参考資料−5

用語解説

1.はじめに

【P.1】

 ○加速器科学

加速器に関する新しい原理や新しい技術を研究する分野。

 ○メガサイエンスフォーラム
OECDの下で多国間協力を求める巨大科学の問題に関して、OECD加盟国の上級科学政策官の定期的な会合の場を提供し、調査や適時な勧告を出す。現在はグローバルサイエンスフォーラムとして活動を継続。

 ○SNS計画
Spallation Neutron Source(核破砕中性子源)計画の略称。中性子利用研究を展開するために、1GeV(ギガ電子ボルト=十億電子ボルト)の陽子加速器及びこれにより駆動される2MW(メガワット=百万ワット)の出力の中性子源を建設する計画。米国会計年度1998年から建設に着手。

 ○ESS計画
European Spallation Source(欧州核破砕中性子源)計画の略称。中性子利用研究を展開するために、1.3GeV(ギガ電子ボルト=十億電子ボルト)の陽子加速器及びこれにより駆動される5MW(メガワット=百万ワット)の出力の中性子源を建設する計画。現在、概念設計中。

 ○中性子
陽子とともに原子核を構成する電気的に中性の粒子。水素の原子核である陽子とほぼ同じ質量を持ち、中性子ビームを物質で散乱させた場合には、物質内の水素などの軽い原子に対し敏感である。また、磁気能率も持ち、磁性研究にも用いられる。

 ○中性子科学研究計画
日本原子力研究所が進めていた1.5GeV(ギガ電子ボルト=十億電子ボルト)の大強度陽子加速器と5MW(メガワット=百万ワット)の中性子源施設及び核変換技術実験施設等を用いて中性子科学を推進する計画。

 ○ハドロン
強い相互作用をする核子(陽子と中性子)や中間子の総称。複数個のクォークから構成される。クォーク相互を結びつける糊の役割をしているのがグルーオンである。

 ○大型ハドロン計画
高エネルギー加速器研究機構が進めていた3GeV(ギガ電子ボルト=十億電子ボルト)の陽子ビームを用いて、0.6MW(メガワット=百万ワット)の中性子源施設、ミュオン施設、短寿命核ビーム施設を用いた研究を行うと同時に、50GeV(ギガ電子ボルト=十億電子ボルト)の陽子ビームを用いて原子核・素粒子及びニュートリノの研究を行う計画。

 ○放射光
光の速度近くまでの非常に高いエネルギーに加速された電子の軌道を電磁石によって曲げた際に、軌道の接線方向に発生する強い光のことをいう。

 ○高出力のビーム
ビームの出力とは、エネルギーと電流(単位時間あたりの粒子の数)を掛け合わせたもので、パワーとも言う。ビームがすべて熱に変わったとした場合の熱量(W、ワット)で表す。大出力も同じ意味。

 ○ビーム強度
ビーム強度とは、単位時間あたりに単位面積を通過する粒子の数である。

 ○二次粒子
陽子が原子核に衝突して核反応を起こした時に発生する粒子。

 

3.科学技術・学術的評価について

【P.3】

 ○GeV
エネルギーの単位。10億電子ボルトをギガ電子ボルトあるいはGeV(ジェブ)という。

 ○量子色力学
素粒子の4つの基本相互作用のうちクォーク間に働く強い相互作用を記述する力学。高エネルギー極限での量子色力学の振る舞いは比較的理解されているが、我々の世界を形作る原子核において重要となる低エネルギー領域での振る舞いを研究することが今後の課題である。

 ○核力の描像
原子核を構成する核子の間に働く核力(強い相互作用)は、これまで中間子交換に基づく描像(湯川理論)で理解されてきた。一方、核力は本来クォーク間の力が原動力となっているので、クォーク間相互作用(量子色力学)に基づいた核力の理解が今後の大きな課題である。

 ○K中間子
ストレンジネス(奇妙さ)量子数を持つ中間子。K中間子ビームを用いることによって、原子核内に「奇妙さ」という量子数を持ち込むことができる。また、K中間子の崩壊の研究から粒子反粒子混合の問題の研究が可能になることも注目されている。

 ○ハイパー核
ストレンジネス(奇妙さ)と呼ばれる量子数を持つ新しい種類の原子核。

 ○素粒子世代間の対称性
素粒子(クォークやレプトン)はそれぞれ3世代に分類されている。これらの世代間の混合は対称性を破る原因と考えられている。

 ○クォーク
物質を構成する最も基本的な構成要素の一種。u(アップ)、d(ダウン)、s(ストレンジ)、c(チャーム)、b(ボトム)、t(トップ)の6種類ある。通常単体では存在せず、クォーク複合体を形成して核子や中間子などが形成されている。

 ○レプトン
物質を構成する最も基本的な構成要素の一種。e(電子)、m(ミュオン)、t(タウオン)、ne(電子ニュートリノ)、nm(ミュオンニュートリノ)、nt(タウニュートリノ)の6種類がある。

 ○統一的描像
全ての相互作用は根源的には単一の相互作用から出発しているとする考え。電磁相互作用と弱い相互作用を統一的に扱う理論は電弱統一理論または標準理論と呼ばれる。さらに強い相互作用までを含めた理論は大統一理論と呼ばれる。

 ○ニュートリノ研究
これまでニュートリノは質量がないと思われていたが、最近のスーパーカミオカンデでの研究により、微少ながら質量を持つことが示唆された。ニュートリノが質量を持つと、異なる世代間のニュートリノが混じるとニュートリノ振動がおこる。この現象を検証するために、加速器からのミュオンニュートリノビームによる、長基線ニュートリノ振動実験が進行中である。

