用語解説

アメリシウム(Am)
 原子番号95。超ウラン元素の1種。すべて放射性同位体よりなる。エックス線やα線の放射線源に広く利用されている。Am-241(半減期432年)、Am-242(半減期16時間)などの同位体がある。

インジェクター部
 超伝導陽子線形加速器(リニアック)において、主要な加速部である超伝導空洞へ陽子を送り込むための前段部分を言う。インジェクター部は、加速対象の陽子を発生させる「イオン源」、初段加速を行う「高周波四重極リニアック(RFQ)」及び「ドリフトチューブリニアック(DTL)」からなる。超伝導リニアックの不意のビーム停止は主にインジェクター部の不安定性に起因すると考えられており、インジェクター部の大電流化実証は大強度加速器開発において重要な課題である。

ウラン(U)
 原子番号92。すべて放射性同位体よりなる。ウランは最初に発見された放射性元素である。天然ウランにはU-238(半減期45億年)が99.28%、U-235(半減期7億年)が0.72%含まれる。軽水炉用燃料は、U-235を3〜4%程度に濃縮して使われる。

液体金属
 液体状の金属。乾式法では、500℃程度の高温で液体であるカドミウム(Cd)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)等を溶媒として用いる。

遠心抽出器
 高速回転場を利用して油水を混合して微小な液滴を生成、二相間での物質移動を行わせ、ついで遠心場を利用してエマルジョンの高速沈降を行わせる分離装置。小型化・自動化が可能、インベントリーが小さい、接触時間が短く溶媒損傷を低減できる、等の特長から、次世代の核燃料再処理用抽出装置として、各国で技術開発が進められている。

オゾン酸化処理法
 オゾンガスの酸化作用を利用してRuを回収する方法。Ruが混合したスラッジ状物質に対してオゾンガスを供給することにより、四酸化ルテニウムの揮発性を利用してRuを選択的に回収することができる。

親核種
 放射性核種Aが放射線を放出して壊れ、別の核種Bに変化するとき、AはBの親核種という。これに対して、BはAの娘核種という。

階層型
 核変換サイクルを設計する際の基本的考え方の一つで、商用発電サイクルにマイナーアクチニドや長寿命核分裂生成物の変換専用の核燃料サイクルを付加したもの。加速器駆動未臨界炉(ADS)あるいは専焼高速炉(ABR)といったマイナーアクチニド変換専用システムを核変換サイクルの中心に据え、商用発電サイクルと核変換サイクルの2つのサイクルがそれぞれに最適化を図り、独立に発展が可能で、商用発電サイクルの形態に依らず、そこからのマイナーアクチニド発生量に見合った規模の核変換サイクルを用意することができるという特徴がある。

核種
 特定の原子番号と質量数により特定される元素の種類のこと。例えば、ウラン元素には、核種としてU-235(原子番号92,質量数235)やU-238(原子番号92,質量数238)などが含まれている。

核種分離技術
 高レベル放射性廃棄物に含まれる核種を、それぞれの核種の物理的あるいは化学的特徴を利用して、核変換の方法や利用目的に応じていくつかのグループ、元素あるいは核種に分離する技術。

核燃料サイクル
 天然のウラン等が濃縮、加工等を経て核燃料として原子炉で利用されること、核燃料として利用された使用済燃料からプルトニウム等を取り出し再び核燃料として利用されること、及び、一連の過程から発生した放射性廃棄物が処理処分されること、これら全ての過程を総合した体系のこと。

核反応
 原子核と原子核、あるいは原子核と陽子、中性子、電子、γ線等の衝突によって起こる現象のこと。具体的には捕獲、核分裂などがある。

核反応断面積
 原子核同士または原子核と中性子・陽子などの素粒子との衝突によって起こる反応を核反応といい、核反応の起こる確率を核反応断面積という。

核分裂生成物
 ウランやプルトニウム等の核分裂に伴って生じた核種及びその一連の放射性崩壊で生じる核種のこと。大部分が放射性であり、その半減期は1秒以下のものから数百万年に及ぶものまで幅広い。

