原子力国際協力専門部会(第6回)議事要旨
1.日 時
平成8年11月25日(月)、15:00〜17:00
2.場 所
科学技術庁第1・第2会議室
3.出席者
(原子力委員)
伊原原子力委員長代理、田畑原子力委員、藤家原子力委員、
(委 員)
植松部会長、秋元委員、安委員、飯田委員、池亀委員、稲葉委員、猪口委員、大山
委員、国廣委員、下山委員、鈴木委員、手島委員、長岡委員、西野委員、松浦委員、
真野委員、三石委員、村田委員、山本委員
(科学技術庁)
岡崎原子力局長、中村同局調査国際協力課長、泉同局核燃料課長
田中原子力安全局次長、瀬山同局保障措置課長
(外務省)
遠藤科学原子力課長
(通商産業省)
長谷川資源エネルギー庁国際原子力企画官
4.議 題
(1)南アジア諸国の原子力開発利用について
(2)アジア原子力安全東京会議の結果について
(3)核不拡散と保障措置に関する検討結果について
(4)余剰兵器級プルトニウムの処理処分について
5.配布資料
資料6−1 第5回原子力国際協力専門部会議事要旨
資料6−2 南アジア諸国の原子力開発利用について
資料6−3 アジア原子力安全東京会議の結果について
資料6−4 1)核不拡散と保障措置に関する検討結果(要旨)
2)核不拡散と保障措置に関する検討結果
(平成8年4月 核不拡散と保障措置に関する勉強会)
資料6−5 余剰兵器級プルトニウムの処理処分について
6.議事概要
○ 植松部会長による開会に引き続き配布資料の確認、前回議事要旨についての確認が行
われた。
(1)南アジア諸国の原子力開発利用について
○ 事務局より、資料6−2に基づき、南アジア諸国(インド、パキスタン)の原子力事
情について説明があり、これを踏まえて、委員より以下のような意見が出された。
・ 日本は、インド、パキスタンがNPTに未加盟という理由で原子力分野の協力に制
約を設けてきたが、このようなやり方が本当に効果的なのか疑問。インドは、アジア
の中で原子力発電の導入実績も長くその利用の割合も高い。NPT未加盟の状態は認
める訳にはいかないが、国際的に孤立させておくのは安全の面からも問題だ。原子力
安全に係る問題は大きく、日本の知見を積極的に提供する必要性がある。
・ インドでは、1996年9月、発電公社が中心になって、インド原子力産業会議が設立
された。こうした場で実際の関係者の様子を知ることが望ましい。
・ WANOにはインド、パキスタンも加盟しており、情報交換、人員交流等が行われ
ている。セミナーをインド、パキスタンで開催する等、安全面でのある程度の協力は
可能ではないか。
・ 安全研究ではないが、原研が行っているSpring−8等はインドの興味も高く、この
ような非常に基礎的な研究分野についてはどこまで協力できるか検討すべき。
・ インド、パキスタンはRCAに加盟しており、インドの要請により、RCAの中で
研究炉利用に関する協力を始めた。安全の範囲を発電炉だけでなく、もっと広くとら
えるべきでないか。
・ パキスタンが建設中のPWRは、NPTの問題があったため、どこの国も入札でき
ず、中国が協力したが、日本としてそれで良いのか考え始める必要がある。
・ インドは非同盟諸国の中心であるという自負があり、それがNPT問題におけるイ
ンドの立場に影響していると考えられるが、「非同盟」もしくは「第3の道」の前提
であった東西対立がなくなり、非同盟の意味が不明確になりつつある。いずれ、イン
ド自身が「非同盟」のあり方について再考せざるを得ない時期が来るのではないか。
日本としては、インドが非同盟諸国を解消して、NPT問題における立場において、
歩み寄ってくるタイミングを外さないようにすることが重要である。また、これに関
し、インドの発電量は必要量の約80%しか賄えておらず、円借款の50%は発電に
利用しているが、それでも必要量の3〜4%しか満たせない。他方、売電価格は非常
に安く、このことからも上記のような時代が来ることが予想できる。
・ WANOの加盟国は、ボランティアベースで原発事故を報告することになっており、
それによれば、インドでは基本的に原子炉の安全は維持されている。しかし、一方で、
技術面のセミナー開催の要請等があり、インド自身、世界に比較してメンテナンス等
遅れている分野があることを認識しているのではないか。
・ インドでは、安全基準の許容範囲が日本とははるかに違う。例えば、ハイデラバー
ドの燃料加工工場ではウランの粉末が舞う中で作業員が作業をしている。国際的なつ
きあいの中で安全レベルを先進国並に合わせる必要があり、このための協力は必要。
今危ないから協力をというのでは手遅れだ。
