資料(専)28-6

報告書案に関するご意見と回答(案)

平成12年3月8日

はじめに(p.1)
処分方策の確立を急ぐべき

  • 原子力発電の課題が放射性廃棄物の処分であり、放射性廃棄物処分は着実に実施していく必要がある。(30)
  • 原発の稼動から30年たって、廃棄物の処分方法を問うというのは怠慢である。(53)

 ご指摘のように、原子力発電に伴い発生する放射性廃棄物の処分については、原子力発電による電気を利用したわれわれ現世代が取り組むべき重要な課題です。超ウラン核種を含む放射性廃棄物については、JNC東海再処理工場及びMOX燃料加工施設の運転が開始されて以来発生しており、現在、貯蔵施設内に保管されています。その処分方策については、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(原子力委員会平成6年6月)」(以下、「原子力長計」という。)において「高レベル放射性廃棄物処分方策との整合性を図りつつ、民間再処理事業等が本格化する時期を考慮し、1990年代末を目途に具体的な処分概念の見通しが得られるよう技術的検討を進めることとします。」とされており、この方針に基づき着実に取組みが進められてきたと考えます。本報告書案においても、「はじめに」において「これらの廃棄物については、これまで処分方策が確立されておらず、その処分制度は整備されていない。このため、上述のような廃棄物の発生状況に鑑み、廃棄物の安全かつ合理的な処分方策を確立するとともに諸制度の整備を図るための具体的な取組みを着実に進める必要がある」と記述しています。

第1章超ウラン核種を含む放射性廃棄物処分に関する安全確保の考え方
1.(4)廃棄物発生量試算について(p.3)
廃棄物発生量試算の前提条件を明記すべき

  • JNCに於ける発生量(97年で累計937tを再処理)を基準にすれば、「民間再処理操業廃棄物」(六ヶ所第1再処理工場は年間800tU)の「区分目安値を超える廃棄物」が少なすぎる。これは、「民間MOX操業廃棄物」と「JNCMOX操業廃棄物」を比較しても言える。(6)
  • 民間再処理工場の解体廃棄物と民間MOX燃料加工工場の解体廃棄物が計上されていない。(7)
  • 民間MOX燃料加工工場の再処理量約3000tHMは、93年に電事連とメーカーが発表した年間100tHM弱の規模に比べて多すぎる。(8)
  • 海外からの返還TRU廃棄物はBNFL分(使用済で約4200tU)を加えるべき。(9)
  • 返還される中・低レベル廃棄物は15万本ともされるが、その内訳も不明。(10)

 廃棄物発生量試算の詳細な前提条件については、参考資料−3−1「再処理施設およびMOX燃料加工施設から発生する放射性廃棄物の発生量の試算例」の「注:試算の前提条件」に記述しています。しかし、ご指摘の点を踏まえ、参考資料−3−1に詳細な条件を追記します。

4.既存の低レベル放射性廃棄物の処分方法での処分の可能性について(p.7)
放射性核種濃度が非常に低い廃棄物が発生することを考慮すべき

  • 今後の円滑かつ合理的な操業や将来の解体のためにも、放射能濃度の非常に低い廃棄物が本体施設からも発生すること、このような廃棄物に対しては、クリアランスや簡易埋設処分の適用が可能であることを全体方策の一つとして位置づけるべき。(48)

 報告書案では、「2.(4)対象廃棄物の核種濃度分布について」に「放射性核種の濃度を現行の政令濃度上限値と比較すると、これを下回る濃度から数桁上回る濃度まで幅広い濃度に分布している」としています。しかし、ご指摘のように、再処理施設及びMOX燃料加工施設から放射性核種濃度が非常に低い廃棄物が発生すると予想されることにも留意する必要があると考えます。したがって、本文7頁の脚注を以下のように修文します。
 「本試算で考慮した再処理施設及びMOX燃料加工施設の外、本試算の範囲に含まれていない施設(廃棄物貯蔵施設等)の操業及び解体に伴い、放射性核種濃度が非常に低い廃棄物で素掘り処分の可能性があるもの及びクリアランスレベル以下のものの発生が予想されることに留意する必要がある。」

