本中間整理は、第29回原子力バックエンド対策専門部会(平成12年3月23日)において、同評価分科会主査から分科会における作業の状況を報告されたものである。  専門部会で出された主な意見の概要及びこれらに対する分科会主査の発言の概要は、以下のとおり。

今後の課題としていろいろあげられているが、それらが第2次取りまとめ時点での課題なのか、それとも具体的な処分地選定段階での課題なのかなど、課題の重要度の整理をすることが必要。

技術的には満足するものであっても、対外的に説明する場合は押しつけとならないように配慮することが必要。

専門部会報告書「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」(平成9年4月、以下「専門部会報告書」)の課題に沿った評価のみではなく、専門部会報告書にはない事項についても検討が必要なものについては検討すべき。内部的な評価との懸念をもたれないような取組みが必要。

諸外国では、地層処分の不確実性による不安から、再取り出し性、管理などがオプションとして考えられている。これらの課題についても検討することが重要。

地下研究施設は、信頼できるデータを得るために必要なものと理解している。その必要性を報告書では具体的に記述してはどうか。

評価においては、第2次取りまとめの記述が妥当かどうかが重要なので、妥当性を示す解説がもう少し必要ではないか。

専門部会報告書を引用し、『「北海道幌延町に計画している貯蔵工学センター内に予定されている深地層試験場」については、新たに深地層研究所(仮称)計画として現在申し入れが行われているところである』としているが、貯蔵工学センター計画は白紙に戻されたものであり、専門部会報告書を引きずった記述は誤解を招く。

<分科会主査>
 今後の課題としてあげたものについては、今後、緊急性、重要度などの観点から整理していく予定。地下研究施設については必要性を具体的に記述する予定。これまでは専門部会報告書に沿って評価を行ってきたが、今後は再取り出し性などについても検討することとしている。また、今後は外部の意見も聞きつつ検討を進めていく予定。
 深地層研究所(仮称)計画については誤解を招かない表現を取り入れていきたい。


 

資料(専)29-9

我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分

研究開発について

(中間整理)

 

 

 

平成12年3月23日


目 次

中間整理に当たって

Ⅰ.個別研究開発課題についての進捗状況

 1.我が国の地質環境

 2.地層処分の工学技術

 3.地層処分システムの安全評価

Ⅱ.総括

 1.地層処分の技術的信頼性について

 2.処分予定地の選定と安全基準の策定に資する技術的拠り所について

 3.今後の課題

中間整理以降の評価の進め方


中間整理に当たって

 平成11年11月、核燃料サイクル開発機構は、技術報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-(以下、「第2次取りまとめ」という。)を原子力委員会へ提出した。これを受けて、原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会(以下、「専門部会」という。)では、地層処分研究開発第2次取りまとめ評価分科会を設置し、技術的な観点からの評価を原則として、第2次取りまとめの評価に着手した。
 地層処分研究開発は大きく3つの分野に分けて進められてきており、第2次取りまとめでは各分野の成果の詳細がそれぞれ3つの分冊にまとめられている。各研究分野ごとに、技術的観点からの詳細な検討を行うため、①地質環境・評価サブグループ、②処分技術・評価サブグループ、③安全性・評価サブグループを分科会の下に設置し評価を進めてきた。  このたび、中間整理として、これまでの分科会での検討状況を取りまとめた。
 第2次取りまとめに対する評価の考え方は、専門部会報告書「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発などの今後の進め方」(平成9年4月15日)(以下、「専門部会報告書」という。)に示されている。すなわち、第2次取りまとめに示された研究開発の成果が、地層処分の技術的信頼性を示すという目標に対し適切に達成されているか否かを客観的かつ透明性をもって明らかにする必要がある。このため、成果の総合的な評価とともに、専門部会報告書に示されている第2次取りまとめの個別目標に対応する研究領域毎に研究成果の到達度を適切に評価することと、今後の研究課題と進め方を明らかにすることが重要であるとしている。
 評価分科会では、この評価の考え方に基づいて検討を進め、第2次取りまとめが、処分予定地の選定や処分システムの設計など地層処分を事業化の段階へ進めるための技術的基盤となり得るか否かを評価することとした。
 本中間整理では、先ず、我が国の地質環境、地層処分の工学技術、地層処分システムの安全評価に関する個別課題それぞれについての詳細な評価状況について記述している。次に、総括として、我が国の地質環境、地層処分の工学技術、地層処分システムの安全評価の各分野ごとに評価の現状を簡潔に記述するとともに、地層処分の技術的信頼性について、現時点までの総合的な評価結果を記述している。また、処分予定地の選定及び安全基準策定の技術的拠り所が示されているかどうかについて検討した結果と現時点までに判明している今後の研究開発課題について記述している。
 今後も、これまでの審議の過程で提起された課題、中間整理への意見などを踏まえつつ、第2次取りまとめの評価についての検討を進めることとする。

 

Ⅰ.個別研究開発課題についての進捗状況

 

1.我が国の地質環境

 専門部会報告書では、第2次取りまとめの作成に当たって、地層処分にとって重要な地質環境上の要件を明らかにし、それを満たす地層が我が国においても存在する可能性を明らかにすることが求められている。また、処分システムの長期安全性と技術的実現性を示す上で重要な地質環境のニアフィールド(人工バリアとその近傍の地層とを併せた領域)特性について、具体的な実測値に基づく知見を整備することが求められている。
 地質環境の長期安定性については、地震・断層活動、火山・火成活動、隆起・沈降・侵食や気候・海水準変動などの天然現象が地下深部1の地質環境に及ぼす影響の程度とその範囲について事例研究を進め、変動帯に位置する我が国においても地層処分にとって十分に安定な地質環境が存在し得ることを明らかにすることが求められている。また、地質環境の特性については、実際の地質環境下や室内での試験研究などに基づいて、人工バリアの設置環境として重要な地質環境の特性及び天然バリアとして重要な地質環境の特性を明らかにしていくとともに、地質環境の特性を調査するために有効な技術及び手法を開発することが求められている。
 なお、地層処分研究開発の基盤として位置づけられる深部地質環境の科学的研究については、その成果が地層処分研究開発の各分野における研究の進展に応じ、適切に反映されることが求められている。


1地下深部:ここでは、地層処分の処分深度として想定されている深さ(地下数百~千m程度)の地下を指す。

1)地質環境の長期安定性
 専門部会報告書では、地震・断層活動及び火山・火成活動について、「これまで長期にわたり限られた地域で起こっており、活動及び活動範囲の移動は規則的に推移しているため、その影響を受けない地域の地下深部に処分施設を設置することが可能と考えられる。」としている。第2次取りまとめの作成に当たっては、その性質や影響範囲などを調査し、変動帯であってもこれらの影響が及ばないような安定な地域が存在し得ることを示すとともに、天然現象による地質環境の変動の程度を明確にすることが求められている。一方、隆起・沈降・侵食及び気候・海水準変動については、「その変化の規則性が過去の地質学的記録から類推できるため、長期にわたりこれらの影響や範囲を推定することが可能と考えられる。」として、第2次取りまとめの作成に当たっては、比較的精確な年代測定が可能な過去十万年程度の範囲のデータを解析し、緩慢かつ広域的現象が地質環境の長期安定性に及ぼす影響の可能性について調査することが求められている。

①地震・断層活動
 第2次取りまとめにおいては、地震・断層活動が地層処分システムへ与える影響として、岩盤の破断・破砕とこれに伴う地下水移行経路の形成、地震動による岩盤や地下水の性質の変化などを想定している。その上で、岩盤の破断・破砕とこれに伴う地下水移行経路の形成による影響に対しては、活断層の分布や性質を把握し、処分場に重大な影響を与える可能性のある範囲を避けることが重要であるとしている。また、地震動による影響に対しては、地下深部における地震による揺れが地表付近に比べて小さく、地震が起こった際に人工バリアが岩盤と一体となって振動すると考えられることから、想定される最大級の地震動を考慮した上で、工学的な対策を施すことにより対応が可能であるとしている。
 第2次取りまとめでは、日本全国の主要な活断層の分布やその活動履歴などを調査することによって、我が国における地震・断層活動が、過去数十万年間にわたって、既存の活断層帯で繰り返し起こっており、その分布は限定されることが示されている。また、地質環境への影響については、大規模な活断層での研究事例等に基づいて断層活動に伴う岩盤の破断・破砕や変位の及ぶ範囲などが示されている。地震動については、釜石鉱山における地震観測の結果等に基づき、地震の揺れが地下百数十m以深では地表の1/2~1/3程度であることや、地下水位や水質の変化が短期的なものであるなど、地震の震動による地下深部の地質環境への影響が小さいことが示されている。
 以上のように、第2次取りまとめによって、主要な活断層の活動及び影響の範囲が限定されること、また、地下深部では地震の震動による影響が地表付近に比べて小さいと考えられることが示されていることから、地震・断層活動による重大な影響が及ばない地域が我が国に存在し得ることが示されており、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 今後は、伏在する活断層や活動度の低い活断層の存在等、地域を特定することでより詳細な調査や評価が可能となる事象について、広域的かつ局所的なテクトニクスを考慮に入れつつ、調査研究を進めていく必要がある。さらに、地震・断層活動が地下水流動等の深部地質環境に与える影響についての研究事例をさらに充実し、その影響の程度と範囲をより的確に見極めていくことが重要である。