 ○ニュートリノパラメータ
ここでいうニュートリノパラメータとは、ニュートリノ振動を記述する、異なるニュートリノ間の質量差や混合角などのパラメータ群を指す。

 ○中性子
1.を参照

 ○ミュオン
レプトンの一種で電子の兄弟の粒子。質量は電子のおよそ200倍である約105MeV。電荷以外に磁気能率を持つため、物質の磁気的な性質の研究にも適している。

 ○放射光
1.を参照

 ○高温超伝導体
絶対温度数10度以上の温度でも超伝導状態を示す物質のこと。ある温度以下で電気抵抗が0になる物質を超伝導体と言うが、従来は絶対温度零度に近い極低温でこのような現象が起こることが知られていた。1980年代後半以降、高温超伝導体が次々に発見され、様々な方面への実用化が期待されている。

 ○巨大磁気抵抗酸化物
一般に導電性物質に磁場をかけると電気抵抗が変化するが、抵抗変化が特に大きい場合を巨大磁気抵抗という。その発現の仕組みを理解することは、物性物理の最新のテーマの一つである。

 ○高性能バッテリー
近年盛んに研究開発が行われているリチウムマンガン電池などの高性能バッテリーのこと。これらの新材料の研究開発にはその構造と機能の解明が不可欠となる。

 ○偏極中性子
中性子は電荷をもたないが、磁気能率をもっている。この磁気能率の方向をそろえた中性子のこと。

【P.4】

 ○加速器駆動パルス中性子源
加速器からの陽子ビームを標的に照射し、発生する中性子を利用する中性子源のこと。原子炉からの中性子は時間的に連続なのに対し、陽子ビームがパルス状であるため、発生する中性子もパルス状である。

 ○長寿命核種
一般に寿命(半減期)の長い放射性原子核のことを指す。崩壊し無害化するのに長期間を要する。ここでは放射性廃棄物中に含まれる半減期が数千年以上のマイナーアクチノイドやテクネシウム99やヨウ素129などの核分裂生成物を指す。

 ○加速器駆動核変換技術
加速器からの陽子ビームを標的に導き、発生する中性子によって人工的に制御された核分裂反応を起こさせることによって、長寿命核種を比較的短寿命の核種に変換する技術。

 ○超伝導加速器技術、中性子ターゲット技術、及び未臨界特性
いずれも加速器駆動核変換システムの実現に不可欠な開発項目である。超伝導加速器技術は連続的な大強度陽子ビームを得るために必要であり、メガワット(MW)級の大強度陽子ビームに耐えうる中性子ターゲット技術も開発途上である。また、加速器駆動による未臨界炉(自発的な核分裂が持続しない状態の炉)はこれまで例がなく、その特性を知ることも必要不可欠である。

 ○短寿命核
寿命(半減期)が短い(例えば数ミリ秒程度)原子核。宇宙における元素生成には短寿命核が重要な役割を担っていると考えられている。

 ○ESS計画
1.を参照

 ○SNS計画
1.を参照

 ○ハドロン
1.を参照

【P.5】

 ○JRR−3
日本原子力研究所東海研究所に設置されている改造3号炉。1990年に完成した。研究用原子炉で、冷中性子源を持つ。

 ○KENS
高エネルギー加速器研究機構の500MeV陽子シンクロトロンに設置されている、世界初の短パルス核破砕型中性子源。1980年に共同利用を開始した。

 ○大型放射光施設(SPring-8)
兵庫県西播磨に設置された最先端の放射光による大型研究施設。8GeVの周回電子から発生するX線領域や紫外線領域の放射光を用いて、生命科学、物質科学などの研究が行われている。

 ○MW
メガワットと読む。ビーム電流をアンペア(A)、ビームエネルギーを電子ボルト(eV)で表した場合、その積がビームパワーであり、単位はワット(W)である。1MWは百万ワット。核破砕によって生じる中性子ビームの強度はほぼ陽子ビームのワット数に比例する。

 ○平均中性子強度
時間的に平均した単位時間あたりの中性子の強度。

 ○パルスピーク強度
加速器駆動中性子源からの中性子ビームはパルス状となるが、パルスの尖頭での中性子ビーム強度。

 ○ラジオグラフィ
X線透視カメラのように連続的に中性子を照射することによって像を得る手法。

 ○中性子入射エネルギー
試料に照射する入射中性子の運動エネルギー。

 ○核破砕中性子源
陽子ビームを原子核標的に導き、標的核を破砕させることによって中性子を発生させる中性子源。

 ○バッテリー
近年リチウムマンガン電池など高機能の新材料を用いた蓄電池(バッテリー)の開発が盛んに行われている。中性子はリチウムなどの比較的軽い原子に敏感なので、これらの新材料の構造や機能の解明に極めて有効である。

 

4.経済的・社会的評価等について

【P.6】

 ○ドラッグデザイン
中性子を用いてタンパク質の構造と働きを解明して、目的とする病気の治療薬として必要なタンパク質構造を設計すること。

【P.7】

 ○産業連関分析
一つの製品需要が様々な産業分野に誘発する生産額を産業連関と呼び、それを用いる波及効果分析手法を産業連関分析という。

 ○マクロ経済分析
経済効果を国民総生産のような巨視的な量(マクロ)で見た場合に、それをいくつかの変数を含む理論式で表現し、実経済の結果から各変数の値を決定する。このようにして得た計算式により投資の効果を予測計算する手法。

 

5.運営体制等について

【P.8】

 ○ニュートリノ
3.を参照

 ○ミュオン
3.を参照

 ○核変換技術
核反応によって、ある核種が他の異なる核種に変わることを利用して、存在する数が半分に減少するのに数万年の時間を要する長寿命の放射性核種を、数百年で半減する短半減期の核種または放射線を出さない安定な核種に変える技術。