資料(専)20-3

再処理およびMOX燃料加工施設から発生する低レベル
放射性廃棄物の処分概念の検討状況について

平成10年12月2日
共同作業チーム

 

1.はじめに
 使用済燃料の再処理やMOX燃料(混合酸化物燃料)加工施設から発生する低レベル放射性廃棄物のうち、全アルファ核種濃度が区分目安値(約1ギガベクレル/トン)より高い廃棄物に関しては、1990年代末を目途に具体的な処分概念の見通しを得ることを目的として研究開発を進めることが原子力委員会の方針として示されている。
 電力9社、日本原電および日本原燃(以下、「電気事業者等」と呼ぶ)および核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」と呼ぶ)は、この方針に従って、再処理およびMOX燃料加工施設から発生する低レベル放射性廃棄物の処分に特有の課題について研究開発を進めている。電気事業者等とサイクル機構は、平成9年8月から共同作業チームを編成し、これまでの研究成果を反映しつつ具体的な処分概念の取りまとめ作業を鋭意進めているところである。

2.処分概念取りまとめ作業の概要
 電気事業者等、サイクル機構等の研究開発成果に基づいて以下の作業を行う。
(1) 廃棄物の発生と特性の検討
 再処理およびMOX燃料加工施設から発生する低レベル放射性廃棄物の種類、量、性状、処理方法などを整理する。これらの中から浅地中処分の可能 性のある廃棄物を除いた廃棄物を以降の処分施設の検討、安全性の検討の対 象とする廃棄物とする。
(2) 処分施設の検討
 我が国で想定される地質環境条件に基づいて、検討の対象とする廃棄物をそれぞれの特性に応じて分類し、それぞれに対応した人工バリア、空洞など具体的な処分施設およびそれらの建設、操業、閉鎖の方法について検討する。
(3) 安全性の検討
 廃棄物から除々に地下水に溶け出した放射性核種が人間の生活環境に到達 することを想定した場合の被ばく線量の評価を行う。被ばく線量の評価結果 に基づいて、安全性を確認する。また、それに影響する種々の事象について 評価する。

3.検討状況の概要
3.1 廃棄物の発生と特性
(1) 発生源
(2) 廃棄物の種類
 再処理施設の操業では、使用済燃料から燃料を溶かした残りの被覆管・集 合体部材(ハル・エンドピース)や再処理工程中の酸回収、溶媒再生、除洗、分析等により発生する廃液や、ヨウ素フィルター(廃銀吸着材)等のプロセス廃棄物と、設備の運転・保守作業等で出てくる汚染した作業着、手袋、紙、設備、資材等の雑固体廃棄物(可燃性、難燃性、不燃性)が発生する。
  MOX燃料加工施設の操業では、雑固体廃棄物が発生する。
  また、これら施設の解体でも様々な雑固体廃棄物等が発生する。
(3) 廃棄物の特性
 廃棄物の性状は、金属、液体、紙等種類によって多種多様であり、含まれる放射性核種の濃度は、ハル・エンドピースのように比較的高いものから、雑固体廃棄物のように比較的低いものまで幅広く分布している。
(4) 発生量の予測
 各施設で発生した多種多様な廃棄物を、焼却・圧縮等の処理を施した後、処分場に埋設する形態(セメント固化体等)に適切に処理したもの(以後、「廃棄体」と呼ぶ)について、2035年までに上記施設の操業により発生する量を算出した。また、サイクル機構の再処理施設、MOX燃料加工施設の解体により発生する廃棄体量についても算出した。
 その結果、当該施設全体では約56,000mの廃棄体が発生し、そのうち処分概念の検討の対象とする廃棄物の廃棄体量は、約18,000mと見込まれ、これらの廃棄体について以下に具体的な処分概念を検討した。
 また、全アルファ核種濃度が区分目安値より低くかつベータ・ガンマ核種濃度も比較的低いため浅地中処分の可能性がある廃棄体の量は、約38,000mと算出した。

3.2 処分施設の検討
3.2.1 検討の対象とする廃棄体の特徴
 検討の対象とする廃棄体を高レベル放射性廃棄物ガラス固化体と比較すると次の特徴があげられる。
 (1)廃棄体の形態は、セメント固化体、金属圧縮体等、多種多様である。
 (2)放射性核種濃度は低く幅がある。
 (3)高レベル放射性廃棄物に含まれないI-129やC-14が含まれている。
 (4)発熱は小さい。
また、検討の対象とする廃棄物を原子力発電所から発生する低レベル廃棄物と比較すると、廃棄体の形態は同じであるが、長寿命のアルファ核種が比較的多く含まれる。

3.2.2 処分の基本的考え方

3.2.3 処分施設の構成
 検討の対象とする廃棄物の処分施設は、上記のような特徴を踏まえたうえで、処分の基本的考え方に基づいて、以下のような構成とした。
 それぞれ大きな処分坑道の中に廃棄体を安定に定置し、廃棄体の間隙には、セメントを充填する。さらに、その周りには、必要に応じてベントナイト系 材料を設置する。

3.3 安全性の検討
 処分施設の安全性の見通しを得るために、処分された廃棄体中の放射性核種が地下水を介して人間の生活圏に移行して、被ばくする場合について被ばく線量を評価し、安全性を検討している。
 セメントは地下水と接すると、地下水のpHが高くなることが予想される。このため、処分施設の安全性に影響を与える事象の一つとして、このような環境下での核種の挙動についての検討を行っている。

4.まとめ
 検討の対象とする廃棄物の処分概念の技術的検討については、処分施設の検討をほぼ終了し、現在、安全性の検討を実施中である。
 以上のような技術的検討の成果を、随時、原子力バックエンド対策専門部会に検討用素材として提供していく。
以上