資料(専)20-5

再処理およびMOX燃料加工施設から発生する
低レベル放射性廃棄物の処理処分技術開発

[核燃料サイクル開発機構]

 

 

 

 

平成10年12月2日

核燃料サイクル開発機構


1.核燃料サイクル開発機構の再処理およびMOX燃料加工施設から発生する
  低レベル放射性廃棄物と管理の現状

 核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」と呼ぶ)の東海再処理工場では、1981年に本格操業を開始して以来これまでに約940トンの使用済燃料を処理し、それに伴って発生した放射性廃棄物が保管されている。また、MOX燃料製造施設では、1968年以来、サイクル機構で開発を進めてきた原子炉の「常陽」、「ふげん」、「もんじゅ」等の燃料を約150トン製造し、それに伴って発生した放射性廃棄物が保管されている(表-1)。
 東海再処理工場で発生する廃棄物(以下、「再処理廃棄物」と呼ぶ)のうち、工場全体の工程から発生する低レベル放射性廃液を濃縮処理したプロセス濃縮廃液についてはアスファルト固化処理を、廃溶媒についてはプラスチック固化処理を行ってきた。また、雑固体廃棄物のうち、α線を放出する放射性核種を殆ど含まないβγ系およびU系可燃性廃棄物については焼却処理を行っている。発熱性のハル・エンドピースは、専用の缶に収納して水中で保管している。
 MOX燃料加工施設で発生する廃棄物(以下、「MOX廃棄物」と呼ぶ)については、プルトニウム廃棄物処理技術開発施設において、可燃性廃棄物、難燃性廃棄物の焼却、焼却灰の溶融、金属廃棄物の溶融処理を行っているが、未処理のまま保管しているものが多い。未処理および処理済みの廃棄物は、大部分は200リットルドラム缶に収納し、それぞれ貯蔵施設に保管しているが、一部、不定形や大型のものはコンテナーあるいは専用の容器に収納している。(図-1)。
 これらの放射性廃棄物は、未処理のまま貯槽中で保管されている廃液およびスラッジを除くと、現在までに200リットルドラム缶換算で約8万7千本が発生している。

2.処理技術開発(表-2)
 放射性廃棄物の貯蔵および処分における安全性と経済性の向上を目指して、TRU廃棄物の発生量の低減、発生した廃棄物の減容、安定化の技術開発を進めている。また、放射性核種濃度により廃棄物を分別するための放射性核種濃度の非破壊測定技術開発を進めている。
(1)発生量低減化・高減容化技術および安定化技術
 再処理廃棄物の中でも特に大きな割合を占めるプロセス濃縮廃液について、共沈・限外ろ過等による高減容技術を開発し、処理技術開発施設の建設を計画している。放射性核種濃度の高いハル・エンドピースについて、圧縮減容技術等の開発を進め、処理施設の設計に反映させている。また、MOX廃棄物に関しては、プルトニウム廃棄物処理技術開発施設において実廃棄物を対象として溶融技術の実証試験を進めている。

(2)測定・品質保証技術
 MOX廃棄物中の放射性核種濃度の測定に関しては、検出限界の向上を目指した非破壊測定技術開発を進めている。

3.処分技術開発
(1)廃棄物の発生量、放射性核種濃度、物理・化学的性状等の把握
 廃棄物の発生量と処理(再処理およびMOX燃料加工)量との関係を考慮して単位処理量当たりの発生量を求めた。放射性核種濃度については、MOX廃棄物に関しては、プルトニウム量を全廃棄物について測定し、その結果に基づいて廃棄体の放射性核種濃度を算定した。再処理廃棄物に関しては、プロセス濃縮廃液、廃溶媒は放射性核種濃度を化学分析により直接求め、また、雑固体などについては、各廃棄物の表面線量率と発生施設での取り扱い放射性核種の種類を考慮して放射性核種濃度を算出した。また、処理済のアスファルト固化体、プラスチック固化体の特性評価も進めている。

(2)廃棄物の特性を考慮した処分方法の検討
 再処理およびMOX燃料加工施設から発生する低レベル放射性廃棄物のうち全アルファ核種の放射性核種濃度が区分目安値(約1ギガベクレル/トン)より高い廃棄物(以下、「TRU廃棄物」と呼ぶ)の処分に関しては、原子力長期計画では「浅地中以外の地下埋設処分」と示されているが、TRU核種等の半減期の長い放射性核種を含むことを考慮して、地層処分することを前提に、先行する高レベル放射性廃棄物の地層処分の考え方を基に、TRU廃棄物特有の課題を明らかにして研究開発を進めた(表-3)。
 研究を進めるに当たっては、地質環境の特性とその長期安定性等、高レベル放射性廃棄物の地層処分と共通する課題については、高レベル廃棄物地層処分研究の成果を利用することとし、TRU廃棄物処分研究としては上記の廃棄物特有の課題に取り組んできた。

