X.超高温分離処理
1.研究開発の現状
1)目的
高レベル廃棄物(高レベル廃液)を分別処理し、有用元素の利用、廃棄物となる物の高減容化を図るものである。
2)処理対象
- 核種分離処理のスタートとなる廃棄物
通常の再処理工場で発生する高レベル廃液が処理の対象である。
- 分離する元素・元素群・核種
セシウム、白金族元素、アクチニドをそれぞれに同伴する元素と共に分離する。
3)処理プロセス・システムの概要
- 分離プロセスのキーとなる化学操作
高レベル廃棄物に対する非鉄冶金の手法の適用である。セシウムは沸点が比較的低いので、気化させて分離する。白金族元素は還元されやすいので、還元しメタルとして分離する。結果として分離されるアクチニド等はそのまま固化体とする。
- プロセスで用いる溶媒等の主な化学物質
少量の窒化チタンのみである。溶媒・溶融塩等は使用しない。二次廃棄物は発生しない。
- 分離プロセスのフロー(図5.1参照)
高レベル廃液
↓
仮焼 高レベル廃液を加熱し成分を酸化物にする
↓
Cs気化分離 酸化物を加熱し、Csを気化させ分離する分
離したCsは放射線源として利用する。
↓
白金族元素還元 少量の窒化チタンで白金族元素を還
元し合金インゴットにする。
↓
金属・酸化物分離 全体を溶融し、白金族元素合金は
下層、酸化物は上層の二層に分離する。
↓
高減容固化体 酸化物はガラス固化体の十分の一量の固
化体とし、処分、または、消滅処理に供する。
4)特徴(メリット・デメリット)
- 核種分離・消滅処理システム全体のメリット・デメリット
メリットは、最も単純なプロセスで、有用元素、高発熱核種、長寿命核種、アクチニドを相互分離し、有効利用、減衰処理、及び、高レベル廃棄物を最小の貯蔵体・処分体に出来ることである。
デメリットは、分離技術に共通することであるが、現行の再処理・ガラス固化に比べ、手数が増えることである。が、本技術はこれを最小限に抑えている。
- 核種分離システムのメリット・デメリット
メリットは、最小限の添加物で目的の核種分離を達成したことである。新規な抽出剤、新規な溶媒(溶融塩)を使用しないため、新規な二次廃棄物を発生させない。新規な二次廃棄物は、その処理・貯蔵・処分に多大な研究開発を要する。それらの処理・貯蔵・処分施設建設と維持管理が核燃料サイクルのコストアップを招く。また、抽出溶媒、溶融塩等を使用しないため、処理において小規模の装置で目的が達成される。
デメリットはシステムとしてはない。
- 個々の分離プロセスのメリット・デメリット
メリットは、仮焼、還元、溶融、分離の各プロセス技術は、原子力及び非鉄産業において実用化されており、開発リスクがなく、開発コストが低いことである。
デメリットは溶融・分離プロセスにおける装置の開発が必要なことである。フランス、ロシアで開発されている高周波誘導水冷坩堝方式(コールドクルーシブル)が採用可能であるが、原子力産業への適用は実証されていない(ガラス固化等に関するコールド工学試験は、フランス、ロシアで実施されている)。
5)目標及び設定根拠
- 分離対象元素・核種に付いての分離目標
Csについては、90%の分離率が目標である。Cs(Cs-Ba)は高レベル廃液の発熱量の40%を占める。これの90%の除去により、処分体の発熱量は大幅に低減される。
白金族元素についても90%の分離率が目標である。
分離率90%の根拠は、分離率を99%に上げても技術面・経済面での効果はさほど向上せず、処理コスト面でのデメリットが増すからである。
- メリットの増進に関する目標
還元剤にチタン化合物を用いているが、これを炭素にするとストロンチウム(Sr)が還元・気化分離出来る。これが実現できれば、地層処分費用の大幅な削減が実現する。
- デメリットの克服に向けた目標
コールドクルーシブルの適用を実現することである。
- 目標の位置づけ(最終目標、中間目標、努力目標、実現可能な目標等)
コールドクルーシブルの適用が実現すれば、目標は全て達成できる。
- 目標の合理的な設定根拠
