資料(専)22-1

第21回原子力バックエンド対策専門部会議事要旨(案)

1.日時 平成11年2月9日(火)10:00~12:00
2.場所 科学技術庁第1・2会議室(科学技術庁2階)
3.出席者:
(原子力委員)藤家委員長代理、依田委員、遠藤委員、木元委員
(専門委員)熊谷部会長、石榑委員、一政委員、大桃委員、岡委員、川人委員、神田委員、草間委員、小島委員、小西委員、齋藤委員、坂本委員、佐々木委員、鈴木委員、鷲見委員、関本委員、田中(知)委員、田中(靖)委員、徳山委員、鳥井委員、中神委員、永倉委員、東委員、藤岡委員、松田委員、森山委員
(説明員)向山日本原子力研究所中性子科学研究センター長、若林核燃料サイクル開発機構FBRサイクル技術統合化グループ研究主席、井上財団法人電力中央研究所原燃サイクル部長
(科学技術庁)青山廃棄物政策課長、森山廃棄物政策課企画官
4.議題(1)核種分離・消滅処理技術に関する検討について
    (2)その他

5.配布資料
資料(専)21-1第20回原子力バックエンド対策専門部会議事要旨(案)
資料(専)21-2核種分離・消滅処理技術に関する審議について
資料(専)21-3日本原子力研究所における群分離・消滅処理技術の研究開発
資料(専)21-4日本原子力研究所における群分離・消滅処理技術の研究開発[OHP資料]
資料(専)21-5核燃料サイクル開発機構における核種分離・消滅処理技術の研究開発
資料(専)21-6核燃料サイクル開発機構における核種分離・消滅処理技術の研究開発[OHP資料]
資料(専)21-7電力中央研究所における核種分離・消滅処理技術の研究開発状況
資料(専)21-8OHP集(電力中央研究所)
資料(専)21-9核種分離・消滅処理技術分科会の設置について(案)
資料(専)21-10TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に関する調査検討にあたる分科会の名称について(案)
資料(専)21-11「放射性廃棄物シンポジウム」について
参考資料
参考(専)21-1原子力バックエンド対策専門部会の設置について(平成7年9月12日原子力委員会決定)
参考(専)21-2群分離・消滅処理技術研究開発長期計画(昭和63年10月11日、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
参照資料
原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(平成6年6月24日、原子力委員会)

6.審議の概要
(1)核種分離・消滅処理技術に関する審議について、事務局より資料21-2に基づき説明があった。

(2)核種分離・消滅処理技術に関する日本原子力研究所における研究開発状況について、向山説明員より、資料(専)21-4に基づき説明があり、引き続き以下の議論が行われた。

  ①本技術は、ワンススルーサイクルであっても適用可能なのか。また本資料中に発電コストの上昇率は8%程度とあり、これは巨額であるように聞こえるが、具体的には1兆円を超えるのか、また地層処分に対する経済的な負担の軽減はどれくらいなのかとの質問があった。
説明員より、ワンススルーサイクルでは再処理を行わないので、再処理を前提としているこれらの技術は適用できない、具体的なコストに関しては、施設の遮蔽等がどの程度必要であるのかコスト評価できるほど検討が進んでいないが場合によっては1兆円を超える可能性もある、地層処分に対する効果については、今後の研究課題であり地層処分研究者との協力などによって進めていきたいが、原研による試算では、本技術の適用によりガラス固化体の発生量が1/3程度になる可能性があるとの回答があった。

  ②本技術のポイントは加速器開発であると考えるが、今までの加速器の10倍の性能を目指して開発を進めていることについて、技術的な実現の見通しと、開発に要する期間についてどう考えているのかとの質問があった。
説明員より、現在、中性子利用のためのJRR-3という実験施設があるが、21世紀には現在の100倍のビーム強度を持つ中性子源が必要と考えられ、国際的にも注目されている中で加速器の開発を行っている、加速器開発の中で低エネルギー加速部については、基礎はできたと考えており、高エネルギー加速部については超伝導加速部の開発の見通しが得られたと考えている、また開発期間は加速器全体で10年程度、燃料開発が15年程度と考えているとの回答があった。

