1.保障措置の強化・効率化の目的
イラクが秘密裏に行っていた核開発計画の発覚を契機に、核物質のみを対象とする従来の保障措置制度の限界が認識され、未申告活動、未申告施設を探知するためにIAEAの機能を強化することとし、従来の保障措置制度の強化・効率化を図るとともに(第1部)、核物質を用いない原子力活動や従来保障措置の対象とされていない原子力活動にも対象を拡大することとし(第2部)、そのためにIAEAに新たな権限を付与することを目的としている。
現行のIAEAの権限内で実施可能な第1部については、1995年6月の理事会で合意された。第2部では、IAEAに新たな権限を付与するための現行保障措置協定への追加議定書のモデルが、昨年5月のIAEA特別理事会で採択されたことから、現在、当該モデル議定書を基に、各国等がIAEAと追加議定書を締結するべく協議を行っている。
(注)「93+2計画」:1993年から2年間で保障措置の強化・効率化のための一連の方策をまとめようとした計画につけられた名称。
2.検討状況
| (1) | 1996年7月に設置された起草委員会において、各国参加の下、協議が開始されて以来、計4回の起草委員会が開催され、モデル議定書の内容について合意。 |
| (2) | 1997年5月15日にはモデル議定書の承認のためIAEA特別理事会が開催され、委員会報告が採択された。 |
| (3) | このモデル議定書に基づき、IAEAと各国との間で個別に議定書の協議が行われている(我が国は、本年3月に第1回目の公式協議を実施)。 |
3.第2部(追加モデル議定書)の主な内容
(1)新規情報提供
@核物質を用いない核燃料サイクル関連研究開発活動に関する情報
国が関係する核物質の転換、濃縮、燃料加工、原子炉、臨界施設、再処理、廃棄物処理関連の研究開発のうち、工程開発、システム開発に関連する研究開発が対象。民間は、濃縮、再処理、廃棄物処理関連のもののみが対象となり、国は、情報提供にあらゆる合理的努力を払う。
ただし、理論研究、基礎研究、同位体利用、医学、水文学、農学、健康及び環境影響、保守改良は含まない
A現行の保障措置の適用対象原子力サイト関連情報
核物質が通常使われている施設の操業活動、サイト内各建屋の利用方法等の一般的説明
B特定の原子力関係資機材の製造組立活動の規模を表す情報
| ・ | 濃縮関連(遠心分離器、拡散膜、レーザーシステム、電磁同位体分離器、イオン交換カラム、空気力学分離用ノズル、ウランプラズマ発生システム) |
| ・ | 燃料加工(ジルカロイ管) |
| ・ | 原子炉(重水、原子炉級黒鉛、照射済燃料用フラスコ、原子炉制御棒) |
| ・ | 再処理(臨界安全タンク及び貯槽、照射済燃料剪断機、ホットセル) |
| ・ | 炉及びその関連機器、原子炉用非核物質、照射済燃料用の再処理用のプラント、燃料体の加工プラント、ウラン同位体の分離プラント 等 (輸入情報はIAEAから要求があった場合に提供) |
| ・ | 鉱山、製錬施設の所在地、操業状況 |
| ・ | 現行の保障措置対象以前の一定量以上の核物質、その輸出入 |
| ・ | 非原子力目的に利用するため現行の保障措置を免除された一定量以上の核物質 |
| ・ | 回収不可能となり現行の保障措置が終了した核物質 |
(2)補完的立入
(一般規定)
| ・ | IAEAは、申告された情報を基に立入を行う権利を有するが、機械的、系統的に検認するための立入は行わない。 |
| ・ | IAEAは、未申告核物質及び未申告活動がないことの確認、又は情報解析の結果生じた疑義、不一致の解消を目的に、立ち入る権利を有する。 |
| ・ | 立入は、勤務時間内に行われ、国の査察官を立ち会わせることができる。 |
| ・ | IAEAは、立入に当たっては、国に対し文書による事前の通知をし、立入理由を明らかにする必要がある。特に、立入の原因が情報の疑義、不一致の場合には、IAEAは国に対し、疑義や不一致の内容確認や、それを解消するための機会を提供する。 |
| ・ | 事前の通知は、原則として原子力サイト内は少なくとも2時間前、それ以外は少なくとも24時間前とする。 |
| ・ | IAEAは、立入を行った結果を国に報告する。 |
(具体的な内容)
