資料第13-5号

平成12年度 放射線利用関係予算・制度の概要

 

1.各研究機関等における放射線利用研究関連予算

(1)日本原子力研究所

12年度政府原案 66億9千5百万円(11年度 75億2千6百万円)

 放射線等を用いた原子力分野における広範な研究開発及び試験を実施する。

(具体的な研究テーマ例)
「中性子科学研究」

12年度政府原案 31億2百万円(11年度 15億8千4百万円)

 中性子を用いた生命科学、物質科学等の基礎科学や長寿命放射性廃棄物の核種変換消滅処理等の研究開発を推進するため、原研の中性子科学研究計画と高エネルギー加速器研究機構の大型ハドロン計画との施設統合により、大強度陽子加速器、核破砕ターゲットからなる世界最大強度の核破砕中性子源の実現を目指す。

「光量子科学研究」 

12年度政府原案 17億9千2百万円(11年度 39億6千1百万円)

 X線レーザーの開発、極短パルス・超高ピーク出力のレーザー開発及びその応用研究を進めるとともに、レーザー加速技術の開発を実施する。

「荷電粒子科学研究」

12年度政府原案 10億5千8百万円(11年度 12億6千1百万円)

 TIARA(イオン照射研究施設)を使ったイオンビームによる材料・バイオ研究等を実施する。

「放射線照射利用開発」

12年度政府原案4億6千3百万円(11年度 3億9千6百万円)

 ダイオキシンの分解など、放射線による環境保全技術や将来のニーズに応える新技術の開発を目指した放射線照射利用開発を行う。

「RI製造・利用研究」 

12年度政府原案 2億7千9百万円(11年度 3億2千4百万円)

 新しい医療用ラジオアイソトープ等の製造技術や利用に関する研究開発を行う。

 

(2)理化学研究所  

12年度政府原案 58億5千万円(11年度 48億5千万円)

(具体的な研究テーマ)
「RIビームファクトリー計画の推進」
         

12年度政府原案 41億9千1百万円(11年度 34億2千5百万円)

 RI(不安定核)ビームを全元素にわたって世界最大強度、最高エネルギーで発生させる次世代加速器施設「RIビームファクトリー」を整備する。

「超重元素及び新不安定同位元素の研究」
               

12年度政府原案 1億9千2百万円(11年度 2億円)

 理研リングサイクロトロンを用いて、これまで実現されていない原子核を探索し、その特性を解明することにより、原子核分野の新領域を開拓し、また、物性、化学の分野への応用を図る。

「高温・高密度原子核の研究」
           

12年度政府原案 12億2千万円(11年度 10億2千3百万円)

 リングサイクロトロン及び米国ブルックヘブン国立研究所の衝突型重イオン加速器(RHIC)を用いて、スピン物理に関する研究を総合的に実施する。

「中間子・ミュオン粒子、中性子の発生と応用」
               

12年度政府原案 3億4千万円(11年度 3億2百万円)

 リングサイクロトロン及び英国ラザフォード・アップルトン研究所のパルス状陽子加速器を用いてミュオン化学に関する研究を総合的に推進する。

「バイオクロストーク機能研究」 

12年度政府原案 7千9百万円(11年度 8千万円)

 高エネルギー重イオンビームとライフサイエンス分野の最先端技術を用いて、動植物の細胞内や器官間の情報伝達を操作し、その機能を解明する。

 

(3)日本原子力研究所/理化学研究所

「大型放射光施設(SPring-8)利用研究の推進及び共用の促進」
            

12年度政府原案 155億7千万円(11年度 161億3千万円)

 大型放射光施設SPring-8の共用を促進するために、共用ビームラインの整備等を実施するとともに、高輝度放射光を利用した物質科学研究、生命科学研究及び放射光に関する先端技術開発研究を推進する。

 

(4)放射線医学総合研究所 

12年度政府原案66億7千万円(11年度64億1千4百万円)

「重粒子プロジェクト研究」
           

12年度政府原案 9億9千7百万円(11年度 9億9千7百万円)

 重粒子線がん治療の臨床試行を推進するため、国内外の研究者、医療関係者を結集して医学、生物学、物理工学等の広範な観点から研究を実施する。

「高度診断機能研究」 

12年度政府原案 1億5千4百万円(11年度 1億3千4百万円)

 国内外の研究者等を結集して、PET(陽電子放出断層撮影法)やSPECT(単光子放出断層撮影法)を用いて薬剤技術、測定技術の研究開発及び臨床応用研究開発を実施する。

「高度画像診断装置開発研究」 

12年度政府原案 2億円(新規)

 身体の外から微小な癌や血管の異常等を発見することが可能となる次世代型PET装置及び4次元X線CT(X線コンピュータトモグラフィー)を開発する。

 

(5)国立研究機関(一括計上)
          

12年度政府原案 4億3千8百万円(11年度 4億8千6百万円)

(具体的なテーマ例)