5.(1)処分の基本的考え方(p.9)
廃棄物を長期にわたって管理すべき

  • 少なくとも「グループ1・2」は地上保管か浅地層保管にし、「回収可能」な形態にすべき。(1)

 ご指摘のような、地表において廃棄物を超長期にわたって管理するという考え方については、将来の世代にまでも廃棄物を監視し続ける義務を課し、また、将来社会が安定で制度が維持できるという仮定に立ったもので、戦争や革命などの人間による災害にも脆弱であると考えられています。
 現時点では、本報告書案の、「5.(1)基本的考え方について」などに示したように、α核種濃度が高い等、人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要と考えられる廃棄物については、その性状を十分踏まえた地層処分を行うことが妥当であると考えました。 なお、このような長期管理についての国際的な考え方がわかるよう、参考資料を追加しました。

長期にわたって、安全性が確保できるのか

  • 日本のLLW処分では「有意な管理期間」として300〜400年を想定しているが、「有意」ではいかようにでも解釈できる。それとも貴部会では1万年にもわたって環境に「有意」な影響を与えることは無い、と評価しているのか。(2)
  • 半減期1600万年のI-129や20万年のTc-99等核種については、原子力エネルギー利用の恩恵を受けている現世代とその後の数世代が、一定の被ばくリスクを受け入れる処分を考えるべきでこれら核種を制御された条件で放出しつづける処分がある。(16)
  • 長期間の評価の信憑性が確かめられない場合は,線量限度以下になるよう希釈して処分するという考え方もオプションとしてあるのか.(40)

 報告書案では、「3.(1)放射性廃棄物処分の基本的考え方」において、放射性廃棄物は「処分方法に適した形態に処理した後、放射性物質(放射線)の影響が安全上支障のないレベルになるように処分することが基本」であるとしています。したがって、対象廃棄物についても、含まれる核種濃度の高低や半減期の長短等に応じて、処分施設を設置するとともに放射性核種の濃度の減少を考慮して処分場を管理する管理型処分、あるいはα核種の濃度が高い等、人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要と考えられる廃棄物については、その特徴を考慮した地層処分について検討しました。地層処分の安全性については、対象廃棄物に特有な現象の影響を考慮した地下水移行シナリオによる被ばく線量の試算結果を踏まえて、安全確保は可能であると考えられるとの結果を得ています。このように、本報告書案において、対象廃棄物の安全かつ合理的な処分の基本的考え方が示されたと考えています。

5.(3)海外との比較について(p.10)
海外における具体的な取組みが不明確

  • 米国WIPPは地殻活動が活発であり、未だ掘削予定の1/8パネルしか完成していない。(資料25頁現在は不明だが)そしてニューメキシコ州政府はTRU廃棄物の輸送に反対している。(裁判で敗訴したが)環境保護庁EPAは有害物非混合TRUについては搬入を許可しているが、混合TRUについては許可していない。EPAは1万年の保証を求めている。(3)
  • 諸外国においては2つの処分概念が選定され、我が国では3つの処分概念が考えられている。日本もなぜ2つの処分概念ではないのか。(58)

 ご指摘の点を踏まえ、参考資料−19に、1950年代に全米科学アカデミー(NAS)が岩塩層を含むサイトは処分場に適しているという勧告を行い、ニューメキシコ州カールスバット近郊が選定され、WIPP建設、そして1999年3月に廃棄物の搬入開始に至った経緯を追記します。
 さらに、「第1章5.(3)海外との比較について」を以下のように修文します。
「諸外国の中で再処理を行っている国においては、例えばα核種濃度として約4GBq/tを区分値として浅地中処分と地層処分の2つの処分概念が選定されているところが多く、我が国の地下利用に余裕を持った深度への処分に対応する処分方法を適用している国はない。各国は、それぞれの国の方針に基づき、廃棄物を区分し具体的な処分方策の策定を行っている。」