核分裂性物質
 比較的エネルギーが低い熱中性子との相互作用によって核分裂を起こす物質の総称。U-235が代表的なものである。

核変換技術
 分離した後、中性子やγ線等の放射線を照射することにより、長寿命の放射性核種を短寿命又は非放射性核種に変換する技術。

ガラス固化体
 再処理の過程において使用済燃料から分離された高レベル放射性廃液が、ガラス繊維と一緒に高温で加熱されることにより水分を蒸発させるとともにガラス化し、ステンレス性の容器に閉じ込められて物理的・化学的に安定な形態になったもの。放射性物質を安定な形態に保持し、地下水に対する対浸出性に優れる。

加速器駆動未臨界炉(ADS)
 体系を未臨界に保ったまま強力な中性子源で核分裂による出力を維持するシステムである。通常、数百MeV以上に加速された陽子による核破砕反応(スポレーション反応)で発生する中性子を中性子源とする。体系が未臨界であるため、異常時には加速器を停止すれば急速に出力が低下する。また、臨界炉に比べて即発臨界までの裕度が大きい。しかしながら、陽子ビーム輸送管、ビーム窓、核破砕ターゲットなどを体系に導入すること、このようなシステムの運転経験が無いことなど、開発課題も多い。

還元抽出法
 U、TRUや希土類が溶解している溶融塩に、Liを含む液体金属(CdあるいはBi)を接触させると、U等はLiによって還元され金属となり、液体金属相中に抽出される。この際に各元素の還元されやすさの違いによって、U、TRUを選択的に金属相中に抽出し、FPと分離することができる。但し高い効率で分離を行うためには、複数段の還元抽出を連続して実施する必要がある。

乾式法
 塩化リチウム(LiCl)や塩化カリウム(KCl)の溶融塩やカドミウム(Cd)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)等の液体金属を溶媒とした再処理法の一種。

緩衝材
 人工バリアの構成要素の1つで、候補材料はベントナイト混合土である。地下水の浸入と放射性核種の溶出・移行を抑制する機能の他、物理的な緩衝性(クッション)や化学的緩衝性により地下水の水質変化を抑制する機能が期待されている。

管理型処分
 放射性核種の濃度が時間とともに減少し、人間環境への影響が十分に軽減されるまで、放射性核種の濃度に応じた管理を行うことで、放射性廃棄物を人間環境への影響がないように安全に処分する方法。

希土類元素
 原子番号57から71までの15元素ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテシウム(Lu)に加えて、これらに性質が極めて類似したスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)を加えた17元素のこと。化学的な性質が類似しており、相互の分離が難しい。

逆コンプトン散乱
 加速器を用いた光源において、高エネルギーのX線を生成する目的で、加速した電子 ビームとレーザー光を衝突させ反跳した光子を得る素過程をいう。逆コンプトン散乱 を用いて、1GeV程度の電子と短波長の大強度レーザ光を正面衝突させ、数MeVのX線が 得られている。現在は更に高エネルギーのX線が得られつつあり、高エネルギーX線源 としての定着が期待されている。

キュリウム(Cm)
 原子番号96。超ウラン元素の1種。すべて放射性同位体よりなる。α線を放出するCm-242(半減期163日)、Cm-244(半減期18年)がある。

金属燃料
 ジルコニウム(Zr)に金属ウランや金属プルトニウム等を添加して合金とした原子炉用の燃料。

軽水炉(LWR)
 軽水(普通の水)を冷却材及び減速材として用いた原子炉のこと。日本における発電用の原子炉としては、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)が代表的である。

減速材
 水や黒鉛など、中性子のエネルギーを減少させるために用いられる物質のこと。

高速増殖炉(FBR)
 高速中性子による原子核分裂暖簾さ反応によってエネルギーを発生しながら、炉内において消費した燃料以上に新しい燃料(プルトニウム)を生成する原子炉。核燃料サイクル開発機構に原型炉「もんじゅ」がある。

高速中性子
 大きい運動エネルギーを持つ(速い)中性子のこと。

高レベル放射性廃棄物(HLW)
 再処理の過程において使用済燃料から分離されるストロンチウム-90、セシウム-137に代表される核分裂生成物とアメリシウム-241、ネプツニウム-237に代表されるアクチニド(原子番号89番以上の元素。放射性元素である。)を含む高レベル放射性廃液、またはそれをガラス固化したもの。

