資料(専)11-2


RI・研究所等廃棄物処理処分の検討状況について




平成9年7月25日




目  次


第1章 RI廃棄物の処理処分に関する基本的な考え方について
 1.放射線の利用とRI廃棄物の発生
 2.RI廃棄物の発生形態
 3.RI廃棄物の廃棄物量等の推定
  3.1 廃棄物量の推定
  3.2 RI廃棄物中の放射性核種と放射能濃度
   (1)放射性核種の種類
   (2)放射能濃度
 4.RI廃棄物の処理に関する基本的な考え方
  4.1 処理方法
  4.2 廃棄体の確認について
 5. RI廃棄物の処分に関する基本的な考え方
   (1)放射線被ばくの観点からの検討
   (2)廃棄物の性状からの検討
 6. RI廃棄物の処分場の管理

第2章 研究所等廃棄物の処理処分に関する基本的な考え方について
 1.研究所等廃棄物の発生
 2.研究所等廃棄物の発生形態
 3.研究所等廃棄物の廃棄物量等の推定
  3.1 廃棄物量の推定
  3.2 研究所等廃棄物中の放射性核種の放射能濃度
   (1)放射性核種の種類
   (2)放射能濃度による区分
 4.研究所等廃棄物の処理に関する基本的な考え方
  4.1 処理方法
  4.2 廃棄体の確認について
 5. 研究所等廃棄物の処分に関する基本的な考え方
   (1)放射能濃度の低い低レベル放射性廃棄物
   (2)極低レベル放射性廃棄物
   (3)放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物及び
     TRU核種を含む放射性廃棄物相当の放射性廃棄物
   (4)クリランスレベル相当以下の放射性廃棄物
 6. 研究所等廃棄物の処分場の管理

第3章 RI・研究所等廃棄物処分の実施体制の確立について
 1.実施主体の設立に向けた準備組織の設置
 2.関係機関による協力と役割分担



第1章 RI廃棄物の処理処分に関する基本的な考え方について

1.放射線の利用とRI廃棄物の発生

 放射性同位元素は、原子力分野のみならず種々の分野で使用されている。例えば、医療分野における放射性医薬品としての使用、理工学等の研究分野での非密封線源としての使用が行われている。また、放射線の利用としては、密封線源による医療用具の滅菌処理や非破壊検査等での使用や研究及び放射性医薬品の製造等のための加速器利用も挙げられる。このように、放射性同位元素等は日常の様々な分野で利用されており、現代生活を支える上で必要不可欠なものとなっている(図1〜図3参照)。
 このような放射性同位元素の利用に伴い、放射性同位元素で汚染された放射性廃棄物が発生しており、このような廃棄物は、RI廃棄物としてそのほとんどが(社)日本アイソトープ協会において集荷、処理、保管されている。その保管量は年々累積し、平成8年度末時点で(社)日本アイソトープ協会において保管されている量は、約7万2千本(200Lドラム缶換算)に達している。また、(社)日本アイソトープ協会で集荷された廃棄物のうち、一部は日本原子力研究所において処理が実施され、その保管量は約3万3千本に達しており、合計で累積保管量は約10万5千本となっている(図4参照)。
 これらの廃棄物については、日常生活における放射線の利用による便益を享受している現世代が、後世代に負担を残さないよう安全な処理と処分方策を確立することが必要である。

2.RI廃棄物の発生形態

 放射性同位元素の使用事業所数としては、非密封線源の放射性同位元素を使用してRI廃棄物を発生させている事業所は約 2,600であり、密封放射性同位元素の使用事業所を含めた事業所数は5,000を超えている。
 RI廃棄物の発生形態は、主にプラスチック類、紙類、フィルター等である。また、RI廃棄物に特有の廃棄物として、動物実験後の動物死体も発生している。
 加速器の利用においては、放射化した金属やコンクリートが廃棄物として発生している。また、線源強度が低下して不要になった密封線源も各事業所及び(社)日本アイソトープ協会において保管されている。密封線源は、(社)日本アイソトープ協会等を通じて海外から輸入されたものについては、海外メーカーに返却されているものもあるが、一部は最終的に処分が必要となる可能性もある。