②火山・火成活動
 第2次取りまとめにおいては、火山・火成活動が地層処分システムへ与える影響として、マグマの貫入・噴出による多重バリアシステムの破壊や地表への放出、マグマからの熱による地温の上昇や熱水の発生、地下水への熱水・火山ガスの混入による水質の変化などを想定している。その上で、これらの影響については、火山・火成活動の時間的・空間的な変化を把握し、処分場に重大な影響を与える可能性のある範囲を避けることが重要であるとしている。
 第2次取りまとめでは、主に第四紀(約170万年前~現在)の火山の活動履歴を調査することによって、我が国における火山活動は限定された地域内で繰り返し起こっていることが示されている。また、マグマからの熱・熱水による影響や地下水水質の変化が及ぶ範囲についても、火山地域での事例研究等に基づいて、一般に火山の噴出中心から数~20km程度の範囲内であることが示されている。
 以上のように、第2次取りまとめによって、火山・火成活動及びその熱的影響等の範囲が限定されることが示されていることから、火山・火成活動の著しい影響が及ばない地域が我が国に存在し得ることが示されており、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 今後は、単成火山群地域2において火山が新たに発生する可能性、非火山地域における高温異常域等、地域を特定することでより詳細な調査や評価が可能となる事象について、広域的及び局所的なテクトニクスを考慮に入れつつ、調査研究を進めていくことが望まれる。


2単成火山群地域:ただ1回の噴火活動の結果生じた火山(単成火山)の分布する地域。

③隆起・沈降・侵食
 第2次取りまとめにおいては、隆起・沈降・侵食が地層処分システムへ与える影響として、隆起・侵食の継続による処分場の露出及び、隆起・沈降・侵食による処分場を設置した深度の変化や地表の地形の変化による地質環境特性(地下水流動、水質、岩盤の地圧・地温など)の変化を想定している。その上で、これらの現象については、個々の地域における変動量が概ね推定できるため、変動の著しい地域をあらかじめ避けた上で、個々の地域で予想される土被りの変化や傾斜の変化を考慮して十分な処分場設置深度を設定することなどにより対処できるとしている。
 第2次取りまとめでは、全国的な隆起・沈降速度の分布がまとめられており、一部に十万年当たり100mを超える隆起速度を有する地域が存在するものの、他の多くの地域では十万年当たり50m程度またはそれ未満であることが示されている。侵食速度については、面的な侵食と線的な侵食(河川による下刻)について検討されており、その結果、隆起の激しい場所を除けば、十万年当たり数十~百m程度であると推定されている。堆積作用についても、平野や盆地における第四紀堆積物の厚さから、十万年当たり数十~百m程度であると推定されている。
 以上のように、第2次取りまとめによって、隆起・沈降・侵食による変動量の分布が示され、これに基づいて変動量の著しい地域をあらかじめ避けることが可能であることが示されている。これは、隆起・沈降・侵食の著しい影響が及ばない地域が我が国に存在し得ることを示しており、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 今後は、第2次取りまとめに整理されたような長期的な変動の傾向と近年になって飛躍的に進歩した測地により得られる短期的な変動量に関するデータとの整合性や、隆起・沈降・侵食が地下水流動等の深部地質環境に与える影響等、地域を特定することでより詳細な調査や評価が可能となる事象について、広域的及び局所的なテクトニクスを考慮に入れつつ、調査研究を進めていくことが望まれる。

④気候・海水準変動
 第2次取りまとめにおいては、気候・海水準変動が地層処分システムへ与える影響として、気温・降水量の変化による表層での水収支3の変化や海水準の変動に伴う地下水流動・水質・侵食速度の変化を想定している。
 第2次取りまとめでは、過去数十万年にわたって、十万年周期の明瞭な氷期-間氷期サイクル等が確認されており、将来的にもこの周期が継続すると考えられることと、そのサイクルに伴う気候・海水準の変動幅が示されている。また、気候変動が地質環境に及ぼす影響として、寒冷化に伴う永久凍土や凍結割れ目の発達の影響が検討されており、これらの現象が生じるのは一部の地域だけであり、かつその影響は地表付近に限定されることが示されている。海水準変動が地質環境に及ぼす影響としては、海岸線の位置の移動及びこれに伴う地下水位の変化や淡水・塩水分布の変化等が示されている。
 以上のように、第2次取りまとめにおいては、気候・海水準変動の著しい影響が及ばない地域が我が国に存在し得ることが示されており、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 ただし、沿岸地域における地下水の塩淡境界4についての研究事例が少ないため、今後は、気候・海水準変動による地下水への影響、とくに沿岸地域における塩淡境界の移動に伴う地下水流動や水質の変化などについての調査研究をさらに充実することが望まれる。


3水収支:水の循環系の中での自然的・人為的要因による量的な変化を明らかにすること。自然的要因のみを考えた場合、降水として供給される水量から、河川により流出する量や地表から蒸発する量を差し引くと、地下へ浸透する水量が得られる。
4塩淡境界:沿岸地域の地下において、海水(塩水)の領域と淡水の領域とが接する境界。


⑤ナチュラルアナログ(類似した天然現象)の調査研究
 専門部会報告書では、第2次取りまとめに当たり、地質環境の長期安定性が実際に保たれていることを、事例研究によって明確にするとともに、さらにその地域の地殻変動や気候変化などに関する履歴を詳細に解析して、天然現象の影響が重複したにもかかわらず、現在まで長期にわたって安定性が保たれている事例があることを示すことが求められている。
 第2次取りまとめでは、東濃ウラン鉱床の研究例が示されている。東濃ウラン鉱床でのナチュラルアナログ研究の結果、ウラン鉱床が約1000万年前に形成されて以来、断層活動や隆起・沈降、侵食、気候・海水準変動等の影響を被ってきたにもかかわらず、現在まで安定に保存されていることが示されていることから、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 今後とも、ナチュラルアナログの調査研究をさらに充実し、地質環境の長期安定性や地層処分システムの安全性などの信頼性向上に活用していくことが望まれる。

 なお、第2次取りまとめでは、地域を特定せず全国的な見地から検討を行っており、個々の地域に対する詳細な検討は行われていない。特定の場所を対象とした研究段階に向けて、個々の地域で考慮すべき天然現象が地質環境に及ぼす影響の程度や範囲を具体的に評価する手法を構築するための調査研究を進める必要がある。

2)地質環境の特性
 専門部会報告書では、「地質環境についての情報の取りまとめに当たっては、我が国に広く分布する結晶質岩系と堆積岩系の双方を対象とし、「性能評価研究」や「処分技術の研究開発」においてとくに重要となるニアフィールドの水理、地球化学、物質移動などの特性及びそれらの長期的な安定性の研究に重点をおくことが重要である。」として、「性能評価研究」や「処分技術の研究開発」に必要となる地質環境についての情報を提供することが求められている。また、地層処分にとって重要な地質環境上の要件を明らかにし、それを満たす地層が我が国に存在する可能性、さらにはサイト5特性の調査項目を明らかにすることが求められている。

①物質移動に関与する地質構造要素
 第2次取りまとめでは、東濃鉱山や釜石鉱山などにおける調査研究の結果に基づいて、地下水を媒体として物質が移動する過程で、一般に造岩鉱物6や割れ目充填鉱物7の表面に物質が吸着したり、割れ目表面から岩石基質中へ物質が拡散したりすること(マトリクス拡散)により、地質環境中での物質の移動が遅延される効果が期待できることが示されている。サイト選定において考慮すべき地質環境条件については、人工バリアの設置環境として「主要な地質構造要素(断層や不整合面など)の分布や性状との関係で、処分施設を適切に配置できること」が重要な条件として示されている。また、天然バリアとしても「大規模な断層破砕帯など選択的な移行経路となり得る構造から十分な距離が確保できること」「移行経路の構造や化学的な性質に着目し、核種の移行に対して十分な遅延効果(マトリクス拡散や吸着など)が期待できること」を確認する必要があるとしている。なお、主要な地質構造要素の調査に関しては、処分地選定に至るプロセスの各段階において評価すべき項目や必要となる地質環境情報が整理されており、各情報を取得するための調査手法や機器が示されている。


5サイト:ここでは、処分地選定の各段階における処分候補地、処分予定地及び処分地を包括する意味で「サイト」の語を用いている。
6造岩鉱物:ふつうに存在する岩石を構成する主要な鉱物の総称。
7割れ目充填鉱物:断層破砕帯や割れ目等の隙間を充填して生じている二次鉱物の総称。


②地下水の流動特性
 第2次取りまとめでは、地下深部における動水勾配8が地表部に比べて低くなる傾向があることが解析及び実測データにより確認されている。また、東濃地域や釜石鉱山における実測データ及び既往の文献データをもとに、断層破砕帯や割れ目集中帯を除き、地下深部での岩盤の平均的な透水係数がおおむね10-10~10-7m/sのオーダーの範囲に分布することが示されている。サイト選定において考慮すべき地質環境条件については、人工バリアの設置環境としては「一般的には、動水勾配や透水性が低く、人工バリア中に浸透する地下水の量や速度が小さいこと」が好ましい条件として示されている。また、天然バリアとしても「動水勾配や岩盤の透水性に着目し、地下水を媒体とする核種の移行が十分に低く制限できる水理学的状態であること」を確認する必要があるとしている。その上で、これまでの知見から、地下深部では、緩衝材を流出させるような地下水流動が生じているとは考え難いとしており、地下深部では一般的にこのような条件が満たされうることが示されている。なお、地下水流動特性の調査に関しては、処分地選定に至るプロセスの各段階において評価すべき項目や必要となる地質環境情報が整理されており、各情報を取得するための調査手法や機器が示されている。