コールドクルーシブル
 高周波誘導溶解方法の一種。分割した水冷坩堝に誘導された電流で内容物に更なる誘導電流が発生し、これのジュール熱で内容物が加熱溶解される。水冷坩堝と内容物は電磁力で反発しあうため互いの接触が回避され、坩堝の腐食がなく、高純度の製品を得ることができる。

混合酸化物燃料(MOX燃料)
 酸化ウランと酸化プルトニウムを混合した核燃料のこと。高速増殖炉などの他、軽水炉の燃料としても用いられる。

再処理
 原子炉で使用した燃料の中には、燃え残りのウランや新しくできたプルトニウム等燃料として再び利用できるものと、ウラン等が分裂してできた核分裂生成物が含まれている。これらを化学的プロセスにより、再び燃料として利用できるウラン、プルトニウムと高レベル放射性廃棄物に分離する作業のこと。

湿式法
 硝酸や有機溶媒を溶媒とした再処理法の一種。

射出成型法
 成分を調整したU、Pu、Zrの合金を高周波誘導加熱で溶融し、容器内を真空にする。数十本の石英管を溶融した金属に漬けたのち、容器内を加圧することにより、石英管内に溶融金属を鋳造する。この技術では、一度に多数の金属燃料スラグを製造することが可能であり、燃料製造コストの低減効果が非常に大きい。

使用済燃料
 原子炉燃料として使用され、規定の燃焼度に達した後に原子炉から取り出された燃料をいう。

処分
 放射性廃棄物を環境汚染を生じないような状態で環境中へ放出、埋設することを処分(disposal)という。

処理
 放射性廃棄物を処分できる状態にする工程、あるいは安全に貯蔵できる状態にする工程を処理(treatment)という。

ジルコニウム(Zr)
 原子番号40。熱中性子を吸収しにくく,耐食性や機械的な性質が優れているので,原子炉をつくる材料に用いられる。また、使用済燃料中には核分裂生成物としてもZr-91(安定)、Zr-93(半減期153万年)等が生成する。

振動充填法
 粉体燃料(球状、非球状)を振動下で充填することにより燃料ピンに加工する方法。現行の機械混合法によるペレット燃料製造と比較して、プロセスが簡略化でき、粒子の取り扱いも容易なことから、遠隔技術による製造工程の実現や、低除染の燃料製造法としての展開も期待される。

ストロンチウム(Sr)
 原子番号38。アルカリ土類金属の1種。Sr-90(半減期28.8年)は使用済燃料中の核分裂生成物の主成分の1つである。

セシウム(Cs)
 原子番号55。アルカリ金属の1種。Cs-137(半減期30年)は使用済燃料中の核分裂生成物の主成分の一つである。

接近シナリオ
 火成活動、地震活動、断層活動、隆起・侵食、気候変動、海面変化などの天然現象や将来の人間活動を発端として、処分場に埋設された高レベル放射性廃棄物と人間との距離が接近し、影響が生物圏へ及ぶことを想定するシナリオ。

セレン(Se)
 原子番号34。電子写真用感光材料、光電池、整流素子、触媒などに用いられる。核分裂生成物としてSe-79(半減期65万年)がある。放射性廃棄物として処分された場合、地下水に溶けやすく、地下水とともに移動しやすい性質を持つ。

専焼高速炉
 マイナーアクチノイド(MA:Np,Am,Cm)を主成分とした燃料で炉心を構成した高速炉。臨界調整のために初装荷燃料にPuを添加するが、第2サイクル以降は燃焼減損分のMAの追加だけで運転できる。U,Puからの高次のアクチノイド生成がほとんどないために高効率の核変換処理が可能となるが、遅発中性子割合が小さいことからくる制御上の問題がある。後者の問題の回避のためには、遅発中性子割合増大のために炉心にU-235を添加する、あるいは、加速器駆動型未臨界炉とする、といった解決法がある。

ゾルゲル法
 水溶液から直接に酸化物固体を得る製造法の総称。核燃料製造では、アクチノイド硝酸溶液の液滴にアンモニアを作用させることにより、酸化物として固化させる。アンモニアを液滴外部から作用させる外部ゲル化法と、液相中にアンモニアドナー(加熱すると分解してアンモニアを発生する化学物質)を添加しておく内部ゲル化法がある。酸化物燃料微小球(直径1mm程度以下)を調整する方法として、高温ガス炉用燃料の製造に用いられている他、高速炉用振動充填MOX燃料の試作に応用されている。

