーで強制的に爆縮プラズマに点火する「高速点火」の研究が進められており、これにより、より小規模の核融合炉が実現されるものと期待され、注目を集めている。また最近、実用炉に必要なレーザー効率を持つ半導体レーザー励起の固体レーザーが発明され、産業応用との連携で研究開発が進められている。
 なお、米国においては、大型の点火施設(National Ignition Facility:NIF)が建設中であり、2010年頃までにレーザー核融合の点火・燃焼を実証する計画となっている。また、ロチェスター大学では出力30kJの紫外レーザーで投入レーザーエネルギーの2%の核融合出力が得られている。さらにフランスでも米国の点火・燃焼実験計画と同様の計画(Laser Mega-Jule:LMJ)が進められている。
 
(2)重イオン核融合
 レーザーの代わりにビスマス等の重イオンビームを利用して燃料ペレットを爆縮する方式も考えられており、米国等ではそのための重イオンビーム発生装置の開発研究等も進められている。我が国では理化学研究所等の加速器を用いた基礎研究が開始されている。

 

※1)臨界プラズマ条件:核融合反応を起こすために外部から入れたパワーと重水素・三重水素燃料を用いた場合に核融合反応により発生するパワーとが等しくなるプラズマ条件

※2)自己点火条件:外部からのパワーの注入よりも重水素と三重水素とが核融合反応して発生するパワーが十分に大きくなる条件

※3)単位面積当たりのプラズマに面する壁に100万ワットの負荷(中性子壁負荷)が1年間入射し続けた時に相当する中性子の照射量(MWa/m






















































参考資料25

 

ITER施設の 安全確保の基本的な考え方について

 

平成12年7月

 

(注)本資料は、科学技術庁において作成され、ITER計画懇談会に安全性に関する国の検討状況を紹介するために提出されたものです。
(内閣府政策統括官(科学技術政策担当)付参事官(原子力担当))

1.はじめに

 科学技術庁では、国際熱核融合実験炉(ITER)の安全規制に関して、ITERの基本的特性を踏まえた安全確保の考え方及び当面設計に反映すべき事項の策定を目的として原子炉安全技術顧問の会合を開催した。
 同顧問の会合では、ITERの概要設計報告書に基づいて、ITER施設に特有な安全上の特徴、安全上の要件、事故の評価等について検討し、ITER施設の安全を確保する上での基本的な考え方について議論され、本報告書はその結果について取りまとめたものである。
 本報告書では、検討の対象としたITER施設の概要及び安全確保の目標、安全確保の原則、安全設計の基本的な方針、免震構造により耐震安全性の確保を図る考え方を示した。これらは、いずれもITER施設に特有な放射線安全に関する検討に基づくものであり、労働安全衛生法、消防法等の放射線安全以外の事項については、別途既存の法令、基準等で対応を図ることとする。
 また、ITER施設は、プラズマを閉じ込めるため強力な磁場を発生することから、磁場の影響についても、電磁場の安全性に係る国際的な勧告等を踏まえ、適切に対応することとする。
 なお、本顧問会で議論がなされたもののうち今後の対応が必要とされた項目を「今後の課題」として整理し、報告書中に取りまとめた。

2.ITER施設の概要
2.1 ITER施設の目的と主たる構成機器
 ITER施設は、平和利用を目的とした核融合エネルギーの科学的・技術的実現性を実証する試験装置であり、重水素とトリチウムのプラズマによる高出力長時間燃焼(最終的には定常運転)の実現を目指すとともに、ブランケット及びダイバータ等の炉工学試験を実施することとしている。
 このため、約500MWの核融合出力を約400秒間持続する運転を標準(運転モードを参考として別図-1に示す)として、種々の性能試験を計画している。
 炉工学試験では、最初にしゃへい用のブランケットを装着し、その後トリチウムの増殖を行うブランケットに変更する段階的な試験を計画している。
 上記の目的及びトリチウム等の放射性物質に対する安全性を考慮したITER施設は、トカマク施設、トカマク付帯施設、燃料処理貯蔵施設、放射性気体、固体及び液体の廃棄物処理施設、冷却系統施設、計測制御系統施設、放射線管理施設、電気系統施設、建物・構築物等で構成する。これらのうち、安全確保の考え方を検討する上で主要な施設は、以下の通りである。

 (1) トカマク施設(プラズマの形成・維持)

真空容器:トーラス形状の容器で、プラズマの形成・維持のため高真空の維持等を行い、内部にトリチウム及び放射化生成物等を内蔵する。
ブランケット及びダイバータ:真空容器の内部に配置されるモジュール式の機器であり、しゃへい及び不純物の制御等の機能を有する試験機器として交換を計画している。
超伝導コイル:真空容器の周囲に配置され、プラズマの閉じ込め磁場を形成するトロイダル磁場(TF)コイル、プラズマ電流の立ち上げ・維持を行う中心ソレノイド(CS)コイル、及びプラズマの位置・形状を制御するポロイダル磁場(PF)コイルがある。
トーラス真空排気系:真空容器のポートに取り付けられる真空排気ポンプで、不純物ガス及び未燃焼の燃料ガス(重水素、トリチウム)を排気し、プラズマの純度を維持する。
燃料注入設備:真空容器のポートを介してプラズマに燃料ガスを供給する。
追加熱設備:真空容器のポートを介してプラズマの加熱及びプラズマ電流の駆動を行う。

