旧ソ連、中東欧諸国との原子力分野での協力・交流の現状
目 次
1.旧ソ連、中・東欧諸国との協力の経緯
2.日ソ連(ロシア)との協力の枠組みについて
−1日ソ原子力協定に基づく協力の現状
−2日ソ科学技術協力協定に基づく協力の現状
3.旧ソ連、中東欧諸国との原子力分野における交流の現状
4.原子力分野における我が国の旧ソ連、中東欧支援策の現状
5.我が国の旧ソ連核兵器廃棄支援の概要
−1ロシア極東における低レベル液体放射性廃棄物処理施設建設に関する支援
−2旧ソ連、中・東欧諸国における核物質管理制度(SSAC)確立に係る協力支援についての調整(IAEAにおける支援調整会合)
−3ISTC(国際科学技術センター)について
6.各国及び国際機関による原子力安全支援の現状について
−1原子力安全分野における国際的取組みの経緯
−2旧ソ連、中・東欧諸国に対する原子力安全支援プロジェクトの調整機構
−3G24データベース(その1〜4)
−4旧ソ連型原子炉に対するIAEAの特別拠出プロジェクト
−5原子力安全基金(NSA)の概要
−6欧州共同体(EU)の旧ソ連、中・東欧原子力安全支援プログラム
7.我が国の旧ソ連、中東欧諸国に対する原子力安全支援の現状
8.我が国政府レベルのチェルノブイリに関する支援
1. 旧ソ連、中・東欧諸国との原子力分野における協力の経緯
1986年 4月 チェルノブイル原子力発電所事故
1988年 4月 日、米、EU、ソ連の4極による国際熱核融合実験炉(ITER)概念設計活動開始(1992.7〜工学設計活動開始)
1989年 5月 世界原子力発電事業者協会(WANO)設立総会をモスクワで開催
1991年 4月 日ソ原子力協力協定締結
10月 第1回日ソ原子力協議(モスクワ)
12月 ソ連邦解体
1992年 2月 ロシア原子力省(MINATOM)設置
7月 ミュンヘンサミットで、ソ連・東欧諸国の原子力発電所の安全性向上のための支援が表明される
11月 第2回日ロ原子力協議(東京)
11月 日、米、EU、露の4極が国際科学技術センター(ISTC)設立協定に署名(1994年3月暫定設立)
1993年 7月 ロシアの核関連施設「トムスク」で爆発事故
10月 ロシア太平洋艦隊が日本海において放射性廃棄物の海洋投棄を実施
日本とロシアが核兵器の廃棄の支援に係る協力等に関する協定に署名
11月 日本とベラルーシが核兵器の不拡散の分野における協力等に関する協定に署名
1994年 3月 日本とウクライナが核兵器の廃棄に係る協力等に関する協定に署名
日本とカザフスタンが核兵器の廃棄に係る協力等に関する協定に署名
7月 ナポリ・サミットにおいてG7は、チェルノブイル閉鎖のため、総額2億ドルの支援をコミット
8月 OECD/RASPLAV計画の開始(日、米、加、ベルギー、フィンランド、仏、独、伊、蘭、スペイン、スウェーデン、スイス、英、韓 〜1997年6月、於:露クルチャトフ研究所)
1995年12月 ウクライナとG7との間で、チェルノブイル原子力発電所の2000年までの閉鎖に関する覚書を署名
1996年 1月 ロシア極東に於ける低レベル液体放射性廃棄物処理施設の建設に係る契約署名
4月 原子力安全モスクワ・サミット開催
2−1 日ソ原子力協定に基づく協力の現状
1.日ソ原子力協定
原子力の平和利用分野における日ソ両政府間の協力は、日ソ科学技術協力協定下(1973年10月10日署名)で実施されてきたが、原子力発電所の安全性に対する関心が高まってきたことを背景の一つとして、1990年(平成2年)9月の日ソ外相間協議において原子力活動に於ける高い水準の安全性の確保に関する協力を推進することで認識の一致を見た。その後両国間の協議が行われた結果、ゴルバチョフ大統領来日中の1991年(平成3年)4月18日、原子力の平和的利用の分野における協力に関する協定が中山外務大臣とベススメルトヌィフ外務大臣との間で署名された。以後、協定に基づくロシア(乃至ソ連)との協議が91年と92年の2回行われている。
2.内容
協力分野(協定第一条)
1)原子力発電所の活動における安全性
2)放射線防護及び環境監視
3)放射性同位元素及び放射線の研究及び応用
4)放射性廃棄物の処理及び処分
5)両政府が合意するその他の分野
協力の方法(協定第二条)
1)安全性に関連する規制に関する情報の交換
