資料(専)32-1

第31回原子力バックエンド対策専門部会議事要旨(案)

 

1.日  時: 平成12年 6月25日(木)14:00-16:15

2.場  所: 科学技術庁第7会議室(通商産業省別館9階)

3.出席者:

(原子力委員)藤家委員長代理、依田委員、遠藤委員
(専門委員)熊谷部会長、阿部委員、石榑委員、一政委員、大桃委員、川人委員、神田委員、小島委員、小玉委員、齋藤委員、佐々木委員、鈴木委員、徳山委員、鳥井委員、中神委員、永倉委員、藤岡委員、山内委員
(説 明 員)大橋北海道大学大学院工学研究科教授
(科学技術庁)興原子力局長、中澤審議官、青山廃棄物政策課長、青木廃棄物政策企画官、青木放射性廃棄物規制室長

4.議  題
(1)ウラン廃棄物の処理処分について
(2)地層処分研究開発第2次取りまとめの評価について
(3)国立機関原子力試験研究費の評価について
(4)その他

5.配付資料
資料(専)31-1第30回原子力バックエンド対策専門部会議事要旨(案)
資料(専)31-2ウラン廃棄物処理処分の検討状況について
資料(専)31-3我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術的信頼性の評価(案)
資料(専)31-4研究評価実施状況報告
資料(専)31-5国立機関原子力試験研究費の研究課題 事前及び中間評価結果

 参照資料
原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(平成6年6月24日、原子力委員会)
高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について(平成9年4月15日、原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会)
わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-総論レポート、分冊1~3(平成11年11月26日、核燃料サイクル開発機構)
国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針(平成9年8月7日、内閣総理大臣)

6.審議の概要

(1)ウラン廃棄物の処理処分について

 分科会主査の石榑委員及び事務局より資料(専)30-2に基づき説明が行われた。各委員の主な意見等は以下の通り。

 ○資料(専)31-2のp.6-7に示されている線量の試算例については、試算の前提条件が妥当かどうか、もっと議論すべきである。処分方策の考え方やまとめで、ウラン廃棄物については、従来の考え方を適用することは合理的でなく、ウラン廃棄物の特徴を考慮した新しい考え方が必要と書かれている一方で、問題があると思われる条件で試算した例を示すのは誤解を与えるのではないか。

(主査より回答)
 これは問題点を明確にするための資料であり、何か手がかりに基づいて、こういう不合理なことがあることを示すという主旨である。現行の原子力長計に、いわゆる浅地中処分(素堀り処分)を行うことが可能ではないかという一文があり、これを本分科会で議論をするための最初のステップとした。線量の試算例について誤解を与えるということであれば、最終段階では取扱いを慎重にしたい。

 ○十分に時間をかけてご検討いただきたい。課題として残るところは課題であるとして、一義的に結論付けないほうが良いと考える。

(主査より回答)
 どこまで結論が出せるか、十分議論を尽くす時間がないのではと危惧するが、拙速は避けたい。
 個人的な意見だが、本試算は廃棄物量のデータベースに基づいているが、詳細な検討を行うための精度の高いデータが現時点では揃っていない。また、除染技術についても、例えば、焼却灰に対しても、ウラン濃度を下げるために除染してウランを回収することも考えられるのではないかと述べているが、そのための技術が十分進展していない。また、どういう放射線防護の仕方を考えるかについては原子力安全委員会で議論されることであり、検討に当たっていろいろ難しい要素がある。

 ○資料(専)31-2のp.6(3)の3行目、人工構築物を設置しない浅地中処分概念(素堀り処分)について、長計策定会議の第2分科会の議論においても素堀り処分の定義をきちんとするよう発言した。素堀り処分の定義があれば示されたい。また、跡地居住シナリオ等についても定義を示すべき。  新しい考えが必要になると考えられるとしているが、あえて新しい考えとしているのはどういうことか。

(主査より回答)
 素堀り処分の定義については、従来のトレンチ処分であるが、トレンチという言葉が良くないとして素堀りとしている。浅地中処分の中で、人工構築物を設置しない場合が素堀り処分である。
 跡地居住シナリオ等の3つのシナリオについては、RI廃棄物等についてこれまでの検討で考慮してきたシナリオであり、ここではそれを機械的に適用している。
 また、従来の考え方では減衰が期待できるので減衰に応じて段階的に管理を緩めていくというものに対し、ウラン廃棄物については減衰が期待できず、逆に増えてくるという意味で、新しいということである。