3.RI廃棄物の廃棄物量等の推定

3.1 廃棄物量の推定

 放射性同位元素の使用施設等から(社)日本アイソトープ協会が集めている未処理のRI廃棄物は、最近5年間の平均で年間約1万7千本となっている。これらのRI廃棄物は、そのほとんどが(社)日本アイソトープ協会において集荷され、集荷されたうち、その一部の廃棄物については(社)日本アイソトープ協会及び日本原子力研究所で処理した後に、(社)日本アイソトープ協会及び日本原子力研究所の保管施設において保管されている。
 RI廃棄物の処理処分に関する方策を考える上で、今後も現在と同程度の放射性同位元素の利用が続くと仮定して、今後100年間の廃棄物量を推定した。ここでは、廃棄物の焼却、圧縮処理等の後にセメントで固型化する場合、埋設すべき廃棄物量としては100年間で200L容器換算で約30万本と推定された。また、将来的に減容性の高い溶融固化技術を用いた場合には、約7万5千本程度になると推定された。

3.2 RI廃棄物中の放射性核種と放射能濃度

(1)放射性核種の種類
 (社)日本アイソトープ協会が過去5年分のRI廃棄物について調査した結果、RI廃棄物中に含まれる放射性核種は、122核種であった。しかし、この中で半減期が1年未満の放射性核種は95核種、半減期が1年〜10年の放射性核種は11核種、半減期が10年以上のものが16核種である。
 RI廃棄物中に含有される放射性核種は主にβγ核種である99mTc、32P等である。加速器で生成される主要な放射性核種は、7Be、22Na等であり、半減期が短い放射性核種が多い。密封線源の主な放射性核種は60Co、137Cs等である。
 しかし、226Raのようなα核種も密封線源として使用されており、これらを含むRI廃棄物も極一部で発生している。

(2)放射能濃度
 種々の事業所において多様な目的で放射性同位元素が使用されるため、廃棄物中の放射能濃度は幅広く分布している。
 平均放射能濃度でRI廃棄物量を区分すると、9割以上は、極低レベル放射性廃棄物に相当するものであり、放射能濃度が極低レベル放射性廃棄物よりも高くなると推定されるものは、1割以下である。
 密封線源の場合、表面が被覆されているため表面汚染は基本的には無いが、線源1つで1012Bqに達するような放射能の高い線源も一部存在している。このような線源が廃棄物として処分される場合には、放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物に相当するものとなる。また、226Ra等のようなα核種の密封線源の一部はα核種の放射能濃度が高い廃棄物となる可能性もある。

4.RI廃棄物の処理に関する基本的な考え方

4.1 処理方法

 (社)日本アイソトープ協会に集荷されたRI廃棄物の一部は同協会等の施設において焼却処理等がなされているが、一部は未処理の状態で保管されている。RI廃棄物の埋設処分に際して、廃棄物に含有されている放射性核種の環境への放出を十分に抑制すること、処理後の廃棄物自体が安定性を保つこと、処分すべき廃棄物量を極力減らすことを目的として、適切な処理を行うことが重要である。
 放射性廃棄物の処理技術としては、焼却や圧縮等の処理技術が既に実用化されており、十分な実績を有している。今後、RI廃棄物に対して必要な処理についても、これらの既存の処理方法で対応が可能と考えられる。
 更に、RI廃棄物の特性を踏まえて、以下の点に留意することが必要である。

1)RI廃棄物は、焼却が可能な固体廃棄物が発生量の約7割を占めるとともに、不燃性固体廃棄物の中にもある程度の可燃性物質が混在している。このため、廃棄物の処分量の低減と処分に際しての廃棄物の安定性の増加、有機性汚水の発生を抑制することを目的として焼却処理や加熱処理を施すことが適切である。このような処理により、廃棄物中の多くの有機性の物質を除去することが可能であると考えられる。
 また、このような処理の後には、廃棄体の安定化、放射性核種の浸出性の低減等を目的として、固型化剤を用いて固型化することが重要である。将来的には、原子力施設から発生する廃棄物等を対象に導入されつつある減容性の高い溶融固化処理についても、減容性、廃棄体の安定性、放射性核種の耐浸出性の観点から検討すべき処理方法であると考えられる。

