資料(専)23-2

超ウラン核種を含む放射性廃棄物処分の基本的考え方の検討状況について

平成11年6月2日

1.はじめに
 原子炉施設の運転の結果生じる使用済燃料は、再処理施設において処理され、プルトニウム等の核燃料物質が抽出される。抽出された核燃料物質は、ウラン-プルトニウム混合酸化物燃料(以下「MOX燃料」という)の成型加工施設(以下「MOX燃料加工施設」という)において原子炉施設で再度燃料として使用できるように加工される。これらの施設からは、その運転・解体に伴い放射性廃棄物が発生する。
 当該廃棄物中の放射性物質は、使用済燃料集合体に含まれていたものであり燃料中のウランなどの核分裂により生成した核種、ウランなどが中性子を吸収して生成した超ウラン核種、及び燃料を被覆している金属材料等が中性子等の放射線によって放射化された核種が存在する。当該廃棄物中の放射性核種濃度は、放射性物質が付着した作業着のような低いものから、使用済燃料を切断して硝酸に溶解した後の被覆管の断片等(以下「ハル・エンドピース」という)といった比較的高いものまで、幅広い範囲に及んでいる。当該廃棄物の放射性核種濃度を、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物に関する「現行の政令濃度上限値」(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令第13条の9に規定された濃度)と比較すると、これを下回る濃度のものから数桁程度上回る濃度のものまで幅広く分布している。
 現在、我が国では、このような放射性廃棄物は、核燃料サイクル開発機構(以下「JNC」という)の東海再処理工場およびMOX燃料加工施設の運転に伴い発生しており、貯蔵施設内に保管されている。現在建設中である日本原燃(株)の再処理施設からも、運転開始に伴い同様の廃棄物が発生することとなる。将来的には、これらの施設の解体によっても廃棄物が発生する。また、海外での再処理委託に伴い発生した廃棄物も、将来我が国に返還される予定である。なお、RI・研究所等廃棄物にも、一定の濃度以上の超ウラン核種を含む廃棄物が存在している。これらの廃棄物を総称して、「超ウラン核種を含む放射性廃棄物」と呼んでいる。
 本資料においては、再処理施設及びMOX燃料加工施設の運転・解体に伴い発生する放射性廃棄物でガラス固化体以外のもの(以下「再処理等廃棄物」という)を対象として、その特徴を踏まえた処分の基本的考え方について、分科会における検討状況を報告する。

2.再処理等廃棄物の発生の現状と将来の見通し
(1)JNCにおける発生の現状
 現在までに、我が国では、JNCの東海再処理工場において、使用済燃料のせん断・溶解に伴って発生するハル・エンドピース等の廃棄物や、再処理の様々な工程から発生するプロセス濃縮廃液等の液体状廃棄物、あるいは、施設の保守作業等により放射性物質が付着した機器類、作業着、紙 ウェス等の固体状廃棄物が発生している。また、MOX燃料加工施設の運転に伴ってグローブボックスの構成部品、ゴム手袋、作業着等の様々な固体状廃棄物が発生している。これらの廃棄物の一部は、焼却あるいは溶融等の処理がなされているが、未処理のまま貯蔵施設に保管されているもの も多い。これらの廃棄物の平成10年3月までの発生量は、処理されているものが200Lドラム缶で約3万2千本(6千4百m3)、未処理のものが約1万3千mとなっている。さらに、将来これらの施設が解体されれば、放射性物質が付着した箇所からは、金属、コンクリート等の固体状廃棄物が発生することとなる。

(参考資料―1,2)

(2)海外からの返還について
 我が国の使用済燃料のうち、約7千百tUに相当する使用済燃料が、英国BNFLと仏国COGEMAとの再処理契約に基づき再処理され、これらの施設の運転に伴い発生する再処理等廃棄物についても、輸送、貯蔵に適した形態で我が国に返還されることとなっており、現在事業者間で返還 時期、返還量について調整がなされているところである。

(3)民間施設おける発生の見通し
 今後、我が国で発生する使用済燃料は日本原燃(株)が現在建設を進めている再処理施設において再処理することが計画されている。さらに、将来的には民間のMOX燃料加工施設の建設も検討されており、これらの施設からも同様の放射性廃棄物が発生する。

