資料12−1


原子力委員会原子力国際協力専門部会(第11回)議事要旨(案)


1.日 時
  平成9年11月21日(金) 10:00〜12:00

2.場 所
  科学技術庁第1・2会議室(科学技術庁2階)

3.出席者

  (原子力委員)
伊原原子力委員長代理、田畑委員
  (委 員)
植松部会長、安委員、飯田委員、草間委員、國廣委員、栗原委員、下山委員、手島委員、長岡委員、西野委員、ヒールシャー委員、松浦委員、真野委員、三石委員、村田委員、山本委員
  (国際協力WG)
竹下委員

  (科学技術庁)
瀬山原子力局国際協力・保障措置課長
  (通商産業省)
長谷川資源エネルギー庁国際原子力企画官
4.議 題
  (1)国際協力ワーキング・グループの審議経過について
  (2)旧ソ連、中・東欧地域との国際協力について
  (3)その他

5.配布資料
   資料11−1 第10回原子力国際協力専門部会議事要旨
   資料11−2 アジアにおける原子力国際協力について  − 論点整理の中間とりまとめ(案) −
   資料11−3 旧ソ連、中・東欧諸国との協力のあり方及び方策についての原子力委員会原子力国際協力専門部会とりまとめ(骨子案)

6.議事概要

○植松部会長による開会の宣言に引き続き、配布資料の確認、前回議事要旨についての承認が行われた。

○植松部会長より、前回部会の席上で中間報告があった、核不拡散ワーキング・グループの審議方針について、原子力平和利用に関する政策の企画立案等を任務とする原子力委員会の役割に鑑み、
@核不拡散を巡る最近の国内外の諸情勢について的確に把握する。
Aこの諸情勢を踏まえた上で、我が国の原子力平和利用を円滑に進めていく観点から、核不拡散に係る原子力政策に関する基本的考え方を明らかにする。
Bその基本的考え方を踏まえた、今後の主要な原子力政策について取りまとめ提言を行う。
としたい旨提案があり、了承された。

(1)国際協力ワーキング・グループの審議経過について

○資料11−2に基づき、事務局より説明があり、これを踏まえて委員より次のような質問・意見が出された。

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p.2 協力の範囲について、
@台湾は何故入っていないのか。外交関係がないからか。原子力発電所を持っているのに、将来もこの方針は続けるのか。
A北朝鮮のKEDOの協力は、韓国の協力として扱うのか。
B安全文化については、国内問題についても触れた上で、問題を抱えた経験もあることをはっきりさせ、対処方針等の記述を加えるべきではないか。

部会長
:国際協力ワーキング・グループでもアジアの範囲をどうするかという話があった。
@原子力委員会の立場としては、台湾は国家としてみていないことから、対象外としている。
A北朝鮮とは国交がないため、KEDOを通して協力するにとどまる。インド、パキスタンもNPT不参加のため対象外。
Bはもっともであり、安全文化については十分配慮する。

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台湾、北朝鮮を対象外とすることについては、私も疑問であった。原子力は、北東アジアと東南アジアでは全く開発の度合いが違う。北東アジアでは、台湾や北朝鮮も含めて利用が進んでいる。東南アジアには、全く原発がないものの、期待は高まっている。そういうsub regionの考え方はどうするのか。また、廃棄物と使用済燃料の問題はどうなのか。韓国と台湾は再処理しないので、処理に困っている状況である。こういった問題に対する国際協力の可能性には触れないのか。
 そして、核不拡散問題について、国際的核不拡散体制の維持・強化のために(安全確保の安全文化に類する)このsafeguards cultureがあると思うが、欧米とアジアではこの文化に違いがあることから、我々がアジアのsafeguards cultureを育成する協力ができるのではないか。さらに、協力の施策については受け身のものしか書かれておらず、NPT非加盟国に対する積極的施策があっても良いのではないか。核物質管理、防護技術、組織面での協力など含められるのではないか。
 資料p.7(1)@原発の部分の記述については、国別に施策を分類したものと思われるが、具体的な施策が見えない。

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インド、パキスタン、台湾、北朝鮮に対しては、RI等について協力を求めてきたときにも協力しないということか。国ベースではできなくても、専門家ベースではできるのか。

部会長
:資料の記述は、言葉では厳しくとれるかもしれないが、専門家ベースでは交流がある。しかし、これらの国・地域を原子力委員会として扱うことには問題があるのではないか。

事務局
:効率的な審議のために、重点化をしたため、原則8カ国になっている。国と民間との役割分担もあり、民間活動の中で対応しうるものもあり得る。8カ国は原則であり、施策によっては柔軟に考え得るものもあり得ると理解している。