2)科学的及び技術的情報の交換
3)科学者、技術者その他の専門家の交流
4)共同研究
5)両政府が合意するその他の形態
2−2 日ソ科学技術協力協定に基づく協力の現状
1.日ソ科学技術協力協定
締 結:1973年10月10日、日ソ外相間で署名。
協力の形態:情報の交換、科学者・技術者の交換、会議・シンポジウムの開催、共同研究の実施
備 考:1991年(平成3年)12月、ソ連邦が崩壊したことに伴い、ソ連邦と継続性を有する同一の国家であるロシア連邦との間で本協定は引き続き有効である。
2.日ソ(ロ)科学技術協力委員会
開 催:1978年に第1回日ソ科学技術協力委員会(於、東京)が開催されてから1997年まで計11回の委員会の開催(原則日ソ(ロ)交互に開催)。
概 要:15分野計76テーマからなる協力計画を作成。内、原子力関連は(1)プラズマ物理学及び核融合、(2)高エネルギー物理学・加速器科学、(3)放射線医学。


5 我が国の旧ソ連核兵器廃棄支援の概要
1.日本政府は、93年4月、旧ソ連の核兵器廃棄を支援するために総額約1億ドル(117億円)の協力を行うことを発表。
2.94年3月までに、ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシそれぞれとの間で核兵器廃棄協力に関する二国間協定を締結し、各核兵器廃棄協力委員会を設立。総額117億円を各委員会に対し以下のように配分し拠出。
日露委員会:81億9千万円(全体の70%)
日・ウクライナ委員会:17億5500万円(15%)
日・カザフスタン委員会:11億7千万円(10%)
日・ベラルーシ委員会:5億8500万円(5%)
3.協力プロジェクトの概要と現状
- (1)対ロシア
- (イ)核物質貯蔵施設の建設協力
- 核弾頭の解体から生じる核分裂性物質を安全に貯蔵するための施設が、ウラル地方チェリャビンスク近郊にある産業合同体マヤクに建設される予定。我が国には兵器級核分裂性物質に関する技術的知見が欠けているため、施設の設計等は基本的に米露が行っている。我が国は米と協力しつつ、核分裂性物質用の貯蔵・輸送容器の供与を行う予定。現在、実施取決め案につき、ロシアと協議中。
- (ロ)液体放射性廃棄物・処理施設の建設
- 極東における液体放射性廃棄物の海洋投棄を防止するため、96年1月、処理施設の建設に係る契約が署名された。現在、コムソモリスク(アムール川沿いの都市)において建設作業が行われている。
- (ハ)緊急事態対処機材の供与
- 核弾頭を解体場から貯蔵施設に移送する際に事故等が発生する場合を想定して、スペクトロメータ(放射線分析装置)、無線機、パソコン等の機材を供与する予定。現在、実施取決め案につき、ロシアと協議中。
- (2)対ウクライナ
- (イ)核物質管理制度確立支援
- ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシはNPTに非核兵器国として加入し、IAEA保障措置を受ける義務を負うことになったが、そのための技術的基盤を欠いているので、核物質管理制度の確立を支援する必要がある。
ウクライナについては、ハリコフ研究所等に対する計量管理及び核物質防護システム確立を中心として支援を実施中。
- (ロ)核兵器廃棄要員のための医療機器供与
- 核兵器廃棄の過程で発生する放射能汚染や有毒なミサイル燃料の漏出等による被害を受けた軍の要員の検査・治療のために、600万ドル相当の医療機器・医薬品を供与。昨年12月にプロジェクト全体が完了。本年5月、モニタリングミッションを派遣した。
- (3)対カザフスタン
- (イ)核物質管理制度確立支援
- アクタウの高速増殖炉(BN−350)に対してフローモニター機器及び計量管理システム(一部実施中)を供与済み。現在、BN−350に対する核物質防護システムの支援を実施中。
- (ロ)セミパラチンスク核実験場周辺地域の放射能汚染対策
- 周辺住民に対する核実験の影響を調査し、検査や治療に必要な医療機器を供与する予定。第一段階として、汚染調査実施主体である国立核センター(NNC)に対して、ESR(サンプリングした歯の放射線量を測定する機器)を供与済み。また、カザフスタン保健省からの要請に基づき、力ザフスタン共和国祖国戦争障害病院(在アルマティ)に対する、医療機材及び医薬品の供与を推進中。