(4)本検討の前提となる廃棄物発生量試算について
 再処理等廃棄物の発生量として、「地層処分研究開発第2次取りまとめ」における前提であるガラス固化体4万本に相当する再処理等廃棄物の累積発生量を一定の仮定のもとに試算した。また試算には、海外からの返還廃棄物、JNCの東海再処理工場およびMOX燃料加工施設の主要な施設の解体も想定し、これに伴い発生する放射性廃棄物も含めることとした。この結果、これらの廃棄物を固形化し廃棄体とした場合の累積廃棄体量は、約5万6千mになると推定される。このうち、約80%は、再処理施設の運転に伴い発生するものとなっている。

(参考資料―3)

3.再処理等廃棄物の特徴
(1)再処理等廃棄物中の核種構成について
 再処理等廃棄物は使用済燃料を発生起源とするものであることから、これに含まれる放射性核種は、燃料の核分裂により生成するセレン79(79Se)、ストロンチウム90(90Sr)、テクネチウム99(99Tc)、ヨウ素129(129I)、セシウム137(137Cs)等の核分裂生成物、および燃料が中性子を吸収することにより生成するプルトニウム239(239Pu)、プルトニウム241(241Pu)、アメリシウム241(241Am)等の超ウラン核種が主なものである。その他、使用済燃料集合体の構成材料(ステンレス、ジルカロイ等)の放射化により生成する炭素14(14C)、コバルト60(60Co)、ニッケル63(63Ni)等の放射化生成物も含まれる。これらの核種のうち14C,60Co,63Ni,79Se,90Sr,99Tc,129I,137Cs,241Puがβγ核種であり、239Pu,241Amはα核種である。また、MOX燃料加工施設の運転あるいは解体に伴い発生する放射性廃棄物に含まれる放射性核種は主としてα核種であり、ウランとプルトニウムの同位体(235U,238U,239Pu,241Pu等)である。
(参考資料-4)

(2)原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物との比較について
 上記の核種は、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物にも含まれるが、原子炉施設から発生する廃棄物は、放射化生成物である60Co等の核種が主な核種となるのに対し、再処理等廃棄物は、核分裂生成物あるいは超ウラン核種が主な核種となる。このため、再処理等廃棄物は外部被ばくよりも内部被ばくによる影響が大きくなるα核種の占める割合が比較的大きいという特徴がある。
(参考資料―5)

(3)再処理等廃棄物の核種濃度分布について
 再処理施設の運転あるいは解体に伴い発生する放射性廃棄物には、ハル・エンドピースのように放射性物質の付着が多く、放射化の程度も大きいため、廃棄物に含まれる放射性核種の濃度が比較的高くなるものから、再処理施設内の放射性物質の付着が少ない箇所から発生するため廃棄物中に含まれる放射性核種の濃度が比較的低くなるものまで、幅広く存在する。また、MOX燃料加工施設の運転あるいは解体に伴い発生する放射性廃棄物についても、放射性物質の付着の度合いにより、発生する廃棄物に含まれる放射性核種の濃度は幅広い範囲に及ぶこととなる。このため、再処理等廃棄物中に含まれる放射性核種の濃度は、現行の政令濃度上限値を下回る濃度のものからこれ を数桁程度上回る濃度のものまで幅広い範囲に分布する。
(参考資料―6)

(4)再処理等廃棄物のその他の特徴
 再処理等廃棄物としては、施設の運転及び解体に伴い、金属、コンクリートをはじめ、使用済フィルター、樹脂、溶媒として使用する硝酸を中和、濃縮後硝酸塩としたものなど、物理・化学的性状も様々な可燃・難燃・不燃性廃棄物が発生する。
 このように、廃棄物の種類、性状、及び核種濃度は多岐にわたっているが、再処理施設あるいはMOX燃料加工施設という廃棄物の発生起源の相違や、それぞれの施設における発生箇所によって、廃棄物の性状に類似性があり、区分し取り扱うことができる。
(参考資料-7)

4.再処理等廃棄物処分方策の検討にあたっての考え方
(1)放射性廃棄物処分の基本的考え方
 放射性廃棄物の処分にあたっては、廃棄物に含まれる放射性核種が生活環境に対して影響を及ぼすことを防止することが必要であり、このためには、処分方法に適した形態に処理した後、放射性物質(放射線)の影響が安全上支障のないレベルになるように処分することが基本となる。したがって、処分の方法は、廃棄物の性状、特にこれに含まれる放射性核種の種類および濃度を考慮して設定する必要がある。

