資料(専)26-7

第2次取りまとめに関するOECD/NEA国際レビュー結果への対応について

 

核燃料サイクル開発機構

 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会報告書「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の進め方について」(平成9年4月)の指針に従い,第2次取りまとめ第2ドラフト総論レポートに対し,1999年5月中旬から10月中旬にかけて経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)による国際レビューが実施された。
 ここでは,OECD/NEAのレビュー報告書に示された主要なコメントとその対応について示す。

1.OECD/NEAレビュー報告書
 OECD/NEAによるレビュー結果は,

 によって報告された。報告書は全部で29ページあり,レビューグループの公式の見解が示されたものである。第1章にレビューにあたっての背景情報,第2〜4章に第2次取りまとめで取扱っている3つの研究分野(地質環境,工学技術,安全評価)に対する個別コメント,第5章に総論レポートI,II,VI,VII章に対応したコメント,第6章にそれらを総括した全体コメントという構成になっている。また,補完文書はレビューを進める過程で,本年8月のワークショップまでに作成された質問状とサイクル機構の回答がまとめられたものである。後者については,レビューの透明性と技術的なレベルを示すため,今回特別にレビューグループの許可を得て公開していただいたものである。

2.レビュー結果の概要
 レビュー結果の概要は以下の通りである。

 地質環境については,第2次取りまとめの目的に照らして,明確で包括的な記述となっている。しかしながら,現状においては地層処分の観点から取得されたデータや野外観察は相対的に限られたものであり,地質環境に関わる情報の多くが文献から得られたものであるということに留意しなければならない。処分地を決定するまでの過程において,より詳細な調査がなされる必要がある。また,日本の地質構造の特徴は,プレートが衝突している所に日本列島が位置していることに起因し,このため地殻変動は比較的活発で,世界的にみても放射性廃棄物の地層処分を計画している他の国々よりも大きなものとなっている。このような地殻変動は地層処分の長期安全性に影響を及ぼす可能性があると考えられる。レビューグループ(以下,IRG(International Review Group))の見解として,新たな断層が発生する確率が小さい地域を特定することは合理的であり,また信憑性もあるが,地層処分の安全評価において新たな断層が発生するシナリオを除外することは,現段階では受け入れられないものと考える。したがって,日本の地層処分概念を確固たるものとし,その性能を示すためにも,断層シナリオを安全評価に加えることを推奨する。

 地層処分の工学技術については,人工バリアの設計と性能に力点を置き,地層が有するバリア機能への依存度を相対的に下げている。このことは,処分場が初期の概念設計の段階にあり,地層が有する性能に大きな不確実性が存在することを考慮すれば受け入れられる考え方である。人工バリアの設計と性能に関する分野でのサイクル機構の研究成果は非常に高い水準に達していることを特記しておく。人工バリアシステムの性能については,今後の最適化に向け大きな裕度をもって設計することが可能であり,様々な断層シナリオに対しても適用することができるものと考えられる。

 安全評価については,適用された一般的な方法論については,諸外国で公表されている同様の報告書の記述に匹敵するものであり,また国際機関が示したガイドラインとも一致したものとなっている。データベースが一般的なものであることや日本の地層処分計画が比較的初期段階にあることを考慮すれば,今回評価した研究成果は感銘を与えるものであり,処分計画を次段階へ進めるうえで十分な成果と言うことができる。ここでIRGは,特にシナリオ解析の網羅性を明らかにすること,データ設定やモデルの仮定についてより注意深いアプローチをとることなど,いくつかの側面についてさらに配慮することを推奨する。第2次取りまとめでは,さまざまな地質環境や地表環境を視野に入れなければならないことが,その内容を複雑にしており,従って高いレベルの追跡性と透明性を確保することが必要である。この点については総論レポート全般にわたって改善する必要があると言える。

 将来行われるサイト選定と制度化にあたって必要となる情報を提供するための技術基盤は十分に確立されてきているが,これらの知見は,サイト選定や適切な規制体系を構築するために今後必要とされる段階に向け,論理的かつ構造的に十分に整理された提案として示すという点で適切に用いられていない。特に,第2次取りまとめを構成する本質的な部分と得られた主要な知見については総合的にみて曖昧さを残してはならず,また第2次取りまとめを通じて得られた成果は,意思決定者とそれを補佐する技術専門家に対して分かりやすくまとめられていることが重要である。この点に関して,IRGとサイクル機構が行った(レビューワークショップにおける)議論は有益な手段となっており,これを勘案することにより,第2次取りまとめの最終版では,その2つの最も重要な目的,すなわちサイト選定と安全基準策定に資する技術的拠り所を示すことができると考える。

3.レビューコメントへの対応
 補完文書や8月のレビューワークショップにおける詳細な技術的コメントについては,既にこれらを反映しつつ第2次取りまとめの最終報告に向けて第2ドラフトの修正を進めてきている。
 また,報告書で示されたレビュー結果の内容は,ワークショップまでに示された見解と大きな相違はなく,従来から進めている対応で大きく変更する必要のあるものはない。上述の概要に示された主要なコメントに対して,以下のように対応している。

3.1地質環境
 地質環境に関する内容については,第2次取りまとめの目的に照らして明確で包括的な記述となっているとしたうえで,主要なコメントとして,次の2つが挙げられている。

 前者のコメントについては,総論レポート第III章の成果に基づき,第VI章に処分予定地選定に資する技術的拠り所の内容を充実させることで対応している。また,後者の断層の取り扱いについては,総論レポート第III章において,「避けるべき断層」の定義や避け方に関する記述を充実させるとともに,安全評価において新たに断層が発生するシナリオに関する評価を加えることとした。

3.2地層処分の工学技術
 地層処分の工学技術については,高い評価を受けており,レビューワークショップまでの個々のコメントを反映して修正を行っている。

3.3安全評価
 安全評価については,データベースが一般的なものであることや日本の地層処分計画が比較的初期段階にあることを考慮すれば,第2次取りまとめの研究成果は感銘を与えるものであり,処分計画を次段階へ進めるうえで十分なものであると評価したうえで,安全評価の内容をわかりやすく記述することが求められている。
 これに対して,総論レポート第V章の目次構成を全面的に見直し,シナリオ毎にモデル,データおよび解析結果を記述するように改訂している。また,地質環境に関するコメント対応において述べたように,新たな断層の発生に関するシナリオに対する評価を加えることとした。

3.4処分予定地選定や安全基準策定の技術的拠り所
 処分予定地選定や安全基準策定の技術的拠り所については,将来行われる処分地選定と制度化にあたって必要となる情報を提供するための技術基盤は十分に確立されてきていると評価したうえで,これらの知見をどのようにまとめるべきかに関するコメントが挙げられている。
 これに対して,レビューワークショップにおいてレビューグループとサイクル機構が行った議論や,総合エネルギー調査会原子力部会における制度化および原子力安全委員会放射性廃棄物安全規制専門部会における規制に関する検討の動向を勘案し,反映先を明確にしつつ,研究開発成果をより体系的かつ具体的に,処分予定地選定と安全基準策定の技術的拠り所として整理するため,総論レポート第VI章の改訂作業を進めている。

4.今後の予定
 以上の対応を行い第2ドラフトを修正して,11月26日の原子力委員会に第2次取りまとめの最終報告を行う予定である。