8動水勾配:地下水の動きを決める要因の一つで、地下水が流れる方向の単位距離当たりの水圧(正確には水頭)の差をいう。

③地下水の地球化学特性
 第2次取りまとめでは、東濃地域及び釜石鉱山での実測データなどに基づいて、降水起源の地下水の水質が造岩鉱物や割れ目充填鉱物、有機物との反応などによって形成され、処分深度では一般に還元状態にあることが示されている。海水起源の地下水についても、沿岸地域での研究事例や、海水と岩石との反応を考察した結果により、地下深部では一般に還元状態にあると考え得ることが示されている。サイト選定において考慮すべき地質環境条件については、人工バリアの設置環境としては、オーバーパックの腐食や核種の溶解を抑制する観点から、「現在検討されている人工バリアの仕様では、地下水のpH(水素イオン濃度指数)が強酸性や強アルカリ性でなく、かつ還元性であること」が好ましい条件として示されている。また、天然バリアとしても「地下水と核種との化学的な反応に着目して、核種の移行が十分に低く制限できる化学的状態であること」を確認する必要があるとしている。その上で、これまでの知見から、岩石中に一般に含まれる鉱物や有機物などとの反応によって、地下深部の地下水は一般に還元状態であるとしており、地下深部では一般的にこのような条件が満たされうることが示されている。なお、地下水の地球化学特性の調査に関しては、処分地選定に至るプロセスの各段階において評価すべき項目や必要となる地質環境情報が整理されており、各情報を取得するための調査手法や機器が示されている。

④岩盤の熱特性・力学特性
 第2次取りまとめでは、主要な物性データが岩種毎に整理されている。地温勾配9については、火山地域以外ではおおむね3℃/100m前後にあることが全国的な深層ボーリングデータの検討により示されている。初期応力10については、東濃地域や釜石鉱山における実測データ並びに既往の文献データに基づき、地下深部では鉛直応力と水平面内応力の比が1前後に近くなること、すなわち応力状態が均質に近くなることが示されている。また、サイト選定において考慮すべき地質環境条件として、人工バリアの設置環境としては「一般的には、応力状態が均質に近く、地温が低いこと」が好ましい条件として示されており、これまでの知見から、深度1000mにおいても合理的な処分施設の設計が十分に可能であるとしている。なお、岩盤の熱特性・力学特性の調査に関しては、処分地選定に至るプロセスの各段階において評価すべき項目や必要となる地質環境情報が整理されており、各情報を取得するための調査手法や機器が示されている。

 以上のように、現在までに得られている科学的な知見に基づいて、地層処分にとって重要な地質環境上の要件が整理されており、それを満たす地層が我が国に存在する可能性及びサイト特性調査項目が示されており、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 今後は、研究事例をさらに充実するとともに、深地層の研究施設等の研究成果を活用し、地表から処分深度までの体系的なデータの収集・整備とモデル化を進め、より現実に即した人工バリアや処分施設の設計並びに安全評価上の解析評価に反映していく必要がある。


9地温勾配:地下の温度は一般に深さが深くなるほど上昇する。この上昇の度合いを単位深さ当たりの温度の差で表したもの。
10応力:物体内に作用する単位面積当たりの力を応力という。


3)深部地質環境の科学的研究
 深部地質環境の科学的研究は、地層処分研究開発の基盤となる研究であり、深部地質環境の特性に関する研究とそのための調査技術の開発及び深部地質環境の長期安定性に関する研究を中心として行われてきている。

①深部地質環境の特性に関する研究
 専門部会報告書では、深度1000メートル程度までの地質構造、地下水の流動特性、地下水の地球化学特性、岩盤の力学特性、岩盤中での物質移動、及び坑道掘削や人工物の構築などによるこれらの特性への影響に関する調査研究を行うことが求められている。
 第2次取りまとめでは、上述したように、東濃地域及び釜石鉱山における研究の成果が有効に活用されており、深部地質環境についての実測データが整備されてきていることから、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 今後は、事例研究をさらに充実するとともに、深地層の研究施設等を活用して、深部地質環境の特性やそこでの現象についての理解を深めていく必要がある。また、断層の活動に伴う地下水流動や地下深部のコロイド・バクテリアなど、研究の進展が期待できる分野については、第2次取りまとめ以降も最新の知見の反映に努める必要がある。

②深部地質環境の調査技術及び関連機器の開発
 専門部会報告書では、深度1000メートル程度までの地質環境を対象に、地質環境への擾乱を最小限に抑えつつ信頼性の高いデータを取得するための調査手法や機器の開発・改良を進め、その技術的基盤を確立すること、さらに、フィールドでの試験を通じて、これらの調査手法や機器の適用性を十分に検討するとともに、得られたデータの品質や精度を確認し、個々の機器や手法を組み合わせた調査解析システムとして確立していくことが求められている。
 第2次取りまとめでは、地質環境調査の各段階において必要とされる調査項目が整理されており、その調査項目毎に有効な調査手法や機器が示されている。また、地下水調査機器の開発や物理探査技術の改良などが図られており、地質環境を調査するための基盤的な技術は整備されてきていると言える。
 今後は、深地層の研究施設等を活用して、調査機器の改良や技術の検証を進めるとともに、それらを体系化し、地質環境の合理的な評価に活用していくための検討が必要である。

③深部地質環境の長期安定性に関する研究
 専門部会報告書では、地震・断層活動、火山・火成活動、隆起・沈降・侵食、気候・海水準変動の天然現象について、我が国における特徴や地質環境への影響を調査研究するとともに、これらを評価するための手法について検討を進めることが求められている。
 第2次取りまとめでは、上述したように、各地での事例研究の成果が有効に活用され、我が国における天然現象の特徴や地質環境に及ぼす影響についての知見が着実に蓄積されてきており、専門部会報告書で求められた目標はほぼ達成されていると評価することができる。
 第2次取りまとめ以降も、最新の知見を反映することに努めるとともに、天然現象の要因、規則性、メカニズムについて、事例研究を進め、引き続き検討していくことが望まれる。

④深部地質環境の科学的研究を進めるための主要施設
 専門部会報告書では、「東濃鉱山とその周辺における堆積岩やウラン鉱床を対象とした研究及び釜石鉱山における結晶質岩を対象とした研究を推進するとともに、動燃事業団が新たに瑞浪市に計画している、深度1000メートル程度までの結晶質岩を主体とした地下深部の研究施設を積極的に活用していく。また、堆積岩を対象とした科学的研究を推進するため、動燃事業団が北海道幌延町に計画している貯蔵工学センター内に予定されている深地層試験場についても、地元及び北海道の協力を得つつ同計画の推進を図ることにより、その活用を目指していく。」としている。また、海外の施設についても、積極的に研究の場として活用することが重要であるとしている。
 第2次取りまとめの作成に当たっては、代表的な地質として堆積岩系及び結晶質岩系の双方を対象に、表層から地下深部までの岩石や地下水に関する包括的なデータの取得に努めるとともに、地球科学の各分野における学術的研究によって蓄積された関連情報についても広く収集・整理し、その活用を図っていくこととされている。
 第2次取りまとめでは、これまでに実施された東濃鉱山とその周辺における堆積岩やウラン鉱床を対象とした研究及び釜石鉱山における結晶質岩を対象とした研究の成果が有効に活用されている。また、地質環境調査技術や処分技術の開発に関して、スウェーデン原子燃料廃棄物管理会社(SKB)、カナダ原子力公社(AECL)等との共同研究により、各国の地下研究施設を活用した研究の成果が反映されている。
 東濃地域及び釜石鉱山での調査研究はこれまで精力的に進められており、国際的にも高い研究レベルに到達していると評価することができる。また、海外の施設についても積極的に活用されている。瑞浪市に計画している超深地層研究所については、現在地表からの調査が行われている段階であり、また、「北海道幌延町に計画している貯蔵工学センター内に予定されている深地層試験場」については、新たに深地層研究所(仮称)計画として現在申し入れが行われているところである。
 今後は、深地層の研究施設等を活用して、体系的な調査研究を実施することが必要である。また、海外との研究・人的交流を今後も継続していくことが重要である。

4)地質環境における個別課題の総評
 第2次取りまとめでは、地質環境の長期安定性について、地下深部の地質環境への天然現象の影響の程度とその範囲についての事例研究の成果等が取りまとめられており、変動帯に位置する我が国においても地層処分にとって十分に安定な地質環境が存在し得ることが示されている。地質環境の特性については、地層処分にとって重要な地質環境上の要件が整理されており、それらの要件を調査するために有効な技術及び手法が示されている。また、深部地質環境の科学的研究の成果は、地層処分研究開発に適切に反映されている。
 以上により、第2次取りまとめは、我が国の地質環境を幅広くとらえて全国的見地から検討を行う研究開発段階の成果として、専門部会報告書の個別要求事項を満足しているものと評価できる。
 今後は、より具体的な地質環境を対象に、さらに詳細な検討がなされていく必要がある。このため、深地層の研究施設等を活用して、地表から処分深度までの体系的なデータの整備とモデル化を進め、より現実に即した地層処分システムの解析評価に反映していく必要がある。また、これを通じて、特定の地質環境を詳細に調査する技術や手法の改良及び体系化を図っていくことも重要である。
 なお、地球科学の分野は今後も着実に進歩していくことが期待される。地球科学における新たな知見を適宜反映し、地層処分の信頼性をさらに向上させていくため、地層処分研究開発の基盤として深部地質環境の科学的研究を引き続き推進していくことが重要である。