 なお、米国では、安全評価期間は1万年間と定められていますが、本報告書案においては評価期間を区切ることなく、線量が最大となるまで試算を行っています。安全規制の考え方や安全基準に関する検討は、今後、原子力安全委員会において取組まれていくこととなります。

6.(3)地層処分の検討対象とした廃棄物の特徴(p.11)
より詳細な廃棄体のデータを示すべき

  • グループ毎の濃度が示されていない。又、ドラム缶、キャニスター毎の濃度、照射線量、線量当量率が示されていない。キャニスター自体の材質や容量、発熱量が示されていない。これらの時間的経過による評価を示されたい。(11)
  • 対象廃棄物は、ガラス固化体とは性状が大きく異なる。(60)

 報告書案では、参考資料−5−1、2、3に超ウラン核種を含む放射性廃棄物の主な核種濃度や核種濃度の経時変化について、高レベル放射性廃棄物や発電所から発生する低レベル放射性廃棄物と比較しながら提示しています。また、参考資料−7では、廃銀吸着材、ハル・エンドピースなど代表的な廃棄体について主要な核種も併記しています。このように、当該廃棄物の処分の基本的考え方を検討する上で考慮すべき主な項目について抜け落ちがないよう記述しています。ご指摘のような、廃棄体に関する具体的なデータや仕様については、今後処分に係る安全基準・指針などが検討される際に明らかにされていくものと考えます。
 ご指摘の点のうち、発熱量については、「5.(2)高レベル放射性廃棄物の地層処分との相違点について」に、高レベル放射性廃棄物と比較して発熱が小さいことを指摘していますが、新たに脚注を追加します。
 「対象廃棄物のうちハル・エンドピースの圧縮収納体は最も発熱量が大きく、発生時点で約200W(ワット)/本程度、その他の廃棄体はさらに百分の一以下と予想される。一方、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体の発熱量は固化直後で約2400W/本(50年後で約350W/本)である。

8.地層処分の安全性について(p.13)
わが国における地層処分の技術的信頼性について

  • HLWの地層処分に関しても同じであるが、地層処分を実施するにはその技術的信頼性には疑問が残る。(4,51)
  • 欧米諸国の地層に比べ、わが国の地層が造山帯に属することは明らかで、10万年、100万年後の地殻変動の可能性がわが国では大きいとするのは自然ではないか(17)

 現在、地層処分に関しては、JNCを中心として調査・研究が進められてきています。
 JNCは、「第2次取りまとめ」において、わが国においても、地層処分に適切な地質環境を選定し、その地質環境に適合した処分場を設計・施工することにより、長期間安全性を維持できる地層処分システムを構築することが可能であることが示されたとしており、現在、国において評価が進められているところです。このような高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発の進捗を踏まえて、「地層処分した場合の安全性は、基本的に高レベル放射性廃棄物の地層処分と同様に検討することができると考えられる。」とし、高レベル放射性廃棄物との違いを考慮して、「対象廃棄物の地層処分に特有な現象の影響を考慮した地下水移行シナリオによる被ばく線量の試算に基づき検討」しました。

地下水流速の設定根拠を示すべき

  • 地下水移行シナリオにおける「透水係数」設定の根拠が不明。(12)
  • 10万年、100万年にわたって処分域の地下水流量が一定であり、しかもほとんど静置に近い10-10m/s以下のダルシー流速が保持されるとしているが、どこまで現代の科学で裏付けできるか(18)

 本報告書案では、地層処分の安全性の検討において地下深部の水理特性を設定するに当たっては、第2次取りまとめの知見を用いています。第2次取りまとめには、わが国の地下深部における水理特性について、実測データ及び文献データに基づき、平均的な分布範囲が示されています。
 したがって、ご指摘の点を踏まえ、本文を以下のように修文致します。
「被ばく線量の試算に当たっては、基本的にJNCにより取りまとめが行われている「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書」と第2次取りまとめの知見を引用することとしたため、例えば地下深部における水理特性、天然バリアの分配係数等の共通する部分は、第2次取りまとめと同一のデータ、類似のモデルを適用した。」