 (2) 燃料処理貯蔵施設(水素同位体の精製・回収、分離・貯蔵及び分配)

精製回収系:トーラス真空排気系の排気ガスから水素同位体ガスを精製・回収する。
水素同位体分離系:精製・回収した水素同位体ガスから燃料ガスを濃縮・分離する。
燃料貯蔵分配系:燃料ガスを貯蔵し、燃料注入設備に分配する。

 (3) 放射性気体廃棄物処理施設(建家内の雰囲気中の放射性物質の除去・低減)

通常換気系:平常時の建家内雰囲気温度の調整及び給排気による空気流を調整することで清浄区域への汚染の拡がりを防止する。
通常雰囲気浄化系:主に保守時にグローブボックス等の内部の漏洩トリチウム等を循環運転により除去・低減する。処理した雰囲気の一部を排出ガス処理系に送ることによりグローブボックス内を負圧に維持し、グローブボックス外側の部屋等への汚染の拡がりを防止する。
非常用雰囲気浄化系:事故時に区画等に放出される放射性物質を循環運転により除去・低減する。処理した雰囲気の一部を排出ガス処理系に送ることにより区画内を負圧に維持する。
排出ガス処理系:平常時においては通常雰囲気浄化系からの排出ガスを受け入れ、また、事故時においては非常用雰囲気浄化系からの排出ガスを受け入れ、これらの排出ガス中の放射性物質を除去・低減し、区画等の負圧を維持する。

 (4) 建物・構築物

トカマク建家:トカマク施設、燃料処理貯蔵施設等を収納する建家で、事故時に放出される放射性物質を隔離するトカマクピット区画、トリチウム区画等を備える。
排気筒:区画等の内部の雰囲気を排出する。

2.2 安全上の特徴
 (1) 内蔵する放射性物質とその影響
 通常運転時のITER施設における可動性放射性物質としては、トリチウム及び放射化ダストが主たるものである。ITER概要設計報告書によれば、施設内のトリチウム保有量は約2.8 kg(約1018Bq)と評価され、そのうち、約1.2 kgが真空容器内(主に、ブランケット、ダイバータ等の機器に吸着)に、また残りは燃料処理貯蔵施設の各機器に分散して存在する(施設内のトリチウム保有量を参考として別図-2に示すが、これらの値は、今後の設計の進捗により増減されることが想定される)。
 また、放射化ダストについては、プラズマに対向する壁面での浸食作用により生成するが、これまでの実験結果等を踏まえ、管理上、タングステンダストが100 kg、ベリリウムダストが100 kg、炭素繊維複合材のダストが200 kgを上限として存在するとしている。これらのうち、タングステンダストは、体外被ばくのソースタームとして、約1016MeV・Bq(タングステンダスト100 kg中の核種の実効エネルギーと放射能の積の合計)と評価される。
 100m高さの排気筒からの全量放出を仮定して、これらの可動性放射性物質がもたらす内部及び外部被ばくによる実効線量当量を評価すると、内部被ばく主体のトリチウム1.2kg(4x1017Bq)は数十mSvに、被ばく形態が内部及び外部被ばくとなるタングステンダスト100kgは例えば事故後1週間までのグランドシャインによる線量当量も考慮した場合にトリチウムと同レベルの線量となる(これ以外のダストの影響は、タングステンダストに比べて十分に小さい)。
 これより、ITER施設は、放射性物質を内蔵する機器等から放射性物質が異常に放出される事故時の公衆の放射線被ばくを十分に低く抑えるために、放出放射性物質を除去・低減する施設(影響緩和施設)を備える必要がある。

 (2) 影響緩和施設(コンファイメント施設)
 コンファインメント施設は、以下の機能を有する非常用雰囲気浄化系、コンファインメント区画、排出ガス処理系、排気筒等で構成され、想定する事故時に公衆の放射線被ばくを十分低く抑え、事故の影響緩和を図るものとしている。
非常用雰囲気浄化系:放射性物質を内蔵する機器等からコンファインメント区画内に放出された放射性物質を除去・低減する。
コンファイメント区画:放出放射性物質による汚染を限定された領域内に留めるために、建家内に設定する区画である。
排出ガス処理系:コンファインメント区画内に放出された放射性物質を除去・低減するとともに、通常の建家の漏洩率を考慮し、コンファインメント区画の内部雰囲気を負圧に維持し、放射性物質の放出経路を排気筒に限定する。
排気筒:コンファインメント区画内の雰囲気を排出する。

 (3) 放射性物質を内蔵する機器等に作用するエネルギーと考慮すべき荷重
 ITER施設において、放射性物質を内蔵する機器等のうち、真空容器、燃料処理貯蔵施設、並びにブランケット及びダイバータ一次冷却系には、核融合反応等に伴う熱及び磁気エネルギー、並びに冷却水及び液体水素同位体の内部エネルギー等が作用する。これらの機器に作用するエネルギー及び考慮すべき荷重は、表1のように整理される。