多重バリアシステム
 高レベル放射性廃棄物を、長期間にわたり生物圏から隔離し、放射性物質の移動を抑えることにより、処分された放射性廃棄物による影響が、将来にわたって人間とその環境に及ばないようにするための多層の防護系から成るシステム。工学技術により設けられる人工バリアと、天然の地層である天然バリアにより構成される。

短寿命核種
 放射性核種の崩壊は無限に続くものではなく、それに伴って発生する放射線は時間とともに減衰していく。この放射性核種の放射能のある期間を寿命とし、短期間で減衰してしまう核種を短寿命核種という。
 一般的には半減期が30年以下の放射性核種をいう。

炭素(C)
 放射性核種のC-14(半減期5,730年)は、材料などに含まれる窒素(N-14)が放射化された後の娘核種としてできる。放射性廃棄物として処分された場合、地下水に溶けやすく、地下水とともに移動しやすい性質を持つ。

地下水シナリオ
 処分場に埋設された高レベル放射性廃棄物に地下水が到達し、廃棄物中の放射性物質が地下水によって運ばれることにより、影響が生物圏へ及ぶことを想定するシナリオ。

地層処分
 高レベル放射性廃棄物の最終処分として、ガラス固化体を地下数百メートルより深い地層あるいは岩体中に隔離する方法をいう。処分後のいかなる時点においても人間とその生活環境が高レベル放射性廃棄物中の放射性物質による影響を受けないようにすることを目的とする。なお、英語の"geologicaldisposal"に対して用いられている「地層処分」という用語の「地層」には、地質学上の堆積岩を指す「地層」と、地質学上は「地層」とみなされない「岩体」が含まれている。

窒化物燃料
 アメリシウム(Am)の窒化物やキュリウム(Cm)の窒化物を混合した原子炉の燃料。窒化物は熱伝導度が良好であり、様々な元素を混合することができるという特徴がある。

窒素15
 天然の窒素はほとんどが窒素14からなる。窒素14は中性子捕獲反応により、長寿命核種である炭素14を生成する。このため、核変換プロセスに窒化物燃料を使う場合には、天然の窒素に0.37%しか含まれない窒素15を高濃縮して使用する。

中間貯蔵
 高レベル放射性廃棄物を地層処分するまでの間、放射能及び崩壊熱が減衰するまで、30〜50年間貯蔵することをいう。

中性子スペクトル
 中性子のエネルギー分布のこと。

中性子捕獲反応
 中性子が原子核に捕獲吸収されて、γ線を放出する核反応(n、γ)のことをいう。中性子を捕獲した原子は質量数が1だけ増し、原子番号は変わらない。中性子捕獲によって一般に原子核は放射性を与えられることになる。高速増殖炉において炉心の周りに配置されたブランケット燃料のU-238は炉心からの高速中性子を効率よく捕獲吸収してPu-239をより多く作り出す役割をしている。

超ウラン元素(TRU元素)
 原子番号がウランよりも大きい元素のこと。TRU(TransUranium)とも呼ばれる。ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムなどがある。天然には存在せず、原子炉や加速器の利用により人工的に作られたもので、半減期が数万年以上と長いものがある。

長寿命核種
 放射性核種の崩壊は無限に続くものではなく、それに伴って発生する放射線は時間とともに減衰していく。この放射性核種の放射能のある期間を寿命とし、長期間にわたって放射線を発する核種を長寿命核種という。  一般的には半減期が30年以上の放射性核種をいう。

超伝導空洞
 超伝導リニアックの主要な加速部である。超伝導状態となるひょうたん型の空胴であり、内部に蓄えられる高周波電力により荷電粒子を加速する。加速される荷電粒子の速度により形状が異なる。質量の軽い電子の場合はほぼ一定速度(光速)で加速されるため構造は簡単となり、これまでにも各国で実用化されている。一方、質量の重い陽子を加速する場合には速度がエネルギー毎に変化し、低エネルギー側では扁平な空胴形状となるため、構造設計が難しい。現在、先進各国で開発が競われている。

