参考(専)21-2
群分離・消滅処理技術研究開発長期計画

 

 

 

昭和63年10月11日

 

 

原子力委員会

放射性廃棄物対策専門部会


(目次)

1.はじめに
2.群分離・消滅処理技術研究開発の必要性
3.群分離・消滅処理技術研究開発の現状
4.群分離技術研究開発の長期計画
5.消滅処理技術研究開発の長期計画
6.国際協力
7.おわりに

(参考1)群分離技術研究開発のスケジュール
(参考2)原子炉による消滅処理技術研究開発のスケジュール
(参考3)加遠器による消滅処理技術研究開発のスケジュール
(参考4)群分離(核種分離)・消滅処理概念図
(参考5)構成員及び開催日


1. はじめに

 我が国は、使用済燃料を再処理することにより発生する高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後、地下数百メートルより深い地層に処分することを基本的な方針としている。
 群分離・消滅処理技術の研究開発は、このような高レベル放射性廃棄物の処分の効率化、含まれる有用元素の資源化及び積極的な安全性の向上という新たな可能性を目指す研究開発である。

 昭和62年6月に決定された原子力委員会の「原子力開発利用長期計画」においては、高レベル放射性廃棄物に含まれる核種の半減期、利用目的等に応じた分離(群分離又は核種分離)を行い、有用核種の利用を図るとともに、長寿命核種の短寿命核種又は非放射性核種への変換(消滅処理)を行うことは、高レベル放射性廃棄物の資源化とその処分の効率化の観点から極めて重要な課題であり、そのための研究開発を、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団等が協力して計画的に推進することとされている。更に、同長期計画においては、群分離・消滅処理の技術開発を国際的な協力にも配慮して進めること及び先導的プロジェクトの一つとして効率的に推進することも示されている。また、民間においても電力中央研究所が高レベル放射性廃棄物の処分の効率化を図るとの観点から群分離・消滅処理技術の研究開発に取り組んでいる。

 群分離・消滅処理に関する研究開発を推進するためには、長期的視野に立った研究開発計画に基づき、官民の力を結集して計画的かつ効率的に研究開発を推進することが必要である。このため、群分離・消滅処理の研究開発に関し、今後の約10年を見通した長期計画を取りまとめたので、報告する。

2. 群分離・消滅処理技術研究開発の必要性

 再処理施設において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後、地下数百メートルより深い地層中に処分することが基本的な方針とされているが、これは高レベル放射性廃棄物に含まれる半減期の極めて長い放射性核種の人間環境からの長期にわたる隔離を確実にできるようにしていくことが目的である。

 高レベル放射性廃棄物は、放射能が強く、発熱量が大きい核分裂生成物(FP)と、放射能はそれ程強くないが、半減期が極めて長い長寿命核種とを併せ含んだ廃棄物である。また、高レベル放射性廃棄物には、触媒や新しい素材としての利用が期待されるテクネチウム99及び白金族元素(ルテニウム、ロジウム等)や、ラジオアイソトープとしての活用が期待できる核種(セシウム137、ストロンチウム90等)の有用となりうる物質が含まれている。

 このような高レベル放射性廃棄物の含有物の特性に着目し、長寿命核種や白金族元素等を分離し、それぞれの特徴に応じて、処分や有効利用を行えば、高レベル放射性廃棄物の処分の効率化、有用元素の資源化等が図れる。

 更に、分離した長寿命核種等については、核分裂、核破砕、光核反応等の核反応により、短半減期又は非放射性の核種に変換することにより、より一層処分の効率化等が図れることとなる。

 このように、群分離技術及び消滅処理技術は、高レベル放射性廃棄物の最終処分の負担の軽減化、資源の有効利用等を図るものであり、現在の再処理プロセスや高レベル放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分システムを高度化し、積極的な安全性の向上にも資することとなるものである。この研究の成果は、創造的・革新的要素を多く含んでおり、他の技術分野においても有効であると考えられる。

3. 群分離・消滅処理技術研究開発の現状

 我が国における群分離・消滅処理技術の研究開発は、日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団において開始された。その後、電力中央研究所等においても実施されてきており、次に示すように、現在までに、着実な研究開発の展開を示している。