表1 放射性物質を内蔵する機器に作用するエネルギーと考慮すべき荷重
放射性物質を内蔵する
主要な機器等
作用するエネルギー考慮すべき荷重
真空容器
  • 核融合出力(約500MW)
  • プラズマが保有する熱エネルギー(約400MJ)
  • プラズマに入射するエネルギー(約50MW)
核融合出力の増大(熱源異常)による熱負荷
通常熱除去機能の喪失による熱負荷及び電磁力
放射化に伴う崩壊熱 (最大0.5MW/m3 通常熱除去機能の喪失による崩壊熱による熱負荷
冷却水の内部エネルギー 真空容器内での試験機器損傷に伴う冷却水放出等による過圧
プラズマの保有する磁気エネルギー(約300MJ) ディスラプションによる熱負荷及び電磁力
超伝導コイル系中の磁気エネルギー(約50GJ) 超伝導コイルの短絡等による超伝導コイルの変形
燃料処理貯蔵施設 液体水素同位体の内部エネルギー 冷凍機能の低下による過圧
ブランケット及びダイバータ一次冷却系 冷却水の内部エネルギー 冷却系の圧力制御の故障等による過圧

(4) ITER施設の安全上の特徴
 ITER施設の安全上の特徴は、表2に要約される。これらの特徴を踏まえれば、放射性物質を内蔵する機器等の健全性を確保するために、表1に示した考慮すべき荷重のうち過圧荷重による機器破損の発生を防止する対策を講じることが必要となる(別図-3に、圧力逃がし機構を備えた場合の代表的な事象のシーケンスを示す)。

表2 ITER施設の安全上の特徴
核融合反応に備わる固有の特徴
  • 核的暴走がない
  • プラズマの圧力限界、密度限界による反応終息性
  • 不純物等の混入に対する反応終息性
ITER装置条件下で固有の特徴
  • 崩壊熱密度が小さい
ITERの本来機能確保により得られる特徴
  • 真空容器等の気密性が高い
  • 電磁力に対する真空容器の構造強度の確保
  • 電磁力に対する超伝導コイルの構造強度の確保
安全機能を確保するために設計対応を要する特徴
  • 放射性物質を内蔵する特定の機器が過圧される可能性がある

3.安全確保の基本的な考え方

 第2章のITER施設の概要に基づき、安全確保のための基本的な考え方を以下に定める。
 なお、今回検討対象とした範囲がITER概要設計報告書であること、また、ITER施設が核融合の研究・開発のための試験装置であることに鑑み、今後、研究開発の進捗及び技術的な改良により設計が本報告書の内容と合致しなくなっても、この考え方により本報告書の内容と同等又は同等以上の安全性が確保されると判断される場合には、この考え方を適用してさしつかえない。

3.1 安全確保の目標
 ITER施設は、トリチウム等の放射性物質を取り扱うことから、「公衆及び放射線業務従事者(以下、従事者)にこれらによる放射線障害を及ぼすおそれがないように措置を講ずる(施設を設計、製作し、維持)」ことを安全確保の目標とする。

3.2 安全確保の原則
 安全確保の目標を満足するよう、平常時にあってはALARAの精神に則り放射線障害の防止に努めること。また、事故の発生を防止する措置を講じるとともに、深層防護の原則に従い事故の発生を仮定し、その影響を緩和できる措置を講じること。
 この措置を講じるにあたっては、固有の反応終息性やハザードポテンシャル等のITER施設の安全上の特徴を考慮し、以下の考え方によること。

平常時において、環境中への放出放射性物質及び施設から直接放出される放射線による公衆の実効線量当量が、国の定める法的限度を超えないように施策することはもとより、ALARAの精神に従い、これらに起因する公衆の実効線量当量を合理的に達成できる限り低減すること。
 また、従事者の実効線量当量については、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に従い、年間20mSvを超えないよう施策すること。
事故の発生を防止するため、放射性物質を内蔵する機器等については、十分な構造強度を確保、維持するとともに、必要に応じて圧力逃がし機構を設けること。

 また、放射性物質の異常な放出を伴うような事故時においても、公衆に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれがないよう、コンファインメント施設を設けて放出放射性物質の環境への異常な放出を防止すること。

3.3 安全設計の基本的な方針
 安全確保の原則に従い、以下を安全設計の基本的な方針とする。

(1) 平常時における放射線防護
 平常時における公衆及び従事者に対する放射線防護のため、施設には放射線しゃへい、換気、並びに適切な浄化・希釈性能を有する排気設備及び排水設備を備えるとともに、トリチウム等の放射性物質を内蔵する機器等の使用・環境上の条件を考慮して、それらからの漏洩を制限する。
 また、放射線管理及び防護活動のための適切な施設並びに器材を備えること。

 この基本方針に基づき、安全設計において以下を考慮すること。

施設で発生する放射線に対して、適切な放射線しゃへいを備え、作業区域及び敷地周辺での放射線量率を適切に低減する設計であること。
放射性物質を内蔵する機器等からの放射性物質の漏洩防止、放射性物質による汚染の拡大の防止、作業雰囲気中の放射性物質濃度、周辺環境への放射性物質の放出量及び周辺環境での放射性物質濃度の低減を図る設計であること。
従事者に対して適切な放射線管理を実施するため、被ばく線量、汚染状況等の監視、除染等のための放射線管理施設を備えること。これらは、必要に応じ遠隔での操作が可能な設計であること。なお、トリチウムに対する放射線管理は、トリチウムプロセス研究棟等の既存の施設における実績を参考にすること。