コールドクルーシブルは、2000℃以上の温度で試験されている。従って、本方法への適用が確認できれば、技術的に未確認な点は解消する。
6)これまでの成果
| @ | 模擬高レベル廃液を用い、Csの気化分離、白金族元素の還元・分離、高減容固化体の成立性を確認した。後者については、kg規模での実験を行った。 |
| A | Csの気化については、仮焼体の1000℃での加熱処理により、1時間で90%以上のCsが気化分離することを確認した(図5.2参照)(1)。 |
| B | 白金族元素の回収については、Ru、Rh、Pd共、90%以上 分離・回収出来ることを確認した(図5.3、図5.4参照) (1)。 |
| C | アクチニド等は(希土類等を含む)は高減容固化体を形成することを確認した。その発生数は、800トン再処理工場のガラス固化体発生量(年間約1000本)に比し、約100本である。これは、高減容固化体の、密度、熱伝導率、膨張率、高温X線回折等の測定に基づき、確認したもである。 |
2.現状の分析
1)オメガ計画における位置づけとそれに対する進捗状況
高レベル廃棄物中に存在する有用金属の回収技術の基礎的研究として位置づけられ、基礎的研究の段階はクリアーした。
- 当該技術に関するオメガ計画の記述
高レベル廃棄物中に存在する有用金属の回収技術の基礎的研究として記述されている。
- 当該技術に関する研究開発と見直しの経緯
上述のように日本独自の技術として成果は確認し、次のステップとして工学技術開発の段階に達した。
2)技術的到達度
- 当該技術の研究開発段階のクリア状況
基礎的研究段階はクリアした。作業仮説的に考えた化学反応は(Csの気化、白金族元素の還元、アクチニド等の酸化物の溶融)全て実証した。
- 研究開発の全体計画と現在の段階の図示
技術の基礎的実証 1990年?bP998年
現在の段階 1999年 中断
3.今後の見通し及び課題
1)実用化の見通し、及び、そのために解決すべき課題
- 技術的到達度を踏まえた実用化までの道筋
本技術の基礎的実証はほぼ完成した。次ステップは実規模大の装置による実験での工学的実証である。実規模大装置は、本技術は添加物は最小であるため、取扱物質量が少なく、従来の工学試験装置と同等規模である。
- 実用化までの技術的課題
Csの捕集技術と、白金族元素/アクチニド(希土類等を含む)の溶融物の分離手法の確立が課題である。
2)当面重点をおくべき研究開発課題
還元・溶融分離を工学的に実証するためのコールドクルーシブルの実用化である。
3)経済性についての見通し
貯蔵・処分費用が大幅に低減できると予想される。
炭素還元を実証し、Sr分離を実現することにより、処分費用を更に大幅に低減出来る。
Srを分離出来れば、処分施設の設計において、岩体の温度制御課題から免れるからである。
即ち、地下施設の大幅な縮小が可能となる。
4.研究開発の進め方
1)関連する研究分野との協力
- 研究分野・項目
高レベル廃棄物管理の研究開発分野
高レベル廃棄物の炭素還元の研究を共同して実施する。
コールドクルーシブル研究開発分野
金属・酸化物を同時に溶融し、分離するコールドクルーシブルを開発する。
これは、ロシア、フランスとの共同開発が必要である。
- 協力の現状・形態
大学との共同研究、企業への委託実験を行ってきた。しかし、予算中断のため協力関係は中断している。
2)国内機関との協力
上述と同じである。
3)国際協力
- 研究分野・項目
高レベル廃棄物管理の研究開発分野
コールドクルーシブル研究開発分野
- 協力の現状・形態
フランスのマルクール、ドイツのカールスルーエ、米国のアイダホ、ロシアの研究所、豪州の研究所と国際会議等を通じて情報交換を行っている。
組織的な国際協力関係はない。
5.研究開発対象としていなかったがオメガ計画の主旨に照らして重要と考えられる技術
Cs-137、Sr-90の減衰処理のための長期貯蔵技術の開発が重要である。
参考文献
(1) 堀江水明;「最近の高レベル廃棄物処理研究・開発動向」
PNC TN8420 94-019, p.3 (1994)