- (4)対ベラルーシ
- (イ)核物質管理制度確立支援
- ミンスク近郊のソスヌイ研究所等に対して計量管理ソフト、測定機器、通信機器(モデム)、核物質防護システム関連機器を供与済み。現在、今後3年程度の維持管理体制について、日端間にて協議中。
- (ロ)旧軍人の職業訓練センターに対する機材供与
- 戦略核ミサイル軍の解体に伴い職を失う軍人の民間セクター転出を促進するためリーダ市に開設される、職業再訓練センターに関連機材を供与する予定。現在、本件実施取決め案につき、ベラルーシと協議中。
5−1 ロシア極東における低レベル液体放射性廃棄物処理施設建設に関する支援
○1993年4月2日、ロシア政府は、放射性廃棄物の海洋投棄に関する白書において、1959年から1992年にかけて実施してきた海洋投棄の事実を公表するとともに、同年10月17日には、ロシア太平洋艦隊が日本海において液体放射性廃棄物の海洋投棄を実施。
○我が国としては、日本海における海洋調査を独自に行い、海洋環境放射能レベルに異常がないことを確認。更に、1994年3月より投棄海域における日韓露共同海洋調査を実施し、船上において簡易な放射能計測を行ったところ、異常は認められなかった(1995年8月結果公表)。
○我が国は、日露核兵器廃棄協力委員会の資金の一部を利用して、極東における液体放射性廃棄物の処理施設の建設に係る協力プロジェクトをロシアとの間で進めている。
○本件処理施設は、バージ(はしけ)の上に設置される浮体構造型施設であり、ロシア沿岸地方のウラジオストック付近に係留される予定。同施設は完成の暁にはロシア極東における液体放射性廃棄物の海洋投棄を将来にわたり防止する上で十分な処理能力を有するものとなる予定。
5−2 旧ソ連、中・東欧諸国における核物質管理制度(SSAC)確立に 係る協力支援についての調整(IAEAにおける支援調整会合)
IAEA年次総会(SSACレビュー会合)
構成:支援国・機関
米、英、瑞、フィンランド、デンマーク、日、
豪、仏、ハンガリー、ノルウェー等・IAEA
:被支援国
ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタン、
ベラルーシ、アルメニア、リトアニア、エストニア、
ラトビア、グルジア等
目的:○NIS諸国に対するSSACの確立支援
○支援計画の開発と要求の確認
○支援国及び被支援国への技術的支援
○支援進捗状況のモニター及び情報提供
5−3 国際科学技術センター(ISTC)について
(ISTC:International Science and Technology Center)
1.目的
ISTCは以下の目的のため、ウクライナを除く旧ソ連諸国の機関及び施設に対し、資金を提供する。
1)旧ソ連諸国の大量破壊兵器関連の科学者等に平和活動に従事する機会を提供すること。
2)市場経済への移行を強め、研究及び技術開発(特に環境保全、エネルギー生産、原子力安全の分野)を支援すること。
2.経緯
1)1992年 3月:日、米、EC、露の4極は、ブラッセル閣僚会合を開催し、センター設立を宣言。
2)1992年11月:4極は「国際科学技術センターを設立する協定」に署名。
3)その後、ロシアの国内事情により、批准の必要なくISTCを暫定的に発足させる議定書を作成。これにより同センターを暫定設立。
4)以後1997年3月の第12回運営理事会までに総数391件、総額約1億 3600万ドルの支援がコミット。これらに対して、248研究所において 約17,100人の研究者が従事。
3.加盟国等
日、米、EU、露、ノルウェー、
スウェーデン(現在はEUに所属)、フィンランド(現在はEUに所属)、グルジア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン
各国(極)の支援コミット額の内訳は、以下の通り(1997年3月現在)。
日 本:25,034千ドル(85件。うちSTA37件12,344千ドル)
米 国:58,652千ドル
E U:46,408千ドル
その他: 6,660千ドル
4.組織
1)運営理事会
・任務:センターの方針及び手続き規則の決定、プロジェクトの承認等
・構成:日、米、EU、露、カザフスタン(CIS諸国より1年交替で1国が理事国を務める)