 ITER施設で講じた施策により、公衆に放射線障害を及ぼすおそれがないことを確認するために、以下の評価を行うこと。
 公衆への放射線被ばくを合理的に達成できる限り低く維持する設備の性能の妥当性を確認するため、排気・排水に伴う放射性物質の放出に起因する年間実効線量当量及び施設から放出される放射線(直接放射線及びスカイシャイン放射線)による年間の線量がALARAの精神に基づき設定した目標(年100 μSv)を満たすことを評価すること。
 なお、排気・排水に伴う放射性物質の放出に起因する年間実効線量当量の評価に際しては、通常運転時及び保守・補修に伴い放出する全ての放射性核種及び放出経路を考慮すること。

(2) 事故の発生防止
 放射性物質を内蔵する機器等にあっては、2.2節に示したエネルギー、使用・環境上の条件及び真空容器内の試験機器の試験条件を考慮して、その構造的健全性を確保するとともに、内蔵される放射性物質が機器等の外部に異常に放出することを防止すること。
 また、ディスラプションによる荷重は、その発生頻度に応じ設計条件として考慮すること。
 なお、放射性物質を内蔵する機器等の設計、製作及び検査については、それらの構造強度を確保する上で適切と認められる規格・基準等によること。

 この基本方針に基づき、安全設計において以下を考慮すること。

放射性物質を内蔵する機器等の材料の選定、設計、製作及び検査は、適切と認められる規格・基準等に従い行うこと。
放射性物質を内蔵する機器等は、適切な耐震性を確保するとともに、試験機器の使用条件等を考慮し、想定される荷重に対してもその構造健全性を維持できる設計であること。
 なお、構造健全性を維持するために、必要に応じて圧力逃がし機構を設けること。圧力逃がし機構は、放射性物質を内蔵する機器等の過圧時に確実に動作し、異常な過圧を適切に防止できること。このため、動的機器については多重性を有する設計であること。
プラズマに面する壁(対向壁)の温度上昇に伴う放射性物質の放出を低減する観点から、必要に応じて対向壁の温度を制限できる設計とすること。
放射性物質を内蔵する機器等を構成する機器の構造健全性維持を確認できるよう、試験・検査が可能な設計であること。

(3) 事故の影響の緩和(コンファインメント施設)
 放射性物質の異常な放出を伴うような事故を仮定しても、放出放射性物質の環境への異常な放出を防止できるよう、コンファインメント施設を設けること。コンファインメント施設は、放射性物質を内蔵する機器等の破損等により放射性物質が機器等の外部に放出した場合に、当該機器を取り囲む区画(コンファインメント区画)を周囲から適切に隔離し、この区画内を負圧に維持するとともに、区画内の雰囲気を浄化し、環境への放出経路を排気筒に限定することにより、公衆に過度な放射線被ばくをもたらすおそれを十分小さくできる設計であること。

 この基本方針に基づき、安全設計において以下を考慮すること。

コンファインメント施設は、放射性物質の放出に伴い流出する流体等の条件を考慮し、必要な放射性物質の除去機能を確保できる設計であること。
コンファインメント施設は、事故時において、商用電源の利用を期待しえない場合においても、その機能及び性能が損なわれないよう、非常用電源設備からの給電が可能な設計であること。
コンファインメント施設は、事故時において、コンファインメント区画内の負圧を可能な限り確保し、放射性物質の放出経路を制限できる設計であること。
コンファインメント施設は、想定すべき地震力と事故の組み合わせに対しても放射性物質の除去機能が損なわれないよう、十分な耐震性を確保した設計であること。
コンファインメント施設は、動的機器の多重化を図り、起動失敗等の故障を仮定しても、放射性物質の除去機能が損なわれない設計であること。
コンファインメント施設は、事故の状況を把握するために必要な情報を監視できる事故時監視計装設備を有する設計であること。

 ITER施設で講じた施策の妥当性を確認するために、以下の評価を行うこと。
 技術的見地からみて放射性物質の放出が最大となる事故を放出経路毎に想定し、深層防護の観点から事故時の影響緩和機能を担うコンファインメント施設の性能の妥当性を確認すること。判断基準としては、公衆の実効線量当量として5mSv(ICRPの補助的線量限度に準拠)を用いること。
 事故の代表的な事象については、内蔵する放射性物質の量及びその放出の駆動力を考慮して選定すること。
 影響評価に当たっては、試験機器の使用条件、化学反応、放出放射性物質の形態・性状、放出経路・移行率、除去系の性能、拡散条件等を十分に検討し、妥当な保守性を加味した解析条件とするとともに、動的機器の故障の仮定、商用電源が利用できない場合等も考慮すること。
 また、漏洩トリチウム等による火災・爆発の可能性についても併せて評価すること。
 なお、公衆の放射線被ばくの評価にあたっては、必要に応じ直接放射線及びスカイシャイン放射線による線量を加算すること。

 想定する事故及びその影響評価にあたっては、以下に留意すること。

ブランケット及びダイバータ等のプラズマに対向する機器では、温度上昇に伴う水蒸気等との化学反応或いは放射化した対向材料の昇華等の影響について、局所的な温度上昇に伴う影響も含めて十分に考慮すること。
影響評価に用いるトリチウム、放射化ダスト等の放射性物質の量は、試験装置としての運転上の柔軟性を確保するため保守的な値とすること。
影響評価にあたっては、ITER施設の安全上の特徴を踏まえ、安全確保を目的に設置する施設以外の施設であっても、その施設の信頼性等を考慮した上で、安全機能として取り扱うことも妥当とする。