<食品照射>
「低エネルギー電子ビームを用いた食品の処理技術の開発」
(農林水産省食品総合研究所)

12年度政府原案 2百万円(11年度 4百万円)

 電子ビームのエネルギーを変えた時の種々の食品や農作物の品質および生理に及ぼす影響を調べるとともに,殺菌,殺虫,発芽抑制効果について検討し,低エネルギー電子ビームの特徴を活かした新たな食品照射技術を開発する。

<農林水産>
「放射線および環境汚染物資が家畜疾病に与える影響の解明」
(農林水産省家畜衛生試験場)  

12年度政府原案6百万円(11年度0円)

 放射線および環境汚染による家畜疾病発生に及ぼす影響および放射線を用いた環境ホルモンの生体内での動態を明らかにする。

<医学利用>
「新しい存在様式のプロテインキナーゼ(PKR)の抗ウイルス作用に関する研究」
(厚生省国立感染症研究所)  

12年度政府原案4百万円(11年度0円)

 当研究所で発見された、インターフェロンによって細胞内に誘導される蛋白リン酸化酵素(PKR)の新しい存在様式について、33Pや35Sをトレーサーとして従来の存在様式のものと比較しつつウイルス感染系における働きを研究する。

<工業利用>
「化学交換法による軽元素同位体の分離・採取技術に関する研究」
(通産省四国工業技術研究所) 

12年度政府原案1千3百万円(11年度1千2百万円)

 核融合燃料のトリチウム源や核融合炉材として使われるリチウム同位体と、原子力発電における遮蔽材として重要なホウ素同位体を、高性能吸着剤により海水等の国内資源から分離採取する技術を開発する。

<環境対策>
「ガス交換能を有する肺胞モデルの開発と健康影響評価への応用」
(環境庁国立環境研究所)     

12年度政府原案1千1百万円(11年度0円)

 ガス交換能を有する人工肺胞構造体を、肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の共培養により構築し、この人工肺胞に大気汚染ガスの暴露を行い、人工肺胞の機能傷害をRIを用いて評価できる暴露装置を構築する。

 

2.一般会計における放射線利用技術関連支援制度

○粒子線高度がん治療促進研究施設の整備事業に対する補助
 (「生活・地域科学技術研究施設整備費補助金」の一部)
    

12年度政府原案 24億7千8百万円の内数(11年度 27億5千4百万円の内数)

 がん治療研究技術の向上及び住民の福祉の向上に資するため、地方公共団体の粒子線高度がん治療施設(当面、陽子線がん治療施設を対象)の整備に対する補助を行う(補助率1/2)。

 

3.電源開発促進対策特別会計(電源立地勘定)における支援制度

(1)放射線利用技術・原子力基盤技術移転事業等委託費
              

12年度政府原案 1億1千万円(11年度2億2千万円)

 地方の研究開発機関等の放射線利用技術・原子力基盤技術に係わる人材育成の観点から、中央からの研究者、技術者の派遣や地方研究者等の研修の斡旋を行うとともに、これらの技術に関する知識普及を目的としたセミナー開催及び放射線利用・原子力基盤技術試験研究データベースの整備・提供を行う。(委託先:(財)放射線利用振興協会等)

(2)放射線利用・原子力基盤技術試験研究交付金

12年度政府原案 27億円(11年度 27億円)

 原子力発電施設が設置されている都道府県に対し、放射線の利用及び原子力基盤技術に関する試験研究の用に供する施設・設備の整備等に充てるための交付金。
(交付限度額)
 ①大規模研究施設整備等事業
 ②中規模研究施設整備等事業
 ③施設研究事業:交付開始年度から5年間 10億円/5カ年
 ④人材育成等事業:交付開始年度から5年間 5億円/5カ年

 

4.財政投融資における放射線利用技術の支援制度

(1)放射線利用技術の技術開発(日本政策投資銀行)

 民間企業等による放射線利用技術を用いたライフサイエンス、環境保全及び材料系科学の各分野における研究・事業を対象に、その事業費の一部について融資する。
(融資対象)
 加速器等を用いた放射線利用技術のうち、特に社会性、公共性が高いライフサイエンス分野、物理・材料系科学分野、環境分野等における技術開発であり、その成果が特許及び実用新案を取得できるレベルにあるもので、下記のいずれかに該当する事業。
 ①放射線利用機器そのものの高度化等を行い新技術の企業化を行う事業
 ②放射線利用機器を用いて高度な放射線利用研究を行う事業
  (対象設備例: PET、活性炭電子線照射再生装置、小型サイクロトロン)

(2)放射線利用事業育成:革新技術導入促進資金(中小企業金融公庫、国民生活金融公庫)

 中小企業が粒子線、電磁波等(放射線を含む)を利用して対象物の加工又は調整若しくは対象物の状態の測定を行う技術を用いた設備を導入するために必要な設備資金及び長期運転資金
  融資対象設備例: 加速器、γ線照射装置、X線照射装置、電子線照射装置