超伝導リニアック
 超伝導空洞を用いて荷電粒子(ここでは陽子)を加速する線形加速器(リニアック)。常伝導の場合と比べて電力効率が高いこと、ビーム管径を大きくできることなどが特徴である。電力効率が高いことはシステムのエネルギー効率を向上させることに寄与する。ビーム管径を大きくできることはビーム損失を抑制して加速器システムの漏洩陽子によるダメージを低減することに寄与する。

テクネチウム(Tc)
 原子番号43。安定同位体が存在しない。ウランの核分裂生成物中に多く含まれている。Tc-99の半減期は2.1×105年。

テルル(Te)
 原子番号52。化学的性質はセレンに準じ、有毒なため注意が必要である。

電解採取法
 溶液中のイオンを分離する方法の一つ。金属の選鉱・精錬に用いられている。 溶液中に二つの電極を挿入し、通電することにより、イオンが還元され陰極(カソー ド)表面に析出する。定電流電解法では基本的に標準酸化還元電位の貴なイオンが優 先的に析出するので、他元素イオンから分離することができる。高レベル廃液からは、 硝酸酸性が高いにも拘らず、白金族(Pd、Ru、Rh)、Te、Se、Ag等のイオンが析出し てくる。硝酸溶液からはRe(VII)も析出するので同属のTc(VII)の分離も可能と考 える。本プロセスでは基本的に化学試薬は必要ないので、二次的廃棄物は発生しない。

TRUEX法
 ウランとプルトニウムを分離した後の酸性溶液から、主として抽出剤にCMPO(有機抽出剤の一種)を用いて、超ウラン(TRU)元素を抽出(Extraction)する方法。

トリウム(Th)
 原子番号90。アクチノイド元素の1つである。天然に存在するTh-232の半減期は1.4×1010年である。Th-232は中性子を吸収すると、β崩壊を経て核燃料物質であるU-233に転換する。

鉛抽出法
 不溶解残渣中の白金族元素を粗分離回収する方法。不溶解残渣を鉛及び酸化物(シリ カ、ホウ砂等)とともに混合溶融すると、酸化物生成の自由エネルギーの差に基づき、 鉛相に白金族元素が回収され、その他のFP元素等は溶融鉛相の上方に形成される酸化 物相に分配する。

二次廃棄物
 放射性廃棄物の処理、処分等を行う過程で新たに発生する廃棄物をいう。

人間侵入シナリオ
 接近シナリオの一部で、掘削、採鉱等の将来の人間活動を発端として、処分場に埋設された高レベル放射性廃棄物と人間との距離が接近し、影響が生物圏へ及ぶことを想定するシナリオ。

熱中性子
 運動エネルギーの低い中性子のこと。周囲の物質と熱平衡状態あるいはほぼそれに近い状態にある。

ネプツニウム(Np)
 原子番号93。超ウラン元素の一つで天然にはほとんど存在しない。Np-237の半減期は2.14×106年。

廃棄物管理
 廃棄物の取扱、処理、調整、輸送、貯蔵、処分等を含む全ての活動の総称。

廃銀吸着材
 使用済の銀吸着材。銀吸着材は、再処理工程において使用済燃料のせん断、溶解に伴いガスとして発生する放射性ヨウ素を吸着除去するためフィルターとして使われている。

灰吹法(はいぶきほう)
 鉱石中の金及び銀の分析手法として用いられる。鉱石と鉛を混合溶融させ、鉛相に金及び銀を抽出した後、鉛相を多孔質るつぼを用いて空気中で加熱すると鉛が酸化除去されて貴金属粒を得る。不溶解残渣の鉛抽出によって得られた白金族元素を含んだ鉛相について灰吹法による鉛除去試験を行い、本法が適用可能であることを確認している。

白金属元素
 ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金の6元素の総称。代表的な貴金属で、酸・アルカリに侵されにくく、また、融点が高く、比重が大きい。

発電用高速炉利用型
 核変換サイクルを設計する際の基本的考え方の一つで、将来的には従来の軽水炉サイクルから高速増殖炉サイクルへ移行し、高速増殖炉を中心とする一つの核燃料サイクルの中で発電とマイナーアクチニド等の核変換を同時に行うことを目指すもの。

パラジウム(Pd)
 原子番号46。白金族元素の一つ。展性・延性に富み、水素の吸蔵能力がある。高レベル放射性廃液に含まれるPd-107の半減期は6.5×106年。

