資料(専)12-3



低レベル放射性廃棄物(現行の政令濃度上限値を超えるもの)処理処分の検討状況について







平成9年10月2日









1.審議対象廃棄物について

1.1 廃棄物の種類

 実用発電用原子炉や試験研究炉等で発生する低レベル放射性廃棄物の中には、燃料の近傍に位置していたため、中性子照射による放射化の程度が大きくなるなど、βγ核種濃度が高くなったものがある。その主なものを以下に示す。

(実用発電用原子炉)
使用済制御棒、使用済チャンネルボックス、使用済バーナブルポイズン、一次系の使用済樹脂の一部、炉内構造物の一部、黒鉛の一部、コンクリートの一部 等

(試験研究炉等)
炉内構造物の一部、使用済制御棒 等

これらは、炉内で中性子を照射され放射化の程度が大きい構造材、あるいはその構造材の一部が原子炉冷却水に溶出したもの等が表面に付着した樹脂等であり、原子炉の運転、解体により発生する。

1.2 発生量と放射能濃度の推定

1.2.1 推定のための前提条件
発生量及び放射能濃度の推定にあたっての主な前提条件は、以下のとおり。

  @
2030年までの実用発電用原子炉の設備容量を平成6年の原子力開発長期計画を基に設定した。
  A
実用発電用原子炉の運転年数は軽水炉40年、ガス炉30年と仮定した。
  B
試験研究炉等は運転時間を一律に設定せず現時点で解体した場合の制御棒及び炉内 構造物の量をそのまま当該廃棄物の発生量とした。

1.2.2 発生量予測
実用発電用原子炉及び試験研究炉における審議対象廃棄物の発生累積量を、前項のような一定の前提条件で試算した結果、2030年時点で約2万m3と推定され、そのほとんどは実用発電用原子炉で発生するものである。

1.2.3 主な放射性核種と放射能濃度
当該廃棄物の大半は、ステンレス鋼等の金属が中性子照射されて生じた放射化物であって、主な放射性核種は60Co(半減期:約5年)、63Ni(半減期:約100年)であり、その他に汚染により生じる90Sr(半減期:約29年)、137Cs(半減期:約30年)等がある。これらは、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで埋設処分を実施中あるいは計画中の低レベル放射性廃棄物と核種の種類が特に異なるものではない。
(添付―1)

 2030年までに発生すると予測される審議対象廃棄物の推定放射能濃度は、発生時点において、実用発電用原子炉や原研JPDRでの運転状況等を考慮した放射化計算等により推定した結果、政令で定められているβγ核種のうち金属の放射化によって生じる核種の放射能濃度は、平均で原子炉等規制法施行令第13条の9に規定する放射能濃度(以下「現行政令濃度」という)のおおよそ1桁、最大でおおよそ2桁上回るものである。なお、α核種濃度は現行政令濃度を下回る。

2. 現在の低レベル放射性廃棄物の処分における安全確保策について

2.1 現在の低レベル放射性廃棄物の処分における安全確保の基本的考え方

 低レベル放射性廃棄物処分の基本的な考え方は、昭和59年の原子力委員会報告書「放射性廃棄物処理処分について」において、「陸地処分においては、放射性廃棄物に含まれる放射能が時間の経過に伴って減衰し、人間環境への影響が十分に軽減されるまでの間、固化体、ピット等の人工バリアと、土壌等の天然バリアを組合せ、放射能レベルに応じた管理を行うことによって、放射性廃棄物を安全に人間環境から隔離することを基本的考え方とする。」とされており、廃棄物の放射能の減衰に応じた管理を行うこととしている。
 この放射能の減衰に応じた管理については、具体的に次のように示されている。

  @
管理の内容(段階管理)
 
 昭和60年の原子力安全委員会報告書「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について」において、段階的管理が示されている。

第1段階;人工バリアによって放射性核種の人工バリア外への漏出を防止し、所要の
     監視によって漏出のないことを確認している段階。
第2段階;人工バリア及び天然バリアによって放射性核種の生活環境への影響を防止
     し、所要の監視によって安全であることを確認している段階。
第3段階;主に天然バリアによって放射性核種の生活環境への影響を防止するが、廃
     棄体*)等の放射能濃度が相当に低減しているため、主として廃棄体を掘り
     出すなど人間の特定行為を禁止あるいは制約する措置で対処する段階。