(4) 立地に対する考慮
 ITER施設の予備的評価によると、技術的見地から想定し得る放射性物質の放出が最大となる事故(設計基準事故)が発生しても、公衆の実効線量当量の最大値は5mSvを超えないという結果が得られている。
 一方、ITER施設は、本格的な長時間DT燃焼を行う初めての試験装置であること、及び内蔵する放射性物質の全量が地上放出すると周辺公衆に過度の放射線被ばくをもたらし得ることに鑑み、設計基準事故を超える放射性物質の放出を工学的観点から仮想し、規制上の観点から、ITER施設と周辺公衆との間の離隔の適否、並びに、敷地外における緊急時計画(防災対策)の必要性の有無を評価することとする。

今後の課題
 設計基準事故を超える事故の想定及びそれに対する公衆の安全確保に係る評価の基準に関しては、以下を参考に、ITER施設の目的、安全上の特徴等を考慮して検討する必要がある。

設計基準事故を超える事故の想定にあたっては、設計基準事故(技術的見地から放射性物質の放出量が最大となる事故)を対象とし、工学的観点からこの事故を上回る放射性物質の放出を仮想すること。
ITER施設と周辺公衆との離隔の適否の評価にあたっては、「原子炉立地審査指針」及び「原子炉立地審査指針を適用する際に必要な暫定的な判断のめやす」の考え方を参考とすること。
敷地外における緊急時計画の要否の評価にあたっては、「原子力施設の防災対策について(昭和55年6月原子力安全委員会決定、平成12年5月29日一部改正)」の附属資料3「EPZについての技術的側面からの検討」の考え方を参考とすること。

(5) 火災に対する考慮
 ITER施設は、火災発生の防止を設計の基本とするが、万一に備え、火災検知及び消火、並びに火災による影響の軽減の方策を適切に組み合わせて、火災によってもITER施設の安全性が確保できるよう設計すること。

 この基本方針に基づき、安全設計において以下を考慮すること。

火災により放射性物質を内蔵する機器等の健全性が損なわれない設計であること。特に、トリチウムを保管・貯蔵する容器等の耐火性及び当該容器等を収納する部屋等の耐火性・不燃性が確保できる設計であること。
万一の事故発生に備え、放射性物質を内蔵する機器等は、隔離弁等により、トリチウム放出(或いは空気の流入)を制限し、かつ、機器等の周囲は必要に応じ不活性化や真空化を図る設計であること。
事故時において、放出するトリチウムを含む水素同位体による火災が万一発生した場合でも、コンファインメント施設の放射性物質の除去機能が損なわれない設計であること。

今後の課題
 真空容器及び燃料処理貯蔵施設等は、万一の事故の場合でも隔離弁あるいは周囲雰囲気の不活性化等により、水素火災を防止することとしているが、局所的な燃焼については、現在十分な情報が得られていないことから、今後、局所的な燃焼に対する考慮を検討する必要がある。

(6) 品質保証に対する考慮
 放射性物質を内蔵する機器等及びコンファインメント施設の所要の信頼性を確保すること。このため、国際協力で進める設計、製作、据え付け等の各段階において、所要の性能を有していることを適切に確認できるよう考慮するとともに、ISO規格等を参考に適切な品質保証活動を実施すること。
 なお、動的機器を海外調達する場合には、我が国特有の条件である耐震性の要求を適切に反映させる必要がある。

今後の課題
 品質保証については、一義的には事業主体の問題であるが、その内容は、国が行う性能確認の内容によっても変わってくる。特に、施設検査で確認できない安全性能がある場合や、工事認可を課す場合には品質保証計画の是認が必要となる。この場合、品質保証活動自体は事業主体の範囲であるが、その活動が適正に行われる組織であることを行政が確認する方向で検討することになろう。

3.4 免震構造により耐震安全性の確保を図る考え方
 ITER施設は、トリチウム等の放射性物質を内蔵するため、地震時に公衆の放射線障害を防止する必要がある。特に、トカマク施設では、動作温度の異なる複数の機器が柔軟な支持構造で支持されるため、放射性物質を内蔵する機器等の耐震性確保の観点から、免震技術を採用し機器相互間の干渉の防止と付加する加速度の軽減を図ることとしている。なお、ITER施設では、一般建家・建築物で実績が多い積層ゴムによる水平免震を適用することとしている。
 免震技術の適用にあたっては、地震時における放射線障害の防止を図るため、以下の基本方針に基づくことが求められる。
 放射性物質を内蔵する機器等は、地震により閉じ込め障壁が破損し内蔵する放射性物質の放出を防止するため、十分な耐震性を有すること。さらに、万一の事故時に稼働するコンファインメント施設については、本施設の機能が必要な期間中に発生が想定される地震に対しても十分な耐震性を確保すること。  
 この基本方針に基づけば、耐震(免震)設計においては以下を考慮することが必要である。

放射性物質を内蔵する機器等やコンファインメント施設等の重要な安全機能を有する施設は、安定な地盤に支持すること。
重要な安全機能を有する施設については、ITER施設における放射線による環境への影響を考慮し、適切な地震力を定めること。
免震設計を行う施設にあっては、免震装置に支持される上部構造は免震機能が発揮されるよう十分な強度・剛性及び耐力を有する構造とすること。この際、免震装置の特性を考慮して、やや長周期領域における地震力の影響を適切に考慮すること。