3.1 群分離技術の研究開発

 高レベル放射性廃液中の元素を、超ウラン元素(TRU核種)群、ストロンチウム・セシウム群、テクネチウム・白金族元素群及びその他の元素群の4群に分離する研究開発が進められている。更に、熱源や放射線源として有用なストロンチウム90、セシウム137等、天然にはほとんど存在しないテクネチウム99、天然資源として地球上の存在比が小さいルテニウム、ロジウム、パラジウム等の白金族元素の単離精製技術の開発が進められている。  また、高レベル放射性廃液からTRU核種を乾式群分離法で分離する研究開発も開始されている。

 一方、高レベル放射性廃液の群分離と並行して再処理工程における不溶解残渣から白金族元素を回収し、その有効利用を図るための研究開発が進められている。

3.2 消滅処理技術の研究開発

 長半減期のTRU核種を高速中性子を使用した核分裂反応により短半減期又は非放射性の核種に変換する研究開発として、高レベル放射性廃液から群分離により回収されたTRU核種のみで臨界体系を作り得ることに着目し、TRU核種を燃料とする専焼高速炉の概念の検討が進められている。また、高速炉臨界実験装置(FCA)を用いたサンプル反応度価値の測定から、TRU核種の炉物理データの整備が進められている。

 また、TRU核種を、現在開発を進めている高速増殖炉(FBR)で消滅させる概念について、TRU核種を多量に含むウランとプルトニウムの混合酸化物燃料の製造・取扱い、FBRでの照射準備、炉心特性の検討がなされている。

 更に、TRU核種をウラン及びプルトニウムと混合して金属燃料を製造し、金属燃料炉心FBRで消滅させる研究開発も開始されている。

 TRU核種を加速器から得られる高エネルギー陽子で直接に核破砕する反応(スポレーション反応)と、その際2次的に発生する中性子による核反応を利用した消滅処理技術の研究開発についても進められている。

 また、ストロンチウム、セシウム等の核分裂生成物やTRU核種をガンマ線を用いた光核反応により消滅処理する研究開発も進められている。

4. 群分離技術研究開発の長期計画

 群分離技術の研究開発においては、高レベル放射性廃液の群分離技術の研究開発、再処理工程における不溶解残渣からの有用金属回収技術の研究開発及び分離元素の有効利用技術の研究開発をそれぞれ概ね次に示す昭和75年(西暦2000年)を目途とした長期計画に従って推進することとする。(なお、以下の第T期及び第U期の時期はおよその目標である。)

4.1 高レベル放射性廃液の群分離技術の研究開発

 高レベル放射性廃液に含まれる元素を4群、即ち、TRU核種群、ストロンチウム・セシウム群、テクネチウム・白金族元素群及びその他の元素群に分離するための群分離技術に関する研究開発を実施する。なお、高レベル放射性廃液の群分離技術の開発では、現行再処理技術を改良する可能性をも含めた高度化再処理・群分離プロセスに関する研究開発、群分離後の廃棄物の処理処分に関する研究開発を併せて実施する。以上の群分離技術の開発は主に湿式法による高レベル放射性廃液の処理を対象としたものであるが、TRU核種を溶融塩等を用いて分離する乾式群分離技術に関しても研究開発を実施する。
 また、レーザー光による酸化・還元反応を利用する溶液化学技術を群分離に応用する研究開発を実施する。

 第T期(〜昭和71年):群分離プロセスの中心となるべき骨格を構築するために必要な基礎的総合試験研究の段階であり、高レベル模擬廃液及び高レベル実廃液を用いた試験を実施する。高レベル実廃液試験の開始に当たっては事前に、高レベル模擬廃液を用いた湿式プロセス構築のための基礎試験を実施する。更に、群分離プロセスの主工程を決める上で重要な要素技術について評価するため、高レベル模擬廃液を使用した化学工学的予備試験を実施する。
 乾式群分離法の主要技術についての確証を行うとともにシステム試験を実施する。また、TRU核種を用いた乾式群分離ホット基礎試験により基本的技術の確認を行った後、乾式群分離ホット試験を実施する。

 第U期(昭和72〜75年):抽出溶媒のリサイクル等を含めた群分離プロセスの総合工学試験の段階であり、化学工学試験も兼ねた高レベル実廃液による試験を実施する。
 また、乾式群分離法によるTRU核種の群分離実証工学試験を行う。