・ 米国の援助で建設されたタラプール原発は、インドの核実験後、援助が断たれ、ス
ペアパーツ等について日本に支援を求めてきたことがある。また、カラチの発電所の
タービンは日立製だが、運転開始以来一度も点検しておらず、WANOに分解、点検
に必要なパーツを支援して欲しい旨の要請もあった。また、仮にセミナーなどを開き、
良い機器があると教えても、資金がなく買えないこともある。このような状況で運転
を続けている状態を放っておいて良いものか疑問。
NPTに未加盟だとどういう制約があるのか。政治的なものか、条約上の規則か。
インド、パキスタンは、IAEA査察は受け入れており、北朝鮮よりは良いとも考え
られるが。
(2)アジア原子力安全東京会議の結果について
○ 事務局より、資料6−3に基づき、アジア原子力安全東京会議の結果について、アジ
アで原子力発電導入気運が高まっている中、1)安全優先の原則を確認したこと、
2)参加者の間で具体的な協力の方策について検討することで合意したこと等の具体的
な成果をあげた今回の会合は有意義であったとの共通認識が得られ、次の会合を韓国で
開催することとなったこと等につき紹介した。
○ 以上を踏まえ、以下の通り審議が行われた。
・ 事務局より、参加国について、インド、パキスタン、シンガポールをオブザーバー
参加としたこと、台湾については参加招請しなかったこと、オーストラリアを正式参
加国としたこと等の経緯について説明があった。
また、次回は韓国がホスト国となることや、参加国、議題等はホスト国が最終的に
決定することになることについて説明があった。
・ 委員より、原子力安全条約について政府間で話すのは結構だが、政府間ベースでの
話し合いでは、NPT未加盟の問題等政治的な話が絡んできて運営しにくい。安全は
個別具体的に取り組むべき問題でもあるので、課題中心の専門家会合を行うべきとの
意見があった。また、政府レベルと民間レベルとが上手く仕分けを行い、個別の協議
は民間レベルで行う方が適当な場合もあるとの意見が出された。
・ 事務局より、旧ソ・東欧の原子力安全についてはG7を中心に検討が進んでいるが、
アジアには、これにあたる政府間対話の場がなかった。また、今回の会合を今後継続
して行っていくことについての参加国の評価は概ねよかった。今後の進め方は、韓国
が各国と相談しながら検討していくことになるが、民間等主催のセミナー、シンポジ
ウム等既存のフォーラムとの仕分についても検討していく必要があろう等説明があっ
た。
(3)核不拡散と保障措置に関する検討結果について
○ 事務局より、資料6−4に基づき、核不拡散と保障措置に関する検討結果について説
明があった。
(4)余剰兵器級プルトニウムの処理処分について
○ 事務局より、資料6−5に基づき、余剰兵器級プルトニウムの処理処分について説明
があり、以下のとおり審議が行われた。
・ 委員より、議論に必要な資料が不十分との指摘があった。一方、余剰兵器プルトニ
ウム等に関する外交問題に係る文書等の取扱いの難しさや、こうした議論を公開され
る部会で行うことの適否についての問題提起もあった。さらに、余剰兵器プルトニウ
ムとはどういう状態のものを指すのかよくわからず、核兵器国でないとその処分に関
する議論が非常に難しいとの指摘があった。
・ これに対し、事務局より、今後議論のために然るべく資料を準備していきたい旨説
明があった。また、余剰兵器プルトニウムについては、先日の解体核に関するパリ専
門家会議で、米国は52.5トン(兵器級30数トン)、ロシアは約50トンという数値を出
しているとの紹介があった。
・ 委員より、仏独のMOXプラント協力については、日本は資金だけ負担することに
なるのではとの懸念が示され、本当の意味での貢献を行う為に、日本がプルトニウム
利用の経験を通じて有している平和利用の技術をどう使っていくかにつき検討するこ
とが重要との意見があった。
・ 委員より、日本は専ら民生目的のためにプルトニウムのリサイクルを行ってきたが、
核不拡散へのコミットについて必ずしも常に完全に信頼されていないが、核拡散の観
点からは解体核兵器のプルトニウムの方がよほど大きな問題である。日本の民生用プ
ルトニウムとの違いを明確にするためにも、日本は余剰兵器プルトニウムの問題に、
受身ではなく積極的に協力していくべきとの意見があった。
○ その他
部会長より、これまではアジアの地域ごとに勉強をしてきたが、次回はアジア全般に
ついて引き続き意見交換を続けることを提案し了承され、また核不拡散に関する意見交
換も行うこととされた。次回は平成9年2月4日15:00〜17:00に開催するこ
ととし、閉会した。
以 上