大強度陽子加速器施設計画(仮称)評価専門部会
(第3回)議事録(案)

 

1.日 時  平成12年3月1日(水)10:00〜13:00

2.場 所  科学技術庁第7会議室(通商産業省別館9階)

3.出席者

(委   員)末松部会長、井口、小川、上坪、倉内、清水、鈴木、谷畑、藤井、益川の各委員
(原子力委員)藤家委員長代理、遠藤委員
(日本原子力研究所)松浦理事長、村上副理事長、齋籐東海研究所長、田中東海研究所副所長、その他関係者
(高エネルギー加速器研究機構)菅原機構長、木村物質構造科学研究所長、永宮教授、木島管理局長、その他関係官
(事 務 局)中澤長官官房審議官、川原田原子力局研究技術課長、清木学術国際局研究機関課長、上月研究機関課研究調整官、小山国際プロジェクト官、中村科学官、その他関係官

4.議 題
(1)経済的、社会的波及効果等について
(2)運営体制等について
(3)その他

5.配付資料
(資料1)大強度陽子加速器施設計画(仮称)評価専門部会(第2回)議事録(案)
(資料2)経済的、社会的波及効果等についての評価及び運営体制について
(資料2-1)大強度陽子加速器計画の経済的波及効果の分析
(資料2-2)KEK加速器の産業波及効果
(資料2-3)研究者コミュニティの要望書と国際社会の意向

6.議 事
(1)末松部会長から、前回議事録(案)については、意見があれば、会議終了後に事務局まで連絡願いたいとの発言があった。

(2)本計画の経済的・社会的波及効果等についての評価及び運営体制等について、永宮教授から説明があった後、次のような質疑応答・意見交換があった。
(○:委員△:原研,高エネ機構□:事務局)

 ○基礎物理学などの理論は、ほとんどが100年くらいのレンジで真に社会に貢献できるようになっている。我々が基礎科学における社会的波及効果について評価するときには、10年程度ではなく100年くらいのレンジで見ていく視点が必要である。計画の段階においては、我が国が当該研究に対してどのくらい真剣に取り組み、また、どのくらいの金額を投資して取り組んでいるかという姿勢が社会的・国際的に評価される。文化国家として十分信頼できるという評価を得ていくことによって、さらに研究を推進していく力にしなければならない。

 ○我が国で基礎研究をしている立場の人たちは、産業界・工業界に積極的に入って行こうとしない傾向にある。基礎の立場の人たち、中性子の専門家の人たちは、ユニークで優秀な人材がいることを、積極的に産業界にアピールすべきである。

 ○社会的波及効果として、知的資産の拡大とか、知的存在感のある国の実現などが書かれているが、一番大事な点は、国民が夢を見ることができる計画であるということである。例えば、スーパーカミオカンデのニュートリノ振動実験のように、日本が先頭に立って新しいものを見つけていくというところに国民は夢を抱いているのであるから、そのようなことを強調してほしい。 我が国の計画は、第一期が1MW、第二期が5MWとなっており、一方、米国は2MW、欧州は5MWの計画を推進している。この関係をどのように整理しているのか。また第一期と第二期までを連続して捉えた場合、第一期をどのくらいの規模で考えているのか。あるいは、第二期をある程度遠い将来と考え、第一期で完結するとしたらこれで大丈夫なのか。計画の見通しを説明してほしい。

 △本計画では、中性子科学以外の科学も総合的に進めることも重要視しているので、1MWの性能を中性子科学として確保しつつ、同時に総合科学を進める上でも効果的に利用できるように考えている。さらに、本計画の1MWと米国の2MWについて国際競争があるのは事実だが、2MWにない特徴を生かし工夫を凝らしているので米国に劣るとは思っていない。また、欧州の5MWは、今の技術ではかなり難しいと考えられており、科学的に正当化できるかという議論がまだ煮詰まっていない段階である。したがって、本計画では、5MWは検討の余地があるという意味で第二期に考えている。

 ○このような計画は、最初に無理に詰め込んで、後になってどんどん予算を膨らませるようなことはしないことが大事である。これだけ夢のある計画は、どうせやるのなら、最初からある程度余裕のある枠の中で、これだけのものが出来るという体制でスタートすることが必要である。

 ○産業界で何億円の経済効果があると言われてもイメージが沸かない。このような大きなナショナルプロジェクトの場合、国民一人当たりの所得とか、資産が何年後にはいくら増えるとかという数字があればわかりやすい。

 △研究開発は不確定要素が非常に多く、また、研究開発の成果が価値を生み出すまでには数多くのステップがあるので、数字を明確に示すのは難しい。例えば、一つの考え方として、資料2−1の12頁の国の経済がこれだけ膨らむ可能性があるということを示したマクロ経済モデルを使って、国民の所得としてはこれだけのものが入ってくるというように言い直すことが出来ないこともない。

