資料(専)24-3

超ウラン核種を含む放射性廃棄物の地層処分の検討状況について

平成11年7月21日

1.はじめに
 前回の原子力バックエンド対策専門部会においては、再処理施設及びMOX燃料加工施設の運転・解体に伴い発生する「超ウラン核種を含む放射性廃棄物」1)について、その特徴を整理したうえで、既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念(「浅地中のコンクリートピットへの処分」または「一般的であると考えられる地下利用に対して十分余裕を持った深度(例えば50~100m)への処分」(以下「高βγ廃棄物処分概念」という。))での処分可能性の検討結果を中心に報告した。
 検討結果からは、超ウラン核種を含む放射性廃棄物のうち、α核種濃度が一応の区分目安値(約1GBq/t)を大きく超えないものについては、これらの処分概念により処分できるものが比較的多く存在するとの見通しが得られた。
 一方、超ウラン核種を含む放射性廃棄物のうち、α核種濃度等の長半減期核種の濃度が高く放射性核種濃度が十分減衰するまでに長期間を要するものは、基本的には人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要であると考えられる。この条件を満足する既存の処分概念としては「人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリアを構築することにより処分の長期的な安全性を確保する地層処分」が考えられる。
 今回は、α核種などの長半減期核種の濃度が比較的高い超ウラン核種を含む放射性廃棄物を地層処分する場合について、現在の技術に基づいた処分施設概念を検討するとともに、我が国の地下深部における岩盤や地下水の特性を踏まえ、超ウラン核種を含む放射性廃棄物に特有な現象の影響を考慮して本処分施設概念で処分を行った場合の安全確保の見通しについて検討を行ったので報告する。
(参考資料―1)

1)「RI・研究所等廃棄物」にも、一定の濃度(約1GBq/t)以上のα核種を含む放射性廃棄物が存在している。これらの処分の基本的考え方についても、今後検討を行っていく予定である。

2.検討の対象とした超ウラン核種を含む放射性廃棄物について
(1)対象とした超ウラン核種を含む放射性廃棄物の範囲
 検討の対象とする廃棄物の範囲は、「地層処分研究開発第2次取りまとめ」第2ドラフトにおいて用いられているガラス固化体の規模を準用し、これが発生する再処理施設の操業とその後のMOX燃料加工施設の操業及び一部の施設の解体を行った場合を想定した。本検討は、その際に発生する超ウラン核種を含む放射性廃棄物(約5万6千m3)のうち、①α核種濃度が一応の区分目安値(約1GBq/t)を超えると考えられる全ての廃棄物に加え、②β核種であるヨウ素129(129I)の濃度が高い廃棄物(「廃銀吸着材」)の合計約1万8千mを対象として行うこととした。  なお、前回、α核種濃度が一応の区分目安値を超える廃棄物の一部について高βγ廃棄物処分概念の適用可能性があるとしたが、現時点では高βγ廃棄物処分概念に対するα核種濃度上限値が決定していないことから、α核種濃度が一応の区分目安値を超える廃棄体を全て地層処分の対象として検討を行った。
(参考資料―2)
 また、廃銀吸着材2)は、α核種はほとんど含まないが、半減期が長いβ核種である129Iの濃度が高い。129Iは、天然バリアへの吸着性が小さいため、地中を移行しやすいと考えられることから、廃銀吸着材も地層処分の検討の対象とすることとした。なお、廃銀吸着材については、その特徴を踏まえて引き続き合理的な処理処分方法について検討することとする。
 以下、地層処分の検討の対象とした廃棄物を「対象廃棄物」という。
(2)対象廃棄物の特徴
 対象廃棄物は、再処理施設とMOX燃料加工施設の運転・解体に伴い発生する。なお、施設の解体は、核燃料サイクル開発機構(JNC)の主な施設のみ想定した。再処理施設から発生する主な対象廃棄物としては、使用済燃料をせん断・溶解した後の断片等(ハル・エンドピース)、放射性核種濃度が高い工程から発生するプロセス濃縮廃液、それらの工程部分を解体することにより発生する廃棄物などがある。MOX燃料加工施設から発生する対象廃棄物としては、施設の運転に伴い発生する全てのものと解体に伴い発生するものの大部分がある。
 対象廃棄物の発生形態は、金属をはじめ、再処理施設に特有な硝酸を中和・濃縮した硝酸塩等様々な性状のものがある。これらの廃棄物は、減容・安定化の観点から処理される。具体的には、JNCにおいては、これまでプロセス濃縮廃液のアスファルト固化3)といった処理が行われてきた。また、今後発生する廃棄物の処理は、国内外の固型化方法を参考に、プロセス濃縮廃液については乾燥・造粒(ペレット化)後にセメント固化、ハル・エンドピースについては圧縮後にキャニスターに収納、可燃・難燃・不燃廃棄物については焼却又は溶融後にセメント固化を想定した。このように、廃棄物とその固型化の方法は基本的に原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物と同様であるが、一部再処理施設から発生する廃棄物に特有のものもある。
(参考資料―3、4)