 なお、昭和76年以降においては、群分離プロセスについてのシステム確立のためにパイロット規模試験及びそれに引き続き実用化試験を実施する。

4.2 不溶解残渣からの有用金属回収技術の研究開発

 使用済燃料溶解液中の不溶解残渣に合まれるルテニウム、ロジウム、パラジウム等を回収するため、有用金属回収技術に関する研究開発を実施する。

 第T期(〜昭和71年):有用金属回収プロセスの実用化のために必要となる基礎的総合試験研究の段階であり、模擬試料及び実不溶解残渣を使用しての試験を実施する。実不溶解残渣を使用した工学基礎試験の開始に当たっては事前に、模擬試料を用いて回収プロセスについての基礎試験を実施する。更に、重要な要素技術について評価するため、実不溶解残渣を使用した工学試験と併せて設計研究及び所要のモックアップ試験を行う基礎工学試験を実施する。

 第U期(昭和72年〜75年):不溶解残渣からの有用元素回収の実証試験の段階であり、パイロット規模の技術実証試験を実施する。

 なお、昭和76年以降においては実証試験の成果を基に実用化を目指す。

4.3 分離元素・核種の有効利用技術の研究開発

 群分離によって得られるTRU核種群、ストロンチウム・セシウム群及びテクネチウム・白金族元素群からアメリシウム 241、キュリウム 244、ストロンチウム90、セシウム 137、テクネチウム99、ルテニウム、ロジウム、パラジウム等を単離精製し有効に利用するための研究開発及び不溶解残渣から回収したルテニウム、ロジウム、パラジウム等を単離精製し有効に利用するための研究開発を実施する。なお、白金族元素の有効利用技術の研究開発では、パラジウム 107等の放射性同位体を分離・除去することを目的としたレーザー同位体分離技術の研究開発を併せて実施する。

 第T期(〜昭和71年):有用核種の単離精製法及び有効利用に供するための加工調製法に関する化学的基礎試験の段階であり、模擬試料及び実試料による試験を実施する。併せて有効利用・加工システムに関する基礎試験に着手する。

 第U期(昭和72年〜75年):単離精製法及び加工調製法に関する総合工学試験の段階であり、実試料による試験を実施する。同時に有効利用・加工システムに関する工学試験を開始する。

 なお、昭和76年以降においては単離精製法、加工調製法及び有効利用・加工システムに関するパイロット規模試験及びそれに引き続き実用化試験を実施する。

5. 消滅処理技術研究開発の長期計画

 消滅処理技術の研究開発においては、FBR及び専焼高速炉の原子炉による消滅、陽子加速器による核破砕消滅並びに電子加速器による光核反応消滅の研究開発を、それぞれ次に示す長期計画に従って推進することとする。
 なお、消滅処理技術は未踏分野であり、多くの可能性も予想されるので、上記以外の核融合反応を利用した消滅方法等の研究についても検討していくことが必要である。(なお、以下の第T期及び第U期の時期はおよその目標である。)

5.1 原子炉による消滅技術の研究開発

 TRU核種を中性子で核分裂させて短寿命のFPに変換し、同時にその変換エネルギーを有効利用するという観点から、TRU核種の消滅に原子炉を用いることは極めて合理的であり、かつ、技術的に早期実現の可能性が高い。TRU核種消滅用の原子炉としては、TRU核種の多くが高速中性子で核分裂を起こすことから、現在開発中のナトリウム冷却型FBRの利用を図る一方、長期的には消滅処理をより効率的に行うことのできる専焼高速炉の開発が必要とされる。また、消滅処理のためにプルトニウムを燃料とする熱中性子炉の利用も考えられる。
 FBRは、現在、実験炉「常陽」が運転中、原型炉「もんじゅ」が建設中であり、更に大型炉の研究開発が進められている段階にある。これらのFBRにTRU核種を装荷し、消滅させることの研究開発を実施する。
 専焼高速炉は、TRU核種を燃料とし、FBRより高速の中性子で効率的にTRU核種を消滅させる原子炉である。この専焼高速炉の設計概念は、TRU核種の核データの精度及び燃料としての成立性に大きく依存し、また、FBRと共通する分野も多いことから、FBRでの研究開発と並行して、長期的な設計研究を実施し、研究開発課題を摘出していく。
 FBR及び専焼高速炉に共通する課題として、TRU核種の炉物理データの整備と燃料物性の究明がある。これらの課題について、国内の施設を活用するとともに、海外の研究機関との技術協力により効率的に研究開発を実施する。