2.地層処分の工学技術

 専門部会報告書では、地層処分の工学技術に関しては、安全性を実現するための信頼性の高い人工バリア及び処分場についての設計要件を提示するとともに、これらが現実的な工学技術によって合理的に構築できることを示すことが目標とされている。併わせて、処分場に関する種々の状態や状況について、それぞれの段階において取得すべき情報の内容、計測の方法、所要の措置などを技術的に検討し、処分場の管理に関する技術的基盤を整えることが求められている。
 すなわち、第2次取りまとめでは、想定された地質環境を考慮しつつ、現状の技術に基づいて人工バリアや処分施設の設計要件を明らかにするとともに、現実的なデータや信頼性の高い解析評価手法を適用して、人工バリアと処分施設の仕様例を合理的に設計できることを示すことが求められている。

1)処分場の管理
 専門部会報告書では、処分場の管理について、処分場に関する種々の状態や状況について、建設、操業、閉鎖のそれぞれの段階において取得すべき情報の内容、計測の方法、所要の措置などを技術的に検討することを目標としている。
 第2次取りまとめでは、処分場の管理について、管理の考え方を整理した上で、処分場の建設、操業、閉鎖の各段階で行われる管理の内容を検討し、管理すべき項目を明らかにしている。その上で、これらの管理項目ごとに各作業段階で取得すべき主な情報の内容と計測項目を例示している。
すなわち、設計・施工上の品質・施工管理や作業の安全管理、並びに人工バリア・施設周辺の環境モニタリングについて具体的な管理項目があげられており、現時点として、国内外の情報も含めて良く検討されていると判断される。また、処分場の管理について、現時点で想定できる限り全体像に抜け落ちがないように検討されており、処分場がシステム全体として滞りなく稼働するかという点も考慮されている。
 第2次取りまとめで想定されている範囲では、不確かさの検討も含め、特に問題ないと考えられるが、深地層での空洞掘削等の影響が長期にわたる安全性へ影響を及ぼすという地層処分事業の特殊性をどの程度まで考慮するか、今後さらに検討を継続する必要がある。

2)オーバーパックの設計
 専門部会報告書では、オーバーパックに関して、候補材として炭素鋼を中心に検討すると同時に、チタンや銅の複合オーバーパックなどの可能な代替案も検討の対象として、構造やしゃへい性などに関する設計解析を行い、オーバーパックの設計要件の検討を進めることを目標としている。
 第2次取りまとめでは、オーバーパックを含む人工バリアの設計について、想定された硬岩系及び軟岩系岩盤を前提に、これまでの試験研究などから得られた知見をもとに、設計要件を明らかにした上で、人工バリア設計の進め方を検討し、これに従ってオーバーパックや緩衝材の設計を実施している。
 現時点では、環境条件に応じて柔軟に対応できる人工バリア設計と性能の評価が必要であり、この必要条件に十分対応できる人工バリアの設計条件の設定が行われている。 また、炭素鋼オーバーパックの腐食挙動については、細部になお検討を要する項目があるが、設計に反映することのできる知見がほぼ集積されたものと判断される。炭素鋼オーバーパックの腐食挙動の内、特に放射線分解による腐食、酸化性環境及び還元性環境下での腐食については、引き続き研究を継続することが必要である。
さらに、炭素鋼以外のオーバーパック材料として、チタン及び銅について検討を加えている。チタン及び銅の腐食挙動の大まかな特徴は確認できているものの、オーバーパックの材料選定の観点から、中心検討材料の炭素鋼と同じレベルで比較するためには、さらに知見の蓄積が必要である。

3)オーバーパックの製作・施工技術
 専門部会報告書では、オーバーパックの製作・施工技術について、代替案も含め、技術の開発や溶接部の試験方法などの品質管理手法の検討を行うことを目標としている。
 第2次取りまとめでは、炭素鋼オーバーパックについて、現有の技術でほぼ信頼できるものを作製できることを確認しており、目標は達成していると判断される。今後、製作・施工の詳細(溶接部の密閉性の検査、耐食性、残留応力、機械的特性等)について、検討を継続することが必要である。特に、オーバーパックの溶接部については、長期的耐食性も含めて、安全性及び信頼性を確保するための研究が今後必要である。
 オーバーパックの施工法や溶接法については、複数の方法を検討、提案しており、目標は達成していると判断される。今後は技術開発の進展を踏まえて、コストと信頼性の両面から複数の方法について、比較検討することが重要である。
今後は、炭素鋼オーバーパックについて、実際の製作法、ガラス固化体の封入法、溶接法、溶接部の検査、品質管理等について具体化を念頭においた検討を進める必要がある。
また、代替案としてチタン/炭素鋼及び銅/炭素鋼の複合オーバーパックについて検討しているが、製作法が複雑であり、炭素鋼オーバーパックと同じレベルの技術的知見を蓄積するためには、さらに検討が必要である。

4)緩衝材の設計、製作・施工技術
 専門部会報告書では、緩衝材については、粘土材料を中心とし、工学規模の試験などを通じて、物性評価や設計要件、並びに施工技術や品質管理手法について検討を行うことを目標としている。
 第2次取りまとめでは、緩衝材の設計要件として、放射性核種の隔離のための条件及び人工バリアが成立するための要件が検討されており、これらの要件は妥当であると言える。また、これらの要件が成立することは、試験等により評価され、結果は妥当なものとなっている。
 品質管理については、長期的な品質保証の観点からの見直しを行うため、一般産業における既存の品質管理手法が準用できないものを抽出しておくことが必要である。
 また、緩衝材の制限温度は、廃棄体ピッチの設定、すなわち処分場の規模に直接影響を及ぼすものであるため、今後さらに研究を継続し、詳細な検討を行うことが重要である。

5)緩衝材の材料
 専門部会報告書では、緩衝材の材料について、熱伝導性や放射性物質の吸着性を高めるような材料の検討を行うことが必要とされている。
 第2次取りまとめでは、ケイ砂の混合による熱伝導性の向上が検討されており、吸着性と施工性との兼ね合いのもとでの評価が行われており、目標は達成していると判断される。  今後は、緩衝材材料について、超長期にどのように化学的に変質するかの研究が必要である。

6)人工バリアの埋設後の健全性
 専門部会報告書では、人工バリア全体の構造力学的安定性、耐震安定性などの検討を進め、安全確保上より厳しい状態を想定した振動試験などによる健全性確認試験を行うこと、また、人工バリアの開発に当たっては、想定された地質環境に基づき、人工バリアが設置される周辺の地質環境の条件、及び人工バリア設置後のニアフィールド環境の変化を十分に考慮することが目標とされている。
 第2次取りまとめでは、熱-水-応力連成解析11による再冠水時の人工バリアの挙動、岩盤の長期クリープ12やオーバーパックの腐食膨張を考慮した人工バリアの長期構造力学安定性、人工バリアの耐震安定性、ガス移行挙動、緩衝材の岩盤内侵入挙動について評価を行い、人工バリアの埋設後の健全性が確認されている。
 これらの健全性評価は、最新の知見に基づいて行われており、評価結果も妥当である。今後は、実験的、理論的な確認をさらに深めるため、より一層の試験研究が必要である。例えば、還元雰囲気環境下で長期にわたり徐々に発生するガス(H)が処分場に及ぼす影響について、今後特定される地質環境を対象として、その評価モデルの適用性の確認などを行うことが重要である。
 また、緩衝材の長期にわたる変質を評価することと関連して、人工バリアの健全性は化学的事象の影響が大きいことから、緩衝材における熱-水-応力連成解析に、化学的事象も考慮することが望ましい。


11熱-水-応力連成解析:岩盤や人工バリア内の熱伝導、地下水の流れ、応力・変形の3つの現象の相互作用を評価するため、各現象を表すつり合い方程式を組み合わせて一つの解析として解く方法。
12クリープ:一定の外力または応力が作用している状態で、時間の経過とともに物質(例えば、緩衝材や岩盤等)が長期にわたって非常にゆっくりと変形していく現象。


7)処分施設の設計
 専門部会報告書では、処分施設に関して、我が国の地質環境に柔軟に対応できる設計要件を提示するための研究を継続して行い、空洞安定性や熱的安定性などに関する解析手法を示すことが必要であるとされている。
 第2次取りまとめでは、坑道の力学的安定性の検討が行われ、施工が可能と考えられる深度と支保工厚の関係を例示するとともに、有限要素法13による詳細な解析を実施し、支保工を含めたアクセス坑道、主要坑道、連絡坑道、及び処分坑道の仕様例を設定した。さらに、これらの坑道仕様に対し、建設、操業時の耐震安定性について検討し、その安定性が確保されることを確認している。
 また、処分坑道離間距離と廃棄体ピッチの組み合わせに関する合理的な設計の考え方が示され、建設、操業、閉鎖の各作業が独立に並行して実施可能となるような処分場のレイアウトが例示されている。
すなわち、設計の前提条件及び建設・操業・閉鎖を可能とするために考慮すべき設計要件が示されており、この設計要件が設計の技術的拠り所となると判断される。処分場レイアウトの設定については、基本的考え方、考慮すべき事項などが示されており、それらに基づいて硬岩系及び軟岩系岩盤の仮想的な地形・地質モデルにおける処分場レイアウトの例示が行われている。
 空洞の力学的安定性や緩衝材の熱的安定性については、適用実績の多い解析手法により詳細に検討・評価されており、評価結果は妥当である。将来的には、入力値の扱いや岩盤の亀裂情報等の最新の知見を反映した解析技術の進展・検証が期待されることから、新しい知見や解析技術に基づいた評価結果の見直しを進めていくことが必要である。


13有限要素法:解析の対象とする領域を単純な形状をした有限な大きさの要素(有限要素)で分割・細分化し、この有限要素ごとのつり合い方程式を領域全体で重ね合わせて解き、全体の挙動を求める数値解析手法。応力や変形、熱伝導、流体の流れ等の種々の現象を解くために幅広い分野で利用されている。