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:気になるのは、原子力に限らず、政治経済の体制がきちんとできている日本の考え方になってしまっているということ。協力の相手側の立場にも立ってみる必要があるのではないか。途上国では、原子力導入の目的が、必ずしもエネルギー政策のためという考え方でなく、政治家が国のdignity を示すためであったりする。これは、協力する立場としては問題。そして、途上国がいちばん問題にしているのは、資金。これがまずスタートになる。もう一つは、廃棄物や使用済燃料をどう処理するかということ。どこかにこのためのセンターを造ることこそが地域協力だと思っている節がある。しかし日本はそれについて全く案を出していない。このような協力する上での問題点を触れるべき。
 もう一点。それぞれの国におけるPAが問題。政権のprestigeを保つ政府首脳に対し、反対勢力はこれを下げるために政治問題化させているので、日本のこれまでの経験だけでカバーするのは難しい。少なくとも、アジアと日本は違うので、アジアの地域的な考え方を踏まえた報告書である必要がある。例えば、各国にも原子力委員会はない、又はあるのに機能していない、といった事情がアジア各国にはある。

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この案には、日本が相手に協力するということが筋として書かれている。しかし、受け入れる側の立場に立った切り口が重要なポイントである。最近のアジア経済情勢は混乱しており、この状態は数年続くと見られている。故に長期的にエネルギー、原発が必要になることは予想されるが、ここ数年は人材養成とか技術基盤的整備、安全規制などソフト面での協力を確実にすることが必要。原発を造るとなると資金の問題になる。長期的な考え方と、ここ数年の考え方とは違う。技術基盤、人材養成、ソフト面は今だからこそ必要であり、もっと協力してもよい。研修後のフォロー、留学等による2年〜5年の長時間をかける専門家の育成は、これまで欠けていた課題。

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協力の範囲、目的、意義を見ると、全体的に原子力発電、放射性廃棄物の管理について記述されているように見える。p.7 Bの研究炉、放射線、RIについては、これらと同列ではなく別扱いにしなければならない。
 また台湾、北朝鮮、インド、パキスタンには配慮が必要。
 safety cultureとPAは大事だが、どう進めていくかは難しい。それぞれの国のマスコミの扱いをどうするのかについても、記述した方がよい。また、動燃問題についても触れるべきだろう。

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p.8 の人材養成の項目は、日本の立場からだけ書かれており、運転要員の養成 にしか見えないが、相手側の要望は少なくとも安全のチェックくらいは自分でできるようになりたいということ。そのために、日本の研究所等の現場でお客さんとしてではなく、安全管理要員の一員として何年か経験を積むことが必要ではないか。また、日本の第一線の指導者を何年か派遣してほしいという要望がある。そのほかに、米国から機材を購入するときに、日本の人材に審査に加わって欲しいという要望も聞いている。

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審議会の答申なので、国がどう関与するかということは重要。NPT等で規制することは国の役割ではあるが、ある局面では支援することも必要。それを、輸銀やODA等により、どこまでするのかを明らかにすべき。また、アジアの国により原子力に対する需要が違うので、どういう国にはどういう炉がよいのか、presentationしてもよいのではないか。
 また、台湾については、経済関係の結びつきも強いので、記述から落ちるのは不自然。

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今の原子力についての産業界の動きは一国内にはとどまらず、多国間での連携の動きがある。そういった動きに対して、国はこれからどうするか。
 相手国の第一の関心・要請はエネルギー供給、第二は資金問題、第三に安全確保である。他方、日本にとっては、まずアジアの安全が重要。このギャップをどうしたらよいのか。そこがいちばんのmomentum。どのように相手のニーズを踏まえつつ、国際的な企業の動きも踏まえ、安全レベルを高めるか。原子力安全協力国際基金など、ある種の積極性がないと、企業が欧米と組んで動いているときに、安全レベルが果たして向上するのか疑問。

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台湾の扱いについては、他の委員の意見に同感。一方翻って、中国の問題も同列に並んでくる。地域内で唯一の核兵器国で、日本からは圧力容器を輸出したりしているが、建設時には査察を嫌がったとも聞いている。技術者は真面目なのに、政治の意向が絡んでくる。マスコミなども、中国は論調がどこも同じで、例えば三峡ダムによる環境影響や原発に対して全く疑問が起きない。こういった点について配慮が必要。
 かつては、中国では原子力は全て軍事技術で、技術者も違う学校で養成されて、世界の中でもトップレベルの技術であったとのこと。全て政治の力で動くのは怖い。このため、中国が大市場になったときに、協力は別扱いにすべきではないか。
 台湾、韓国については、廃棄物処理には非常に困っている。その点の協力をすべきではないか。

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協力の範囲について、廃棄物再処理の面ではロシアの極東地域はアジアとして考えるべき。共同処分場の可能性もあるかもしれない。協力関係から言っても、別扱いとすべきではない。

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協力する相手国が、他の先進国とどのような協力をしているのか。民間は何を協力しているのか。また、資金についてはどこまで面倒を見るのか、明らかにすべき。さらに、燃料サイクルについても、日本はどこまで協力するのか。