5.1.1 炉物理・物性

 消滅処理の対象となるTRU核種については、核的断面積、核分裂データ等の炉物理データ及び燃料としての物理的・化学的物性データがほとんど整備されていない現状であり、今後次に示す段階的な研究開発を実施する。

 第T期(〜昭和67年頃):核データライブラリにおけるTRU核種データの取得・評価・整備を行うとともに、高速炉臨界実験装置(FCA)での反応率測定のためのサンプル試験等によりその精度を検証する。
 物性データについては、単体及び化合物・合金としての基礎的な物性に関するデータを測定・収集する。

 第U期(昭和68年頃〜75年):FCAでTRUの核種及びサンプル量を増大させた炉物理実験を行い、また、「常陽」でのサンプル照射試験の解析によりTRU核種の燃焼チェイン、消滅効果等の評価を行い、炉物理データを整備する。
物性に関しては、TRU核種を添加したMOX燃料ペレットの物性測定を行い、「常陽」での照射試験に反映させる。また、金属、炭化物及び窒化物燃料にTRUを混合した場合についても同様の物性測定を行う。

 なお、昭和76年以降においては、臨界実験装置を整備し、専焼高速炉を模擬した臨界実験を行い、炉物理データ及び設計計算コードの整備を図るとともにそのデータを専焼高速実験炉の設計に反映させる。
 物性については、「常陽」での種々の照射試験によりデータベースを構築し、FBR応用及び専焼高速実験炉の設計に反映させる。

5.1.2 FBR応用

 FBRの開発においては、長寿命MOX(混合酸化物)燃料(燃焼度150,000MWd/t以上)を実用化しつつあり、遠隔自動化された燃料製造施設も実稼動し、また、炉心高性能化を目的として金属、炭化物、窒化物等の新型燃料の研究開発も進められつつある。従って、次に示す進め方によりFBRでTRU核種を消滅させる研究開発を実施する。

 第T期(〜昭和67年頃)
 FBRにおけるTRUの消滅特性を評価し、TRU核種混合燃料を用いた炉心特性及びTRU核種消滅処理に適した大型FBRの炉心概念を明確にする。
TRU核種消滅用燃料としては、MOX燃料を主体とし、他のセラミックス及び金属燃料も対象とする。
「常陽」でTRU核種消滅用燃料のサンプル照射試験を開始するとともに、TRU核種を混合したMOX燃料の照射試験を行う。更に、群分離によって得られるTRU核種群の燃料調製に関する基礎試験を実施する。これは、専焼高速炉の燃料調製にも反映させるものとする。
また、TRU核種を添加したウラン一プルトニウム系金属燃料を製作し、基礎特性を調べることにより燃料としての基本的成立性を評価する。更に、金属燃料炉心FBRで短半減期核種に変換する消滅特性及び炉心特性を評価する消滅用解析システムの開発を行う。

 第U期(昭和68年〜75年)
 FBRを応用したTRU消滅大型炉心の概念設計を行うとともに、「常陽」での照射試験結果を参照しつつ、「常陽」、「もんじゅ」等への適用評価を行い、TRU核種を混合したMOX燃料の使用を図る。また、MOX燃料以外のTRU核種混合燃料についても基礎特性の調査を行う。例えぱ、金属燃料についても、照射試験及び照射後試験を実施するとともに、金属燃料FBRでのTRU核種の最適消滅法を検討し、併せてその検討結果を専焼高速炉の設計研究に反映させる。
以上の試験研究の成果を踏まえつつ「常陽」での装荷試験を実施する。

 なお、昭和76年以降においては、FBRへのTRU核種を添加したMOX燃料の装荷試験を行い、実用化を図るとともに、そのリサイクルを検証する。また、金属燃料サイクル内におけるTRU核種消滅処理用燃料のリサイクルを検証する。