  ③加速器だけで10年の開発期間がかかり、OMEGA計画への応用を図るためにはさらに時間がかかるということかとの質問があった。
説明員より、加速器全体の開発には10年と申し上げたが、必要なデータは7-8年で出るであろうと考えているとの回答があった。

  ④研究としては大変チャレンジングな分野だが、陽子加速器によって中性子を発生させるためのターゲット材料は、熱に関する工学的な課題があるのではないか。核融合炉についても同様の課題が20年前から指摘されているが、まだ解決されていないと聞いており、この問題点についてどう考えているかとの質問があった。
説明員より、ターゲットとしては鉛等の液体金属を考えており、具体的にはロシアの技術等を参考にして研究開発を進めている、ターゲット材料が解決できれば構造的にはそれほど問題がないことが実験的に実証されているとの回答があった。

(3)核種分離・消滅処理技術に関する核燃料サイクル開発機構における研究開発の状況について若林説明員より資料(専)21-6に基づき説明があり、引き続き以下の議論が行われた。

  ①核種分離技術は、現在の再処理技術の高度化を進めることである。産業は、組み立て型と素材型があるが、再処理は素材型の産業である。素材型産業の高度化は、より単純で合理的な技術を目指すが、この点についてはどのように考えているかとの質問があった。
説明員より、核種分離技術の高度化としては、化学的性質が類似しているランタニドとアクチニドのより高度な分離技術の開発などがあり、一方でサイクル機構においてコストの低減の観点から再処理プロセスの簡略化の検討を進めているとの回答があった。

  ②原研とサイクル機構の核種分離・消滅処理システムのどちらが経済的なのかとの質問があった。
説明員より、具体的なコストの試算は今後の課題であるが、サイクル機構でのコストの試算例では発電コストの上昇は2-3%であるとの回答があった。

  ③高レベル放射性廃棄物については、実施主体をつくり、事業化を図ろうという段階にある。研究開発を行うことは良いことであるが、核種分離・消滅処理技術は、将来の技術であるということをはっきり言うべきである。現状では基礎研究の段階であることは認識しているが、それでも経済性は頭において進めていくべきである。核種分離・消滅処理を行っても、地層処分は必要であり、この技術の完成まで処分を行わないで待つべきだという誤解をされないようにするべきであるとの指摘があった。
説明員より、本研究は長期的な研究項目と位置づけているとの回答があった。

  ④核種分離・消滅処理を行うと、潜在的なリスクが1/10あるいはそれ以下となると言っても、一般の人々の安心を得られないのではないか。現在、再処理によりプルトニウムを分離し、使用済み燃料に比べれば毒性が1/10に低下しているにもかかわらず、高レベル放射性廃棄物の処分には安心は得られていないし、また、リスクの減少には非常に時間がかかるがこの事をどう考えるかとの質問があった。
説明員より、核種分離・消滅処理の効果については、関連する試験研究を行っていき、信頼できる成果を上げていく必要がある、また、消滅処理や地層処分の研究者と協力して国民の理解を得られるようにしていきたいとの回答があった。

  ⑤核種分離・消滅処理技術は進めてもらいたいと考えているが、潜在的リスクが1/10になるのに何年かかるのかは明らかにすべきであるとの指摘があった。
説明員より、前提となるFBR投入の時期が重要であるが、FBR投入後20-30年でマイナーアクチニドの量が1/10になると考えているとの回答があった。

  ⑥SrやCsは20-30年の半減期で、有効利用を図ることも可能であり、大金をかけてまで核種分離・消滅処理を行う意味があるのかとの質問があった。
説明員よりSr,Csは地層処分を行う観点から発熱が大きいので、これを何とかしたいと考えて電子加速器による核種分離・消滅処理の対象としたが、ご指摘の点も考慮して、この技術は加速器開発までで止めて、関連技術のブレイクスルーを待つこととしているとの回答があった。

