資料第5−2−2号


放射光施設の整備状況



1.大型放射光施設(SPring−8)計画の概要放射光施設の整備状況



(1)大型放射光施設の概要
 光速近くまで加速した電子を曲げたときに出てくる「強くて、性質の優れた光(放射光)」を様々な分野で幅広く利用する施設。

(2)大型放射光施設設置の意義及び緊要性
 1)基礎的・先導的な科学技術の推進
   (物質・材料科学、ライフサイエンス、情報・電子科学、医学 等)
 2)国際的にも評価される先端水準の研究開発の充実
  (欧米においては既に大型放射光施設の利用を推進中)
 3)最先端、基礎研究のための研究開発基盤の整備
 4)大型共同利用施設を活用した学際的、国際的な研究交流の推進

(3)利用の具体例
 1)生体材料を損傷せずに観察(例:心臓冠状動脈の診断)
 2)物質の分子や原子までのミクロな解析(例:触媒作用の動的観察)
 3)密閉された容器内を外部から観察(例:超高圧、高温下の観察)
 4)材料の極微細加工(例:超LSIの微細加工)

(4)大型放射光施設計画推進体制等の概要
 1)推進体制
  1. 日本原子力研究所と理化学研究所が共同して建設を推進。
  2. 本施設の管理運営については、平成6年10月3日に「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」に基づき放射光利用研究促進機構に指定された(財)高輝度光科学研究センター(JASRI)が担当し、共用の促進を図る。


 2)スケジュール
 a. 昭和62年度〜 研究開発等
 b. 平成 2年度 建設着手
 c. 平成 9年秋 供用開

3) 建設費総額          約1,100億円(基本施設の建設費)

4)予算(平成9年度政府原案(平成8年度予算額))
                    193億円 ( 165億円)

(5)共用ビームライン計画の概要
    SPring−8の供用開始当初の共用ビームラインは10本である。今後このビームラインは増設される予定であり、平成9年度においては、医学利用のためのビームライン(中尺)の整備を開始する。





2.高輝度放射光による次世代診断技術の概要



(1)趣 旨
 医学分野において、診断は治療と並び車の両輪であり、より高度な診断技術の開発により、正確かつ適切な治療の実施が可能となる。
 高輝度放射光による診断技術の高度化を行うことにより、従来は不可能だった臓器内部や微小部分の診断が可能となり、がんの性状診断、侵襲の少ない微小血管造影、冠状動脈造影等により、がん、脳血管疾患、心疾患等の各種疾病に有効な治療法の選択が可能となる。
 このような放射光の発生が可能な施設は、現在、我が国においては、高エネルギー物理学研究所の電子蓄積リングや、日本原子力研究所及び理化学研究所のSPring−8のような大型施設に限られている。しかし、今後、実際の診断装置として確立・普及を図っていくためには、病院に設置可能な小型の医療用放射光施設を開発することが不可欠である。

(2)放射光診断研究の推進
 放射線医学総合研究所において、平成9年度より、診断の高度化による治療の精度向上を目指し、放射光診断設備の開発・普及に資するための「放射光診断研究」を行う。本研究において、医療用放射光発生装置の小型化、放射光の高輝度・短波長化を図る上で特に重要な超伝導多極ウィグラー等の要素技術の開発研究を行う。


(3)予算(平成9年度政府原案)
    放射光診断研究の推進            2千4百万円(新規)