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協力の範囲については、ワーキング・グループでも同様の意見が出された。その意見を承って、同意見なのにここに書いていないことについては、事務局の意向である由であり、結論としては協力の範囲を8カ国に限ることでよいとは思う。国同士の協力の問題であり、原子力委員会として扱うのになじまないものは除くということ。ただ原子力委員会は、諮問への回答について、採り上げるかどうかについて考える権限がある。

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国の範囲は、「原則」よりも「主として」という考え方であって、書いていないところは、国策として書いていないのであるから、誤解のないようにされたい。あとは、核不拡散ワーキング・グループとの仕切りをどうするかの問題が残されている。

事務局
:国際協力WGと核不拡散WGの仕切りの問題については、具体的にどの問題をどちらで扱うのか、部会長と相談しつつ対応していきたい。



(2)旧ソ連、中・東欧地域との国際協力について

○ 資料11−3に基づき、事務局より説明があり、これを踏まえて委員より次のような質問・意見が出された。

部会長
:御議論頂く前に、クラスノヤルスクの日露首脳会談で原子力協力についても言及があったとのこと。簡単に事務局より説明願いたい。

事務局
:同会談では、「橋本・エリツィン・プラン」が合意され、その主な内容は、開放、経済、エネルギーの3分野及び6つの柱からなっており、柱の一つとして、原子力の平和利用のための協力が盛り込まれた。これは、エネルギーの議題の中で原子力についての話がロシア側より持ちかけられたことによるもの。具体的提案については、ロシア側より出てくるのを待っているところ。

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先日、原産会議でロシアへの阿部ミッションの報告があった。各電力会社からハイレベルの幹部が参加したミッションであった。ロシア側は民間からの支援の期待をもって同ミッションを迎えた。ミッションは、高速増殖炉、SSACの確立、燃料サイクル、ISTC、クルチャトフ研究所、その他のマニファクチャーの施設を訪問し、意見交換を行った。民間の資金協力を期待するとの先方の考え。BN−800の計画について、我が国の資金支援が話題になった。フローティング型の発電所の開発、高速炉は興味ある分野。高温ガス炉がPuの燃焼には有効であり開発を進めたいとの考えもあった。
 しかし、いずれにしてもロシアとの協力については、主として国際枠組みの中で国が支援してきたが、これからは民間べースの支援に移ると考えなくてはならない。報告中、契約にしてもその経験が無いので問題になるとか、莫大な資金協力は民間ベースでやれそうに無いので国の資金でとの意見もあった。しかしながら、ロシアに於いては面白い発見も多々あるし、ユニークな技術開発を行っている。例えば、ナトリウムの電磁ポンプの開発もやっていて、我が国のメーカーとの協力も進んでいる。ロシアの研究開発も相当進んでいるので実際に有益に利用できるものもあるに違いない。今後協力をやっていくべきであろう。エリツィン・橋本会談にもあったように、協力しやすい情勢にもなって来ているので、新しい協力の方策を考えて見るのも重要。

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旧ソ連、中・東欧諸国には、日本海への液体放射性廃棄物の海洋投棄、チェリャビンスクの爆発事故などと同様ににまだ明らかにされていない問題があるように思うが、防災措置も含め介入措置に対する取組みについて、我が国が具体的にどのように介入・協力するかも整理しておくと良い。

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放射性廃棄物処理については、先程の委員の発言にもあったように、極東ロシアはアジアとして(同一地域として)扱うことも一案。資料1頁の背景にはロシアによる日本海への海洋投棄の記述があるが、3.今後の協力の進め方の4項目の方策にも「海洋投棄に係る協力」を盛込んではどうか。

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モスクワ・サミットで採り上げられた、核密輸に係る内容(国際行動計画)も 核不拡散については重要であるので盛込んではどうか。11月中間にIAEAの核密輸会合が開かれており、重要な問題。
解体核に関する問題については、日本は核兵器に係る技術はないし、解体核協力の範囲は神経質にならざるを得ない。そのポリシーは書いて疑いを受けないようにすることが重要。
p.5 Cの解体核管理は管理のみではなく利用も含めるべき。

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ロシア側から日本の協力を見た場合、安全以外に実務的協力を希望している。その中には高速増殖炉の協力等、民間のみで出来ないので政府機関が主体となって行う実務的協力もあると思う。
また、軍民転換技術や濃縮ウランを買ってほしいとの意見もある。これは民間ベースの話になるが、国としても枠組みの整備を進めてほしい。

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チェコのテメリンVVER−1000でもコアの中はウエスティングハウスか ら供給されている。また、中国へのVVERの導入に際しても、チェコとIAEAが協力。我々も、p.4 の今後の協力の進め方については、資機材の交流を含めて協力の仕方は色々あるのではないか。



(3)その他 − 次回日程について

 部会長より、次回は国際協力ワーキング・グループ、及び核不拡散ワーキング・グループの議論のまとめの案、そして旧ソ連、中・東欧地域との国際協力に関する議論のまとめの二次案について報告を行いたい旨言及があった。また次回は平成10年1〜2月に開催(日程は部会長に一任)することとし、閉会した。