*)注 ドラム缶にセメント固化体等十分安定化処理されるか又は容器に封入された低レベル放射性廃棄物固体廃棄物
(原子力安全委員会 「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方」 昭和60年10月11日)

     
(第3段階終了までが、管理期間)

  A
管理期間
 
 昭和61年の原子力安全委員会報告書「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について」によれば、「放射能が時間の経過に伴って減衰し、放射能レベルが被ばく管理の観点からは拘束することを考慮する必要がなくなるまでの間、……放射能レベルに応じた段階的管理を行うことによって、安全が確保される。」と、安全確保策と管理期間の考え方を示し、政令で定める濃度上限値の設定に際し、具体的に「線量評価に当って使用する被ばく線量は、……年間10マイクロシーベルトとし、濃度の低減を期待する期間は、フランスにおける浅地中処分の管理期間(300年)を参考にすることとする」としている。
(添付-2)

 なお、個々の処分場における安全確保策に関しては、昭和63年原子力安全委員会報告書「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」(以下、「昭和63年原子力安全委員会報告書」という)に示しており、同解説によれば、具体的な管理期間は、放射線防護上重要である60Coや137Cs等の減衰による放射能量の低下や、海外の例も参考として、「有意な期間」として300〜400年間を目安として用いることとしている。

2.2 現在の浅地中処分において用いられている安全確保の考え方

 現在、操業中の六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいては、現行政令濃度を定めた際の基本的な考え方等に基づき、以下の安全確保策が講じられている。

  ・
廃棄体の表面線量率を制限する。
  ・
コンクリートピットに廃棄体を設置する。
  ・
廃棄体の間にモルタルを充填する。
  ・
透水性の低い岩中に埋設施設を設置し、難透水性覆土により浸透水量を低減する。
  ・
6m以上の覆土を施す。
  ・
管理期間中は、廃棄物埋設地への立ち入り規制と土地利用制限を行う。
  ・
管理期間中は、処分施設の巡視・点検を行う。
  ・
操業中は、放射性物質の漏出を防止し、必要に応じて人工バリアの修復を行う。

 これらの安全確保策が、昭和63年原子力安全委員会報告書に示されている要件を満足することが、以下のような経路による線量を評価し、確認されている。

 (1) 管理期間中の評価経路
  @
第1段階
  ・
施設に一時貯蔵及び埋設される放射性物質からの直接γ線及びスカイシャインγ  線による放射線の防護。
  ・付属施設から発生する放射性気体廃棄物及び放射性液体廃棄物の適切な処理等によ る放射線防護。
  A
第2、3段階
  ・
処分施設から漏洩した放射性物質が、人工バリア及び土壌等の天然バリア中を地下水とともに生活圏へ移行する経路。

 (2)管理期間終了後の評価経路
  a.地下水移行について
  ・
処分施設から漏洩した放射性物質が、人工バリア及び土壌等の天然バリア中を地下水とともに生活圏へ移行する経路。
  b.廃棄物への人間接近について
  ・
一般的に起こり得る事象として想定される、埋設地又はその近傍における一般住宅の建設作業、及びその住宅に居住することによる被ばく。
  ・
地方都市における施設利用面を総合的に判断して発生頻度が小さいと想定される、廃棄物埋設地における地下数階を有する建物の建設作業、及びその住宅に居住することによる被ばく。
  ・
水道の近年の普及率の向上等から判断して発生頻度は小さいと想定される、廃棄物 埋設地又はその近傍における浅井戸の利用を想定した経路。

3.今回の審議対象廃棄物の処分に係る安全確保策に関する検討

 今回の審議対象廃棄物は、現行政令濃度と比較して、βγ核種濃度は高いものの、α核種濃度は下回ると推定され、核種の種類も特に異なるものではない。このことから、今回の審議対象廃棄物の処分に係る安全確保策を検討するに当たっては、2.1に示した現在の低レベル放射性廃棄物の処分における段階管理の考え方と同程度の管理期間を適用する場合について、以下のとおり検討を行った。