 ○仮の評価だと思うが、経口摂取とは、具体的にどのようなものか。

(事務局より回答)
 調べて、わかり次第ご説明する。

 ○跡地居住、跡地建設シナリオは評価上重要であり、外部被ばく上重要であるが、経口摂取がさらに1から2桁高い。経過1年で既にピーク時の1/100である。これは非常に極端なケースである。新しい考え方とは、いろいろシナリオを描いて線量評価から安全評価を行うこと以外のことであると考えられるが、その前にこの様なシナリオを慎重に検討するとともに、シナリオの重要性について相対的な評価を行うことの重要性を指摘すべき。
 原子力安全委員会においては、クリアランスレベルを導出する際に、評価に用いるパラメータについて、値の不確かさを考慮した評価を行っているなど詳しい検討がなされつつある。原子力委員会でもそのような評価を検討すると同時にその重要性を報告書の中で指摘していただきたい。

 ○分科会でも苦労されており、高レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方にも一部通じているが、20万年後に高くなるという現象は評価すべきなのか、規制除外線量で評価するのか、ユッカマウンテンのような線量で行うのか、等の問題も考えなければならない。安全についての基本的な議論は、本専門部会でなく原子力安全委員会ですべきものとの議論がある。この問題は、原子力安全委員会と原子力委員会との狭間に落ちている。
 p.7の下から2行目、海外の状況については、状況の調査も重要だが、なぜそう決められたのか、基本的な哲学が重要である。規制除外線量ばかりを金科玉条に担いでいるようではどうにもならない感じがする。規制の背景についてももっと考慮すべきである。また、原子力委員会と原子力安全委員会の間をつなぐことを我々としても考える必要がある。

 ○時間の制約があるというが、その制約は何から来ているのか。

(事務局より回答)
 時間の制約については、他の放射性廃棄物の処分方策の検討が終わり、ウラン廃棄物の検討が残されているという現状であり、早急な処分方策の検討が必要であるとして分科会にも検討をお願いしているところ。できれば年内くらいに方針をお示しいただければと考えている。既に、超ウラン核種を含む放射性廃棄物の処分方策の報告書が3月に出されており、また、埼玉県大宮市で問題提起・指摘があり、早急に対応しなければならない課題と考えている。

 ○世の中にはウラン鉱山がある。人工のウラン鉱山を作るというような意味合いが込められているのか。

(主査より回答)
 そのような意味合いはない。なお、ウラン鉱山から出てくる鉱滓については分科会でも議論があったが、鉱山保安法の適用を受けるものであり、検討対象とはしていない。

 ○考え方そのものを変えることも必要。例えば、インドでは、天然ウラン、天然トリウムをおおらかに天然に返している。インドの専門家は、人間と放射線は共存しているが、いったん原子力と名が付くととたんに規制が厳しくなるのはどうかと指摘している。
 平均的日本人が死ぬまでに当たる放射線の被ばく量のうち、医療被ばくが圧倒的に高く、天然から浴びるもの、フォールアウト、温泉から浴びるものなどがあるが、原子力に係わる被ばく量の総量は非常に小さい。原子力に係わる被ばく量に神経質になりすぎているのではないかと考えている。ウラン廃棄物について、厳密に考える方がよいが、必要以上に厳密に考えるのはいろいろな産業の中でバランスを欠くのではないか。それよりも、他の状況と比較しながら、むしろ理解してもらうことの方が先であり、厳密な管理に走るのはやりすぎではないか。

 ※本件についてのコメントがある場合には、後日事務局へ連絡することとなった。

(2)地層処分研究開発第2次取りまとめの評価について
 分科会主査の小島委員及び事務局より資料(専)30-3に基づき説明が行われた。各委員の主な意見等は以下の通り。

 ○10ページの脚注に地下深部の定義として(300~1000m程度)と説明されているが、先頃公布された法律では「300m以上」とされているので、今後に向けて整合をとっていく必要があるのではないか。16ページに1000m程度という記述がでてくるが、数百mとは一般が受ける印象が違う。

 原位置試験、実証的な地下研究施設の重要性について、当専門部会では以前から強調されているが、そのことの指摘があまり見られないのではないか。
 31ページの「おわりに」の最後に、「再取り出し性」を今後検討していくべき課題であると記述している点について、必要性は分かるが、本報告は第2次取りまとめの評価が主目的であるとすると、このことを入れるのは適当か。

(事務局より回答)
 法律との関連については、10ページの記述で、300mより深いところとして整合をはかることに努めた。
 原位置試験の必要性については「おわりに」において、次のステップでの重要事項として示している。

(主査より回答)
 再取り出し性については、この場でもご意見を伺っておきたい。私見を入れて答えると、分離変換技術と同じスタンスで基盤研究として進めていくべきではないかと考えている。報告書の表現については分科会で調整し、検討していきたい。

(主査より回答)
 国際的にも話題になっていることに一言触れておく必要があると考える。分科会としては、再取り出し性そのものについては他で議論する範疇と思っており、第2次取りまとめで顕在化されない形で書いてあることを取り出して評価するところまでは考えていない。記述の仕方について、ここでご意見をいただいて、分科会で検討し、あるいは部会長と相談して表現を決めていきたいと考える。