5.1.3 専焼高速炉

 TRU核種は中性子エネルギーが1MeV 程度以上になると中性子吸収断面積より核分裂断面積が大きくなり、核分裂する確率が高くなる。そのため、専焼高速炉即ちTRU核種のみで構成される高速炉が実現できれば、効率の高いTRU核種の消滅が可能になるとともに、再処理工場と専焼高速炉を一体化させることにより、輸送が不用となり、TRU核種の同一施設内への封じ込めが実現できる。
 専焼高速炉の開発に当たっては、FBR技術を基盤とするが、炉物理データの充実による核特性の把握、TRU燃料体の製造、照射特性データの取得が急務であり、最終的な評価に当たっては実験炉の建設も検討する。

 第T期(〜昭和71年):技術的成立性について基本的検討を実施する段階であり、専焼高速炉の炉心及びプラントの設計研究を進め、技術的課題を特定する。
TRU燃料の炉物理データ、物性データの取得のため、サンプル照射試験を実施する。
また、TRU消滅処理システム導入のコスト・ベネフィット解析法の開発に着手する。

 第U期(昭和72年〜75年):技術的成立性を実証する段階であり、実用専焼高速炉の予備検討のほか実験炉の予備設計を実施する。
 また、FCAにおいて核データ検証実験を行うとともに、FBRでの燃料照射基礎実験を実施する。更に、TRU核種群の燃料調製に関する工学的予備試験を実施する。
以上のほか、TRU消滅処理システム導入のコスト・ベネフィット解析を行う。

 なお、昭和76年以降においてはシステムの成立性を実証する段階であり、実験炉の概念設計に続いて詳細設計を行い、実験炉の建設を目指す。
 また、実験炉等の核特性の検証のため、臨界実験を実施するとともに、燃料照射工学実験及び燃料調製工学実験を実施する。以上の研究開発に基づいて、TRU核種消滅処理システム導入の効果を評価する。

5.2 加速器による消滅技術の研究開発

 原子力の研究開発は、従来、核分裂によるエネルギーを利用する原子炉の開発を軸として進められてきたが、核燃料サイクルの一層の整備充実の観点から加速器をより積極的に活用していく方向が期待されるに到っている。即ち、加速器は、加速粒子のエネルギー及び粒子線束強度を変えることができ、また、臨界の問題がないので、原子炉に比べてより自由かつ安全に核反応を制御できるとともに強い粒子線束を得ることのできる可能性を有している。特に消滅処理に関しては、高強度の粒子線束を発生させることが可能であるので、速い消滅処理速度が期待される。また、加速器を用いた消滅処理の際に生ずる中性子を活用するなどの手段によってより一層の消滅処理の効率化等が期待される。
 なお、次項以下に述べる陽子加速器による消滅の第U期における陽子加速器の建設と電子加速器による消滅の第U期における電子加速器の建設については、第T期の終了時点で総合的なチェック・アンド・レビューを行い、そのいずれか又は両者の建設に関し検討することが必要である。

5.2.1 陽子加速器

 TRU核種は、高エネルギーの陽子で衝撃すると、核破砕が起こり、短半減期の核種又は非放射性核種に変換される。
 この消滅方法は、変換の度合いを大きくすることが原理的に可能であると同時に、臨界炉を使用しないので安全性等からの制約が少ない点に特徴がある。また、核破砕の際に発生する中性子を種として、ターゲットの周囲に配した未臨界炉を駆動するハイブリッドシステムにより、陽子の加速に必要な電力を自給することが期待できる。一方、核破砕の効率について、炉物理実験を強化し確度の高い見通しを得ることと多量の廃棄物を処理するための大出力の陽子加速器の技術開発が課題である。

 第T期(〜昭和67年):原理的な実現性を実証する段階であり、核破砕・粒子輸送シミュレーションコードの開発を行うとともに、消滅処理プラントの基本検討を実施する。
 また、ターゲット系の研究として、以上のシュミレーションコードによる核破砕性能予測の概略的な妥当性を検証するため、鉛及びウラン体系を用いた中規模炉物理実験を実施する。
一方、加速器については、陽子加速器の基本検討のほか、大電流化及び高エネルギー化に関する要素技術の開発に着手する。