計算モデルが、第2次取りまとめと異なる理由は何か。

  • サイクル機構の「第2次取りまとめ」では亀裂性媒体の計算モデルとして「3次元亀裂ネットワークモデル」を採用しているが、貴部会は「1次元モデル」を採用した、その理由は何か。(13)

 第2次取りまとめでは、岩盤の亀裂特性の分布を考慮した「亀裂ネットワークモデル」と計算結果が概ね一致することを確認して、亀裂特性の異なる「一次元平行平板モデル」を重ね合わせる計算モデルを用いています。
 本報告書案では、当該廃棄物の処分の基本的考え方を検討するという目的を踏まえて、より簡易な「一次元平行平板モデル」を用いています。このモデルを採用するに当たっては、第2次取りまとめで用いたモデルと比較検討を行い、計算結果が安全上厳しくなることを確認しています。したがって、ご指摘の点を踏まえ、本文15ページの注釈を以下のように全面的に修文します。
 「第2次取りまとめにおける亀裂性媒体の計算では、亀裂特性の統計的な分布を考慮した「3次元亀裂ネットワークモデル」と計算結果が概ね一致することを確認して、「1次元平行平板亀裂モデル」の重ね合わせモデルを用いている。本検討においては、あらかじめ計算結果が安全上厳しくなることを確認した上で、より簡易な「1次元単一平行平板亀裂モデル」を用いている。

被ばく線量の試算に当たって考慮した現象は十分か。

  • 文献では、天然有機物NOMがTRU核種の移動を促進すること、コロイド促進型の汚染物質輸送の可能性が示されている。α核種は岩盤に吸着されやすい、という根拠に天然有機物やコロイドの関与を考慮しているのか。(14)
  • 天然現象による影響を想定した変動シナリオの解析は行われたのか。(15)
  • 地下水移行シナリオ以外のシナリオ(隆起浸食に伴って発生する事象や人間接近事象)に対する評価も実施し、HLWで問題となっているレベルに比較して、問題が小さいということを確認されているのか(60)

 本報告書案では、「地層処分した場合の安全性は、基本的に高レベル放射性廃棄物の地層処分と同様に検討することができると考えられる。」としており、高レベル放射性廃棄物との違いを考慮して、「対象廃棄物の地層処分に特有な現象の影響を考慮した地下水移行シナリオによる被ばく線量の試算に基づき検討」しました。このため今回は、安全性の検討において天然現象の影響を考慮した被ばく線量の試算は行いませんでした。
 ご指摘の点は、今後、原子力安全委員会において、安全規制の考え方や安全基準を検討する中で取組まれるものと考えています。ただし、処分の具体化に向けた研究開発は今後も着実に進めていくことが重要です。したがって、ご指摘の点を踏まえ、「第1章10.技術開発課題について」を以下のように修文します。
 「また、廃棄物に含まれる硝酸塩が地下水に溶け出すことや、金属等の腐食によるガスの発生が挙げられる。さらに、高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る研究開発成果等を活用しながら、安全性の評価に係る研究開発に取り組むことも重要である。

10.技術開発課題について(p.17)
課題について具体的に記述すべき

  • 「試験データの取得」については、具体性が無く、どのようなデータのためのどのような試験が必要かが不明。(21)
  • ヨウ素のように減衰にあまり期待できない放射性核種に対して、長期の閉じこめ性能を持つ廃棄体の採用によりどの程度被ばく線量低減効果が見込めるのかについての評価結果を示した上で、その研究開発の推進を行うようにすべき(22)
  • ヨウ素の閉じ込め性能を向上させる基礎試験について,具体的に説明願いたい。(41)