8)建設、操業技術
 専門部会報告書では、建設、操業技術に関して、立坑や処分坑道の建設技術の検討や、処分坑道への定置技術などの操業システムの要素技術の検討を行うことを目標としている。  第2次取りまとめでは、処分場の建設に関して、硬岩系、軟岩系岩盤や坑道方式に応じた掘削技術や施工手順などの検討が行われ、基本的に現状の技術で対応できることを確認するとともに、建設時に遭遇すると考えられる現象への対策についても例示されている。また、操業に関しては、搬送・定置作業における遠隔操作設備などの概念が構築され、廃棄体定置までの一連の作業方法の具体例が示されている。
 すなわち、処分場建設に関する具体的検討が行われ、現在までの蓄積技術及びその改良技術で基本的に建設可能としている。また、建設時に遭遇すると考えられる現象についても従来の経験などからその対策について例示されている。さらに、操業に関する具体的検討が行われ、現状技術及びその改良による技術を用いることにより基本的には廃棄体や緩衝材の搬送・定置を行うことができる見通しが得られている。
 今後の課題としては、深地層処分への適用性について、さらなる改良が必要となる可能性がある技術(無人機械を長期にわたって運転する技術等)に関して、確証試験を含めた十分な検討が必要である。また、建設、操業については、作業工程どおりにできるかということも含め、確認しておくことが必要であり、特に処分孔の掘削、廃棄体や緩衝材の遠隔操作を含む搬送、定置作業などについて、深地層研究施設における検証やサイト選定後に原位置を利用した実規模での検証を行っていく必要がある。

9)閉鎖技術
 専門部会報告書では、閉鎖技術について、材料開発、設計手法と施工技術の開発、設計要件の検討などを行い、工学規模の試験などによって、その性能を評価していくことを目標としている。
 埋め戻し材としては、調達性・経済性の観点から現地の掘削ずりをベース材料として利用し、これに透水性を低くする観点から膨潤性のベントナイトを混合したものを埋め戻し材候補にあげている。また、坑道埋め戻し後、坑道を密閉し、坑口にプラグを設置することとしている。工学規模試験の成果を引用して妥当な設計要件が検討されており、結果も妥当である。
 今後の課題として、岩盤条件が定まった時点で、処分場全体を考慮した埋め戻し材として要求される品質・役割を性能評価の観点からも検討しておくことが必要である。
また、建設、操業と同様に、閉鎖処理についても、深地層研究施設での検証やサイト選定後に原位置を利用した実規模での検証を行い、閉鎖技術の確立を行うことが必要である。

10)全体スケジュール
 専門部会報告書では、設計・建設・操業・閉鎖などの全体スケジュール、モニタリング技術の検討、所要の資材の調達、輸送の評価等を考慮した経済的合理性の観点からの検討を行うことを目標としている。
全体スケジュールに関して、現段階での検討を進める上の前提としては、妥当な計画であると判断される。なお、建設、操業期間が長期になると、それに応じた技術が必要になる可能性があり、地下坑道内の作業の安全性、遠隔操作機械の機能を考慮すると、この建設、操業期間は、できる限り短い方が良いと言える。
 経済的合理性に関しては、資材調達や輸送の評価、工程の短縮等、今後の課題として見直すべき点もあるため、サイト特有の条件を踏まえて、最適化が行われるべきである。

11)各研究開発を進めるための主要施設
①地層処分基盤研究施設等
 専門部会報告書では、実用化を前提とした人工バリアと処分施設の設計・建設・施工などに必要な技術の信頼性を高めるため、地層処分基盤研究施設などの充実を図り、これを活用した試験研究を行うことを目標としている。
 オーバーパック、緩衝材については、実験室規模の試験や工業規模の試験によって実証的なデータを得るとともに、モデルの検証が行われている。また、地層処分基盤研究施設において、コールドでの基本的な試験が行われており、目標は達成していると判断される。  第2次取りまとめで示されているデータは、それぞれに新しい知見が得られているが、文献値及び地上室内環境下の試験によるものが多い。現時点ではやむを得ないが、今後、地下環境を模擬した試験環境の下で試験ができる研究施設を整え、重要事項について確証試験を行い、本技術の確実性を確かめる必要がある。

②実規模試験
 専門部会報告書では、処分技術の要素技術に関わる実規模での試験実施について、カナダの地下研究施設、スウェーデンの硬岩試験場等での試験研究に積極的に参加し、その成果を適確に取り込むことを目標にしている。
 海外研究施設との共同研究は良く遂行されており、要素技術については、国際協力等を通して地下試験施設における実証が成果をあげている。
 今後は、諸外国で行われているように、地下空洞内で採られた緩衝材や岩盤の物性値、熱物質移行予測及びその変質等のデータが得られるような、地下研究施設の整備・充実が必要であり、日本特有の環境、技術を踏まえた検証を行う必要がある。

12)処分技術における個別課題の総評
 地層処分の工学技術に関する個別研究開発課題については、安全性を実現するための信頼性の高い人工バリア及び処分場についての設計要件を提示するとともに、これらが現実的な工学技術によって合理的に構築できることを示すという目標は達成されていると判断でき、事業化の段階へ進む準備は整ったと言える。
 今後、処分事業を推進するに当たって検討が必要な課題としては、以下のものがあげられる。
 処分場での系統的に想定することができない事態への対策・対応手法の検討を継続することが必要である。また、個別技術に関して、ある特定の手法で十分検討されているが、複数の検討手法がある場合には、クロスチェックにより手法の妥当性を確認することが重要である。さらに、個別技術は確証されたものであっても、それらが連結された場合に、処分システム全体として滞りなく稼働することの確認が必要である。

 

3.地層処分システムの安全評価

 専門部会報告書では、我が国の地質環境において、ニアフィールドを中心とした処分システムの性能に関し、十分な信頼性をもって評価することが要求されている。
 この要求に応えるためには、我が国の地質環境や現状技術及びその改良による技術を踏まえて、安全評価において考慮すべきシナリオを詳細に検討し、評価モデルの妥当性を高めていくことが必要である。それとともに、信頼性の高いデータを整備し、ニアフィールド性能を中心とした地層処分システムの安全性を評価する手法が整えられていることが必要である。また、我が国の地質環境や現状技術及びその改良による技術を前提条件として地層処分システム全体の安全性を評価し、「地層処分の安全性が確保できる見通しを示すこと」が必要である。

1)安全評価シナリオの作成
 専門部会報告書では、シナリオの作成においては、我が国の地質環境や人工バリアなどの設計要件を念頭におき、想定される処分システムの将来のふるまいによってもたらされる人間環境への影響を論理的に記述することが目標とされている。また、地震・断層活動、火山・火成活動、隆起・沈降・侵食、気候・海水準変動の天然現象と処分場への掘削などの人間活動について考慮しておくことが重要であるとされている。
 第2次取りまとめでは、安全評価のためのシナリオの作成に当たっては、地下水シナリオ(地下水により放射性物質が人間環境に運ばれる可能性に関するシナリオ)と接近シナリオ(高レベル放射性廃棄物と人間との物理的距離が接近することによって人間環境に影響が及ぶ可能性が生ずるようなシナリオ)の2つに大きく分類して検討されている。地下水シナリオにおいては、地層処分システムに期待される安全機能が将来も継続することを前提とした、基本的なシナリオ体系が構築されている。また、シナリオ作成のための考え方及び手順が詳細に示されており、目標に到達しているといえる。
 一方、接近シナリオにおいては、人間侵入シナリオと天然現象に起因する接近シナリオに分けて検討されている。人間侵入シナリオについては、意図的でない人間侵入に関し、シナリオが例示的に設定されている。将来の人間活動や技術の進展の不確かさを洞察することは困難であることを踏まえると、現時点の考え方としては適切なシナリオと判断される。天然現象に起因する接近シナリオについては、発生頻度及び蓋然性が高い場所を処分地選定に至るまでの段階でできる限り避けることを前提としているが、念のために想定されるシナリオの一例が示されている。現時点の検討としては適切なものと評価できる。
 地層処分の安全評価シナリオを検討するに当たり考慮すべき要因は、FEP(特質[Feature]、事象[Event]、プロセス[Process])のインフルエンスダイヤグラム(FEPの主要な相関関係を示したもの)で検討し、評価の考え方と結果が明確にされている。今後は、作成したシナリオの信頼性を高めるため、発生しにくいシナリオを排除する根拠をより明確にすることが継続して求められる。その際、極めて発生確率が小さな事象の発生に備えるため、シナリオ解析を継続するとともに、シナリオの見落としがないよう、多様な分野の専門家によってFEPの網羅性の確認を行うこと等が有効である。