 また、免震装置は、間接支持構造物とし、上部構造に要求される耐震性に応じ、その健全性を確保できるように設計すること。

今後の課題

コンファインメント施設の機器については、特に、地震時に要求される動的機器の機能の実証に関して、振動試験等の実績を含め、今後検討が必要である。
ITER施設は、安定な地盤に支持することとしているが、安定な地盤に要求される要件については、特にITER施設の立地地点における地盤と免震構造の相互作用と裕度等を適切に考慮し、検討する必要がある。








検討経過

本報告書は、日本、欧州及び露国の3極協力で進めている国際熱核融合実験炉(ITER)の工学設計活動を通して取り纏められた概要設計報告書を踏まえ、日本原子力研究所那珂研究所が作成した「ITER施設の安全設計について」(平成12年5月)に基づき、ITERの安全規制に係る技術的事項の基礎となる安全確保の考え方について検討した結果を取り纏めたものである。
検討の経過において、平成11年10月から科学技術庁原子炉安全技術顧問の会合を計4回開催し、下記に示す当該技術顧問の専門的意見を求めた。

岡  芳明東京大学大学院工学系研究科教授
香山  晃京都大学エネルギー理工学研究所教授
小佐古敏荘東京大学原子力研究総合センター助教授
近藤 駿介東京大学大学院工学系研究科教授
齊藤 正樹東京工業大学原子炉工学研究所助教授
早田 邦久日本原子力研究所東海研究所副所長
西  好一財団法人電力中央研究所我孫子研究所地盤耐震部長
濱田 泰司核融合科学研究所教授
藤田 隆史東京大学生産技術研究所教授
本間 俊充日本原子力研究所東海研究所副主任研究員
宮本 霧子放射線医学総合研究所第4研究グループ主任研究官
山本 一良名古屋大学大学院工学研究科教授
 

○ 主査


参考資料26

核融合エネルギーの実現に向けた総合的な開発戦略について

平成12年5月17日
核融合会議

 核融合は、太陽をはじめとする宇宙の恒星のエネルギー源である。これが実用化された場合には、人類にとって究極的なエネルギー源となり、世界のエネルギー問題の解決に大きく貢献するものと期待されている。この核融合の実用化に向けて、我が国をはじめ世界各国において多くの研究開発が進められてきた。その結果、今後取り組むべき重要課題は、核融合反応により燃焼するプラズマを制御する技術を確立することであるとの認識に至っている。この課題の解決を目的として、国際協力の下で「国際熱核融合実験炉(ITER)」の建設が計画されている。
 原子力委員会ITER計画懇談会は、平成10年3月に取りまとめた「懇談会の論点の整理と今後の課題」において、「我が国がITER計画における実験炉の設置国になることの意義が非常に大きいことを理解した。」としている。同時に、「我が国が、ITER計画における実験炉の建設への移行も含め、設置国に名乗りを挙げるか挙げないかを決断するために明らかにしなければならない課題が示された。」とも述べている。
 本会議は、核融合エネルギーの実現に向けての総合的な開発戦略を検討することを目的として「開発戦略検討分科会」を設置し、ITER計画懇談会により指摘されている課題について検討を行うとともに、同分科会より提出された報告書を踏まえてさらに検討を行った。この結果、同懇談会において、明らかにしなければならない課題として示された「核融合エネルギーの技術的実現性」及び「計画の拡がりあるいは裾野としての基礎研究」に関し、以下のような結論を得た。

1.核融合エネルギーの技術的実現性

 核融合エネルギーの技術的実現性を検討するに当たって、その実現される将来像とそれに至る道筋を明らかにし、技術的実現性を検証する。

(1)核融合エネルギーの将来像
 現在想定されている核融合炉は、重水素とトリチウムの核融合反応で発生する中性子及びアルファ粒子の運動エネルギーをブランケット及びダイバータと呼ばれる機器を通して熱に変換し、この熱を冷却材を媒体にして外部に取り出して利用しようとするものである。
 今後のエネルギー供給源に要求される重要な要件は、①資源が豊富で広く存在すること、②環境に対して出来る限りクリーンであること、③コストが合理的な範囲内にあること、④基幹システムとして十分なエネルギーを安定して供給できること、⑤安全性が高いこと、であろう。核融合システムは、以下に述べるように、資源量、地球温暖化防止への効果、安定供給性、優れた安全性等の特長が認められるので、これらの特長を生かしつつ、技術的成立性と合理的なコストを達成し得る場合には、他のエネルギー供給技術と競合できる有力なエネルギー源として実用化されるものと考える。
 分科会では、現在最も研究開発が進んでいるトカマク方式の核融合炉概念に関して、定量的な評価を行い以下の結論を得ている。
 ①資源量については、燃料となる重水素及びトリチウムの原料であるリチウム、並びに核融合炉に用いられる特殊材料は十分であると見込まれる。②環境影響については、核融合反応によって二酸化炭素を発生させることはなく、プラント製造過程を含めた排出原単位で比較しても化石燃料エネルギー源の数十分の1に止まり、脱炭素化・地球温暖化防止効果が期待される。放射性廃棄物については、高レベル放射性廃棄物の発生がなく、放射線被ばくに関する長期リスクや、処分費用の観点で優位性がある。一方、低レベル放射性廃棄物は、核融合発電炉の廃止措置に伴って現行の軽水炉より多く発生することが予想され、低放射化材料の開発などにより低減化することが望まれる。③コストについては、核融合の実用化時期は経済の時間軸で言えばかなり未来であることからその予測には大きな不確定性があるものの、将来のエネルギー源として競争力を持ちうる範囲内にある。④安定供給性については、設備利用率、出力安定性等のプラント特性から現行の軽水炉に匹敵することが目標となる。⑤安全性については、核融合反応の暴走はなく、放射性物質である燃料のトリチウムをプラント内で数kg保有することが予想されるものの、存在する放射性物質の潜在的放射線リスクは核分裂炉の約1/1000以下である等の特長を有している。