 本報告書は、当該廃棄物を安全かつ合理的に処分するための処分方策について基本的考え方を検討したものです。ご指摘の点については、「10.技術開発課題について」に、当該廃棄物の処分に特有な現象を例示するとともに、処分の合理化や安全性の一層の向上を目指すことが重要と指摘しており、さらに具体的な試験項目などを挙げる必要はないと考えています。なお、現在実施されているヨウ素の閉じ込め性能を向上するための基礎研究については、その具体例として、ガラス固化や天然鉱物の一種として固化する方法等が検討されています。

技術開発を積極的に進めていくべき

  • 処分に係わる技術的安全性への信頼感と社会的安心感の確立の両面を満足させることが必要であり、廃棄物の多様な性状を踏まえた処理処分に関する技術の研究開発を積極的に進めていくことが重要と考えられる。(24)

 報告書案においても、「廃銀吸着材について廃棄体によるヨウ素の閉じ込め性能を向上するための基礎研究が実施されており、これらの研究開発を通じて処分の合理化や安全性の一層の向上を目指すことが重要」、対象廃棄物の特徴を考慮して、「データベースの整備、充実を図るとともに、製作された廃棄体に対する信頼性の高い品質管理及び検認手法の整備を図っていく必要がある。」としており、今後の技術開発への取組みの在り方を記述しています。

第3章処分事業の責任分担の在り方、諸制度の整備などについて
1.責任分担の在り方と実施体制(p.20)
責任を明確にすべき

  • 放射性廃棄物の発生者でもある電気事業者だけでなく、国が前面に立ち官民一体となって、廃棄物処分実現に向けて積極的に検討を進め、広く国民の理解を得るよう努力する事が必要と考える。(25)
  • 責任は誰にあるのかも明らかにするべきである。(54)

 報告書案では、「当該廃棄物は、発生者等の責任において安全かつ合理的な処分が実施されることが原則」、「国は、当該廃棄物の処分に係る安全基準・指針の整備などを図り、これに基づく厳正な規制を行うと共に、発生者等及び処分事業を行う者が廃棄物の管理や処分を安全かつ合理的に実施するよう、関連法令に基づきこれらの事業者への指導監督などの必要な措置を講じること」と事業者、国の役割を明記しています。

実施体制等を具体的に記述すべき

  • 将来的な高レベル放射性廃棄物の地層処分との合理的な対応については、対応が考えられる、あるいは対応しなければならない項目を挙げておくべき。技術面、安全面、制度面、立地対応など考えるべき視点は基本的な考えとして示して欲しい。(29)
  • 今後の事業が進むべき方向,指針も基本的考え方がもう少し具体的に示された内容であった方が良かった。(42)

 ご指摘の点については、報告書案にあるように「より安全かつ合理的な処分の実施に向けての研究開発や処分費用確保の検討」を通じて明らかになると考えており、ここでは基本的な考え方として「将来的には高レベル放射性廃棄物の地層処分を考慮し、合理的な対応が行われる必要がある」としています。

2.処分費用の確保(p.20)

  • 同程度の放射能レベルの放射性廃棄物はひとつの処分場に処分すれば、処分場は少なくて済み、コストがかからない。放射性廃棄物の処分費用も電気料金の内に含まれることを考えると、安全性が一番大事であることはもちろんだが、経済的合理性も重視してもらいたい。(31)
  • 当該廃棄物の地層処分に要する費用についても早急に合理的な見積もりを行うこと(37)

 ご指摘の点については、報告書案において、発生者責任の原則を明記し、「今後、当該廃棄物の発生者等や処分事業を行う者は前述した処分方法を踏まえ、廃棄物の区分及び物量を明確にするとともに、合理的積算を行った上で当該廃棄物の処分方法に応じた処分費用の確保を図っていく必要がある」としています。

4.実施スケジュール(p.21)

  • 処分の実施体制の具体化、実施スケジュ−ルについては期限を入れるなど見通しを示して欲しい。(28)