| @ | 現行の保障措置の適用対象施設のある原子力サイト内の、核物質を扱わない場所への立入(3.(1).A) 本立入は、未申告の核物質や活動がないことを確認するために、従来の査察に合わせて行われる。事前の通知は原則少なくとも2時間前、特に緊急を要する場合には2時間以内の通知で行われる。 |
| A | 現行の保障措置の適用対象外の原子力サイトへの立入(3.(1).D) 本立入は、未申告の核物質や活動がないことを確認するために行われる。事前の通知は少なくとも24時間前に行われる。 |
| B | 核物質の存在しない原子力サイト外の場所への立入 (3.(1).の@.B.C.F) 本立入は、情報の不一致、疑義が発生した場合にその解決のために行われる。事前通知は、少なくとも24時間前に行われ、国が立入を提供できない場合は、代替手段を提供するためにあらゆる合理的努力を払う。 |
| C | 環境サンプリングの実施 本立入は、上記(1),(2)及び(3)で必要に応じ行われる環境サンプリングとは別に、それらの場所の近傍の特定の場所について、情報の疑義、不一致が発生した場合にその解決のために行われる。事前の通知は少なくとも24時間前に行われ、国が立入を提供できない場合は、隣接場所への変更や代替手段を提供するためにあらゆる合理的努力を払う。 (将来、手法、経費が合理的であると実証された場合、理事会の了承を前提に広範囲の環境サンプリングを導入する) |
(1)イラク問題(1991年〜)
○秘密裏に行われていた核開発計画の発覚
○IAEAとの保障措置協定違反
(2)北朝鮮問題(1991年〜)
○冒頭報告と特定査察に矛盾発生
○IAEAの特別査察要求を拒否
(3)国際的動き
○NPT再検討・延長会議(1995年)
・核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定
IAEAの保障措置は定期的に見直されるべき。IAEAの未申告施設の探知能力は強化されるべき。
○モスクワ原子力安全サミット(1996年)
「我々は、核物質の転用が探知できなくなることを防止する保証を提供する上で極めて重要な役割を果たしているIAEAの保障措置制度への支持を表明する。我々は、未申告の原子力活動を探知するIAEAの能力を緊急に強化する必要性を強調する。」
○リヨンサミット(1996年)
「全ての国が<93+2計画>の効果的、効率的な実施に貢献していくことを要請する。この計画は、核不拡散分野より厳密な規制に極めて重要な貢献をするものである。」
○デンバーサミット(1997年)
「IAEAが保障措置制度の強化及び効率化に関する計画を採択したことを歓迎する。我々は、すべての国に対し、可能な限り早期にIAEAとの間で追加議定書を締結するよう要請する。」
○バーミンガムサミット前G8外相会合(1998年)
「我々は、すべての国に対し、可能な限り早急にIAEA保障措置追加議定書に加わること、及びIAEAがこの目覚ましい核不拡散の完成を実施するための必要な手段を備えることを確実にすることを促す。」
(4)原子力委員会の動き
○原子力委員長談話(1995年)
−核兵器の不拡散に関する条約の延長について−
「核拡散防止に本条約が極めて重要な役割を果たしてきているとの認識の下、国際的な保障措置の適用の拡大とその一層効果的な実施を求めているという重要な点に留意する必要がある。」
○原子力委員長談話(1997年)
−IAEA保障措置の強化・効率化方策に係るモデル議定書の採択について−(別紙参照)
2.IAEA理事会の動き
○設計情報の早期提出(1992年)
○ユニバーサル・レポーティング(1993年)
○特別査察の権限、役割の確認(1993年)
○理事会が事務局に保障措置の強化・改善策の提言を要請(1993年)
−「93+2計画」に着手−
○事務局が「93+2計画」案を理事会に提出(1995年)
○理事会は「93+2計画」第1部を合意(1995年6月)
−現行枠内の施策−
○理事会は事務局作成の「93+2計画」第2部の議定書案について起草委員会で審議することを決定(1996年6月)
−追加権限に係る施策−
○第1回議定書起草委員会(1996年7月)
○第2回議定書起草委員会(1996年10月)
○第3回議定書起草委員会(1997年1月)
○第4回議定書起草委員会(1997年4月2,3日)
○特別理事会を開催し、第2部に係る追加モデル議定書案を採択(1997年5月15日)