2)使用済の銀吸着材。銀吸着材は、再処理工程において使用済燃料のせん断、溶解に伴いガスとして発生する放射性ヨウ素を吸着除去するためフィルターとして使われている。
3)アスファルトを濃縮廃液と混合し、廃液中の固形分を微粒子にして分散・固化させる方法。分散・固化の段階で水分は蒸発する。

(3)対象廃棄物の放射性核種の種類及び濃度
 対象廃棄物に含まれる主要な核種のうち比較的半減期の長い核種は、高レベル放射性廃棄物と同様なものとしては、α核種としてネプツニウム237(237Np,半減期:約200万年)、プルトニウム239(239Pu,半減期:約2万年)、プルトニウム242(242Pu,半減期:約40万年)、βγ核種としてテクネチウム99(99Tc,半減期:約21万年)があるほか、対象廃棄物に特有なβγ核種として炭素14(14C,半減期:約5,730年)、ヨウ素129(129I,半減期:約1,570万年)がある。
 対象廃棄物の核種濃度は、α核種濃度が一応の区分目安値(約1GBq/t)を若干超えるものから、ハル・エンドピースのように数千GBq/tに及ぶものまで幅広い範囲に及んでいる。このうち、α核種濃度が高いものは、前述のハル・エンドピースに加えMOX燃料加工施設から発生する廃棄物が代表的なものである。なお、α核種濃度を高レベル放射性廃棄物と比較すると、α核種濃度が最も高い廃棄物で1桁程度、対象廃棄物全体の平均値で2桁程度低くなっている。
 一方、βγ核種の濃度が最も高いのは、放射化生成物が多く含まれるハル・エンドピースである。βγ核種の濃度を高レベル放射性廃棄物と比較すると、ハル・エンドピースで1桁程度、対象廃棄物全体の平均値では2桁程度低くなっている。
 対象廃棄物のうち、再処理施設から発生する廃棄物には、上記の核種がほぼ全て含まれている。処分施設概念を検討するにあたっては、放射性核種濃度が全廃棄体の中で最も高く、後述のように発熱を考慮する必要があり、また地下水とともに移行しやすい14Cが多く含まれているハル・エンドピース、同じく地下水とともに移行しやすい129Iが多く含まれている4)廃銀吸着材などが重要であると考えられる。一方、MOX燃料加工施設から発生する廃棄物には、上記の核種のうちα核種であるウランとプルトニウムの同位体(235U,238U,239Pu,241Pu等)が多く含まれている。
(参考資料―5,6,7)

4)再処理施設から発生する放射性廃棄物に含まれるヨウ素129のうち、97%が「廃銀吸着材」に含まれる。

3.処分施設概念
(1)処分施設概念の検討に当たっての考え方
 対象廃棄物の地層処分施設概念の検討にあたっては、高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体と異なり、その発生源や発生形態、処理方法等が多様であり、放射性核種の種類・濃度あるいは廃棄体の物理的・化学的性状が異なることを考慮する必要がある。例えば、ハル・エンドピースは発熱率が高レベル放射性廃棄物と比べて1桁以上低いものの、まとめて処分する場合には発熱の影響を考慮する必要がある。
(参考資料―8)
 具体的な処分施設概念は、このような廃棄体の特徴を考慮しつつ、①廃棄体の特性に応じて適切に分類し(以下「グルーピング」という。)、各々のグループの特性を考慮して人工バリアを構成すること、②廃棄体を比較的大きな地下空洞内にまとめて処分すること、を基本として検討した。
(2)対象廃棄物の廃棄体のグルーピングについて
 対象廃棄物の廃棄体5)については、①半減期が長く、かつ天然バリアへの吸着が小さいため地下水とともに移行しやすい核種である129I及び14Cを多く含むもの、②放射性核種の地下水への溶解度や人工バリア等への吸着性に影響を及ぼす可能性が考えられる硝酸塩あるいはアスファルトを多く含むもの、③まとめて処分する際には発熱の影響を考慮する必要があるもの、の3つに分類することによりグルーピングを検討した。
 この結果、対象廃棄物の廃棄体のグループとしては、①に該当する廃銀吸着材のセメント固化体(グループ1)、①と③に該当するハル・エンドピースの圧縮収納体(グループ2)、②に該当する硝酸塩を多量に含むプロセス濃縮廃液のアスファルト固化体等(グループ3)、及びそれ以外の廃棄体(グループ4)、という4つに分類することとした。これにより、各々のグループの特性に応じた具体的な人工バリア構成や処分施設設計を行うことが可能となるとともに、設計の合理化や追加的な対策を講じることが容易になると考えられる。
(参考資料―9)