 報告書案では、発生者責任の原則において着実に処分が実施されることが必要としており、「具体的には、今後の放射性廃棄物全体の処分計画、再処理施設の運転開始に関するスケジュールなども踏まえ、実施体制を含めて当該廃棄物の処分計画の明確化及び安全確保に係わる関係法令の整備が行われることが重要」としています。

5.技術開発課題への取組みについて(p.21)

  • 今後、どのような研究機関が超ウラン核種を含む放射性廃棄物に関する技術開発を進めるのかを国民に明確に示す記述が必要。(23)

 報告書案では、「1.責任分担の在り方と実施体制」において、当該廃棄物を安全かつ合理的に処分することは、発生者等(「再処理事業者、MOX燃料加工事業者、日本原子力研究所、JNC、(社)日本アイソトープ協会、電気事業者など」)の責任であるとしています。今後は、これら関係機関が各々の責任において、技術開発課題への取組みを行っていくこととなります。

6.積極的な情報公開、情報提供(p.21)

  • 原子力産業は放射性廃棄物処理処分という重い荷物を背負っていることを広く国民に知らせるべき。(55)
  • 近年、廃棄物に対する国民の意識は高まりつつあり、特に「原子力発電」から発生する廃棄物については、始めから拒否反応を示す傾向が強い。その廃棄物処理処分を円滑に進めていくためには、国民の原子力に対する不信・不安感を払拭し、社会的な理解を広く得ることが重要な事と考えられる。(26)
  • 高レベル放射性廃棄物の地層処分については、今通常国会に事業推進に関する法案が提出される予定であり、幅広い視点からの論議が起こることが期待される。この際、当該廃棄物の一部についても地層処分が必要なことを遅滞なく訴えていくべき。(38)

 報告書案では、情報公開、情報提供の重要性に鑑み、「放射性廃棄物処分事業の実施に当たっては、安全が確保されるとともに、処分事業に対する国民の理解が得られ、国民はもちろん立地地域に受け入れられなければならない。」としており、「諸制度の整備や実施体制の確立などの一連の取組みとともに、放射性廃棄物全体の処分計画を踏まえた安全かつ合理的な処分に関する的確で分かりやすい情報を積極的に提供していくことが不可欠」としています。

報告書全体に関するご意見

廃棄物の名称について

  • 「超ウラン核種を含む放射性廃棄物」という名称から、危険度が高いようなイメージを与える。(44)

 原子力長計では、「再処理施設や燃料加工施設などの核燃料サイクル関連施設から発生する放射性廃棄物(以下「サイクル廃棄物」といいます。)は、再処理施設において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃棄物、再処理施設やMOX燃料加工施設から発生する超ウラン(TRU)核種を含む放射性廃棄物、ウラン燃料加工施設やウラン濃縮施設から発生するウラン廃棄物に大別されます。」としており、本報告書では、この区分に従いました。

諸外国の地層処分に関する安全基準について

  • わが国でも欧米諸国でも自然放射能に大きな差がないのに地層処分安全評価での被ばく線量基準は欧米100〜300μS/yに対してわが国は10μSv/yになっている。(19)

 わが国における地層処分に係る安全基準については、国際的な動向や安全規制の基本的考え方の検討結果等を踏まえて、今後検討が行われることとなっています。

地層処分ありきではなく、幅広く議論すべき

  • TRU廃棄物の処分がHLW処分より早くなるのは理解できるが、初めから「地層処分」ありき、では国民の理解は得られない。(5)
  • 「ガラス固化体の地層処分」に準じた考えかたで進めようとしているが、この技術報告書自体が、最初から「安全な地層処分ありき」で書かれていて、信頼性に乏しい。(52)
  • 地層処分の経時不確実性をもっと議論検討し、”後世に悔いを残さない”安全確保の基本を考えるべきである。(20)

