平成10年度放射線利用関係予算について
平成10年度 放射線利用関係予算・制度の概要
1.各研究機関等における放射線利用研究関連予算
①日本原子力研究所 10年度政府原案 70億1千2百万円(9年度 42億5千6百万円)
- 放射線等を用いた原子力分野における広範な研究開発及び試験を実施する。
(具体的な研究テーマ例)
- 「中性子科学研究」 10年度政府原案 11億4千4百万円(9年度 10億2千7百万円)
- 大強度中性子を利用した生命科学等の基礎研究や消滅処理研究を推進するため、大出力超伝導陽子加速器等を開発するとともに、研究炉を用いた中性子利用研究を進める。
- 「光量子科学研究」 10年度政府原案 40億6千万円 (9年度 14億4千1百万円)
債 9億7千万円 〃債 48億8千1百万円
- X線レーザーの開発、極短パルス・超高ピーク出力のレーザーの開発及びその応用研究を進めるとともに、レーザー加速技術の開発を実施する。
- 「荷電粒子科学研究」 10年度政府原案 11億7千1百万円(9年度 11億3千6百万円)
- TIARA(イオン照射研究施設)を使ったイオンビームによる材料・バイオ研究等を実施する。
- 「RI製造・利用研究」 10年度政府原案 6億3千7百万円(9年度 6億5千2百万円)
- 新しい医療用等ラジオアイソトープの製造及び利用研究を行う。
- ②理化学研究所 10年度政府原案 26億8千5万円 (9年度 15億7千万円)
債 28億9千8百万円
- 加速器からの重イオンビームを利用した原子・原子核物理に関する研究を実施する。
- (具体的な研究テーマ例)
- 「RIビームファクトリー」 10年度政府原案 12億5千9百万円(9年度 3億5千1百万円)
債 28億9千8百万円
- RI(不安定核)ビームを全元素にわたって世界最大強度、最高エネルギーで発生させる超伝導リングサイクロトロン等のRIビーム発生施設の整備を実施する。
- 「超重元素及び新不安定同位元素の研究」
10年度政府原案 2千万円(9年度 2千万円)
- リングサイクロトロンを用いて、これまで実現されていない原子核を探索し、その特性を解明することにより、原子核分野の新領域を開拓し、また、物性、化学の分野への応用を図る。
- 「高温・高密度原子核の研究」
10年度政府原案 9億9千5百万円(9年度 7億8千8百万円)
- リングサイクロトロン及び米国ブルックヘブン国立研究所の衝突型重イオン加速器を用いて、スピン物理に関する研究を総合的に実施する。
- 「中間子・ミュオン粒子、中性子の発生と応用」
10年度政府原案 3億3千1百万円(9年度 3億3千1百万円)
- リングサイクロトロン及び英国ラザフォード研究所のパルス状陽子加速器を用いて、ミュオン科学に関する研究を総合的に実施する。
- 「機動的先端研究」 10年度政府原案 8千万円(9年度 8千万円)
- 国際フロンティア研究システムの枠組みを活用し、高エネルギー重イオンビームとライフサイエンス分野の最先端技術を駆使して、動植物における細胞内諸器官間や細胞集団間のバ イオクロストークを操作し、その機能を解明するバイオクロストーク研究を実施する。
- ③日本原子力研究所/理化学研究所
- 「大型放射光施設(SPring 8)の整備」
10年度政府原案 164億6千万円(9年度 192億6千万円)
〃 債 10億円
- 高輝度放射光を利用した物質・材料、バイオテクノロジー、情報・電子、化学、医療等広範な分野の研究等を推進するため、加速器等の製作、ビームラインの整備等を実施する。
- ④放射線医学総合研究所 10年度政府原案 69億8千6百万円(9年度 73億6千8百万円)
債 4億3千5百万円
- 放射線の医学利用等の中核的研究機関として、基礎研究を実施する。
- 重粒子線を用いた癌治療法の開発を実施する。
- 「重粒子プロジェクト研究」 10年度政府原案 10億2千万円(9年度 9億6千2百万円)
- 重粒子線癌治療の臨床試行を推進するため、国内外の研究者、医療関係者を結集して医学、生物学、物理工学等の広範な観点から研究を実施する。
- 「高度診断機能研究」 10年度政府原案 1億3千6百万円(9年度 1億3千7百万円)
- 国内外の研究者等を結集して、PET(陽電子放出断層撮影法)やSPECT(単光子放出断層撮影法)を用いた薬剤技術、測定技術の研究開発と臨床応用研究開発を実施する。
- ⑤国立研究所(一括計上) 10年度政府原案 5億5百万円(9年度 4億9千7百万円)
- 厚生省、通産省等5省庁の国立研究所等38機関において、医療、工業等の分野別に59テーマについて研究を実施する。
- (具体的なテーマ例)
- <食品照射>
- 「低エネルギー電子ビームを用いた食品の処理技術の開発」
- (農林水産省食品総合研究所) 10年度政府原案 409万8千円(9年度 775万1千円)
- 物質に対する透過力が小さい電子ビームについて、殺菌、殺虫、発芽抑制効果の検討と、照射による食品や農産物の品質、生理への影響を調べ、電子ビームによる新たな食品照射技術を開発する。
- <農林水産>
- 「ゲノム機能の効率的解析をめざした新しい遺伝子単離法の開発」
- (農林水産省農業生物資源研究所)10年度政府原案 908万7千円(9年度 936万8千円)
- タンパク質の遺伝子について、遺伝子の機能に基づき直接的に遺伝子を効果的かつ大量に単離する新手法の開発を行う。
- <医学利用>
- 「消化管上皮細胞再生系に対する放射線の機能障害とその栄養的修飾性の解析」
- (厚生省国立健康・栄養研究所) 10年度政府原案 466万9千円(9年度 474万6千円)