4.まとめ
 研究開発の成果については、我が国としての処分概念構築のため、共同作業チームの作業に反映していく。

以上


図-1 再処理およびMOX燃料加工施設における放射性廃棄物の管理フロー

 

表-2 サイクル機構におけるTRU廃棄物処理処分技術開発の現状 ― 処理技術

項目対象廃棄物技術内容開発の現状
1.発生量低減、減容、
  安定化
(1)再処理濃縮廃液の
  核種除去技術開発

 
プロセス濃縮
廃液

 
共沈・限外ろ過

 
コールド試験、実廃液を用いたホット試験で除染効率を確認。低放射性廃棄物処理技術開発施設の建設を計画しており、液体廃棄物処理系では核種除去後蒸発固化体とする。減容比は約1/2である。
(2)再処理濃縮廃液から
  回収した塩の再利用
  技術開発
 
核種除去後の
プロセス濃縮
廃液
 
硝酸ナトリウム溶液
を硝酸と水酸化ナト
リウムに分解、再利
硝酸ナトリウムを硫酸ナトリウムに転換した後、電気分解する芒硝電解法に関し、電流効率、回収塩の純度等について実験データを取得し、再利用の目途が得られた。また、芒硝電解法に比べて設備の簡素化が期待できる直接電気分解法についても基礎試験を実施し、再利用の目途が得られている。
(3)ハル等の減容技術開
  発
ハル・エンド
ピース
圧縮減容

ハル・エンドピースを高圧縮(約4ton/cm3)処理することで、真密度の約80%となることを確認。
(4)焼却灰溶融技術焼却灰マイクロ波溶融MOX系実廃棄物を焼却した焼却灰(未燃物約5w/o)を密度約2~3g/cm3程度の良好な固化体とすることを実証した。
(5)金属溶融技術金属廃棄物エレクトロスラグ法MOX系の処理対象物であるSUS、SS材において、低融点金属(Zn、Pb、Cd等)を選別することにより、安定したインゴットが得られることを確認した。
(6)除染技術開発金属廃棄物電解研磨除染希硫酸電解液による電解除染試験・電解液再生を実施中。研磨効率・オフガス発生量等を計算可能な電解研磨シミュレーションコードを開発中。
2.廃棄物中の放射性核
  種含有量分析・測定
  法に関する技術開発
(1)廃棄物中のプルトニ
  ウム量の非破壊測定
  技術の開発

 
 
MOX廃棄物

 
 
パッシブγ法
アクティブ中性子法
パッシブ中性子法

 
 
(a)パッシブγ法の可燃物、難燃物及びフィルタを対象にした場合の検出限界は区分目安値とほぼ同程度。
(b)アクティブ中性子法は、難燃物及び金属鋳塊の検出限界は区分目安値よりやや高い値(但しオーダーは同じ)を示し、可燃物(焼却灰含む)、不燃物、フィルタ、人工鉱物は区分目安値より低い(1/2~1/10)
(c)パッシブ中性子法は、難燃物、可燃物、不燃物、フィルタ、人工鉱物、金属鋳塊の検出限界は、区分目安値とほぼ同程度かやや低い値(人工鉱物で約1/4、金属鋳塊で約1/2.5)。

 

表-3 α核種濃度が区分目安値より高い廃棄物処分の特徴、処分概念、安全確保の3要件と特有の主な考慮事項

廃棄物の特徴処分概念高レベル廃棄物処分安全
確保の3要件
(H3レポートより)
3要件を考慮してTRU廃棄物処分に
特有の主な考慮事項
(1)放射能濃度が比較的
  低いものから高いも
  のまで幅広く分布
(2)大部分は非発熱性
(3)種々の形態の固化体
(4)金属廃棄物はガスを
  発生
(5)有機物を含む廃棄体
  の存在
(6)高レベル廃棄物に含
  まれていないヨウ素-
  129等、移行し易い
  核種を含む
処分施設構成例
(内側より)
 
①固化体、セメント充
 填材
②コンクリート構造物
③緩衝材
④岩体(大空洞)
(1)地下水接触の抑制
 
  固化体と地下水との接
  触の可能性を十分低く
  制限する。
(1)人工バリアシステムの長期的な透水性の変化
(2)溶出・移動の抑制
 
  固化体が地下水と接触
  したとしても固化体中
  の放射性核種が溶出し
  にくいようにし、かつ
  埋設場所から移動しに
  くいようにする。
[溶出の抑制関連]
 
(1)有機物による核種の溶解度への影響
(2)セメント、緩衝材の長期的な透水性、核種吸着性能の変化
(3)ガスの透過性、透水性への影響
(4)ヨウ素-129等移行し易い核種の挙動
(3)環境安全の確認
 
  放射性核種が埋設場所
  から移動したとしても
  それが生活圏に到り有
  意な環境影響を及ぼさ
  ないことを確認する。

 
(1)ガスの透過性、透水性への影響
(2)ヨウ素-129等移行し易い核種の移行挙動