 ○プレゼンテーションの中にあった「科学と自然のアメニティゾーン」は非常にいい構想と思うが、計画図の中に具体的に書かれていないので、どのようなものなのかわからない。

 △地元との話し合いが重要であり、このような構想を投げかけて、積極的に対応していただこうと考えているが、現在のところは資料に明確に記載できるところまで進んでいない。

 ○科学の波及に時間がかかるのはわかるが、重要なのは、今までになかったものがあって、この計画によって何か新しいものが生まれるというところであり、そこを明確に示せるとよいのではないか。それが何年後に実際に役に立つかどうかというのはもちろんわからないが、人間がまだ考えたことがないものがあるというところに発展性があると思われる。

 ○例えば、短寿命核実験施設は、この計画の規模で本当に世界に対してインパクトを与えているのか。世界的な動き、国内の動き、研究所内でのこれまでの研究の動きなどを考慮し、効率性を考えておかなければならない。また、ニュートリノやK中間子の関連の施設の規模については、本当に世界に伍するようなものになるのか。全体の金額が大きいので何となく大きいことが出来るような気がするが、常に研究者は最後の百万円がなくて困ることになる。

 △例えば、ニュートリノについては、我が国は世界の先端であり、そのリードを保つための十分な計画である。K中間子についても各国がどういう状況になっているかを睨んだ上での計画であり、また、中性子コミュニティについては、今後10年のニュートロンギャップを埋め、世界のリーダーシップをとれるものである。

 ○社会的な影響という観点から言えば、一般国民が科学技術フロンティアに対する夢を持つ、あるいは、科学技術をベースにして国際社会をリードする可能性を持つプロジェクトであることが重要である。例えば、小中学生の世代にこのような科学技術に対する夢を与えた結果、やがて研究者、技術者になろうとする意志を持つ層が増えてくるとすれば、これは経済効果で計算するのは難しいが、資料に書かれている効果よりも更に大きな効果が出るのではないか。おそらく実際に効果が出てくるのは10年か20年先、あるいはもっと先の話になるかもしれないが、このことは、運営理念や具体的な推進体制の中に盛り込んでおいた方がよいのではないか。

 ○推進会議について、どういうメンバーになるのかわからないが、関係者とユーザーグループだけでなく、もっと広い範囲からメンバーを入れて、たくさんの議論ができるようにしたらよいのではないか。また、共同推進チームに大きな権限を与え、そのリーダーシップの下で活動ができる体制を整えた方がよいのではないか。

 ○核不拡散条約に加盟していない国の研究者は原研の原子炉関係の施設には入れない。本計画の施設も同様であるならば、それなりの対応を早めに打っておかなければならない。そうしなければ、国際的に開かれたと言っても、実際には開かれていないことになる。

 ○小中学生に科学を親しませる活動は色々なところで行われている。小学生のうちにこのような施設に触れるというのは確かにいい経験であるが、科学そのもののおもしろさを狙う体験は、小学生よりも、むしろ中学生、高校生くらいになってからの方が重要だと思う。サマーキャンプなどではなく、高校生や、その高校の先生も、本計画のプロジェクトに参加できる仕組みのようなものがあってもいいのではないか。社会に開かれた施設として考えるのであれば、今までと違ったやり方を取り入れた方がよいと思われる。

 ○文部省関係機関の共同利用と原研・理研等の共同利用は、開放されている点では同じだが、運営の仕方が本質的に違う部分がある。本計画の施設は、両者の欠点・利点を踏まえ、新しい意味での共同利用の方式を考えていかなければならないと思う。

 ○評価の議論では、必ず社会的効果とか何の役に立つのかという話題になる。例えば、バイオの分野が、1960年代には見向きもされなかったにもかかわらず、現在、社会的にも脚光を浴びているのは、基礎研究がとてもしっかりしていて、しかも社会を豊かにするために受容されているからである。基礎研究がなければ、このような発展もないし、正しい社会の評価がない限り、人間の社会を豊かにする社会・経済的波及効果も得られないと思う。

 ○組織の中で人員を集める工夫を凝らすと書かれているが、この計画が全て成功して動き出す数年先には、各分野において、若手の人材確保が非常に難しくなっていると思われる。その点について、若干定量的な議論を加えて頂くと判断しやすくなるのではないか。

 ○社会的波及効果の問題などを常に考え、社会にも研究所内にも反映させていくようなシステムを持つことが大事なのではないか。大きなものでなくてよいが、常設の窓口のようなものを研究施設の中に作っておいてほしい。

(3)部会長から今後のスケジュールについて説明があり、次回会合については3月下旬(または4月上旬)に開催することとした。具体的な日時については、後日日程調整を行い、改めて事務局から連絡することとした。