2)シナリオに沿った解析評価
 専門部会報告書では、設定したシナリオに対応して適切な解析モデルを構築するとともに、解析モデルに関連するデータを準備し、それらを用いて各シナリオに対する安全性を解析評価することが求められている。
 第2次取りまとめでは、地下水シナリオ及び接近シナリオに関して、シナリオに基づいた解析評価が行われている。解析評価に当たっては、基本的に、可能性の非常に低い事象についても、その事象が起こることを想定した決定論的手法で対応している。
 地下水シナリオの解析に当たっては、データ及びモデルの不確かさを考慮した解析に加え、天然現象の影響、将来の人間活動が与える影響及び初期欠陥の影響を考慮した解析が行われており、十分な安全裕度を見込んで評価する手法が確立されている。
 接近シナリオの解析では、人間侵入については、簡潔なシナリオを設定して人間侵入に対する解析が例示的に行われている。一方、天然現象に起因する接近シナリオについては、急激かつ局所的な天然現象と緩慢かつ広域的な現象それぞれに関し、影響範囲や程度を推定する例示的な解析が行われている。このうち、隆起・侵食のように、地表へ徐々に接近するため、地下水シナリオを経た後、接近シナリオに至ることを考慮した解析を必要とする現象に対しても、シナリオに沿った解析が適切に行われていると評価できる。
 第2次取りまとめの解析評価の検討範囲において最大の線量を示す隆起・侵食については、①隆起が著しい場所をサイト選定で排除することを前提とした上で隆起速度1mm/yを設定する、②隆起した分が全て侵食されることを前提とする、という極端なケースを想定し保守的に評価したものである。解析に当たっては、隆起速度や処分場の深度などをパラメータとした解析が行われている。その結果、保守的に設定した解析条件の下でも、天然の放射線量や天然の放射性核種濃度に大きな影響を及ばさないとの結論が示されている。
 なお、第2次取りまとめでは、安全評価の考え方は決定論的手法を基本として構築されており、確率論的手法(発生確率に基づいた評価手法)については、解析に必要な信頼性の高い確率分布データが現時点では十分得られていないなどの理由からほとんど検討されていない。例示的に、断層活動ケース及び火山・火成活動ケース、並びに人間侵入に対する評価において、発生確率を考慮した検討が行われたに留まっている。今後は、安全評価手法の信頼性をより向上させるため、確率論的な安全評価手法についても検討しておくことが望ましい。

3)ニアフィールド性能評価モデル
 専門部会報告書では、シナリオ解析で明らかにされるシナリオに沿った解析を信頼性をもって行うことができるよう、個々のモデルの妥当性を高めることが目標とされている。

①ニアフィールド環境の研究
 地下水流動(地層中などにおける地下水の流れ方)に関しては、ニアフィールド岩盤における亀裂の不均質性を表現できる亀裂ネットワークモデルが開発されている。放射性核種の移行を計算する際に用いられている簡易なモデル(一次元亀裂モデルの重ね合わせモデル)で解析した結果と亀裂ネットワークモデルで解析した結果との比較により、簡易モデルの妥当性が示されている。今後は、亀裂ネットワークモデルの実際の地下環境での適用性についての検証例を蓄積することが求められる。
 地球化学特性に関しては、地下水の化学的特性を支配すると考えられる重要な化学反応について平衡論的な評価(熱力学データに基づいた反応の評価)の基本的考え方が体系化されており、地層処分の安全評価に用いる手法としては目標にほぼ到達していると評価できる。今後は、さらにデータを蓄積し、モデル及びデータの信頼性を向上させることが求められる。また、地球化学特性に関する速度論的な評価(長期間にわたって徐々に進む反応の変化を考慮した評価)については、適用できる知見及びデータ自体が不十分である中で検討が行われている。長期間にわたる反応速度を考慮することは理想的であるが、地層処分の安全評価における速度論的な解析の必要性も含め今後さらに検討を要する。
 人工バリア内における地下水の変化と化学的な緩衝作用が有効に作用する期間並びに人工バリア近傍の地層または岩盤に緩衝作用が及ぶ範囲とその程度については、基本的なモデルが確立されており、目標に到達していると評価できる。
 緩衝材が地下水で飽和されるまでの不飽和状態における緩衝材の応力-ひずみ、近傍の地層または岩盤が人工バリアに及ぼす力学的な影響、及び処分場の建設・操業期間や閉鎖直後の不飽和状態における坑道周辺の地下水の化学的条件の変化については、地層処分の工学技術との関連において十分検討されていると評価できる。これらの現象については、深地層の研究施設での検証が求められる。

②人工バリアの性状変化
 オーバーパックについては、炭素鋼について腐食モデルが検討されており、安全評価上期待されている性能の裕度については十分に説明されている。チタン、銅などの材料を用いた場合についても、安全評価においては、オーバーパックの腐食寿命を変動されて解析することにより、炭素鋼と同様な検討が行われている。今後は、オーバーパックの健全性が最終的な安全評価にどの程度寄与するのか、その信頼性はどの程度要求されるのかを明確にした上で、長期的な腐食挙動の研究を継続することが必要である。
 緩衝材への熱的、化学的な影響に関しては、ベントナイトのカルシウム型化、鉄型化、イライト化について安全評価の観点からの重要性が検討されている。今後は、緩衝材に安全性の保証をどこまで持たせるかを念頭におきつつ、定性的な検討に留まっている変質反応の影響を定量化していくことが期待される。なお、オーバーパックの腐食に伴う鉄イオンとの反応による緩衝材の性能の変化については、長期的には重要と考えられる事象であるので、より詳細な検討が求められる。
 緩衝材とオーバーパックとの力学的な相互作用及びオーバーパック腐食に伴って発生する生成物による緩衝材への力学的な影響については、安全評価の観点からは詳細に検討されていると評価できる。
 地下水による緩衝材の侵食の可能性については、簡易な方法で検討され、その影響が小さいことが明らかにされている。性能を維持するための重要な項目であることを勘案し、今後も評価事例の調査や試験の実施を継続することにより、侵食による問題が小さいと判断した根拠をより明確にすることが求められる。

③物質移動
 掘削の影響が及ぶ領域での物質移動並びに岩盤中の空隙構造の不均質性及び空隙中の変質鉱物を考慮した物質移動については、各々保守的なモデルで解析されている。一方、変質鉱物の生成に伴う亀裂の充填や核種の吸着性の向上などが有する安全評価上の裕度についての評価が期待される。
 オーバーパックの腐食に伴い発生するガスの移行については、安全評価上、地層処分システムへの影響は無視できるほど小さいと判断されている。より詳細な定量的な検討が求められる。
 地下水中でのコロイドの生成・移行については、放射性核種がコロイドに収着して移動する現象を考慮したモデルの検討、検討されたモデルを用いた解析・評価が行われている。その結果、可逆的な収着モデルを用いた場合、コロイドの影響は小さいことが確認されている。コロイドによる放射性核種の移行については、安全評価上重要なので、基礎研究を継続し、安全評価への反映を検討することが求められる。
 有機物や微生物の存在が放射性核種の移行に及ぼす影響については、既往の研究の調査・検討が行われ、現状の知見に基づく影響の推定が行われている。また、場所が決まった段階での研究の重要性についても言及されている。今後は、天然バリアから侵入する有機物や微生物の挙動の把握と処分システム性能へ及ぼす有益な点と不利益な点を明確にするため、基礎研究の継続により、影響評価に対する信頼性の向上が求められる。また、場所に特有な面が強いので、深地層研究施設での評価モデル及び評価手法の検証が重要である。  ニアフィールド性能評価モデルの信頼性を高めるため、個々のモデルについては、実験結果に基づいた検証が行われている。今後も、基礎研究、室内実験や深地層の研究施設でのモデルの検証の継続が必要である。

4)データベースの構築
 専門部会報告書では、ガラス固化体、オーバーパック、緩衝材、岩盤について信頼度の高いデータを整備し、その品質保証を行うとともに、データベースとして体系化することが求められている。
 第2次取りまとめでは、既往の研究成果に基づくデータの整理が行われており、評価に必要なデータが現在利用可能なデータを基に整備されていると評価できる。
 オーバーパックの長期にわたる腐食速度については、既往の研究成果に基づきデータの整理が行われている。なお、実規模のオーバーパックに局部的な腐食が発生する可能性を確認するため、試験片を用いた小規模試験のみではなく、実規模での試験の実施が望まれる。
 緩衝材の長期的な変形及び緩衝材に含まれる鉱物に関する熱力学データについては整備されている。
 人工バリア近傍の物質移動に関わる岩盤の亀裂特性に関するデータは、釜石鉱山や文献調査を中心に整備されている。今後は、深部地下環境における実験などにより、データの蓄積がさらに求められる。熱力学データについては、評価に必要なデータが現在利用可能なデータを基に整備されている。
 ガラスの長期にわたる溶解速度については、安全評価に必要なデータが、諸外国のデータと整合を取りつつ整備されている。
 放射性物質の溶解度については、最新の知見に基づく熱力学データが整備されている。今後は、熱力学的データの温度依存性が線量評価に及ぼす影響、IV価とVI価のアクチニドの溶解度など知見が少ないデータの継続的な取得が求められる。
 放射性核種の緩衝材及び岩石への分配係数については、多くの研究成果の調査・検討に基づいたデータの選定が行われており、岩石の多様性、緩衝材間隙水などの長期変質、データの不確かさなどを考慮した上で整備されている。今後は、人工バリア性能、天然バリア性能に大きく影響する可能性がある放射性核種については、さらにデータの信頼性を向上させることが期待される。

