資料(専)20-2

TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に関する審議について

平成10年12月2日

1.現在までの経緯 
 核燃料サイクル施設のうち、再処理施設やMOX燃料加工施設からは、超ウラン(TRU)核種を含む放射性廃棄物が発生する。この廃棄物中の放射性物質は、原子炉施設の運転の結果生じる使用済燃料に含まれていたものであり、主な廃棄物としては、ハル・エンドピース、低レベル放射性廃液、雑固体廃棄物などがあり、半減期の比較的長いTRU核種を含んでいること、放射能濃度が比較的高いものから低いものまで広範囲に分布していることなどの特徴がある。
 TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分方策については、原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会報告書(平成3年)において、TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分の基本的な考え方、今後の処分方策の具体化の進め方及び処理処分研究開発の課題などが示されている。また、原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(原子力長計、平成6年)においては、放射性廃棄物対策専門部会報告書の内容も踏まえ、処理処分方策について、
 ①
処分については、約1ギガベクレル/トンの値を廃棄物に含まれる全アルファ核種の一応の区分目安値として設定
 ②
アルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも低いものについては浅地中処分の具体化を図る
 ③
アルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも高く、浅地中処分以外の地下埋設処分が適切と考えられるものについては、高レベル放射性廃棄物処分方策との整合性を図りつつ、1990年代末を目途に具体的な処分概念が得られるよう技術的検討を進める
などの基本方針が示されている。

2.現 状 
 (1)廃棄物の発生状況
 現在、TRU核種を含む放射性廃棄物は、主に核燃料サイクル開発機構(JNC)の再処理工場及びMOX燃料加工施設において発生している。また、日本原子力研究所やその他の研究機関等の核燃料物質あるいは放射性同位元素を使用する研究施設においても、TRU核種を含む放射性廃棄物に該当する廃棄物が発生している。これらの廃棄物は、現在各施設において保管されている。(平成10年3月末までの累積発生量は、サイクル機構で約8万7千本、原研で約9千本(いずれも200リットルドラム缶換算))
 今後、青森県六ヶ所村に建設中の日本原燃(株)の再処理工場が2003年に操業開始予定であり、さらには将来の民間事業者のMOX燃料加工施設、あるいはこれら施設の解体などにおいても、TRU核種を含む放射性廃棄物の発生が見込まれる。
 また、海外再処理委託に伴い発生する低レベル放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物と同様、将来我が国に返還されることとなっているが、これらもTRU核種を含む放射性廃棄物に分類される。
 (2)研究開発及び処分概念についての検討状況
 TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に係る研究開発については、放射性廃棄物対策専門部会報告書及び原子力長計等を踏まえ、サイクル機構、原研、電気事業者等がこれを鋭意進めている。昨年8月からは、サイクル機構及び電気事業者等が「共同作業チーム」を結成、これまでの研究成果を集約し、処分概念を取りまとめる作業を進めており、平成11年度末を目途に報告書が取りまとめられる予定である。

3.今後の進め方 
 TRU核種を含む放射性廃棄物処理処分については、前述の通り原子力長計において、1990年代末を目途に具体的な処分概念の見通しが得られるよう技術的検討を進めることとされているが、「共同作業チーム」における検討が進捗している状況を踏まえ、本専門部会において、「共同作業チーム」による検討結果を適宜把握しつつ、TRU核種を含む放射性廃棄物の処理処分に関する事項の審議に着手する。当面考えられる主な検討項目は以下の通りである。
(主な検討項目)
 (1)TRU核種を含む放射性廃棄物の特徴及び発生の現状と見通し
 (2)放射性核種濃度や物理・化学的性状等の諸特性を踏まえた処分方法
 (3)処理処分技術の高度化等のための研究開発課題
 (4)諸制度の整備や実施体制等

(参考1)

再処理工場から発生する主なTRU核種を含む放射性廃棄物

 

 

 ○エンドピース
 使用済燃料集合体の末端部分。集合体のせん断時に、切断して除去される。
 ○ハル
 数cmにせん断された燃料棒を、溶解槽で溶解させた際に溶け残る燃料被覆管。燃料棒のうち、燃料分のみが硝酸に溶解し、燃料被覆管は溶け残る。
 ○低レベル放射性廃液
 再処理工場の各工程で発生する高レベル放射性廃液(HLW)以外の廃液。酸回収、溶媒再生、除染、分析等により発生し、蒸発濃縮等の処理後、固化する。
 ○雑固体廃棄物
 再処理工場の各工程で発生する雑多な固体状の廃棄物。可燃性(紙、布等容易に焼却できるもの)、難燃性(ポリエチレン、ゴム手袋等完全燃焼が難しいもの)、不燃性(金属配管、ガラス等焼却できないもの)に分類される。
 ○廃銀吸着材
 使用済の銀吸着材。銀吸着材は、使用済燃料をせん断・溶解する際に発生するオフガスの吸着処理工程で、オフガス中の放射性ヨウ素を吸着除去するためのフィルターとして使われる。
 ○廃溶媒
 ウラン及びプルトニウムを分離するために用いた有機溶媒が劣化したもの。

 

 

 

(参考3)

「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(抜粋)
原子力委員会(平成6年6月24日)

 

7.バックエンド対策

(1) 放射性廃棄物の処理処分
 ③サイクル廃棄物の処理処分
 再処理施設や燃料加工施設などの核燃料サイクル関連施設から発生する放射性廃棄物(以下「サイクル廃棄物」といいます。)は、再処理施設において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃棄物、再処理施設やMOX燃料加工施設から発生する超ウラン(TRU)核種を含む放射性廃棄物、ウラン燃料加工施設やウラン濃縮施設から発生するウラン廃棄物に大別されます。

  ( 略 )

  (ロ)TRU核種を含む廃棄物の処理処分
 TRU核種を含む放射性廃棄物については、廃棄物を直接的に発生する再処理事業者やMOX燃料加工事業者と、その発生に密接に関連する原子力発電を行う電気事業者が、当該廃棄物の帰属や処分に関する責任を当事者間において明確にします。その結果を踏まえ、処分の責任を有する者は、実施スケジュール、実施体制、資金の確保等について検討を進めることとします。また、その処分については、約1ギガベクレル/トンの値を廃棄物に含まれる全アルファ核種の一応の区分目安値(以下「区分目安値」といいます。)として設定し、これより全アルファ核種の放射能濃度が低いものと高いものに区分します。アルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも低く、かつベータ・ガンマ核種の放射能濃度も比較的低いものについては、浅地中処分が可能と考えられるため、その具体化を図ることとします。アルファ核種の放射能濃度が区分目安値よりも高く、浅地中処分以外の地下埋設処分が適切と考えられるものについては、高レベル放射性廃棄物処分方策との整合性を図りつつ、民間再処理事業等が本格化する時期を考慮し、1990年代末を目途に具体的な処分概念の見通しが得られるよう技術的検討を進めることとします。処分の責任を有する者は、その検討結果等を総合的に勘案し、処分方策の具体化を検討することとします。
 動力炉・核燃料開発事業団は、日本原子力研究所の協力を得て、処分技術の研究開発を進めることとします。また、電気事業者等はTRU核種を含む放射性廃棄物の発生に関する自らの責任を十分踏まえた役割を果たすことが必要です。