資料(専)23-2 |
2.再処理等廃棄物の発生の現状と将来の見通し
(1)JNCにおける発生の現状
現在までに、我が国では、JNCの東海再処理工場において、使用済燃料のせん断・溶解に伴って発生するハル・エンドピース等の廃棄物や、再処理の様々な工程から発生するプロセス濃縮廃液等の液体状廃棄物、あるいは、施設の保守作業等により放射性物質が付着した機器類、作業着、紙
ウェス等の固体状廃棄物が発生している。また、MOX燃料加工施設の運転に伴ってグローブボックスの構成部品、ゴム手袋、作業着等の様々な固体状廃棄物が発生している。これらの廃棄物の一部は、焼却あるいは溶融等の処理がなされているが、未処理のまま貯蔵施設に保管されているもの
も多い。これらの廃棄物の平成10年3月までの発生量は、処理されているものが200Lドラム缶で約3万2千本(6千4百m3)、未処理のものが約1万3千m3となっている。さらに、将来これらの施設が解体されれば、放射性物質が付着した箇所からは、金属、コンクリート等の固体状廃棄物が発生することとなる。
(3)民間施設おける発生の見通し
今後、我が国で発生する使用済燃料は日本原燃(株)が現在建設を進めている再処理施設において再処理することが計画されている。さらに、将来的には民間のMOX燃料加工施設の建設も検討されており、これらの施設からも同様の放射性廃棄物が発生する。
(4)本検討の前提となる廃棄物発生量試算について
再処理等廃棄物の発生量として、「地層処分研究開発第2次取りまとめ」における前提であるガラス固化体4万本に相当する再処理等廃棄物の累積発生量を一定の仮定のもとに試算した。また試算には、海外からの返還廃棄物、JNCの東海再処理工場およびMOX燃料加工施設の主要な施設の解体も想定し、これに伴い発生する放射性廃棄物も含めることとした。この結果、これらの廃棄物を固形化し廃棄体とした場合の累積廃棄体量は、約5万6千m3になると推定される。このうち、約80%は、再処理施設の運転に伴い発生するものとなっている。
(2)我が国でこれまでに検討されてきた処分方法
これまで、放射性廃棄物の処分については、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物を中心に検討が進められてきているが、これらの廃棄物の処分方法は、上記の基本的考え方に沿ったものとなっている。
現在までに示されている低レベル放射性廃棄物の処分方法としては、日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体に伴って発生した廃棄物のうち、放射性核種濃度が極めて低いコンクリートについて、埋設実地試験として実施された「コンクリートピット等の人工構造物を設けない簡易な方法による浅地中処分(トレンチ処分)」、及び日本原燃(株)六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて、原子炉の運転に伴い発生し、放射性核種濃度が現行の政令濃度上限値以下の低レベル放射性廃棄物(以下「現行の低レベル放射性廃棄物」という。)について実施されている「浅地中のコンクリートピットへの処分」がある。また、現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物(以下「高βγ廃棄物」という。)についての処分概念として、「一般的であると考えられる地下利用に対して十分余裕を持った深度(例えば50~100m)への処分(以下「高βγ廃棄物処分概念」という。)」がある。
5.浅地中のコンクリートピットへの処分の可能性について
(1)再処理等廃棄物への適用について
現行の低レベル放射性廃棄物を浅地中のコンクリートピットへ処分するに当たっては、処分を実施するために評価すべき代表的なβγ核種5核種(14C、60Co、63Ni、90Sr、137Cs)の濃度および全α核種の濃度について、政令濃度上限値(参考資料-10)が定められている。再処理等廃棄物のうちこれらの濃度を下回るものについては、浅地中のコンクリートピットへ処分することができるものが含まれると考えられる。
ただし、現行の政令濃度上限値は、原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物を対象に定められたものであることから、主として核分裂生成物と超ウラン核種を含む再処理等廃棄物については、政令濃度上限値が定められていない核種についても、被ばくの影響について検討する必要がある。そこで、再処理等廃棄物に含まれる放射性核種について、現行の政令濃度上限値が導出された方法と同様の方法により政令濃度上限値相当の濃度を算出し、再処理等廃棄物に含まれるそれぞれの核種濃度と比較することにより、前述の5核種以外に、再処理等廃棄物において考慮すべき放射性核種として2核種(99Tc、129I)を考慮した。
6.高βγ廃棄物処分概念での処分の可能性について
(1)高βγ廃棄物処分概念について
原子炉施設から発生する低レベル放射性廃棄物のうち、そのβγ核種の濃度が現行の政令濃度上限値を超えるものについては、原子力バックエンド対策専門部会において、処分概念(高βγ廃棄物処分概念)と処分の基本的考え方が示された(「現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方について平成10年10月」)。この廃棄物は、βγ核種の濃度は高いもののα核種については現行の政令濃度上限値を下回ることが特徴である。
現在、高βγ廃棄物処分の安全規制及び安全基準については、原子力安全委員会において濃度上限値等について審議が行われているところである。
(2)再処理等廃棄物への適用について
一方、再処理等廃棄物は、高βγ廃棄物と比べてα核種濃度は高いものの、βγ核種濃度は低いことから、α核種の濃度が現行の政令濃度上限値を大きく超えないものについては、この処分概念を適用できる可能性があると考えられる。しかしながら、原子力安全委員会において、高βγ廃棄物に対してこの処分概念を適用した場合の濃度上限値についての審議が行われている段階であり、現時点でα核種の濃度について具体的な適用範囲を明確にすることは難しいといえる。このため、この処分概念が検討された際に一定の仮定の下で行われた被ばく線量の試算例を参考に、再処理等廃棄物についても被ばく線量の試算を行い、高βγ廃棄物と再処理等廃棄物の類似性、特に被ば