5)減容・安定化処理等の後、容器へ固形化された廃棄物。処理方法としては圧縮、焼却、溶融等、容器としては200lドラム缶等、固型化方法としては、アスファルトやセメント系材料等による充填固化等が想定されている。

(3)人工バリアの基本構成について
 人工バリアは、処分場の閉鎖後、放射性核種が地下水とともに人間の生活環境へ移行することを抑制するために設けられるものである。
 各人工バリアに現在の技術を適用することで期待する機能としては、
廃棄体:廃棄物自体の特性(放射化した金属の腐食に伴う核種放出)による核種の移動抑制、セメント系固化材の吸着性、化学環境維持による核種の移動抑制機能
充填材:空隙を充填することによる力学的安定性、セメント系充填材の吸着性、化学環境維持による核種の移動抑制機能
緩衝材:ベントナイト系材料の膨潤性、応力緩衝性、吸着性及び止水性による核種の移動抑制機能
 が挙げられる。このような人工バリアの機能を踏まえて各グループの人工バリア構成を検討した。
 グループ1,2は、半減期が長く、地下水とともに移行しやすい核種を含むため人工バリアを強化することによって核種の閉じ込め性能を高めることとした。具体的には、海外の施設設計例も参考として、廃棄体定置後の空隙をセメント系充填材で充填するとともに、核種閉じ込め性能を更に高めるため周囲にベントナイト系緩衝材を設けることとした。
 一方、グループ3,4は、半減期が長く地下水とともに移行しやすい核種(例えば129Iや14C)の量が少ないため、廃棄体定置後の空隙をセメント系材料で充填することとし、その周囲に緩衝材は設けない人工バリア構成とした。
 なお、硝酸塩やアスファルトを含むグループ3は、他のグループへ影響を及ぼさないよう、地下水の流れからみて最下流側に配置するといった処分施設のレイアウトによる対策を講じることとした。
(4)処分施設概念について
 対象廃棄物は、グループ2(ハル・エンドピース)で発熱を考慮する必要があるものの、全体としては発熱をそれほど考慮する必要がないため、廃棄体を比較的大きな地下空洞内にまとめて処分することが可能と考えられる。しかし、掘削可能な処分空洞の大きさは、岩盤の強度、深度等により制約を受ける。
(参考資料―10)
 そこで、地下深部でもある程度の大きさの処分空洞が技術的に掘削可能であり、合理的に集中処分が可能であることを示すために、結晶質岩系岩盤と堆積岩系岩盤について、処分深度に応じた掘削可能な空洞形状及び空洞径の評価を行った。
 処分施設概念の一例を示すに当たっては、国内での施工実績が豊富な坑道型の施設を想定し、比較的大きな径の坑道を近接して掘削することを念頭に置きつつ、複数の処分坑道を近接して掘削することによる坑道の力学的安定性への影響、ハル・エンドピース(グループ2)の発熱による人工バリアの化学的安定性への影響に対する評価も行ったうえで、具体的な処分坑道の大きさと坑道間の距離を設定した。
 この例によると、対象廃棄物約1万8千mを地層処分した場合に必要な処分場の大きさは、結晶質岩系岩盤で約200m×約300mとなり、堆積岩系岩盤は、結晶質岩に比べ岩盤が柔らかいことを考慮して結晶質岩系岩盤より小さな空洞径を設定したため、約300m×約300m程度となった。この検討結果に加え、海外の処分施設の設計例や国内の地下施設の施工実績を踏まえると、対象廃棄物を地層処分することを想定した場合、現在の技術に基づき処分施設概念を構築することができると考えられる。
 なお、高βγ廃棄物処分概念に対するα核種濃度上限値が決定した場合は、地層処分を行う物量が変動することが考えられるが、この場合にも処分施設の坑道長さや本数を変更することにより、容易に対応することが可能であると考えられる。
(参考資料―11、12、13)