半減期
 放射性物質の量が半分になるまでの時間。半減期は、放射性核種によって定まっており、放射性核種によって数十億年以上といった長いものから、百万分の1秒以下の短いものまで種々ある。

被ばく線量
 体外にある放射線源あるいは体内に摂取された放射性物質から個人が受ける放射線の影響。

PUREX法
 核燃料サイクル機構東海再処理工場や日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場で採用されている湿式再処理法。使用済燃料を硝酸に溶解し、有機溶媒と抽出剤(主としてTBP:トリブチルリン酸)を用いて、その中に含まれる元素をウラン、プルトニウム、その他(核分裂生成物及びマイナーアクチニド)の3つのグループに分離する。プルトニウム(Pu)を還元(Reduction)して抽出(Extraction)することから、この名が付いた。

不溶解残渣
 Purex法において使用済燃料の硝酸溶解工程で発生する不溶解性物質のこと。組成は 一定ではなく、溶解条件、燃料の燃焼度によって変化する。主成分 はRu-Rh-Pd-Tc-Mo5元系金属間化合物であり、これに構造材料に起因する固体粒子、 Zr錯体、コロイド等が混合している。

ブランケット
 高速増殖炉において、核分裂性物質に転換する目的で、原子炉の炉心の外側及び炉心燃料の上下に配置された核燃料親物質をいう。親物質のU-238は中性子吸収により核分裂性物質のPu-239に変換する。増殖する場合に不可欠のものである。

プルトニウム(Pu)
 原子番号94。超ウラン元素の一つである。天然には極微量しか存在しない。Pu-239はU-238の中性子捕獲によって生ずるU-239が、2段のβ崩壊をして生じる。その半減期は2.4×104年である。これがさらに中性子を捕獲すると順次Pu-240、241及び242などの同位体が生ずる。このうちPu-239とPu-241は核分裂断面積が大きいために核分裂物質(核燃料)として利用できる。Pu-239は高速中性子を捕獲したときの核分裂における中性子発生率が大きいために、高速増殖炉の燃料として用いられる。U-238を親物質に用いると核燃料の増殖が可能になる。プルトニウムを熱中性子炉で燃焼させるのがプルサーマル炉である。

分配係数
 固体と液体が存在する中にある物質が入り、吸着などによって一部が固体部分に、残りが液体部分にある場合、その釣り合いの状態(平衡状態)においてそれぞれに存在する割合を示す係数。放射性物質が緩衝材や岩石などの中を地下水に溶解するなどして移動する際、緩衝材や岩石などに吸着される程度を表す指標として用いられる。

ベントナイト
 凝灰岩などが風化して生成した粘土鉱物の一種。ベントナイトは、水に浸すと膨張する性質があり水を通しにくい。

放射化生成物
 物質に中性子が照射されることによって、物質を構成する原子の一部が放射線を放出する性質を持つ原子に変わったもの。

放射性核種
 核種のうち放射能を持つもの。

放射線
 不安定な原子核が自然に壊れて別の原子核になるときに放出される高速の粒子又は波長のごく短い電磁波。主にα線、β線、γ線からなる。放射線が人体に与える影響や物を透過する能力は、その種類とエネルギーによって異なる。それぞれの放射線を放出する放射性核種をα核種、β核種、γ核種と呼ぶ。
 放射線の特性を活用し、非破壊検査、がんの治療、血液検査、滅菌処理、トレーサー利用などで、放射線や放射性物質が利用されている。一方、放射線は、受けた放射線量に応じてがんなどの発生確率が増えるなど、人体への影響を考慮する必要があるので、原子力の利用に当たっては、一般公衆及び放射線業務従事者に対する放射線被ばく管理が重要である。

α線:原子核から放出されるヘリウム原子核(陽子2個、中性子2個からなる)。α線は、空気中を数cm程度しか飛ばないため、衣服の表面でα線が吸収され、外部からの放射線の被ばく(外部被ばく)による影響はほとんどない。しかし、α核種の場合、呼吸や食物により体内に放射性物質を摂取し、放射性物質が肺や骨などの組織に沈着などして人体の細胞や組織への影響を及ぼす(体内被ばく)ことによる被ばくの寄与が大きい。このため、主にα線を放出するウランやTRU核種(参照「TRU核種(Transuranium)を含む放射性廃棄物」)については、内部被ばくを避けることが重要である。