(2)我が国でこれまでに検討されてきた処分方法
 これまで、放射性廃棄物の処分については、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物を中心に検討が進められてきているが、これらの廃棄物の処分方法は、上記の基本的考え方に沿ったものとなっている。
 現在までに示されている低レベル放射性廃棄物の処分方法としては、日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体に伴って発生した廃棄物のうち、放射性核種濃度が極めて低いコンクリートについて、埋設実地試験として実施された「コンクリートピット等の人工構造物を設けない簡易な方法による浅地中処分(トレンチ処分)」、及び日本原燃(株)六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて、原子炉の運転に伴い発生し、放射性核種濃度が現行の政令濃度上限値以下の低レベル放射性廃棄物(以下「現行の低レベル放射性廃棄物」という。)について実施されている「浅地中のコンクリートピットへの処分」がある。また、現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物(以下「高βγ廃棄物」という。)についての処分概念として、「一般的であると考えられる地下利用に対して十分余裕を持った深度(例えば50~100m)への処分(以下「高βγ廃棄物処分概念」という。)」がある。

(参考資料―8、9)

(3)再処理等廃棄物の処分方法の考え方
 再処理等廃棄物は、前述のように超ウラン核種を比較的多く含み、その放射性核種の濃度は幅広い範囲に分布しており、その性状も多様である。したがって、再処理等廃棄物については、放射性廃棄物処理処分の基本的考え方を踏まえ、その放射性物質の濃度等により適切に区分し、その区分に応じた合理的な処理・処分を検討する必要がある。
 他方、我が国においては、低レベル放射性廃棄物について前述のような処分方法が提示されている。廃棄物対策全体としては、共通の性状を有するものについては共通の処分概念に集約し、廃棄物処理処分システムを簡素化することにより、廃棄物処理処分の計画から実施に至る実務や規制の煩雑さを避けることができ、安全確保の実効性を高めることになると考えられる。また、異なる施設から発生する廃棄物についても、処分概念を共有することが可能になることなどにより、処分費用などの点で一層合理的な対応ができるようになると考えられる。
 このような観点から、再処理等廃棄物についてもこれまで示されてきている上記の処分方法の適用性を検討することとし、これらの処分方法を適用できないと考えられるものについては別の処分方策の検討を行うこととした。

5.浅地中のコンクリートピットへの処分の可能性について
(1)再処理等廃棄物への適用について
 現行の低レベル放射性廃棄物を浅地中のコンクリートピットへ処分するに当たっては、処分を実施するために評価すべき代表的なβγ核種5核種(14C、60Co、63Ni、90Sr、137Cs)の濃度および全α核種の濃度について、政令濃度上限値(参考資料-10)が定められている。再処理等廃棄物のうちこれらの濃度を下回るものについては、浅地中のコンクリートピットへ処分することができるものが含まれると考えられる。
 ただし、現行の政令濃度上限値は、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物を対象に定められたものであることから、主として核分裂生成物と超ウラン核種を含む再処理等廃棄物については、政令濃度上限値が定められていない核種についても、被ばくの影響について検討する必要がある。そこで、再処理等廃棄物に含まれる放射性核種について、現行の政令濃度上限値が導出された方法と同様の方法により政令濃度上限値相当の濃度を算出し、再処理等廃棄物に含まれるそれぞれの核種濃度と比較することにより、前述の5核種以外に、再処理等廃棄物において考慮すべき放射性核種として2核種(99Tc、129I)を考慮した。

(参考資料―10)

 なお、再処理等廃棄物の発生量に関する今回の試算によれば、トレンチ処分の対象となりうる廃棄物量は少ないと考えられるため、このような廃棄物もコンクリートピット処分の対象として検討した。
(参考資料―11)

(2)被ばく線量の試算について
 浅地中のコンクリートピットへの処分については、原子力安全委員会において、管理期間経過後の被ばく線量が「被ばく管理の観点からは管理することを必要としない低い線量」である10μSv/y(以下「目安線量」という。)を超えないこととしている。
 本試算では、現行の政令濃度上限値あるいはそれ相当の濃度を下回る再処理等廃棄物を対象に、現行の政令濃度上限値を設定した際に用いられたコンクリートピット処分における被ばく評価シナリオ(地下水による放射性物質の移行による被ばく、処分場跡地利用による被ばく等)に基づいた被ばく線量の評価を行った。この評価の結果、約2万3千m(全廃棄体量の約4割)の廃棄体が目安線量を下回った。
(参考資料-11)

