資料第13-4号

放射線利用技術・原子力基盤技術移転事業の実施状況について

1.事業の目的
 本事業は、科学技術庁が財団法人放射線利用振興協会へ委託して平成7年度から実施している。その目的は、地方の研究者・技術者を対象に、工業、農業、医学分野における放射線利用技術、その基礎となる原子力基盤技術の理解・普及を図るとともに、これらの技術の地方産業への技術移転を支援し、地域振興に役立てることである。

2.事業内容
(1)放射線利用技術セミナーの開催
(2)専門家派遣及び技術研修
(3)データベースの整備・提供

3.実施状況
(1)放射線利用技術セミナーの開催
 専門家による講義、模型・放射線利用製品・パネルの展示・説明、小型電子加速器を用いた加工の実演等を通して、放射線利用技術の普及を図ってきた。これまでのセミナーの開催状況は以下の通りであり、参加者数は、61-136名/回、平均87名/回である。

(2)専門家派遣及び技術研修
 地方公共団体等の要請に応じて放射線利用技術に関する専門家を派遣するとともに、地方機関の研究者・技術者の国の公的研究機関での研修の斡旋、支援を行ってきた。 これまでに実施した専門家派遣、技術研修を表にまとめた。

2-1)専門家派遣(派遣人数、カッコ内は回数)

2-2)技術研修

(3)データベースの整備・提供
 放射線利用技術及び原子力基盤技術の二つの技術分野における研究成果等を解説したデータベースを整備してきた。整備したデータベースは平成12年3月15日に一部インターネットで一般公開する予定である。
 放射線利用技術に関しては、放射線利用技術試験研究データベース検討委員会(委員長:勝村庸介東大教授)及び4専門部会において、工業分野、農業分野、医学分野、放射線技術の要素データを整備している。また、原子力基盤技術に関しては、原子力基盤技術試験研究データベース検討委員会(委員長:北村正晴東北大教授)及び2専門部会において材料、人工知能、計算科学、レーザー、リスク評価・低減化、ビーム利用計測・分析技術の要素データを整備している。

3-1)これまでに整備したデータベース数

3-2)データベースの試験公開及び一般公開
 これらのデータベースは、放射線利用振興協会のホームページ(http://www.rada.or.jp)上で放射線利用技術データベースは平成10年10月より、原子力基盤技術データベースは平成12年1月より試験的に公開している。
 このうち放射線利用技術データベースについては、平成12年3月15日より約520件の要素データ(出版社又は著者のデータ転載許諾を得たもののみ)を一般公開する予定である。
(参考)データベース(試験公開)へのアクセス数(平成12年3月8日現在)
   放射線利用技術データベース  2916件
   原子力基盤技術データベース   146件

4.これまでの主な成果
 過去5年間の本事業の活動によって、放射線利用技術・原子力基盤技術にほとんどなじみのなかった多くの地方研究者・技術者がこれらの技術への理解を深めることができ、また、幾つかの地方自治体においては、本事業がきっかけとなって、これらの技術分野の研究施設が整備され、研究開発が開始されている。更に、本事業が引き金となって中央の研究機関との共同研究へと進展した例もある。このように本事業の目的である地方機関への技術の普及・移転は着実に進展しつつあると考えられる。  主な具体的成果を以下に示す。

(財)若狭湾エネルギー研究センター(福井県、平成10年11月開所)におけるイオン加速器の整備、研究立ち上げ。
(財)先端医学・薬学研究センター(石川県、平成10年11月開所)におけるPET装置、RI標識医薬製造施設整備、研究立ち上げ。
福井工業技術センターにける電子加速器の導入及びそれを用いた繊維の改質の研究開始。(平成平成10年度)
静岡農業試験場における放射線を用いた農作物の品種改良技術開発プロジェクトの開始。(平成9年度)
佐賀県における半導体工業、医学薬学分野に関する放射光利用技術開発プロジェクトの開始。(平成10年度)