資料(専)17-2

 

高レベル放射性廃棄物処分の推進について

平成10年6月2日
原子力委員会決定

 1.
 当委員会は、高レベル放射性廃棄物処分懇談会(以下「懇談会」という。)から、高レベル放射性廃棄物処分に関する調査審議の結果について報告を受けた。
 懇談会は、わが国各界各層の有識者で構成され、内外の様々な方々の参加を得て、社会的・経済的側面を含めた幅広い審議を2年余りにわたり行った。報告書の取りまとめに当たっては、報告書案に対して半年間の意見募集を行うとともに、東京を含め全国6ヶ所において地域の方々との意見交換の機会を設けた。当委員会としては、こうした審議を踏まえ、懇談会報告書が今後の高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的な考え方について国民各界各層の意見が適切に集約・反映されたものであると考える。また、意見交換などを通じて出された原子力全般に係わる意見については、当委員会として今後の政策審議に当たって貴重な意見として受け止めるものである。

 2.
 懇談会報告書では、まず、今日までのわが国における高レベル放射性廃棄物処分への取組みが諸外国に比べて十分とは言えないとの認識のもと、わが国において既に30年余りにわたり原子力発電による便益を享受してきた現世代の我々にとって、後世代に廃棄物処分の負担を残さないことが責務であるとの考えを示している。このために、国民各界各層の間でこの問題についての議論が行われ、一人一人が自らの身に迫った問題であるという意識を持つとともに、電力消費地を中心に国民全体が処分場の立地地域に対する理解を深め、地域の方々と連帯し共生していくことが必要であるとしている。こうした基本的認識に立って、高レベル放射性廃棄物処分を進めていくうえで、廃棄物処分の安全性の確保と責任体制の明確化が図られるとともに、透明性ある制度の確立、国民の理解と信頼を得るための環境の整備が必要であるとしている。特に、事業資金の確保、実施主体の設立、安全確保の基本的考え方の策定、深地層の研究施設の実現について、施策の具体化の方針を示し早急に進めるべきであるとしている。

 3.
 以上のように、高レベル放射性廃棄物処分の円滑な実施への具体的取組に向けた国民の理解と納得が得られるよう、社会的・経済的側面を含めた幅広い検討が行われた懇談会報告書の結論は当委員会として妥当と判断する。今後は、懇談会報告書を尊重して、処分についての国民の理解と信頼を得るために一層の努力を払うとともに、2000年目途の事業化に向けて、実施主体、資金確保等に係る諸制度の整備を着実に進める。また、研究開発に引き続き着実に取組み、2000年前までに技術報告書を取りまとめるとともに、安全確保に関する基本的考え方が速やかに策定されるなど安全規制に関する制度が着実に整備されることを期待する。他方、岐阜県及び新たに提案された北海道における深地層の研究施設の計画を地元の理解を得て推進する。
 当委員会としては、懇談会報告書に示された各般の施策を総合的に進めることが重要と考えており、関係機関より適宜状況を聴取し状況の的確な把握と評価検討を行い、処分事業の早期具体化に取組むこととする。