5)処分システムの評価解析
 専門部会報告書では、ニアフィールドの性能を評価のための個々のモデルを適切に統合するとともに、ファーフィールド(ニアフィールドより外側に位置し、処分による影響を直接受けない地層などの領域)や人間環境(生物圏)での放射性物質の移行を評価するモデルなどと接続することによって、処分システム全体の安全性を解析できるモデル体系を構築することが求められている。また、ファーフィールドについては、ニアフィールドにより確保される安全性をさらに確かなものとするために研究を進め、その評価を行うことが求められている。
 第2次取りまとめでは、ニアフィールド評価モデル、ファーフィールド評価モデル及び生物圏評価モデルを適切に接続することによって、システム全体の安全性を解析できるモデル体系が構築されており、目標に到達しているものと判断できる。
 評価解析に当たっては、構築したモデル体系とデータを用いて、シナリオ、モデルの前提、データの不確かさを考慮した解析が実施されており、場所を限定しない安全評価の観点からは網羅的な解析が行われていると判断できる。
 地圏と生物圏の接続部として選定した河川については、流量の変化による解析結果への影響の大きさが調べられている。また、井戸水を直接利用するといったシナリオについても解析評価することによって保守的な対応がなされている。
 個々のモデルの信頼性については、様々な入力データの変化が解析結果に及ぼす影響の大きさを解析することにより、解析結果の変動幅についての検討及びモデルの簡略化の妥当性についての検討が行われている。計算コードの信頼性については、他機関の計算コードによる計算結果との比較により、計算機能が検証されている。また、解析作業の信頼性、データの追跡性を保証するための管理システムが構築されており、解析に係る信頼性は確保されていると判断される。
 今後は、各データ間の相関や評価結果への重みなどの詳細な検討、解析結果の実測データとの比較による検証の方法論の確立、モデルやデータの粗密が結果に及ぼす影響の程度についての定量的理解が、解析に係る品質保証の信頼性の向上の観点から期待される。また、複数の機関が、新たな観点からのシナリオの検討、確率論的な評価を含めた解析結果の比較などを進め、これを通して評価の信頼性の向上を図るという枠組みを整えておくことが重要と考えられる。

6)ナチュラルアナログ研究の適用
 ナチュラルアナログ研究については、既往の研究のレビューとその整理が行われている。
 東濃ウラン鉱床、オクロ鉱床、クンガラ鉱床で実施された研究事例に基づき、鉱物中にウラン等が長期間にわたって保持されることが示されている。
 火山ガラスの溶出挙動に関する研究としては、火山ガラスによるガラスの耐食性の間接的な検証が既往の研究の調査・検討を通して行われている。
 金属の考古学的出土品などにおける腐食履歴の解析については、金属物質の調査事例から、オーバーパックの腐食を評価するために現在用いられている手法が保守的であることが示されている。
 ベントナイト鉱床を利用したナチュラルアナログ研究については、既往の研究の調査・検討とその整理が行われている。
 ナチュラルアナログ研究は、参考となる事例を引き続き蓄積することによって、長期にわたる評価に用いられるモデル、データに信頼性を持たせることが期待される。このため、実験では得ることができない長期にわたるデータが得られるナチュラルアナログ研究の推進は極めて重要である。

7)地層処分システムの安全評価に関わる期間
 人間環境の長期にわたる変化、地質環境の長期にわたる安定性、放射線源としての高レベル放射性廃棄物の特性を考慮しつつ線量の評価を行うことが必要である。
 第2次取りまとめでは、評価期間を限定せずに、人間への影響が最大になる時期と期間、並びにその線量が評価されている。
 地質環境の予測の不確かさが増す将来10万年以降の安全評価の考え方については、地質環境が変動することを想定した地下水シナリオを設定して評価を行い、地質環境の将来挙動に係わる不確かさの影響を定性的/定量的に検討している。その結果、現時点で想定される将来起こり得る地質環境の変動の幅を考慮しても、評価結果は諸外国で提案されている防護レベルを下回る見通しが示されている。
 接近シナリオとしては、念のために想定したシナリオに基づき、断層活動、火山活動、隆起・侵食についても評価の考え方が示されている。それらの事象の発生確率や人間環境への影響の程度を考慮すると、地質環境の大きな変動が起こったとしても天然の放射線レベルに著しい影響を与えないことが例示的に示されている。
 これらの検討結果から、10万年を超える長期にわたる安全評価の手法、安全確保の在り方について、1つの考え方が提示されたものと評価できる。

8)評価指標の設定の考え方
 第2次取りまとめでは、安全評価の指標として線量を基本とした評価を行っており、諸外国の基準を参照するとともに、諸外国における評価結果との比較が行われている。
 なお、将来の人間環境の予測の困難さを考慮し、河川中に存在する天然の放射性核種濃度などを補完的な安全指標とした比較が行われている。その結果、天然の放射線レベルに有意な影響を及ぼさないことが確認されており、長期にわたる評価における安全指標の考え方が提示されたものと評価される。

9)安全評価における個別課題の総評
 第2次取りまとめは、専門部会報告書の個別要求事項を満足しているものと評価できる。また、第1次取りまとめの現象に基づいた地層処分の可能性の議論から、多くの科学的根拠に基づいた議論に発展しており、現存する多くのデータや海外における評価事例などを参照し、詳細な検討・評価が行われている。その結果、場所を特定しないシナリオに基づく安全評価の結果から、地層処分の安全性が確保できる見通しが示されている。ただし、特定の場所の安全性を評価する際には、場所に応じたシナリオ、モデル及びデータを設定する必要があることに留意すべきである。
 今後は、個々の事象の重要性を見極めつつ、シナリオの見直し、より定量的なモデルの構築とそのために必要なデータの収集・整備が望まれる。また、十分な科学的根拠による裏づけを蓄積することが必要である。
 中間的な評価としては、我が国の地質環境や現状技術及びその改良による技術を前提条件としてニアフィールド性能を中心に地層処分システムの安全性を評価する手法が整備され、解析評価の結果から地層処分の安全性が確保できることの見通しが得られたものと判断できる。

 

Ⅱ.総  括

1.地層処分の技術的信頼性について

1)我が国の地質環境
 専門部会報告書に示されている本分野の目標は、地層処分にとって重要な地質環境上の要件を明らかにし、それを満たす地層が我が国においても存在する可能性を明らかにするとともに、処分システムの長期にわたる安全性と技術的な実現性を示す上で重要となる地質環境のニアフィールド(人工バリアとその近傍の地層とを併せた領域)特性について、実測値に基づく知見を整備することとされている。
 第2次取りまとめでは、地震・断層活動、火山・火成活動の急激かつ局所的な天然現象については、活動地域の時間的な変化や地質環境への影響に関する事例研究などによる知見に基づき、これらの天然現象の活動範囲及び影響範囲が限定されることから、これらの著しい影響が及ばない地域が存在し得ることが示されている。隆起・沈降・侵食、気候・海水準変動の緩慢かつ広域的な現象については、変動の規模及びその地域性や周期性に関する知見に基づき、個々の地域における変動量が概ね推定できることから、想定される変動を考慮して、処分システムの設計や安全評価に反映できることが示されている。また、ナチュラルアナログとしてのウラン鉱床の調査研究の成果に基づき、上述の天然現象の影響を被ってきたにも関わらず、地質環境の長期安定性が実際に保たれ、ウラン鉱床が長期にわたり保存され得る具体例が示されている。
 一方、多重バリアシステムの性能にとって重要な地質環境の特性については、地下水の流動特性、地下水の地球化学特性、岩盤の熱特性・力学特性などに関する要件が明らかにされており、これらの要件を満たす地層が存在し得ることが示されている。
 また、地質環境の調査技術については、処分地選定に至る過程の各段階において評価すべき項目や必要となる地質環境に関する情報並びに各情報を取得するための調査手法や機器が整理されている。
 これらの記述は妥当なものであり、変動帯に位置する我が国においても地層処分にとって十分に安定で、多重バリアシステムの性能にとっても適切な地質環境が存在し得ることが示され、またそのような地質環境を選定するために必要となる調査手法や調査機器についても、その技術的基盤が整備されてきているものと判断できる。
 なお、地層処分研究開発の基盤として位置づけられる深部地質環境の科学的研究については、東濃地域及び釜石鉱山における調査研究などを通して深部地質環境のデータが蓄積されてきており、得られた成果は地層処分研究開発に適切に反映されていると評価できる。

2)地層処分の工学技術
 専門部会報告書に示されている本分野の目標は、地層処分の工学技術に関して、安全を確保するための信頼性の高い人工バリア及び処分場についての設計要件を提示するとともに、これらが現実的な工学技術によって合理的に構築できることを示すこととされている。併せて、処分場に関する種々の状態や状況について、それぞれの段階において取得すべき情報の内容、計測の方法、所要の措置などを技術的に検討し、処分場の管理に関する技術的基礎を整えることが求められている。
 第2次取りまとめでは、処分場の管理については、設計・施工上の品質・施工管理や作業の安全管理、並びに人工バリア・施設周辺の環境モニタリングも含めて抜け落ちがないように検討されているとともに、具体的な管理項目が挙げられており、国内外の情報も含めて検討されている。
 オーバーパックについては、環境条件に応じて柔軟に対応できる設計条件の設定が行われているとともに、現有の技術で信頼できるものを作製できる見通しが得られている。緩衝材については、設計要件が示されており、その成立性は実験などにより確認されている。また、オーバーパック及び緩衝材について、埋設後の健全性の評価として、再冠水時挙動、オーバーパックの沈下などの構造力学安定性評価解析、耐震安定性評価解析、ガス移行評価解析及び緩衝材の岩盤内亀裂への侵入の評価解析が行われるとともに、実験室規模の試験や工学規模の試験によって評価解析モデルの検証が行われている。
 処分施設の設計では、空洞の力学的安定性や緩衝材の熱的安定性について詳細に検討・評価されている。また、施工時の湧水対策などについては事例に基づいた検討がなされている。処分場の建設、操業、閉鎖技術は、現状技術及びその改良による技術を用いることにより基本的に対応できる見通しが得られており、場所が特定されていない現時点でできる検討は十分なされている。
 これらのことから、安全を確保するための信頼性の高い処分施設の設計要件が提示されており、場所に特有な問題を抽出して詳細な検討を行うことにより、現実的な工学技術によって合理的に処分施設を構築できる見通しが得られたものと判断できる。