 第U期(昭和68年〜75年):工学的な実現性を実証する段階であり、核熱・構造設計コードの整備を進めるとともに、消滅処理プラントの概念設計を実施する。
 また、消滅処理プラントの核破砕特性予測精度の検証を目的として、ウラン体系を用いた大規模炉物理実験を実施する。また、核破砕エネルギー領域(MeV〜GeV)の核データの収集及び取得につとめる。
 加速器については、以上の炉物理実験、炉物理データ取得、更に、次の段階の試験を実施するため、10mA−1.5GeV級の陽子加速器を建設する。
 また、 300mA−1.5GeV級の実用プラント用の陽子加速器の検討を行う。

 なお、昭和76年以降においては経済性を含めたシステムの確立性を実証する段階であり、消滅処理プラントの最適化設計を進め、核破砕効率のほか、エネルギーバランスを含めたプラント性能評価を含めた実用化研究を行う。
 また、ウランから主として構成されるターゲット部からなるパイロット規模の試験を行い、TRU燃料の核破砕性能や副次的に生成する放射性物質の評価のほか、熱的特性燃料・材料の照射特性等の工学試験データを取得する。

 以上の工学試験に基づいて、実用プラント規模の消滅処理プラントの技術的成立性について評価する。
 一方、加速器については、実用プラントのため、300 mA−1.5GeV級の大出力加速器の要素技術の開発を行う。
 以上の研究開発に基づいて、加速器によるTRU消滅処理システム導入の効果を評価する。

5.2.2 電子加速器

 電子加速器による消滅処理方法は、光核反応を用いた技術であり、電子加速器で作られる高エネルギーガンマ線を処理系に加えるのみであるので、副次的な放射能の発生が少ない方法である。この方法について、TRU核種、セシウム、ストロンチウム等、幅広い核種を対象として研究を行うものとする。
 ガンマ線発生に用いられる電子加速器は、産業レベルの装置としても技術開発が進んでおり、所要の大電流加速器を開発する基盤は整備されつつある。
 また、光核反応の際に発生する中性子の有効利用を図り、ターゲットの周囲に配した未臨界炉を駆動することにより電子加速に必要な電力を自給することが期待できる。
大電流の電子加速器を開発するために、ビーム安定化を中心にして理論及び実験による研究を行うことによって、電子加速器による消滅処理方法の実現化を図る。

 第T期(〜昭和67年):総合基礎試験研究段階であり、消滅処理システム内での電子線、ガンマ線、中性子線等の輸送及び熱等のコード開発を行うとともに、消滅処理プラントの基本検討を実施する。
 ターゲット系研究として、炉物理データ取得のため既存の加速器を用いた基礎試験を実施する。
 また、大電流加速器の実現可能性の検討に最も重要なビーム安定化等に関する要素技術の開発を実施する。
 なお、消滅処理プラントのシステムは、安全な発電炉としての特徴を備えた電子加速器−未臨界炉のハイブリッドタイプであるが、次の第U期に進むに当たり、エネルギーバランス等についてもチェック・アンド・レビューを行う必要がある。

 第U期(昭和68年〜75年):工学的な実現性を実証するため、100mA −100MeV級を目標とした研究用加速器を用いて核熱・構造設計コードの整備を進めるための工学試験を行うとともに、消滅処理プラントの概念設計及び詳細設計を実施する。

 なお、昭和76年以降については、1A−100MeV 級の電子加速器を用いてパイロット規模の消滅処理試験を実施する。

6. 国際協力

 群分離・消滅処理技術に関する研究開発は、欧州共同体、西独、仏、米国等で進められてきているところである。

 群分離・消滅処理技術の研究開発は、原子力開発を進めている国の共通の重要課題であり、わが国が、今後更に積極的に群分離・消滅処理技術の研究開発を進めるに当たっては、これらの海外諸国と緊密な協力を進めるとともに、OECD/NEA等の国際機関とも連携を図っていくことが必要である。

7. おわりに

 本報告書において高レベル放射性廃棄物の群分離技術及び長寿命核種の消滅処理技術に関する研究開発の長期的な進め方を示したが、群分離技術開発とも関連して、今後、高レベル放射性廃棄物以外のTRU核種を含む廃棄物からのTRU核種の分離技術に関しても研究開発を進めていくことが重要であると考えられる。