(2)実現に至る道筋
 我が国では、核融合の研究開発を段階的に推進している。これは、設定する目標の妥当性や目標達成に必要な科学技術的見通しを十分に評価してから次の段階に進もうとする方策であり、これにより、長期にわたる大規模システムの開発を、リスクを最小化しつつ着実にすすめることが可能となる。
 これまでは第二段階として、核融合出力が外部からの加熱入力に等しい、いわゆる臨界プラズマ条件領域でのプラズマの発生及び閉じ込め技術の確立を目標として研究開発が行われ、日本原子力研究所のトカマク型装置JT-60によりこの目標を達成している。
 現在は第三段階として、自己点火条件の達成、長時間燃焼の実現、炉工学技術の基礎形成を目標としており、国際協力のもとに実験炉であるITERの建設が計画されている。この計画が成功すれば、核融合炉実現への見通しは大きく開ける。
 しかしながら、第三段階では核融合エネルギーの利用技術が確立したとは言えない。本格的な核融合発電は、次の段階である核融合発電の実証を目標とする原型炉段階ではじめて実現する。ITERによる研究開発とその後の原型炉の建設が順調に進展した場合、数十万~百万kWの発電能力をもつ核融合原型炉による核融合発電の実証が技術的には2040年頃に可能になると推定される。
 これ以降の実用化段階においては、実用化に向けての経済性向上、信頼性向上等を通じて市場参入が図られることにより、核融合発電がエネルギー供給技術として社会にその地位を築くことが期待される。

(3)技術的実現性
 現在の核融合研究開発は、実験炉の建設を行おうとする段階にある。これまで行われてきた研究開発により、ITERの建設及び運転を通じて核融合炉実現に不可欠な燃焼するプラズマの制御技術が十分に実証されると確信している。例えば、ITERの設計においては、これまでに得られているプラズマに関するデータベースをもとに外挿して設計値を設定しているが、この外挿は流体力学などにおける次元解析と同様の手法によっても裏付けられており、ITERの技術目標を十分な確度をもって達成することが可能であると判断される。また、ITERにおいては、強い磁場を定常的に発生するための大型超伝導コイル、大規模なプラズマを1億度まで熱する加熱装置等これまでになかった技術や設備が必要になるが、これらに関する試作開発が着実に進められ、所要の性能が確認されている。
 ITERは、原型炉の技術的見通しをより確実なものとするために必要な研究開発を行う役割をも担っている。このため、現在のITERの設計においては、プラズマのパラメータを様々にかえた運転が可能となるよう柔軟性を持たせてある。また、ITERの建設及び運転を通じてシステム統合化の経験が得られる。このため、ITERを利用した研究開発を行うことによって、原型炉に要求されるプラズマ特性の確認や工学知見の獲得が可能であり、得られた成果は原型炉の設計、建設に利用されることとなる。また、原型炉以降の段階においては、経済的で実用に供しうる核融合発電を目指すことが必要である。このため、ITERを用いて研究を進めていくとともに核融合炉の高度化、高性能化を図る研究を進めていくことが重要である。さらに、放射線の遮蔽、トリチウムの増殖及びエネルギーの熱変換という三つの機能を果たす発電用ブランケットの技術開発を行い、ITERにおいて試験を行うことが必要である。一方、材料については、有力な候補材が既にあるものの、現状では特性に関する知見は十分ではないことから、ITERを利用して材料に関する試験を行うとともに、ITERのみでは原型炉に必要な中性子量が得られないことを踏まえ、材料に関する適切な研究開発計画を進めることが必要である。
 実用化される核融合発電炉の概念においては、現在では達成されていない条件が目標として数多く設定されているが、ITERにおいては、実用化される核融合発電炉の概念を構成する科学的知見や技術の大部分が発電炉に近い規模で実現されることから、大きなステップを超えることとなる。
 従って、核融合の実現性は、ITERの目標が達成され、さらに原型炉の設計に必要とされる研究開発を、ITER計画や他の適切な研究開発を通じて着実に実施することにより、十分見通すことができることとなる。