(3)一応の区分目安値による区分との比較について
 「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」では、一応の区分目安値として全α核種濃度約1GBq/t(現行の政令濃度上限値と同じ値)が示されているが、この濃度を下回る廃棄体は約3万8千mとなり、このうち被ばく線量評価を満足できないもの(試算結果が10μSv/yを超えるもの)が約1万5千m含まれている。この理由として、今回試算を行った再処理等廃棄物と原子炉施設から発生する放射性廃棄物では核種構成が異なっており、再処理等廃棄物には、241Pu(半減期14.4年)の含有量が多く、その崩壊により生成するα核種(241Am)が増加し、管理期間経過時点(本試算では300年後)のα核種濃度が比較的高くなること、現行の政令濃度上限値は核種毎に設定されているが、核種毎にみれば政令濃度上限値を下回っていても複数の核種が被ばくに寄与することにより、全体としては目安線量を越える結果となったこと等が挙げられる。
(参考資料―11)

(4)まとめ
 上述のように、浅地中のコンクリートピット処分は、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物を対象に検討がなされたものであるが、再処理等廃棄物にこの処分方策を適用したと仮定した場合の被ばく線量の試算結果から、再処理等廃棄物の中にはコンクリートピット処分可能なものが比較的多く存在するものと考えられる(本試算では全廃棄体の約4割)。
 今後、原子力安全委員会において、再処理等廃棄物を対象とした濃度上限値の検討が行われる際には、現行の低レベル放射性廃棄物と再処理等廃棄物では、廃棄物中に含まれる主要な放射性核種が異なること等に留意する必要があると考えられる。

6.高βγ廃棄物処分概念での処分の可能性について
(1)高βγ廃棄物処分概念について
 原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物のうち、そのβγ核種の濃度が現行の政令濃度上限値を超えるものについては、原子力バックエンド対策専門部会において、処分概念(高βγ廃棄物処分概念)と処分の基本的考え方が示された(「現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方について平成10年10月」)。この廃棄物は、βγ核種の濃度は高いもののα核種については現行の政令濃度上限値を下回ることが特徴である。
 現在、高βγ廃棄物処分の安全規制及び安全基準については、原子力安全委員会において濃度上限値等について審議が行われているところである。

(2)再処理等廃棄物への適用について
 一方、再処理等廃棄物は、高βγ廃棄物と比べてα核種濃度は高いものの、βγ核種濃度は低いことから、α核種の濃度が現行の政令濃度上限値を大きく超えないものについては、この処分概念を適用できる可能性があると考えられる。しかしながら、原子力安全委員会において、高βγ廃棄物に対してこの処分概念を適用した場合の濃度上限値についての審議が行われている段階であり、現時点でα核種の濃度について具体的な適用範囲を明確にすることは難しいといえる。このため、この処分概念が検討された際に一定の仮定の下で行われた被ばく線量の試算例を参考に、再処理等廃棄物についても被ばく線量の試算を行い、高βγ廃棄物と再処理等廃棄物の類似性、特に被ば くの影響の観点からの類似性について検討を行った。
 なお、全α核種濃度が一応の区分目安値(約1GBq/t)を下回るもののうち、コンクリートピット処分における被ばく線量の評価結果が目安線量を超える廃棄体と、全α核種濃度が一応の区分目安値を超えるもののうち、一例として平均濃度が数GBq/t(最大濃度で数十GBq/t)の範囲までの廃棄体について試算を行った。

(3)被ばく線量の試算について
 ここでは、①管理期間経過後の放射性核種の地下水移行に伴う被ばく、②地下利用に伴う調査として行われるボーリングコアを観察することに伴う被ばくについて試算を行った。
この試算結果では、管理期間経過後の放射性核種の地下水移行に伴う被ばく(地下水移行シナリオ)線量は、「廃銀吸着材」(使用済みのヨウ素吸着フィルター)を除き目安線量である10μSv/yを十分に下回ることとなった。これは、地下水移行については天然バリアがα核種を収着しやすく大きな保持能力を有していることによる。
 また、一般的であるとは考えられない(頻度が小さい)事象として、地下利用に伴う調査として行われるボーリングコアの観察を想定した場合の外部被ばく(ボーリングコア観察シナリオ)線量試算結果より、最大でも1μSv/回を十分下回る結果となった。さらに、内部被ばくへの寄与が大きいα核種の特徴を考慮してボーリングコアを観察することに伴い内部被ばくが生じることを想定し、一定の仮定をおいて試算したところ、その被ばく線量は数十μSv/回程度となった。

