資料(専)27-5

「長寿命核種の分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」 の概要(案)

 

はじめに
 日本原子力研究所(原研)、核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)及び電力中央研究所(電中研)の3機関は、「群分離・消滅処理技術研究開発長期計画」1)(昭和63年(1988年)、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)に基づき、長寿命核種の分離変換技術に係る研究開発を実施してきた。第T期(最初の4〜9年)では種々の概念の評価と要素技術の研究開発、第U期(その後の4〜9年)では要素技術の工学的試験や概念の実証を行うこととしている。
 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会では、平成6年長計に示された評価スケジュールを踏まえ、本技術に関する調査審議を行ってきた。
1)通称「オメガ計画」。(OMEGA:Options Making Extra Gains from Actinides and Fission Products)

第1章分離変換技術とは
 高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種を、その半減期や利用目的に応じて分離する(分離技術)とともに、長寿命核種を短寿命核種あるいは非放射性核種に変換する(変換技術)。
 本技術の名称としては、「長寿命核種の分離変換技術」、略称として「分離変換技術」を用いる。

第2章 わが国における長寿命核種の分離変換技術に係る研究開発の現状
1.対象元素

2.プロセスの概要、特徴とこれまでの成果
(1)分離プロセス
 原研及びサイクル機構は従来の再処理と同様の湿式分離法、電中研は乾式分離法を開発。基本的には再処理技術と同様の手法。3機関ともプロセス構築・成立性実証段階にある。
@原研:高レベル放射性廃液に含まれる元素をMA、Tc・白金族、Sr・Cs及びその他の4群に分離する4群群分離法を開発している。MAの回収率として99.95%を確認した。
Aサイクル機構:改良PUREX法(Npを分離)、改良TRUEX法(MAを分離)、電解採取法(Tc・白金族を分離)の3つを組み合わせた方法を開発している。α核種の回収率として99.9%以上を確認した。
B電中研:塩化物(KCl-LiCl)及び液体金属(Bi,Cd)を用いた還元抽出法を開発している。超ウラン元素を99%以上回収できることを確認した。

(2)核変換サイクルの基本的考え方
 原研は階層型、サイクル機構及び電中研は発電用高速炉利用型を開発している。
階層型:商用発電サイクルにMA変換専用の核変換サイクルを付加したもの。それぞれのサイクルが独立に最適化を図り発展することが可能である。
発電用高速炉利用型:高速増殖炉を中心とする一つの核燃料サイクルの中で発電とMA等の核変換を同時に行うことを目指す。

(3)燃料製造プロセス
 3機関とも燃料仕様・製造方法検討段階にある。
@原研:MA窒化物燃料を開発している。
Aサイクル機構:NpあるいはAm添加MOX燃料を開発している。
B電中研:MA含有U-Pu-Zr系合金の金属燃料を開発している。

(4)核変換プロセス
 3機関とも設計・要素技術開発段階にある。
@原研:加速器駆動未臨界炉(ADS)及び専焼高速炉(ABR)の概念を開発している。
Aサイクル機構:MOX燃料高速増殖炉を開発している。既に原型炉「もんじゅ」が建設されているが、MAが燃料に含まれることに伴い要素技術開発が必要。
B電中研:金属燃料高速増殖炉の概念を開発している。

(5)燃料処理プロセス
 原研及び電中研は乾式法、サイクル機構は湿式法を開発している。3機関ともプロセス構築・成立性実証段階にある。
@原研:高温化学処理法を開発している。
Aサイクル機構:分離プロセスと同じ3つの湿式分離法を開発している。
B電中研:溶融塩電解法及び分離プロセスと同じ還元抽出法を開発している。

(6)まとめ
 原研、サイクル機構及び電中研においては、第T期の研究開発の所期の目的を達成した。第U期の研究開発については、進捗は遅れる傾向にある。背景に、高速増殖炉の全体計画の見直し、MA等の取扱施設の整備の遅れがあると考えられる。今後は、国内外の機関と協力して研究開発を効率的に進めることが重要。

3.技術的課題
(1)分離プロセス
 実廃液を用いたプロセス実証試験の実施

(2)核変換サイクル
 燃料の照射試験に基づく挙動評価やデータ取得、燃料製造技術開発

4.その他の分離変換技術に係る研究開発の現状
(1)電子線加速器による核変換
 詳細な核反応断面積等の測定による基礎データの蓄積が必要。
(2)超高温分離処理
経済的効果、廃棄体の地層処分時の安全性のより詳細な評価が必要。
(3)不溶解残渣からの有用金属回収技術
 経済的効果についてより詳細な評価が必要。

第3章分離変換技術の効果及び意義
1.放射性廃棄物に含まれる放射能インベントリ
 使用済燃料に含まれるMAの99%を分離除去することができれば、使用済燃料の毒性指数が、それを製造するために用いた天然ウランの毒性指数と同等になるまでに要する時間を、再処理後数百年とすることができる。

2.地層処分に対する効果
 現行の高レベル放射性廃棄物の地層処分システムは、現在の技術で安全性を確保できると考えられる。一方、分離変換技術は、地層処分に伴う被ばく線量やリスクを更に下げるために有効な手段となりうる。
 発熱性元素の分離除去によって、高レベル放射性廃棄物の貯蔵期間を短縮できる可能性がある。また、高レベル放射性廃棄物を大きな空洞に一括して処分する方式をとるなど、処分場設計を合理化できる可能性がある。