3.1 管理期間中の安全確保策

  a.第1段階
 今回の審議対象廃棄物は、βγ濃度が従来の低レベル放射性廃棄物よりも高いので、とりわけ廃棄体からの放射線被ばくに係る防護が重要である。埋設廃棄物へ接近することによる無用な被ばくを避けるため、現行の低レベル放射性廃棄物処分と同様、埋設地への立ち入り規制を行うことが必要である。

 また、施設に一時貯蔵及び埋設される放射性物質からの直接γ線及びスカイシャインγ線対策について具体的には、処分対象廃棄物の輸送、一時的保管、検査及び処分施設への収納など廃棄物の取り扱いに起因する一般公衆及び作業従事者の被ばくを適切に防護する必要がある。安全確保策として以下のようなものが考えられる。

  @
廃棄体の取り扱いを遠隔操作装置を用いて行う。
  A
廃棄体を遮へい機能を有する輸送容器に収納して輸送する。
  B
遮へい機能を有する容器を用いて廃棄体(廃棄物を容器に固型化したもの)を製作する。

 これらについては、海外の処分場等において採用または採用が計画されており、十分に実績のある技術である。

(添付−3)

実際には処分方式や処分施設の設計に応じて、これらの安全確保策から適切なものを選択あるいは組み合わせることによって、一般公衆及び作業従事者の安全確保が図られる。

  b.第2、3段階
  ・
第1段階同様、廃棄体への接近による無用な被ばくを避けるため、放射能の減衰に応じ、埋設地への立ち入り規制或いは土地利用制限を行う。
  ・
処分施設から漏洩した放射性物質が、人工バリア及び土壌等の天然バリア中を地下 水とともに生活圏へ移行し、河川水飲用や農畜産物摂取を介して被ばくする一般公 衆の安全確保を図る必要がある。安全確保策としては、人工バリア及び天然バリアの機能を高めることにより、放射性物質の移行抑制を図ることが考えられ、適切な対策により第2、3段階における管理期間中の被ばく防止は可能である。具体的な人工バリア及び天然バリア機能の向上策については、次項@に述べる。

3.2 管理期間終了後の安全確保策

 特別な管理を必要としない管理期間終了後に想定される一般公衆の被ばくは、

  @
埋設された廃棄体に含まれる放射性物質が地下水によって生活環境まで移行する事象
  A
埋設された廃棄体が人間の様々な活動等により人間と直接接触するような事象

に起因して生じる。

 以下に、@の事象である地下水移行シナリオ、及びAの事象である人間侵入シナリオに係る具体的な安全確保策を示す。

  @
地下水移行シナリオに係る安全確保策
 埋設する廃棄体中のβγ核種濃度が現行政令濃度より高いので、施設から漏出した放射性物質の生活圏への移行を抑制する機能をより向上させる必要がある。 このため、処分場周辺の土壌等の天然バリアによる移行抑制を基本にし、処分施設に設置された人工バリアを適切に組み合わせた安全確保策が考えられる。具体的な方策としては、

  ・
天然バリアによる移行の抑制
−透水性の小さな地層、動水勾配の小さな地下深部などに処分施設を設置することによる地下水流速の低減、及び地下水移行距離の確保
  ・
人工バリアによる移行の抑制
−ベントナイト混合土等による施設への浸透水量の抑制

処分施設からの放射性核種の漏出は、施設への浸透水量(=流出水量)や拡散速度に比例するので、施設の周囲をベントナイト混合土等の難透水性の材料で取り囲むことによって、施設への浸透水量を小さくしたり、放射性核種の拡散を抑制することにより漏出速度を低減する。
 今回の審議対象廃棄物に対する上記対策による線量の試算結果によれば、天然バリアの機能が良好な場合は、天然バリアのみによって、また、天然バリア機能の向上が十分見込めない場合においても人工バリア機能の向上によって、または、これらの組み合わせによっても、一般公衆の安全が確保できる見通しが得られると考えられる。

(添付−4)