(4)高βγ廃棄物と再処理等廃棄物の比較について
 上述のように、地下水移行シナリオ、及び内部被ばくを考慮したボーリングコア観察シナリオについて線量の試算を行った。その結果は、試算の対象とした廃棄物については、高βγ廃棄物の結果と同程度のものであった。しかし、再処理等廃棄物に多く含まれるα核種は内部被ばくへの寄与が大きく半減期が長いことを踏まえて、被ばくへの影響の大きさを指標として両廃棄物の比較を試みることとした。具体的には、α核種及びβγ核種による影響を同時に評価する1つのモデルとして「もしも浅地中コンクリートピット処分を行ったら跡地利用に伴う被ばく線量はどうなるか」という試算を行うことで両者の比較を行った。これより、被ばく線量を指標としてその減衰の傾向を見ると、再処理等廃棄物のうち全α核種濃度が一応の区分目安値を大きく超えないものについては、線量に寄与する核種は異なるものの、高βγ廃棄物と同様の傾向を示している。

(参考資料―12)

(5)まとめ
 以上の試算から、α核種の濃度が一応の区分目安値を大きく超えない再処理等廃棄物は、高βγ廃棄物と被ばくへの影響の観点から類似性が見られることから、高βγ廃棄物処分概念を適用できる可能性があると考えられる。

7.既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念で処分ができないと考えられる再処理等廃棄物の処分の基本的考え方
(1)基本的考え方について
 再処理等廃棄物のうち、比較的α核種の濃度が低いものについては、以上検討してきたように、浅地中のコンクリートピット処分あるいは高βγ廃棄物処分概念といった処分概念での処分を行うことが可能であると考えられる。
一方、α核種の濃度が数千GBq/tであるハル・エンドピースのように、その放射性核種濃度が十分減衰するまでに長期間を要する廃棄物については、人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要であると考えられる。この条件を満足する既存の処分概念としては、「人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリアを構築することにより処分の長期的な安全性を確保する地層処分」が考えられる。したがって、既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念で処分ができないと考えられる再処理等廃棄物については、その廃棄物の性状を十分踏まえた地層処分について検討することとする。

(2)海外との比較について
 諸外国の中で再処理を行っている国においては、我が国の高βγ廃棄物処分概念に対応する処分方策を選定している国はなく、全α核種濃度は例えば約4GBq/tを区分値として浅地中処分と地層処分の2つの処分概念が選定されている国が多い。
 我が国においては、以上の検討結果を踏まえれば、浅地中のコンクリートピット処分、高βγ廃棄物処分概念および地層処分の処分概念を選定することとなることから、α核種濃度に対する区分については各々の処分方策に応じた適切な区分値を検討する必要があると考えられる。

(3)高レベル放射性廃棄物との相違点について
 再処理等廃棄物を対象とした地層処分概念の検討に当たっては、高レベル放射性廃棄物の地層処分についての検討結果を踏まえつつ検討を進めるものであるが、再処理等廃棄物は高レベル放射性廃棄物と比べ放射性核種濃度が低いという特徴の他に、発熱が小さい、物理的・化学的特性や放射性核種濃度などの廃棄物の性状が多様であるという特徴がある。したがって、処分概念を検討していくに当たっては、これらの特徴を十分考慮することが必要である。

8.まとめ
 超ウラン核種を含む放射性廃棄物分科会では、再処理施設等廃棄物のうち放射性物質の濃度が比較的低いものについて、「浅地中のコンクリートピットへの処分」あるいは「高βγ廃棄物処分概念」を行える可能性を中心に検討を行ってきた。その結果、再処理等廃棄物の中にはこれらの処分概念により処分できるものが比較的多く存在するとの見通しが得られた。
 一方、再処理等廃棄物には、α核種の濃度が高くこれらの処分概念を適用できないと考えられるものも存在することから、これについては地層処分を行う必要があると考えられる。
 この結果、再処理等廃棄物の処分概念は、「浅地中のコンクリートピットへの処分」及び「高βγ廃棄物処分概念」という既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念と地層処分に区分できると考えられる。
 今後、分科会においては、地層処分を選択することとした廃棄物については、廃棄物の性状等を踏まえた具体的な処分概念および安全確保の考え方について検討を進めていくとともに、RI・研究所等廃棄物に対する同様の検討を進めていくこととする。

以上