3.その他の論点
(1)資源としての有効利用
 高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性物質の中には、有用で天然には稀少な元素(Ru、Rh、Pd等)、熱源や放射線源となる核種(Cs-137、Sr-90)など、資源として有効利用可能なものがある。また、超ウラン元素を核分裂により短寿命または安定元素へ変換する際のエネルギーは、発電に利用することが可能。

(2)MA及び長寿命核分裂生成物の減少量とそれに要する時間
 高レベル放射性廃棄物から、MA及び長寿命核分裂生成物を100%分離すること、分離したものを100%の効率で核変換することは、原理的、工学的に不可能。したがって、本技術によっても処理できないものが廃棄物中に残留するため、最終的にはそれらを処分するための地層処分が必要。
 対象元素の減少量とそれに要する時間は、同じスペクトルを持つ中性子により変換する場合、燃料、炉型、処理方法等によらず、同じ。それぞれの核変換プロセスの核変換効率は、以下の通り。

(3)二次廃棄物の発生
@湿式分離法
PUREX再処理と同様、放射線分解や加水分解による廃溶媒、試薬として添加した塩などの二次廃棄物が発生。しかし、液体の取扱量が少ないため、例えば廃溶媒に起因する廃棄体の発生量は、PUREX再処理の20分の1以下。
A乾式分離法
溶媒として放射線による劣化生成物のない溶融塩、液体金属、還元剤として金属Liを使用しているが、それらの多くは系内でリサイクルできる見通し。しかし、工業規模の経験がほとんどなく、具体的な発生量等は今後検討が必要。

(4)短期的な放射線被ばく線量の増加
 分離変換技術を核燃料サイクルに導入した場合、工程や取り扱う放射性物質量の増加により、計算上、短期的には施設作業者と施設周辺の一般公衆の被ばくが増加する可能性はあるが、合理的に達成可能な限り低くなるよう措置が講じられるため、実際には有意な増加はないと考えられる。

(5)経済性
 これまでの研究開発は、基礎的な研究が中心であり、現時点では、分離変換技術導入のためのコストを高い信頼性を持って示すことができる段階ではない。

第4章 各国における分離変換技術に係る研究開発の現状
 日本のオメガ計画はこれまで国際的な分離変換技術の研究開発において先導的な役割を果たしてきている。諸外国では、本技術の研究開発あるいは国際協力に関する動きが、近年活発になりつつある
 フランスでは、法律に基づき高速炉や加速器駆動炉を用いた分離変換技術を研究開発中。米国では、金属燃料サイクルと加速器駆動核変換技術(ATW)に関する基礎的研究を実施。現在連邦議会においてエネルギー省が作成したATW開発指針について検討中。欧州連合(EU)では、超ウラン元素研究所において、分離変換技術を研究開発し、EU各国の研究をサポート。経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)では、長寿命核種の分離変換技術に関する情報交換、システム研究、データベース整備を実施。

第5章今後の研究開発の進め方
 産業活動に伴う有害廃棄物の発生を極力抑制することは、社会的な要求である。分離変換技術はこの要求にかなった有用な技術となる可能性があり、引き続き研究開発を着実に進めることが適当である。

(1)分離変換技術と核燃料サイクル
 分離変換技術は、核燃料サイクルと不可分。本技術の研究開発の目的は、核燃料サイクルの検討の場に対し、核燃料サイクルへの分離変換技術システムの導入シナリオを示すとともに、そのためのシステムを設計し、必要な要素技術を確立することである。核燃料サイクル全体を視野に入れて、経済性、エネルギー資源の確保、放射能インベントリの低減など、考慮すべきファクターの信頼性の高い評価とそれらのトレードオフについて検討することが必要。

(2)システム設計研究と要素技術開発
 システム設計の調査研究と要素技術の研究開発は、相互に成果を反映しつつ連携して着実に進めるべき。また、核燃料サイクルのオプションを広げるとの観点から、幅広いシステムや技術を対象に研究開発を進めるべきである。

(3)当面の進め方
 当面、発電用高速炉利用型と階層型の双方について技術開発を進め、共存シナリオも含めて実現性のある核燃料サイクルへの導入シナリオの検討と必要な技術の確立を目指す。

(4)実施体制
 3機関は協力を一層進め、共通課題の解決に当たる。また、効率的な研究開発のための国内外の機関との協力、基礎的分野及び斬新な研究についての大学との協力を進める。

(5)研究開発のスケジュールと評価
 分離変換技術の研究開発を進めるに当たっては、高速増殖炉に関する研究開発と整合性のあるタイムスケジュールを念頭に置く。概ね5年を目途に、チェックアンドレビューを行い、システム概念の絞り込みや導入シナリオの見直しを行っていくことが適当である。

おわりに
 分離変換技術について、新たな技術へのブレークスルー、若い技術者に対する魅力のアピール、原子力研究の活性化を期待。斬新なアイデアを吸い上げるような環境づくりが重要。国際貢献の一環として、今後も我が国がこの分野において重要な役割を果たしていくことを期待。