 群分離・消滅処理の実用化までには安全性、経済性等も含めた総合的な検討が必要であり、本報告書の長期計画に基づく研究開発についても、概ね3年乃至5年毎に適宜チェック・アンド・レビューを行った上で見直していくことが適当であると考えられる。

 また、今後の長期計画に基づき具体的な研究開発を推進していくに当たっては、行政当局が関係研究開発機関と密接な連携・協力を進め、具体的な実施方策、国際協力等に関し全体的な研究開発の総合調整を図っていくことが必要であると考えられる。



(参考5)構成員及び開催日

1. 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会
(1)構成員
(部会長)生田 豊朗  (財)日本エネルギー経済研究所理事長
 青地 哲男 日本原子力研究所理事(昭和63年7月13日まで)
 朝岡 卓見 日本原子力研究所理事(昭和63年7月14日から)
 安部 浩平電気事業連合会専務理事
 池亀 亮東京電力鰹務取締役
 市川 龍資放射性医学総合研究所科学研究官(昭和63年7月13日まで)
 松岡 理放射性医学総合研究所科学研究官(昭和63年7月14日から)
 植草 益東京大学教授
 植松 邦彦動力炉・核燃料開発事業団理事(昭和63年10月6日まで)
 橋本 好一動力炉・核燃料開発事業団理事(昭和63年10月7日から)
 亀川 秀人中部電力鰹務取締役
 川上 幸一神奈川大学教授
 木村 敏雄東京大学名誉教授
 佐々木孝二前日本経済新聞社編集委員
 鈴木 篤之東京大学教授
 住谷 寛日本原燃サービス鰹務取締役
 関  義辰三菱原子燃料褐レ問
 中井 冨男日本原燃産業鰹務取締役
 永倉 正(財)電力中央研究所常務理事
 浜田 達二(社)日本アイソトープ協会常務理事
 福田 俊雄(財)原子力環境整備センター理事長
 別府 正夫新エネルギー総合開発機構顧問
 森  一久(社)日本原子力産業会議専務理事
 山口梅太郎東京大学教授
 山内 喜明弁護士

(2)開催日
   第1回会合  昭和63年2月8日
   第2回会合      10月11日

2. 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会技術分科会
(1)構成員
(主査) 木村 敏雄  東京大学名誉教授
 天野 恕名古屋大学教授(昭和63年7月25日から)
 石井 英臣東京電力褐エ子燃料部副部長
 井出 喜夫(財)原子力環境整備センター理事
 岩倉 哲男放射線医学総合研究所環境衛生研究部長
 倉持 哲士日本原燃サービス滑驩謨舶白キ
 佐藤 壮郎地質調査所企画室長
 鈴木 篤之東京大学教授
 徳山 明 兵庫教育大学教授
 平野 見明日本原子力研究所環境安全研究部長
 山口梅太郎東京大学教授
 渡辺 昌介動力炉・核燃料開発事業団環境資源部長(昭和63年8月31日まで)
 山本 正男動力炉・核燃料開発事業団環境資源部長(昭和63年9月21日から)

(2)開催日
   第1回会合 昭和63年2月8日
   第2回会合     4月11日
   第3回会合     5月19日
   第4回会合     7月26日
   第5回会合     9月22日

3.原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会技術分科会
  群分離・消滅処理技術検討小委員会
 (1) 構成員
(主査) 天野 恕   名古屋大学教授
 伊加利勝晤 (財)原子力環境整備センターシステム開発調査室長
 井上 泰東北大学教授
 加藤 敏郎名古屋大学教授
 久保田益充日本原子力研究所環境安全研究部群分離研究室長
 神山 弘章(財)電力中央研究所研究顧問
 笹尾 信之動力炉・核燃料開発事業団技術開発部フロンティア研究グループ主幹
 平尾 泰男放射線医学総合研究所医用重粒子研究部長
 平川 直弘東北大学教授
 吉田 弘幸日本原子力研究所原子炉工学部高速炉物理研究室長(昭和63年3月31日まで)
 金子 義彦日本原子力研究所原子炉工学部長(昭和63年5月12日から)
 吉野富士男動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センター実験炉部照射課長

(2)開催日
   第1回会合 昭和63年5月16日
   第2回会合     6月21日
   第3回会合     7月20日
   第4回会合     9月12日
   第5回会合     9月20日