2)事 務 局
・任務:運営理事会の準備、提案プロジェクトの検討に関する調整等
・構成:事務局長、事務局次長、職員等約80名(日本人スタッフは小倉事務局次長を含む4名) 在モスクワ
3)科学諮問委員会(SAC)
5.参加者の拡大
参加国等は民間企業を中心に参加者拡大を模索。
我が国では、科技庁、外務省、経団連及び原産会議主催により、現在まで3回(第1回(1996.3)、第2回(1996.8)、第3回(1997.1))の説明会を開催し、のべ約150社が説明会に参加。
6.地球規模問題の解決に資する研究プロジェクトの推進
第8回運営理事会(1995.12)において、本センターの研究成果を世界にアピールしようとの本件構想に対し、各極が合意。第11回運営理事会(1996.10)においてISTCで推進すべき地球規模問題として以下の5項目を正式に承認。
今後は、本プロジェクトの具体的な推進方法について、科学諮問委員会(SAC)を含めて更に検討が行われる。
1)核燃料サイクル及びその関連処分手法に関する新しい手法
2)汚染された広範な土地の環境回復
3)分子生物学研究所
4)宇宙技術に応用
5)基礎物理関連
6−1 原子力安全分野における国際的取組みの経緯
経 緯
○ 91年7月のロンドン・サミットにおいて、旧ソ連、中・東欧諸国の原子力発電所の安全性の確保は緊急の課題であり、国際社会に対し、その対応策を調整するための手段の策定を要請する旨経済宣言に盛り込まれ、IAEAを中心とする安全性評価プロジェクトや二国間協力が開始された。また、この問題を検討するためのG7の組織であるG7原子力安全作業部会(NSWG)が設置された。
○ 92年7月のミュンヘン・サミット経済宣言においては、旧ソ連、中・東欧諸国に対する原子力安全の確保は世界的な焦眉の課題であるとして取り上げられ、以来国際的に種々の支援方策が実施。
○ 94年7月のナポリ・サミットにおいて、G7はチェルノブイリ原子力発電所の閉鎖のため総額2億ドルの支援をコミットし、95年12月にはウクライナとG7との間で、チェルノブイリ原子力発電所の2000年までの閉鎖に関する覚書を署名。
○ 95年6月のハリファックス・サミット経済宣言では、ウクライナのクチマ大統領が2000年までにチェルノブイル原子力発電所を閉鎖することを表明したことを歓迎し、引き続き同発電所の閉鎖のための国際的支援の継続及び世界銀行、欧州復興開発銀行(EBRD)他の拠出国に対して支援を要請することを明記。また、同サミットにおいて、露エリツィン大統領から96年春にモスクワで原子力の安全に関するサミットを開催したいとの提案。
○ 96年4月の原子力安全モスクワ・サミット宣言においては、原子力の利用にあたり、安全を最優先すべきこと等を確認するとともに、核兵器の解体に伴い発生する核物質を安全に管理する方策を検討するための専門家会合を96年末までにパリで開催すること等を明記。
○ 96年6月のリヨン・サミット議長声明では、モスクワ・サミットで達成された進展を歓迎し、原子力安全条約の早期批准及びピア・レビュー制度への参加を要請するとともに、経済宣言では、96年末までにチェルノブイル1号炉を閉鎖するとのクチマ・ウクライナ大統領のコミットメントを歓迎。






6−4 旧ソ連型原子炉に対するIAEAの特別拠出プログラム
1.経緯
IAEAは、チェルノブイル(RBMK)事故の原因について検討作業を行ったが、旧ソ連側の情報提供に依存せざるを得ず、十分かつ詳細な評価は行われなかった。その後、旧ソ連におけるもう一つの炉型であるVVER-440/230の基本的欠陥が指摘され、その安全性について国際的懸念が高まったことから、1990年9月にVVER-440/230の安全性評価について旧ソ連、東欧諸国を支援するためにスタート。その後、1992年12月に事業対象をVVER-440/213,VVER-1000 及びRBMKにも拡大した。
2.事業の概要
この事業では、旧ソ連型炉に対する国際的支援を効果的に進めて行くため、設計面、運転面での安全性の欠陥、その改善の必要性について各国専門家のコンセンサスを形成することを目的として、
- 安全上の課題の摘出とその重要度に応じたランク付け
- 上記課題の安全改善プログラムの適合性評価の支援
を行っている。