3)地層処分システムの安全評価
 専門部会報告書に示されている本分野の目標は、我が国の地質環境において、ニアフィールドを中心とした処分システムの性能を十分な信頼性をもって評価することとされている。
 第2次取りまとめでは、安全評価のためのシナリオの作成に当たっては、接近シナリオと地下水シナリオの2つに大きく分類して検討されている。地下水シナリオについては、基本的なシナリオ体系が構築されており、シナリオの作成手法として目標に到達している。一方、地震・断層活動、火山・火成活動、人間侵入による接近シナリオについては、処分地選定に至るまでの段階でこれらの事象をできる限り避けることを前提としているが、念のために想定されるシナリオの一例が示されている。
 地下水シナリオの解析に当たっては、データ及びモデルの不確かさを考慮した解析に加え、天然現象の影響、将来の人間活動が与える影響及びオーバーパックなどの初期欠陥の影響を考慮した解析が行われており、十分な安全裕度を見込んで評価する手法が確立されている。
 接近シナリオの解析では、まず天然現象に起因するシナリオについては、急激かつ局所的な天然現象と緩慢かつ広域的な現象それぞれに関し、影響範囲や程度を推定する例示的な解析が行われている。一方、人間侵入に起因するシナリオについては、簡易なシナリオを設定して人間侵入に対する解析が例示的に行われている。
 これらの記述は妥当なものであり、我が国の地質環境や現状技術及びその改良による技術を前提条件としてニアフィールド性能を中心に地層処分システムの安全性を評価する手法が整備され、解析評価の結果から地層処分の安全性が確保できることの見通しが得られたものと判断できる。

4)総合的な到達度
 専門部会報告書では、第2次取りまとめに当たって、我が国における地層処分の技術的信頼性を示すことが求められている。
 第2次取りまとめでは、まず、地質環境の長期安定性にとって重要な天然現象並びに処分システムの性能にとって重要な岩盤及び地下水の特性についての情報や知見が、地層処分の観点から整理、分析されている。その結果に基づき、地層処分の場として長期にわたって安定であり、また、人工バリアの設置環境及び天然バリアの機能としても適切な地質環境が、我が国にも存在し得ることが示されている。また、これまでの調査研究を通じて、地質環境を調査するための基盤的な技術が整備されてきている。
 次に、第2次取りまとめで想定した地質環境に対応させて人工バリアや処分施設を設計し、現状技術及びその改良による技術で所期の仕様を満たしうる人工バリアなどの処分施設の建設・操業・閉鎖を安全かつ合理的に行うことが可能とされている。また、我が国の地質環境に柔軟に対応できるような人工バリアや処分施設が必要であり、そのため第2次取りまとめでも、人工バリア性能は保守的に見積もった評価に基づき設計されている。
 さらに、将来起こり得る地質環境の変化、人工バリア機能の変化などを考慮した複数のシナリオに基づき、地層処分システムの安全性が総合的に評価されている。その結果、シナリオ、モデル、データの不確かさを考慮しても、高レベル放射性廃棄物を地層処分することによる影響レベルは、諸外国で提案されている防護レベルを下回ることが示されている。この結果から、我が国に存在し得る範囲の地質環境と現状技術及びその改良による技術の採用を前提条件として、地層処分の安全性が確保できる見通しが示されている。
 以上のことから、我が国に存在し得る範囲の地質環境と現状技術及びその改良による技術の採用を前提条件として、我が国における地層処分の技術的信頼性は示されており、地層処分の事業化の見通しが得られたものと考えられる。
 なお、処分事業の進展において、新たな知見が取得されることが考えられるので、そのような場合にも対応できるように配慮しつつ、事業を進めることが重要である。

 

2.処分予定地の選定と安全基準の策定に資する技術的拠り所について

1)処分予定地の選定に資する技術的拠り所について
 専門部会報告書では、処分予定地の選定に当たっては、地質環境のどのような特性に着目するのか、また、処分予定地の選定後のサイト特性調査において、何をどのように調べるのかが明らかにされている必要があるとされている。
 第2次取りまとめでは、地質環境の長期安定性、人工バリアの設置環境として重要な地質環境の特性、天然バリアとして重要な地質環境の特性のそれぞれの観点から、処分予定地の選定に当たって考慮すべき地質環境上の要件や取得すべき情報が示されている。また、必要な情報を取得するための調査手法や機器についても、着目すべき特性ごとに、調査の段階に応じて整理されている。したがって、第2次取りまとめには、処分予定地の選定に当たって技術的拠り所とすべき内容が盛り込まれていると考えられる。
 なお、処分予定地の選定においては、地質環境の調査とその結果得られる場所に固有のデータに基づく安全評価とを併せて判断することが必要である。

2)安全基準の策定に資する技術的拠り所について
 専門部会報告書では、安全基準(技術基準、安全評価指針など)の策定に資するため、処分場の設計要件と設計施工基準、地層処分システムの安全の評価手法と評価基準に関する技術的拠り所を示すことが必要であるとされている。
 地層処分の工学技術の観点からは、安全基準の策定に資する技術的拠り所となる品質・施工管理についての基本的な考え方及び管理項目が整理されている。また、現在の技術水準で考えられる限りの知見を活用して、安全基準の策定に必要な物性値の把握、強度、熱・物質移行などの予測が行われている。
 安全評価の観点からは、安全評価上考えられる要因を抜けがないように列挙したリストに基づいて、シナリオの選定根拠が明示されており、安全評価において考慮すべきシナリオが整理されている。
 以上のことから、安全基準の策定に資する技術的拠り所として評価できると考えられる。  なお、第2次取りまとめは、原子力安全委員会で審議されている「高レベル放射性廃棄物の処分に係る安全規制の基本的考え方」に引用あるいは参考として用いられており、審議に当たっての技術的情報として活用されている。

 

3.今後の課題

 ここでは、第2次取りまとめ以降において、核燃料サイクル開発機構など研究機関が実施すべき研究開発課題、処分事業の実施主体が取り組むべき課題及び基礎研究として大学等を中心に検討する課題を一括りにして示している。

1)我が国の地質環境
 第2次取りまとめでは、我が国の地質環境を幅広く捉えて、全国的見地からの検討が行われた。今後は、深地層の研究施設などを活用して、地表から処分深度までの体系的なデータの整備とモデル化を進め、より現実に即した人工バリアや処分施設の設計並びに安全評価の解析に反映していく必要がある。また、これを通して、特定の地質環境を詳細に調査する技術や手法の改良及び体系化を図っていくことも重要である。
 なお、地球科学の分野での研究は今後とも着実に進歩していくことが期待される。地球科学から得られる新たな知見を地層処分の信頼性の向上に役立てていくため、地層処分研究の基盤として深部地質環境の科学的研究を引き続き推進していくことが重要である。

2)地層処分の工学技術
 場所が特定された段階では、当然実施されるであろうことも含めて、次の事項の検討を指摘した。
 個別技術は確立されたものであっても、それらが連結された場合に、処分システム全体として滞りなく稼働することを確認することが求められる。
 建設、操業技術については、作業工程通りにできるかということも含め、検証しておくことが必要である。特に、処分孔の掘削、遠隔操作を含む廃棄体や緩衝材の搬送、定置作業などについては、地上研究施設での検証、深地層の研究施設を利用するとともに、処分予定地の選定後には処分事業の実施主体による原位置を利用した実規模での検証を進めていくことも検討する必要がある。
 なお、処分技術に係る経済的合理性に関しては、場所ごとに特有の課題も含まれることから、処分技術に期待される安全裕度を考慮しつつ、処分の実施に向けて今後検討すべき課題である。

3)地層処分システムの安全評価
 個々の事象の重要性を見極めつつシナリオの見直し、より定量的なモデルの構築とそのために必要なデータの収集・整備が今後も望まれる。その際、個々のシナリオ、モデル及びデータについては、十分な科学的根拠による裏付けを累積することに留意することが必要である。また、第2次取りまとめで主として用いられた決定論的評価手法の見直しはもちろんのこと、確率を考慮した安全評価手法についても検討することが望ましい。

 

中間整理以降の評価の進め方

 第2次取りまとめ評価分科会は、これまで検討してきた分科会での検討状況を中間整理として取りまとめた。中間整理までの評価の進め方としては、専門部会報告書に示されている第2次取りまとめへの要求課題に沿って研究成果の到達度を評価することを主眼とするとともに、研究成果の到達度の評価を検討するに当たり、第2次取りまとめ以降に望まれる研究開発課題を前広に指摘してきた。
 中間整理以降の評価においては、今後の課題として中間整理までに前広に指摘されてきたものついて、緊急性、重要度、成果が必要となる時期などの観点から整理することとしている。また、専門部会報告書の要求課題ではないが、地層処分を実施するに当たって、あるいは地層処分研究開発を進めるに当たって検討しておくことが望ましい事項についても、分科会での検討項目に加えていくこととする。
 分科会における評価の考え方や見地、専門部会報告書の要求課題以外の課題については、中間整理までの分科会での審議においても、以下のような点が挙げられている。地質環境-処分技術-安全性の各研究領域間でのデータや知見の受け渡しの在り方とその妥当性についての相互確認、地質環境の長期予測の考え方に関し工学技術としての解釈とメカニズム等基礎知見としての解釈についての整理などがある。また、地層処分に係る調査技術等についての短期・長期、局所・広域などの適応範囲、今後期待できる改良技術の範囲の明確化、第2次取りまとめにおける検討の前提条件を明確にした上での前提外事象などついての考え方の整理などがある。さらに、技術的側面と社会的側面の接点としては、処分場の操業中、閉鎖後における人間侵入、初期欠陥などの人間の過ちが及ぼす影響、再取り出しの技術的可能性などの課題が挙げられている。
 分科会では、これらにも留意して、さらに検討を深めることとしている。