  ⑦様々なご指摘を頂いたが、今発表した技術に関してはまだまだ課題が多く、これらの技術は核燃料サイクル開発機構の中長期計画の中で重要な課題として位置づけている。また、サイクル機構は5年毎に計画の見直しを行うこととしており、環境負荷の低減のために色々なオプションを提供していくべきであると考えているとの発言があった。

  ⑧宣伝と広報は違うものであり、当専門部会で核種分離・消滅処理技術をどういう時期に、広く喧伝していくかを広報戦略に基づいて考えるべきである。また、核種分離・消滅処理という名前の是非も議論すべきであるとの指摘があった。

(4)核種分離・消滅処理技術に関する(財)電力中央研究所の研究開発の状況について、井上説明員より資料(専)21-8に基づき説明があり、引き続き以下の議論が行われた。

  ①分かりやすく表現するのと誤解を与えるのは別である。核種分離・消滅処理技術は、高レベル廃棄物を全て消滅可能であるかのように考えられているが、「消滅」ではなくて、「減容」や「変換」ではないか。「消滅」という言葉が一人歩きしないようにわかりやすい言葉を使うべきである。また「変換」処理によって核種を減らすために、例えば新たな原発一基に相当するようなエネルギーを使うのでは無駄であり、分科会を設置して議論を行う際には、現在研究中の様々な技術のうち、将来的にはどれをとるのかまで含めて議論して頂きたいとの指摘があった。

  ②特殊法人は、予算がつきやすく、経済性よりも良いものを創ることを目指す傾向があり、取り組みの幅が広がり過ぎる傾向があるが、現在、色々な場で経済性が議論されており、どこまで取り組んでいくかについては検討すべきである。また、電中研と、先の2つの特殊法人を比較すると、原研、サイクル機構は成果などを過大に取り上げすぎていないかとの指摘があった。

  ③先ほどのサイクル機構の発表の中で、マイナーアクチニドの量は20-30年で1/10になるという話だったが、今後の軽水炉の増設等を考えると、達成不可能ではないか。先日の京都における放射性廃棄物シンポジウムにおいても、原子力の技術者は正直であるべきとの指摘を受けており、現実的にはマイナーアクチニドの量を1/10にするのには、むしろ100-200年の方が正しいのではないかとの指摘があった。
説明員より、電中研におけるマイナーアクチニド存在量の試算によれば、サイクルの内部で平衡に達するまでに50-60年と試算している。マイナーアクチニドの量をどんどん増やすのではなく、減らしていく努力は重要であると考えるとの回答があった。

  ④このテーマは、分科会で議論する範囲を決めないと大変ではないかという印象を受けるとの指摘があった。
  ⑤研究を進める上での費用等についての指摘があったが、情報の共有化等により、無駄なことをやらないことが重要である。例えば新しい抽出剤が一つ開発できれば分離効率が良くなる。これからは関連する技術を持った海外の研究機関への委託なども含めて最小の投資で最大の成果を目指すべきである。マイナーアクチニドの量が20-30年で1/10という話もまだ絵に描いた餅に過ぎず、これから研究していくべきものであり、掲げている研究目標が成果のように受け取られないように努力すべきとの指摘があった。

(5)分科会の設置について、事務局より資料(専)21-9に基づいて説明があった。

  ①分科会の設置について了承された。分科会の主査には、部会長より関本博委員が指名され、同委員の了承を得た。

(6)TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に関する調査検討にあたる分科会の名称について、事務局より資料(専)21-10に基づいて説明があり、引き続き以下の議論が行われた。

  ①「TRU核種を主として含む」といった表現はいかがかとの発言があった。

  ②名称については分科会一任でいかがかとの発言があり了承された。

(7)放射性廃棄物シンポジウムの結果の概要が、科学技術庁より資料(専)21-11に基づいて紹介された。

(8)次回(第22回)専門部会は、平成11年4月21日(水)に開催することとして閉会した。

(備考)
 なお、後日、核燃料サイクル開発機構より、高速炉によるマイナーアクチニドの燃焼効率について、委員の質問に対する回答を一部訂正し、補足説明したい旨事務局に申し出があった。