なお、本事業は、IAEAの通常予算及び技術協力プロジェクトと連携して行われている。
3.プログラム毎の活動内容
(1)VVER-440/230
1990年9月に開始された安全評価活動は、安全上の課題の摘出、ランク付けをめざした第1フェーズを1991年末に終了、TECDOC-640をとりまとめ、摘出された問題点に対する対策の立案、各プラントあるいは各国規制機関を支援することが中心的活動となっている。例えば、第1フェーズにおいて運転中の全炉に対して Safety Review
Mission による分析評価が実施され個別に問題点の指摘等を行ったが、第2フェーズにおいては、Follow-up Mission 等が順次派遣されておりその後の対応状況の調査を行っている。
(主要な活動)
・各種改善勧告及びプラント毎の改善計画の収集・比較整理
・改善計画における主要な改善策の評価(施設の改造等に伴う影響を総合的に評価)
・プラント毎の改善進捗状況の把握、データ夕べース化
(重要な個別課題)
・原子炉圧力容器の脆化と焼鈍に関する評価、加圧熱衝撃解析
・LBBの適用
・閉じ込め機能の改善
・緊急時、事故時対応マニュアルの整備
・火災事故評価手法
・計装制御系の改善
上記の個別課題のうちで特に問題となっているのは、ブルガリア Kozloduy原子力発電所1号機の圧力容器の安全性である。EU事業として炉材料の脆性遷移温度の解析を行っていたフランス、ドイツが、1995年後半以降の運転は安全上認めるべきでないとの指摘を行ったことから、安全を主張するブルガリア政府(及びブルガリアの委託を受け評価を実施したロシアの研究機関)と対立、IAEAも巻き込んで議論が行われたが、決着のつく前にブルガリアは運転を再開した。
なお、地震により1989年以来閉鎖されていたアルメニアのMedzamor原子力発電所の再開決定が1993年4月にアルメニア政府から出され、IAEAに技術的支援の要請がなされ、改善状況、改善計画のチェックの他、安全規制機関の強化、地震対策に関する支援のためのミッンョンが技術協力(TC)予算により派遣された。同発電所1号機はロシアの支援のもと1995年10月運転を再開した。
(2)VVER-440/213
当初、TCプロジェクトを活用して支援することが考えられていたが、被支援国からの要望に基づき1992年末に特別拠出事業に含めることとなった。
VVER-440/230のようにIAEAの活動のみで安全上の課題の摘出、ランク付け等をすべて行う方法はとらず、VVER Operators Groupがとりまとめた安全上の課題や改善策、個別の炉に対する既存の調査結果や改善計画等をベースとして、問題点の摘出と同時に対応策も併せて明確にするアプローチをとっている。Bohunice発電所(3、4号機)に対し実施された最初のSafety Review Mission(1994年9月)及びMochovce 発電所の改善計画レビューの結果を踏まえ、1995年には、上記目標に関する最終報告書がとりまとめられた。
(主要な活動)
・各種改善勧告及びプラント毎の改善計画の収集・比較整理
・改善計画における主要な改善策の評価
(重要な個別課題)
・バブル・コンデンサーの有効性評価(特に構造上の強度)
(3)VVER-1000
VVER-1000 もVVER-440/213と同様、1992年末から特別拠出事業の対象となるとともに、既存の改善計画を出発点とするアプローチがとられた。ロシアがとりまとめた計画に加えブルガリア、チェコ、ウクライナが作成した改造計画を中心にレビューが進められた。
(主要な活動)
・改善計画における主要な改善策の評価
・安全基準の比較に基づく安全課題の摘出
(重要な個別課題)
・蒸気発生器(Cold Collector)の健全性
・制御捧挿入トラブル
(4)RBMK
1992年4月のRBMKに関するTCM(Technical Committee Meeting )での勧告を基に、IAEAは同年6月に特別拠出事業とすることを発表した。調査は参照炉を選定し総合的な安全評価を行うProgress Review Meeting を最大の情報源として進められた。最新型の第3世代に属する炉であるSmolensk発電所の3号炉が最初の参照炉に選ばれ、1993年6月に2週間にわたる調査が行われた。ついでIgnalina発電所(RBMK-1500 )に対しても1994年10月に実施され、これらの結果を基にVVER-440/213やVVER-1000 と同様安全上の課題と対応策のとりまとめが行われた。一方、EUが実施してきた国際プロジェクトの第1フェーズが1994年6月終了したことから両者の結果を比較するための会議が1995年5月開催された。