β線:原子核から放出される高速の電子。物を透過する能力はα線とγ線の中間であり、人体は、外部被ばく、内部被ばくの両方の影響を受ける。β線を放出する核種の場合、放出するβ線のエネルギーが低い14Cや3Hなどは、外部被ばくよりも体内被ばくによる影響を避けることが重要となる。エネルギーの高いβ線を放出する90Srなどは内部被ばくに加え外部被ばくを避けることも必要となる。

γ線:原子核からα線やβ線が出たあとに残ったエネルギーが電磁波(光の仲間)の形で出てくるもの。物を透過する能力が高く、この放射線を止めるには鉛板や分厚いコンクリート壁を必要とする。外部被ばく、内部被ばくによる人体内への影響があるため、両者を避けることが重要である。

放射能
原子核がα線、β線、γ線などの放射線を出す性質。

放射能インベントリ
放射能の総量。

放射能毒性
 毒科学的観点から見た放射線の生体に対する有害作用。

マイナーアクチニド
 原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムまでのアクチノイド元素のうち、アクチニウムを除いた元素群はアクチニドと呼ばれている。使用済燃料の中に生成するアクチニド元素のうち、生成量の比較的多いプルトニウムを除いた、生成量の比較的少ない元素。ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどが含まれ、いずれも放射性核種である。

ヨウ素(I)
 原子番号53。ハロゲン元素の一つ。天然では、海藻、海産動物中に有機化合物として存在する。核分裂生成物であるI-129は半減期が1.57×107年の揮発性核種で、原子炉や再処理工場のオフガス中に含まれる。

溶媒抽出法:
 完全には混ざり合わない二種類の液体間で、一方の液体中の特定の成分を他方の液 体中に移動させるプロセスのこと。液-液抽出とも言う。核燃料再処理法において現在 主流となっているPUREX法でも溶媒抽出法が用いられている。PUREX法では、燃料を溶 解した硝酸水溶液から、ドデカン等で希釈したTBP(リン酸トリブチル:抽出剤)中にU ,Puを抽出する。高レベル廃液の群分離工程にもこの溶媒抽出法の応用が研究されてお り、高レベル廃液からのマイナーアクチノイドの分離回収、また、マイナーアクチノ イドと希土類元素との分離のために、様々な溶媒抽出系が試されている。

溶融塩
 溶融して液体となった塩類。原子炉の冷却材、核燃料の溶媒、再処理の抽出剤等、諸種の工程に用いられる。

溶融塩電解法
 使用済金属燃料を陽極(+)、固体(鉄の棒)あるいは液体カドミウムを陰極(-)として、溶融塩中で電気分解を行うことにより、陽極からU、TRUが溶融塩中に溶解し、陰極に析出する。この際、各金属の還元されやすさの違いによって、固体陰極ではUが、液体カドミウム陰極ではU、TRUが、夫々選択的に析出するために、FPと分離して回収することができる。

リスク
 放射線被ばくによる有害な影響の生じる確率。ある線量の被ばくを受ける確率と、その被ばくによる健康への重大な影響を引き起こす確率との積で表される。

ルテニウム(Ru)
 原子番号44。白金族元素の一つ。パラジウムと同じく気体を吸収して貯える。水素と窒素との化合や、エタノールの酸化の触媒に使われる。

レーザー同位体分離法
 レーザーによる原子・分子の選択的励起、解離(イオン化)を利用した同位体分離法。Pdの同位体分離においては、核種の違いによる同位体シフトを利用する方法ではなく、偏光した光を吸収するときの角運動量選択則に基づく同位体選択性により分離する方法を用いる。

ロジウム(Rh)
 原子番号45。酸にも王水にも溶けず、融点も高い。この性質を利用して、白金合金にして熱電対温度計、触媒、耐食材料などに用いられるが、日本では天然のRhはすべて輸入に頼っており高価である。使用済燃料の中にはRh-103が含まれている。

炉心
 原子炉において、核燃料が存在し、核分裂連鎖反応が起こりうる領域。核燃料と減速剤(高速炉の場合は核燃料だけ)から成り、その間を冷却剤が通過する。