 原子力長計では、超ウラン核種を含む放射性廃棄物のうち「アルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも高く、浅地中処分以外の地下埋設処分が適切と考えられるものについては、高レベル放射性廃棄物との整合性を図りつつ」技術的検討を進めることとし、さらに「高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年間から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後、地下の深い地中に処分すること(以下「地層処分」といいます)を基本的な方針とします。」としています。
 報告書案では、現時点では、「5.(1)基本的考え方について」などに示したように、α核種濃度が高い等、人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要と考えられる廃棄物については、その性状を十分踏まえた地層処分を行うことが妥当であると考えました。地層処分の可能性の検討に当たっては、廃棄物の性状及び含まれる核種の種類・濃度が多様であることを考慮して、具体的な処分施設概念を構築するとともに、対象廃棄物に特有な現象の影響を考慮した被ばく線量の試算を行い、その結果、地層処分の安全を確保することは可能であると考えられる、としています。なお、長期管理には後世代への負担が大きいなどの問題点があるのは前述した通りです。

報告書取りまとめの意義

  • 高レベル廃棄物に続いて、超ウラン核種を含む廃棄物処分についても方向性が示された事は意義深い。(27)
  • 超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分に関する報告書が出され、検討は着実に進んでいることを心強く思っている。今後も引き続き検討を進めていくべき。(32)

報告書案の分かりやすさ

  • 文章の流れがわかりにくい。わかりやすい、全体の流れが見えるモノが欲しい。(35)
  • 報告書案の文章そのものに難解なものが多く、全体的に読みにくい印象が強い(45)
  • 用語解説の記述を見直すべき(49、50)

 報告書案では、できるだけ分かりやすい構成を心がけるとともに、注釈や参考資料を設けましたが、ご意見を踏まえて、全体的に上記のような修文を行うと共に、注釈や参考資料の追加を行いました。
 また、ご指摘の点を踏まえて、用語解説を追加しました。
 「中性子線:原子核から放出される中性子の流れ。電荷を持たない中性子はものを透過しやすく、物質中で原子核をはじき飛ばしたり原子核と反応したりすることにより、人体の細胞や組織へ影響を及ぼす可能性がある。中性子線を止めるには水素原子を多く含む水やプラスチックなどを用いる必要がある。

その他のご意見

 以下のご意見は、超ウラン核種を含む放射性廃棄物処分の基本的考え方について審議を行ってきた原子力バックエンド対策専門部会の報告書案の検討の対象外と考えられますが、今後、原子力委員会における政策の検討などに当たって参考とすべきであると考えられますので、他のご意見とともに原子力委員会へ報告又はその他の関係部署へ伝達します。

廃棄物の区分について

  • 今の放射性廃棄物の区分は、発生する施設(発電所、再処理工場等)で分けられている。(33)
  • 共通の処分概念というキーワードを全面に押し出して、全ての廃棄物を見据えた総合的な処分システムなども考察してはどうか?(36)
  • 現在進められている原子力長計の改訂でもカテゴライズの見直しは課題の一つと聞いており、ぜひ、このような検討の場を作るべき。(43)
  • 放射性廃棄物の分類区分の考え方を見直し、処理処分の総合戦略を明らかにする必要がある。(46)
  • 共通の性状を有する廃棄物については共通の処分概念に集約することが極めて重要であり、このことは単に処理処分の合理化に役立つばかりでなく、国民全体の理解をより深めて放射性廃棄物対策を強力に推進する上で不可欠な要素(47)
  • 処分場の立地に困難が予想されること、また経済性の観点から、高レベル廃棄物と当該廃棄物を同一サイトに処分することは自然な発想であると考える。(39)

原子力政策について

  • 原子力発電は現在日本の電力供給の3割を支え、地球温暖化への対応を考えると、さらに貴重なエネルギー供給源であり、日本としては原子力を推進していかなければならないと考える。(34)
  • 核燃料サイクル政策を放棄してから論議をすべき。(56)
  • 原発の発電コストは安いと宣伝をしているが、廃棄物処分や、将来でてくる廃炉、原発にかかわる人の放射線による被害等の費用を算出して、発電コストがどうなるか、全てを国民の前に明らかにするべき。(57)