なお、1993年末に閉鎖することとなっていたChernobyl 発電所についてウクライナ政府が運転継続を決めたため、IAEAはその安全問題に懸念を持つ立場から1993年末から1994年始めにかけて相次いで調査団を派遣するとともに、1994年4月国際会議を開催した。
(主要な活動)
・提案されている改善策の評価
・参照炉(Smolensk Unit3、Ignalina)における改善状況及び改善計画の評価
・改善策の優先度評価
・EU/Consortium の結果との調整
(重要な個別課題)
・原子炉停止系の信頼性
・圧力管複数破断の解析
6−5 原子力安全基金(NSA:Nuclear Safety Account)の概要
1.基金の設立
1993年4月設立(基金はEBRD(欧州復興開発銀行)内に設立)
2.基金の期間
発効後3年間(必要な場合には、3年を越えない期間延長可能。96年2月の総会に て3年間の延長を決定)
3.資金提供の形式
グラント形式
4.調達の方法
原則として、支援国または被支援国から調達
5.管理組織
拠出国総会(通常年5〜6回開催)(注)
・構成員は拠出国、G24の議長(被支援国のオブザーバ招請可)
・任務は、活動の基本方向の決定、活動の監視等
(注)規程上、総会と下部機関としての運営委員会が置かれることとなっているが、現状では、総会が運営委員会を実質兼務している。
6.支援プログラム 97年1月現在
支援予定額
(単位:million ECU)
(1)1993年スタート
○コズロデュイ原子力発電所#1〜4(ブルガリア) 24.00
(2)1994年スタート
○イグナリナ原子力発電所#1、2(リトアニア) 34.78
○イグナリナ原発の安全性レビュー( 〃 )(96年終了) 8.30
(3)1995年スタート
○レニングラード原子力発電所#1〜4(ロシア) 30.38
○コラ原子力発電所#1、2(ロシア) 21.86
○ノボボロネジ原子力発電所#3、4(ロシア) 23.28
○ロシア原子力・放射線安全監視国家委員会(GAN) 0.90
(4)1996年スタート(予定)
○チェルノブイル原子力発電所#1〜3(ウクライナ) 118.0
プロジェクト合計 261.50
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(5)EBRDへの支出(1993〜96+97予算)
○基金の管理業務 7.35
コミットメント総計 268.85
______________________________________
新規充当可能分 5.1

6−6 欧州共同体(EU)の旧ソ連、中・東欧原子力安全支援プログラム
1.PHAREとTACISを通じた原子力安全プログラム
1991年以来、EUはPHARE (中・東欧向け支援プログラム)及びTACIS (旧ソ連諸国向け支援プログラム) の枠組みの中で、旧ソ連、中・東欧に対する原子力安全支援プログラムを実施してきた。プログラムの主な内容は次のとおり。
1)運転の安全改善プログラム(ロシア−6サイト、ウクライナ−3サイト、 カザフスタン−1サイト、ブルガリア−1サイト)
・運転員の教育・訓練
・訓練用シュミレータの供与
・運転技術援助 他
2)施設の技術改善プログラム
・安全設計に関する支援
・施設における支援(プラントに専門家を常駐させ行う指導等)
・安全改善策実施のため資金援助 他
3)規制機関への支援プログラム
・制度及び規制の枠組みの強化支援
・評価及び認可手続きに係る技術移転 他
2.支援額
1991年から1995年の間のPHARE及びTASIC別の支援額は次のとおり。
(単位:MECU)
年 PHARE TACIS 合 計
------------------------------------------------------
1990 3.8 − 3.8
1991 16.7 53.0 69.7