 ○再取り出し性の問題については、第2次取りまとめではいらないということが前提とされていたが、技術的安全性を超えた問題として社会的に許容される技術的安全、つまり安心を担保するためにあっていいというものである。「おわりに」として指摘するのは適切であると考える。
 16-17ページの記述については、地層処分の概念として数100~1000メートルぐらいまでの範囲を指しており、1000メートル程度まで研究しておくというのが基本的な姿勢である。

 ○p.11「新たに活断層が発生する可能性は低いとしている」といった微妙な表現が何ヶ所かある。これは、第2次取りまとめで低いと言っていると読める。評価分科会としてどう考えたのかがよく分からないので、分かるように修文いただきたい。
 p.12の2行目「避けることが重要であるとしている」については、例えば、「避けることが可能である」というのであればずいぶん違ってくるので検討いただきたい。
 「~であるとしている」という表現は、13ページの10行目付近にもあるので、同様に修文いただきたい。

 p.14②の9行目、「確認する必要があるとしている」というのは、誰に言っているのかが分からない。「確認する必要があることを示している」ということか。

 ○p.23の4行目、「今後の安全規制の検討に依るものである」という主旨は、「安全規制の検討に委ねられる」という意味なのか、記述を補足していただきたい。

 ○安全評価については、「我が国の地質環境を前提とした評価」という点が、第1次取りまとめと第2次取りまとめの大きな差であると理解している。p.29の結論において、我が国の地質環境は、安全評価上、どこに特徴があるのかを、例示でも良いので記述されれば、第2次取りまとめの意義がわかりやすいものとなる。

 ○p.31の再取り出し性について、我々は十分な議論をしていない。専門部会としてパブリックコメントを求めるにはもう少し議論が必要。また、第2次取りまとめの評価を重点的に示すという立場から言うとこの部分は不要。再取り出し性については、従来から言われており、それぞれご意見もあると思うので、別の場で議論すべきではないか。

(主査より回答)
 専門部会報告書では、今後の課題についても触れることとされている。今後の課題として個々に細かい問題を述べるというのは分科会の主旨でも部会の主旨でもないが、評価した結果を今後にどう生かすかを記述する必要はあると考える。今後行く方向について何かを書いていかないといけないのではないか。大きな世界のトレンドを踏まえ、要素研究から実現化へ向けての研究開発への移行の橋渡しがこの報告書の立場とすれば、何か書いておく必要があるのではないかというのが個人的な見解である。再取り出し性に限らず、いろんなことが言われているのでそういうものを取り入れた精神論として書いておくことも一つの表現であろう。

 ○再取り出し性の問題については、長計第二分科会報告書でも言及されており、また、長計策定会議の報告書にも考え方が入っているので、ここで言う必要があるのか。この分科会の報告書は良くできていると思って感心して見ているが、再取り出しについては書き過ぎの感を受ける。

(主査より回答)
 記述する場合には書き方についても検討する。記述の有無は専門部会で決めていただきたいと考えており、分科会は専門部会の方向性に従う。今後の方向性まで示しておくのか、記述せず第2次取りまとめの評価だけにとどめるのか、この場で方向性を決めていただくことを望む。

 ○再取り出し性については、専門部会報告書以降、いろんな場で議論になってきている。今後の課題として記述してはどうか。

 ○技術の問題と社会の問題を別次元で分けるべき、社会的な要請は時代とともに変わるといったニュアンスを受けるが、例えば岩塩層に処分する場合、再取り出し性は技術的に難しく、また、技術的に意味はない。単純に技術と社会の問題として分けて議論されることではないのは自明であり、したがって、本件については、報告書案に書かれているような表現で、今後よくよく検討すべし、としてはどうか。このことは重要であり、最近になって議論が出てきたわけではなく、それなりに議論が前からある。これまでは、十分議論されていないから入れない方がいいと、保守的に外されたという経緯があるが、これは保守的な問題ではなく、本来こういう問題があると考えて良いものである。ここに記載されているような表現で記述してよいと考える。

 ○p.31の下から6行目、『「社会に許容される技術的安全」の問題として、経済性も含めた総合的観点』について、主旨は分かるが、表現がこの報告書になじまないので、表現を再考いただきたい。

 ※報告書「我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術的信頼性の評価(案)」については、本日の意見を踏まえ文章等に修正を行った後、原子力委員会への報告を経て意見募集を行うことが了承された。なお、文章の修正については、部会長と分科会主査に一任された。

(3)国立機関原子力試験研究費の研究評価について
 分科会主査の徳山委員より、資料(専)31-4~5に基づき、研究評価分科会における評価の結果が報告された。

 次回(第32回)専門部会は、平成12年7月13日に開催することとして閉会した。