4.対象廃棄物の地層処分の安全性について
(1)安全性の検討について
 対象廃棄物を地層処分した場合の安全性は、基本的に高レベル放射性廃棄物の地層処分と同様に検討することができると考えられる。ただし、対象廃棄物は、ガラス固化体と異なり多種多様な性状を有すること、処理方法もセメント固化、アスファルト固化等複数想定されていること等から、特に地下水への核種の溶解度や人工バリア及び天然バリアへの吸着性への化学的な影響を踏まえて検討する必要がある。
 したがって、対象廃棄物の地層処分の安全性は、対象廃棄物の性状と「3.処分施設概念」で示した処分施設による地層処分に特有な現象の影響を考慮した地下水移行シナリオ6)による被ばく線量の試算に基づき検討することとした。
 検討にあたっては、基本的に核燃料サイクル開発機構により取りまとめが行われている地層処分研究開発の「第1次取りまとめ」と「第2次取りまとめ」第2ドラフトの知見を引用することとしたため、例えば天然バリアの分配係数等の評価上共通する部分は、「第2次取りまとめ」第2ドラフトと同一のデータ、類似のモデルを適用することとした。
(参考資料―14)

6)放射性核種が地下水と共に地中を移動して河川に流入し、この河川水を通して内部被ばくするシナリオ

(2)地下水移行シナリオにおいて考慮すべき現象について
 地下水移行シナリオにおいては、地下水によって廃棄体が徐々に劣化7)し、ついには廃棄体に閉じ込められていた核種が地下水に溶出しはじめ、充填材、緩衝材、さらに岩盤を経て人間の生活環境に到達する、という一連の過程で起こりうる様々な現象を考慮する必要がある。
 対象廃棄物は、ガラス固化体と異なり、処理にあたってはセメント系材料が多く用いられており、処分場に廃棄体を定置した後の充填材としてもセメント系材料を用いることとしている。また、対象廃棄物には、腐食によりガスを発生する金属類や、人工バリア及び天然バリアへの核種の吸着性に影響を与える可能性のある硝酸塩も含まれている。
 対象廃棄物を地層処分した場合の地下水移行シナリオの検討にあたっては、対象廃棄物の物理・化学的性状と処分施設概念を考慮して、人工バリア及び天然バリアにおける様々な現象を抽出し各現象間の関連性を調べた。核種の移動への影響が大きいと考えられる現象については、詳細な調査・解析を行った結果を踏まえて整理した。
(参考資料―15)

7)ここでは、地下水移行シナリオによる被ばく評価期間が長期に及ぶため、その前提条件としては、処分場の埋め戻し直後から、例えばドラム缶等の容器に密閉されているといった物理的な閉じ込め性能を見込まない想定で評価を行っている。