1992 29.3 60.0 89.7
1993 25.2 88.0 113.2
1994 25.0 91.0 116.0
1995 27.0 96.0 123.0
----------------------------------------------------------
127.0 388.0 515.0
出典:EU報告書(1996年7月10日)
注、
1)これらの額には、ウクライナに対するEU/G7のアックション・プランついてTACIS予算からの拠出(1993年〜1994年:25MECU、及び1995年:37.5MECU)を含む。
2)1992年からはPHARE予算には20MECUの地域プログラムを含む(残りはブルガリアの国内)。
3)設備の供給は1992年と1993年の予算の40%に上り、1994年と1995年は50%に上る。
7.我が国の旧ソ連、中・東欧諸国に対する支援の現状
1 多国間支援
(1)国際原子力機関(IAEA)
IAEAによる旧ソ連型原子炉(RBMK型、VVER440/230型、VVER440/213型、VVER1000型)の安全性評価プロジェクトに、92年度から特別拠出を実施。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ 120│ 190│ 160│ 160│ 170│ 170│ 970│
(2)OECD原子力機関(OECD/NEA)
NEAの中東欧支援センターが、旧ソ連、中・東欧諸国に対し行っている原子力安全支援活動の内、安全規制当局の強化、安全運転のための技術的知見の移転等の活動(専門家会合の開催等)を対象に特別拠出を実施。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ − │ 20│ 20│ 50│ 50│ 50│ 190│
(3)原子力安全基金(NSA)
旧ソ連・中東欧諸国の安全性に問題のある原子力発電に対して、二国間支援以外の安全性向上支援を行うために、93年4月、EBDRに設置された。現在までのところ、ブルガリアのコズロデュイ発電所、リトアニアのイグナリナ発電所、ロシアのレニングラード、コラ、ノボボロネジ各発電所に関するプロジェクトが進行中。ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の閉鎖支援(3号炉の短期的安全性向上、廃炉準備としての使用済み燃料貯蔵施設及び放射性廃棄物の処理施設の建設)については、96年11月にウクライナとの間に贈与取極が締結され、現在、実施段階に入っている。なお、本基金は96年3月に、3年間設置期間の延長が決定。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ 400│ 400│1600│ 700│ − │ 920│4200│
2 二国間支援
(1)国際原子力安全交流派遣事業
旧ソ連、中・東欧諸国等に、我が国の原子力安全の専門家を派遣し、事故時・通常時の原子炉挙動や放射性廃棄物管理分野等についての情報交換・意見交換等を通じた技術交流を実施。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│予算(万j)注 │ ー │ 100│ 120│ 130│ 220│ 240│ 810│
│派遣者(人 日)│ ー │ 118│ 548│ 614│ 568│ 589│2437│
(注)アジア諸国への原子力安全交流派遣を含む。
(2)国際原子力安全研修事業
旧ソ連、中・東欧諸国等の原子力安全の向上に寄与するため、これら諸国から原子力関係技術者等を受け入れ、日本原子力研究所の国際原子力総合研修センター等で研修を実施。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│予算(万j)注 │ 90│ 150│ 180│ 200│ 360│ 420│1400│
│参加者数(人) │ 20│ 23│ 31│ 36│ 46│ │ │
(注)アジア諸国からの受け入れを含む。
(3)原子力安全管理に関する国際招聘プログラム(1000人研修)