くの影響の観点からの類似性について検討を行った。
なお、全α核種濃度が一応の区分目安値(約1GBq/t)を下回るもののうち、コンクリートピット処分における被ばく線量の評価結果が目安線量を超える廃棄体と、全α核種濃度が一応の区分目安値を超えるもののうち、一例として平均濃度が数GBq/t(最大濃度で数十GBq/t)の範囲までの廃棄体について試算を行った。
(3)被ばく線量の試算について
ここでは、①管理期間経過後の放射性核種の地下水移行に伴う被ばく、②地下利用に伴う調査として行われるボーリングコアを観察することに伴う被ばくについて試算を行った。
この試算結果では、管理期間経過後の放射性核種の地下水移行に伴う被ばく(地下水移行シナリオ)線量は、「廃銀吸着材」(使用済みのヨウ素吸着フィルター)を除き目安線量である10μSv/yを十分に下回ることとなった。これは、地下水移行については天然バリアがα核種を収着しやすく大きな保持能力を有していることによる。
また、一般的であるとは考えられない(頻度が小さい)事象として、地下利用に伴う調査として行われるボーリングコアの観察を想定した場合の外部被ばく(ボーリングコア観察シナリオ)線量試算結果より、最大でも1μSv/回を十分下回る結果となった。さらに、内部被ばくへの寄与が大きいα核種の特徴を考慮してボーリングコアを観察することに伴い内部被ばくが生じることを想定し、一定の仮定をおいて試算したところ、その被ばく線量は数十μSv/回程度となった。
(4)高βγ廃棄物と再処理等廃棄物の比較について
上述のように、地下水移行シナリオ、及び内部被ばくを考慮したボーリングコア観察シナリオについて線量の試算を行った。その結果は、試算の対象とした廃棄物については、高βγ廃棄物の結果と同程度のものであった。しかし、再処理等廃棄物に多く含まれるα核種は内部被ばくへの寄与が大きく半減期が長いことを踏まえて、被ばくへの影響の大きさを指標として両廃棄物の比較を試みることとした。具体的には、α核種及びβγ核種による影響を同時に評価する1つのモデルとして「もしも浅地中コンクリートピット処分を行ったら跡地利用に伴う被ばく線量はどうなるか」という試算を行うことで両者の比較を行った。これより、被ばく線量を指標としてその減衰の傾向を見ると、再処理等廃棄物のうち全α核種濃度が一応の区分目安値を大きく超えないものについては、線量に寄与する核種は異なるものの、高βγ廃棄物と同様の傾向を示している。
7.既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念で処分ができないと考えられる再処理等廃棄物の処分の基本的考え方
(1)基本的考え方について
再処理等廃棄物のうち、比較的α核種の濃度が低いものについては、以上検討してきたように、浅地中のコンクリートピット処分あるいは高βγ廃棄物処分概念といった処分概念での処分を行うことが可能であると考えられる。
一方、α核種の濃度が数千GBq/tであるハル・エンドピースのように、その放射性核種濃度が十分減衰するまでに長期間を要する廃棄物については、人間の生活環境から長期間隔離しておくことが必要であると考えられる。この条件を満足する既存の処分概念としては、「人間の生活環境から十分離れた安定な地層中に、適切な人工バリアを構築することにより処分の長期的な安全性を確保する地層処分」が考えられる。したがって、既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念で処分ができないと考えられる再処理等廃棄物については、その廃棄物の性状を十分踏まえた地層処分について検討することとする。
(2)海外との比較について
諸外国の中で再処理を行っている国においては、我が国の高βγ廃棄物処分概念に対応する処分方策を選定している国はなく、全α核種濃度は例えば約4GBq/tを区分値として浅地中処分と地層処分の2つの処分概念が選定されている国が多い。
我が国においては、以上の検討結果を踏まえれば、浅地中のコンクリートピット処分、高βγ廃棄物処分概念および地層処分の処分概念を選定することとなることから、α核種濃度に対する区分については各々の処分方策に応じた適切な区分値を検討する必要があると考えられる。
(3)高レベル放射性廃棄物との相違点について
再処理等廃棄物を対象とした地層処分概念の検討に当たっては、高レベル放射性廃棄物の地層処分についての検討結果を踏まえつつ検討を進めるものであるが、再処理等廃棄物は高レベル放射性廃棄物と比べ放射性核種濃度が低いという特徴の他に、発熱が小さい、物理的・化学的特性や放射性核種濃度などの廃棄物の性状が多様であるという特徴がある。したがって、処分概念を検討していくに当たっては、これらの特徴を十分考慮することが必要である。
8.まとめ
超ウラン核種を含む放射性廃棄物分科会では、再処理施設等廃棄物のうち放射性物質の濃度が比較的低いものについて、「浅地中のコンクリートピットへの処分」あるいは「高βγ廃棄物処分概念」を行える可能性を中心に検討を行ってきた。その結果、再処理等廃棄物の中にはこれらの処分概念により処分できるものが比較的多く存在するとの見通しが得られた。
一方、再処理等廃棄物には、α核種の濃度が高くこれらの処分概念を適用できないと考えられるものも存在することから、これについては地層処分を行う必要があると考えられる。
この結果、再処理等廃棄物の処分概念は、「浅地中のコンクリートピットへの処分」及び「高βγ廃棄物処分概念」という既存の低レベル放射性廃棄物の処分概念と地層処分に区分できると考えられる。
今後、分科会においては、地層処分を選択することとした廃棄物については、廃棄物の性状等を踏まえた具体的な処分概念および安全確保の考え方について検討を進めていくとともに、RI・研究所等廃棄物に対する同様の検討を進めていくこととする。