2.計画の拡がりあるいは裾野としての基礎研究
(1)核融合開発の基礎研究としての側面
 プラズマは原子を構成する原子核と電子がばらばらになった状態であり、固体、液体、気体に次ぐ第四の状態である。身近な炎、蛍光灯をはじめとして、オーロラ、恒星など宇宙自然の大半は、広範な密度、温度のプラズマ状態である。特に核融合に必要とされるプラズマは完全電離した1億度を超える高温である。
 このようなプラズマに関する研究は宇宙物理学や電子工学における研究対象として始められ、力学、電磁気学、流体力学、統計力学、熱力学、相対論等を基盤として研究が進展し、プラズマ物理学として体系化されてきている。
 プラズマは、複雑、多様、かつ非線形的に振る舞う活性な媒質である。特に核融合研究においては、プラズマ中で起こる波の伝播、乱流やカオスの発生、自己組織化などの非線形現象や非平衡輸送現象は重要な現象であり、これらは同時に現代物理学の最先端課題である。また、核融合プラズマの研究は宇宙や自然界に生起されている現象の理解にも重要な学術基盤を与えるものである。
 種々のプラズマ閉じ込め方式の研究はそれ自身、それぞれ核融合概念開発を目途として研究を進めているが、一方でそれぞれのプラズマの持つ特性から抽出される現象の理解はこの複雑な高温プラズマの総合的な理解に大きな寄与をなしている。
 さらに、1億度といった高温のプラズマを制御するための炉工学は、超高温、極低温、超高真空、大電力等といった極限技術を必要とし、また、常に新しい工学領域を開拓してきた。その結果がもたらす波及効果は、半導体産業、電力技術、大型・精密機械加工などの基盤となる一般民生用技術に活用することができ、かつ、加速器技術、超伝導技術、計測診断技術、計算機シミュレーション技術など、他の先端技術開発や基礎科学研究の発展に大いに貢献し得るものである。
 なお、核融合に関しては、ITERのようなトカマク方式以外にヘリカル方式や慣性閉じ込め方式等の研究開発が進められている。ITER計画で行われる研究開発によって得られる成果、即ち燃焼プラズマに関する知見や超伝導技術、ブランケット技術などは、トカマク方式以外の核融合研究にとっても必要とされるものである。
 このように、ITERを中核とする核融合研究開発は広範な学問や技術に支えられており、調和のとれた進展が重要である。

(2)核融合開発の研究者、技術者育成における側面
 我が国では、核融合研究開発に携わる研究者は、全国の大学、核融合科学研究所、日本原子力研究所、電子技術総合研究所や金属材料技術研究所などの国立試験研究機関、企業の研究所等に広く所属し、基礎研究から工学研究、技術開発に至る極めて幅広い研究開発を協力して進めてきた。研究者は、個々がそれぞれの組織に属しており、基本的には組織毎に役割を分担するものの、共同研究や兼職などの枠組みを活用して密接な協力のもとに国際的にも高いレベルの研究を発展させてきた。これらの研究者は、プラズマ・核融合学会、日本原子力学会、日本物理学会、電気学会、機械学会、日本金属学会、レーザー学会、放射線影響学会等において活動している。その数は数千人にのぼり、年齢構成も広い。
 プラズマ・核融合関連の大学院生の人数は、これまで着実に増加してきている。その一方で、核融合界全体の研究者の伸びは、ここ数年僅かであり、鈍化傾向にある。これは、大学や企業における核融合研究者が核融合以外の分野に新たに研究を転換・発展させていることに起因していると思われる。
 プラズマや核融合に関連する多くの学会において講演数が増加している最近の傾向や、核融合プラズマ研究で培われた経験があらたな産業分野を切り拓いている事例は、今後も顕著に現れてくるものと考えられる。核融合界への定着率が伸びていないものの、プラズマ・核融合の潜在的研究者の維持・確保は現時点においてはなされていると考えてよいであろう。また、今後も関連学術分野との人事交流や学術交流・学術発信を盛んに進めることは望まれることであり、核融合界への理解と支援を得ていく上からも重要である。
 しかしながら、ITER計画は、建設に10年、研究開発に20年を要することから、長期にわたって優秀な人材を結集、育成することが必要である。プラズマ研究に必要な人材としては、プラズマについて一定レベルの理解と実験の企画立案能力、または解析能力を有する人材が必要である。また、炉工学分野の人材としては、核融合装置を熟知した高い研究開発能力を持つ人材を、大学や研究機関に確保するのみならず、産業界に多く存在している機械、電気、情報、建築、土木等それぞれの専門的経験を有する人材が必要である。
 我が国は、日本原子力研究所のJT-60や核融合科学研究所のLHDなど、世界でも有数の大型核融合研究装置を建設した経験があり、また、ITER建設に向けての工学設計活動を着実に実施するなど、世界的に見てもポテンシャルが高い。ITERの建設開始に必要な人材は確保されているものの、ITERが運転を開始するのは10年以上後と見込まれており、その時に核融合研究に携わる人材をいかに育成していくかが重要である。今後もJT-60やLHDなどの大型装置や大学等における中小規模の装置により先進的な研究を精力的に推進し、またブランケット試験を中心とした炉工学研究を推進することによって、各研究拠点からの新しい人材の流れが確保出来ると期待され、ITER完成後の研究にも主導的に貢献することができる。
 我が国がITER計画に取り組むためには、日本全体において引き続き研究活動のさらなる発展と活性化を図ることによって人材の確保に務めることが重要である。また、かねてより、大学、研究機関、産業界の連携協力の重要性が指摘されており、これに積極的に対応する動きが見られる。今後ともこのような活動を着実なものとすることによって人材の育成を図ることが必要である。