 なお、人工バリアによる放射性核種の漏出抑制に関しては、以下のような効果を考慮することによって、一層の向上を図ることができると考えられる。

−廃棄体からの溶出率の評価−
放射化金属や溶融体の場合には、放射性核種が溶出速度の極めて小さい母材の金属やセラミックス中に概ね均一に分布して閉じ込められているため、この効果を考慮すれば、実態に即した施設からの漏出速度により評価が可能である。

−コンクリートの人工バリアによる核種の拡散抑制−
廃棄体と天然バリアの間のコンクリート層を、放射性物質が透過するのに要する時間を考慮することにより、被ばく線量をより実態に即して低減できる。

 したがって、地下水移行の観点からは、天然バリアの機能が期待できる適切な位置を選定することを基本に、ベントナイト混合土による地下水の浸透抑制を組み合わせることとなる。なお、天然バリアの地下水流速は地層(岩)の種類に依存するが、例えば堆積岩は地下深部にいくほど固結が進み地下水流速が遅くなると考えられ、廃棄体を従来よりやや深い地下へ埋設することが方策として考えられる。また、やや深い地下へ埋設することにより、埋設廃棄体から生活圏までの移行距離の増加も合わせて期待できる。

(添付−5)

 また、人工バリアの機能の向上についても、上記の安全確保策は多くの処分場で採用されているものであり、現状の技術で十分達成可能なものと考えられる。例えば、ベントナイト混合土による浸透水量の抑制は、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの他、スウェーデンのSFRなど諸外国でも採用されている。
 実際には、処分方式や処分施設の設計、サイト条件等に応じてこれらの対策を適切に組み合わせていくこととなる。

  A
人間侵入シナリオに係る安全確保策
 今回の審議対象廃棄物はβγ核種濃度が高いので、現行政令濃度を定めた処分施設(壁厚50cmのコンクリートピット内に埋設処分し、地表面まで3mの覆土を施す。)に埋設した場合を想定すると、住居等の建設のための埋設廃棄体に到達するような掘削がなされた場合、管理を現在の低レベル放射性廃棄物と同様な程度の期間で終了することは困難であると考えられる。従って、この人間侵入シナリオに係る安全確保に関する具体的な対策としては、政令濃度を定めた処分モデルよりも深い地中に埋設処分することにより、地下を利用するための掘削を想定しても、廃棄体との接触が防止できるようにすることが考えられる。

 地下利用が最も進んでいる東京等の大都市における地下利用の実態について考察すると、一般的な建築物の地下室等は、50m以浅での利用に限られている。また、地下鉄や公共施設等での地下利用の例でも大部分は50m以浅であり、地下50mより深い地下利用は非常に少ない。高層建築物や高速道路等の基礎杭が50m以深(最大80m程度)に達する例はあるが、これらは地下の利用を意図したものではなく、支持基盤の位置が深いことによるものである。

(添付−6)

 以上のことから、東京のような大都市における地下利用の現状からみても、埋設施設の上部に支持基盤となり得る強度を有する地盤を十分確保し、適切な深度に施設を設置して当該廃棄物を埋設すれば、地下を利用するための掘削等により、埋設した廃棄体に人間が接近することが避けられると考えられる。

 なお、仮に、偶発的なボーリング調査のような侵入形態を想定したとしても、廃棄体埋設後、管理期間中は、処分場における特定の行為の禁止または制約を行うことにより、時間の経過とともに放射能が減衰し、管理期間中及び管理期間終了後において、安全の確保は可能と考えられる。更に、地下資源や井戸の水源となる帯水層が存在しない場所に立地することにより、資源発掘や深井戸のための地下利用も考慮する必要がないと考えられる。

4.まとめ

 今回の審議対象廃棄物について、現在の低レベル放射性廃棄物の処分と同様に、管理期間を設けて段階管理を行うことによる安全確保策を適用した場合の、安全確保の見通しを検討した。この結果、通常の人間活動により人間が接近して被ばくが生じる可能性が低いと考えられる深さをとり、地下水流速の小さな地中に、必要に応じてベントナイト混合土等による人工バリアの強化された適切な処分施設を設置することによって、一般公衆の安全性は確保できる見通しがあると考えられる。

(添付−7)
(添付−8)

以上