- 放射線曝露による小腸細胞再生系の障害を介した消化管機能の変動および回復に対する栄養的因子の修飾性、並びに、放射線治療や治療時における消化吸収細胞の分化および修復改善についての研究を行う。
- <工業利用>
- 「エネルギー可変γ線発生技術の高度化とその利用に関する研究」」
- (通商産業省電子技術総合研究所) 10年度政府原案 1,882万9千円(9年度 0千円)
- 小型蓄積リングを使った逆コンプトン散乱によるγ線の発生技術、計測技術の高度化を行い、γ線CT装置への応用を図り、実用的なシステムの開発を行う。
- <環境対策>
- 「環境化学物質に対するバイオエフェクトセンサーの開発」
- (環境庁国立環境研究所) 10年度政府原案 1,190万4千円(9年度 1,532万3千円)
- 肺胞上皮または肝臓と構造、機能が同等の組織を人工膜上に再構成した組織に、環境化学物質による障害を計測するための素子を着装した、新たな生体影響感応素子の開発を行う。
- 2.一般会計における放射線利用技術関連支援制度
- ○粒子線高度がん治療促進研究施設の整備事業に対する補助
- (「生活・地域科学技術研究施設整備費補助金」の一部)
- (予算額109年度政府原案 「生活・地域科学技術研究施設整備費補助金」
30億6千万円の内数 (9年度 34億円の内数)
- (概 要)
- がん治療研究技術の向上及び住民の福祉の向上に資するため、地方公共団体が、地域のニーズを反映した粒子線高度がん治療装置を用いたがんの治療研究を行うための、粒子線高度がん治療施設(当面は陽子線がん治療施設を対象)の整備事業に対する補助。
- (補助率) 2分の1
- (交付先) 地方公共団体
- 3.電源開発促進対策特別会計(電源立地勘定)における放射線利用技術関連支援制度
- ①放射線利用技術・原子力基盤技術移転事業等委託費
- (予算額)10年度政府原案 3億5千万円(9年度 3億8千1百万円)
- (概 要)
- 地方の研究開発機関等の放射線利用技術・原子力基盤技術に係わる人材育成の観点から、中央からの研究者・技術者の派遣斡旋の実施等の技術指導を図るとともに、これらの技術に関する知識普及を目的としたセミナー及び放射線利用・原子力基盤技術試験研究データベースの整備・提供を行う。
- (委託先)(財)放射線利用振興協会等
- (実施期間)平成7年度~平成11年度
- ②放射線利用・原子力基盤技術試験研究推進交付金
- (予算額)10年度政府原案 27億5千万円(9年度 25億5千万円)
- (概 要)
- 原子力発電施設等が設置されている都道府県に対し、放射線の利用及び原子力基盤技術に関する試験研究の用に供する施設、設備の整備等に充てるための交付金。
- (交付先)原子力発電施設等がその区域内において設置されている都道府県
- (交付限度額)
- (1)大規模研究施設整備等事業
- 事前調査事業:基準年度から2年間
a.基準年度 50,000千円/年
b.基準年度の1年後の年度100,000千円/年
- 施設等整備事業:基準年度の2年後の年度から4年間2,200,000千円/4カ年
(2)中規模研究施設整備等事業
- 施設等整備等事業:交付開始年度から5年間1,000,000千円/5カ年
(3)試験研究事業:交付開始年度から5年間 250,000千円/5カ年
(4)人材育成等事業:交付開始年度から5年間 250,000千円/5カ年
- 4.財政投融資における放射線利用技術関連支援制度
- ①放射線利用技術開発(日本開発銀行)
- (概 要)
- 我が国の放射線利用技術の開発及び普及・促進を図るため、民間企業等による放射線利用技術を利用したライフサイエンス、環境保全及び材料系科学の各分野における研究・事業を対象に、その事業費の一部について融資する制度。「新技術開発・新規事業育成」枠内の制度。
- (融資対象)
- 加速器等を用いた放射線利用技術のうち、特に社会性、公共性が高いライフサイエンス分野、環境分野、材料系科学分野等における技術開発であり、その成果が特許又は実用新案を取得できるレベルにあるもので、放射線利用機器そのものの高度化等を行い企業化を行う事業又は放射線利用機器を用いて高度な放射線利用研究を行う事業。
- (融資条件)金 利:特別金利③、融資比率:50%
- ②放射線利用事業育成:革新技術導入促進資金(中小企業金融公庫、国民金融公庫)
- (概 要)
- 新規事業分野の開拓等につながる革新技術の導入(革新技術が体化された設備等の導入、特許権等の導入)を行おうとする中小企業者の資金調達を支援する制度。なお、放射線利用技術は、貸付対象となる革新技術のうち「粒子線・電磁波等応用技術」に含まれる。
- (貸付対象)革新的な技術を導入する中小企業者
(貸付条件)
- 資金使途:革新技術の導入(革新技術が体化された設備等の導入及び 特許権、実用新案権、プログラムに係る著作権及び半導体集積回路配置利用権(これらの実施権及び同時に導入されるノウハウを含む。)の導入)に必要となる設備資金及び(長期)運転資金
- 貸付限度:中小公庫 直接貸付 …7億2千万円
(うち、長期運転資金は2億5千万円まで)
特別利率適用限度 2億7千万円
代理貸付 …1億2千万円
国民公庫 7,200万円
(うち、運転資金は4,800万円まで)
- 貸付利率:設備資金 …特別利率②
(長期)運転資金…基準金利
- 貸付期間:設備資金 …15年以内(うち、据置2年以内)
(長期)運転資金… 5年以内、特に必要な場合7年以内
(うち、据置1年以内)
(取扱期間)平成13年3月31日まで