 このうち、人工バリアの核種の移動抑制に関する特性に影響を与える現象としては、以下のものが考えられる。
①金属廃棄物の腐食等によるガス発生による人工バリア内の放射性核種を含んだ地下水の押し出し
②セメントの長期的変化による人工バリア(充填材)内の地下水への溶解度やセメントへの吸着性の変化
③セメントの溶出による緩衝材の変質(カルシウム化など)による膨潤性や止水性の変化
④一部の廃棄物に含まれている硝酸塩が溶出することによる人工バリア特性の変化
 さらに、人工バリアだけでなく天然バリアの核種の移動抑制に関する特性にも影響を及ぼす場合が考えられる現象としては、以下のものが考えられる。
①セメントの溶出による高アルカリ水が岩盤に含まれる鉱物と反応することによる天然バリア特性の変化
②一部の廃棄物に含まれている硝酸塩が溶出することによる天然バリア特性の変化
 これらのうち、人工バリアの核種の移動抑制に関する特性に影響を与えると考えられるものについては、その影響を定量的に検討して考慮する8)こととした。人工バリアだけでなく天然バリアにも影響を及ぼす場合が考えられるものは、現時点では現象に対する精度の高い定量的な検討が行えないことから、現状の知見の範囲で各バリアの吸着性を幅広く設定することで考慮することとした。
(3)地下水移行シナリオによる被ばく線量の試算結果について
 地下水移行シナリオによる被ばく線量に関しては、「第2次取りまとめ」第2ドラフトを参考9)に、地下水が処分施設へ浸入することにより引き起こされる現象が人工バリアや天然バリアにおける核種の移動に及ぼす影響を考慮した試算を行った。その結果、岩盤の透水係数10)を10-9m/s(動水勾配11)は0.01、移行距離は100m)として試算した被ばく線量は、核種の移動に関する物性値を評価上厳しく設定した場合でも、最大数μSv/y程度(結晶質岩系岩盤)、約1μSv/y程度(堆積岩系岩盤)となった。
 また、地下水移行シナリオでは、人工バリアによる核種閉じ込め性にもよるが、基本的には地下水流速が小さくなるほど被ばく線量が小さくなる。そこで、地下水流速の大きさの影響を調べるため、地層処分場の地質環境として考えられる岩盤の透水係数を10-8~10-10m/sの範囲(動水勾配は0.01、移行距離は100mで固定)で変動させて被ばく線量を試算した。その結果、岩盤の透水係数を10-9m/sとした場合と比較すると、被ばく線量は結晶質岩系岩盤、堆積岩系岩盤いずれの場合も1桁程度変動した。
 同様に、移行距離を500mとした場合の被ばく線量の試算も行った(透水係数は10-9m/sで固定)。その結果、被ばく線量は結晶質岩系岩盤、堆積岩系岩盤いずれの場合でも1桁程度低下した。
 なお、全ての場合について、被ばく線量への影響が最も大きいのは廃棄体グループ1であり、廃銀吸着材中の129Iによるものとなっている。グループ2~4による被ばく線量はグループ1よりも少なくとも1桁以上小さくなっている。したがって、今後高βγ廃棄物処分概念に対するα核種濃度上限値が決定し、グループ3,4の物量が変動しても、被ばく線量への影響は小さいと考えられる。

8)硝酸塩の溶出の影響は、人工バリアと天然バリア両方に影響を及ぼすことを想定し、核種の吸着性を幅広く設定することで考慮した。
9)「第2次取りまとめ」第2ドラフトにおける亀裂性媒体の計算モデルは亀裂特性の統計的な分布を考慮した「亀裂ネットワークモデル」を基本としたのに対し、本検討においては、亀裂特性の一様な分布を想定した「一次元モデル」を用いている。
10)多孔性の媒体における水の流れやすさを表す物性値。動水勾配を乗ずると地下水流速となる。つまり、動水勾配が1の場合、透水係数と地下水流速は等しくなる。
11)地下水の流れを起こす水圧差。一定の距離あたりの水圧差で表され、この値が大きいほど地下水を流す力が大きい。

5.まとめ
 対象廃棄物は、物理・化学的性状及び含まれる核種の種類・濃度が多様であるため、その特性に応じて4つの廃棄体グループに分類し、それぞれの特性に応じた人工バリア構成を示した。また、地下深部において、人工バリアを設置した比較的大きな処分坑道に対象廃棄物をまとめて処分することは現在の技術で可能であること及び処分施設概念の一例を示した。海外の処分施設の設計例や国内の地下施設の施工実績も踏まえると、対象廃棄物を地層処分することを想定した場合、現在の技術により具体的な処分施設概念を構築することができると考えられる。
 高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性は、「地層処分研究開発第2次取りまとめ」第2ドラフトの中で地層処分を安全に実施するための技術的な基盤が信頼性をもって示されつつあり、対象廃棄物の地層処分の安全性についても基本的には同様に検討することができると考えられる。ただし、対象廃棄物の場合、廃棄体の性状と想定される処分施設が高レベル放射性廃棄物の場合と異なるため、我が国の地下深部における岩盤や地下水の特性を踏まえ、超ウラン核種を含む放射性廃棄物に特有な様々な現象の影響を考慮した地下水移行シナリオによる被ばく線量の試算を行った。試算結果は、10-2μSv/yのオーダー~十μSv/y程度となり、諸外国の地層処分に関する基準線量12)(100~300μSv/y)を下回る。このことから、超ウラン核種を含む放射性廃棄物に対する地層処分の安全を確保することは可能であると考えられる。
以上

12)地層処分に対する基準線量は、線源(原子力発電所、再処理施設、処分場等)の重畳や放射性物質の量を考慮して、公衆の線量限度である1mSv/y(国際放射線防護委員会(ICRP)パリ会議声明(1985))の一部を割り当てることにより設定されている。