原子力安全水準の向上を図るため、旧ソ連、中・東欧諸国等の原子力発電所の監督・管理者、保守・検査員等を対象として、発電所運営・管理手法、耐震設計等安全管理全般について研修を実施(92年から10年間で1000人規模)。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j) │ 190│ 440│ 500│ 580│ 510│ 440│2660│
│参加者数(人) │ 52│ 81│ 84│ 93│ 92│ 97│ 499│
(4)運転中異常検知システムによる安全性向上プログラム
我が国が開発した、原子炉配管からの冷却水漏洩を検知するための運転中異常検知システムを旧ソ連型原子炉(ロシアのレニングラード原子力発電所:RBMK型)に適用し、日露共同で実証試験を実施(93年度から97年度までの計画)。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ − │ 780│1130│ 930│ 850│ − │3690│
(5)RBMK型炉への運転管理等に関するプログラム
我が国が開発した圧力管健全性の管理システム等を旧ソ連型原子炉(リトアニアのイグナリナ原子力発電所:RBMK型)に適用し、同発電所の安全性向上を図るとともに、同国との技術交流を行う(96年度から99年度までの計画)。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ − │ − │ − │ − │ 100│ 320│ 420│
(6)スロバキアA1炉に関する安全性調査プログラム
スロバキアのボフニチェにあるA1炉(研究炉)の廃炉計画を支援するため、専門家の交流による情報交換や放射能量、作業員の被曝量等の計算を共同実施(95年度から2000年度までの計画)。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ − │ − │ − │ 50│ 50│ 80│ 180│
(7)原子力発電運転技術センター整備事業
ロシアのノボボロネジ運転技術センターに、VVER1000型炉の運転挙動を模擬するシミュレーター1基を開発・設置し、運転員の教育プログラムを改善する。93年6月にプログラムの実施について日露両国で合意、96年にシミュレーター完成。今後、98年までに教育プログラムの策定。
│ 年 度 │ 92 │ 93 │ 94 │ 95 │ 96 │ 97 │ 計 │
│ 予算(万j)│ − │1670│ 580│ 740│ 260│ 230│3480│
3 我が国の年度別支援額
│年 度│ 多国間支援 │ 二国間支援 │ 計 │
│1992│ 520万ドル│ 280万ドル│ 800万ドル│
│1993│ 610万ドル│ 3,140万ドル│ 3,750万ドル│
│1994│1,780万ドル│ 2,510万ドル│ 4,290万ドル│
│1995│ 910万ドル│ 2,630万ドル│ 3,540万ドル│
│1996│ 230万ドル│ 2,350万ドル│ 2,580万ドル│
│1997│1,140万ドル│ 1,730万ドル│ 2,870万ドル│
│ 計 │5,190万ドル│12,640万ドル│17,830万ドル│
8.我が国政府レベルのチェルノブイリに関する支援
平成9年6月
調査国際協力課
1.チェルノブイリ原子力発電所閉鎖関連支援(1、900万ドル)
○原子力安全基金(NSA)への搬出
ナポリ・サミットの経済宣言を受けて、平成6年度から7年度までに1、900万ドルをチェルノブイリ関連(第3号炉の安全性向上、廃炉準備等)に使途指定して搬出。
2.被災者支援(2、920万ドル)
○WHOのチェルノブイリ被災者医療支援プログラム(ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)への搬出
○チェルノブイリ関連医療施設に対する医療機器供与
(ウクライナに対してはこの他に一般的な人道支援としての医薬品供与も含む)
○医療関係者の派遣及び招へい
(派遣:36名、招へい:82名)
3.環境保全(約1〜2億円/年)
○チェルノブイリ事故に伴う放射線の健康影響調査
○チェルノブイリ事故等原子力発電施設事故の放射線影響等に関する情報収集、調査
○「チェルノブイリ国際研究センター」への協力
(事故の環境影響評価等に関する研究協力)
○チェルノブイリ周辺の環境試料の測定