2)医療機関や一部の事業所からは、感染性廃棄物に相当する廃棄物も発生する。しかし、医療機関から発生するRI廃棄物の発生形態の大半は焼却可能なプラスチック類であるため、基本的には焼却処理により、感染性を無くすことが可能である。また、不燃性の廃棄物については、滅菌処理を行うことが必要となる。

3)埋設処分に際して問題となるような物質、例えば重金属を有意に含む廃棄物については、可能な限り発生源での分別を実施し、他の廃棄物中に混在しないようにすることが必要である。分別した重金属やそれらを含む廃棄物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令等で示されたような無害化処理を実施し、埋設処分において問題にならないように処理することが重要である。

4)RI廃棄物には、医療機関から発生する廃棄物のように、半減期が数分から数十日と短寿命の放射性核種のみを含む廃棄物も発生している。例として、半減期1年未満のみのRI廃棄物を含む廃棄物とその他の廃棄物とを区分した場合の廃棄物のそれぞれの割合を試算した。その結果、それぞれの廃棄物量は、ほぼ半々程度であると推定されている(図ー5参照)。従って、放射性廃棄物の処理における作業員への被ばくの低減、処分に際しての環境負荷の低減等を図るため、短半減期の放射性核種のみを含むRI廃棄物を発生事業所において分別するとともに、処理に際しては事前に放射能の減衰をさせる中間貯蔵を有効に取り入れることも重要と考えられる。

 RI廃棄物については、廃棄物の発生量を発生事業所で抑制するとともに、廃棄物中に含有される放射性核種の種類、重金属の含有の有無等について発生事業所における分別を行うことが重要である。更に、適切な処理を行い、RI廃棄物の処分における環境負荷の低減を図ることが重要である。

4.2 廃棄体の確認について

 放射性同位元素の利用形態が多様であることから、廃棄物の発生形態も多様である。従って、処分に際し、廃棄物中の放射性核種、放射能濃度、廃棄物の安定性等についての確認技術が重要となる。
 RI廃棄物には、β核種のように廃棄物の外部からの放射能濃度の測定が難しい放射性核種が含まれているとともに、発生源が多種多様であるため、このような難測定核種に対する放射能濃度の確認技術が重要である。RI廃棄物の放射能濃度の確認技術として、発生者が廃棄物毎に作成する廃棄物明細書に記載されている放射性核種とその放射能量、販売事業者における放射性核種の販売量データ、RI廃棄物の処理過程におけるサンプリング測定法、外部測定法等による測定結果を組み合わせて行うことが必要であり、その実現可能性について今後より具体的な検討が必要である。
 また、RI廃棄物の処分に際しては、適切な処理をした後に、廃棄体に含まれる環境負荷の要因となるような重金属類等の溶出性が低いことも確認することが重要である。

5.RI廃棄物の処分に関する基本的な考え方

 低レベル放射性廃棄物の陸地処分に関する安全確保の考え方については、「放射能が時間の経過に伴って減衰し、人間環境への影響が十分に軽減されるまでの間、固化体、ピット等の人工バリアと、土壌等の天然バリアを組み合わせ、放射能レベルに応じた管理を行うことによって、放射性廃棄物を安全に人間環境から隔離することを基本的考え方とする」(「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」、原子力委員会、昭和59年8月)とされている。RI廃棄物に含まれる主要な放射性核種は、3.2で示したように、半減期の短いβγ核種であり、上記報告書で示された廃棄物中の放射能が時間の経過に伴って減衰することを基本とした処分を行うことが可能なものである。
 RI廃棄物は、その発生形態が多様であるとともに、放射能濃度も幅広いものとなっている。従って、RI廃棄物の放射能濃度、性状に応じた複数の処分場形態を考慮しておくことが合理的であると考えられる。

(1)放射線被ばくの観点からの検討
 RI廃棄物については、「比較的半減期の短いベータ・ガンマ核種が主要核種である廃棄物のうち、放射能レベルの比較的低いものについては、放射能レベルの減衰に応じて段階的に管理を低減する浅地中処分又は簡易な方法による浅地中処分を行うものとする。さらに、半減期が極めて短い核種のみを含むRI廃棄物については、段階管理を伴わない簡易な方法による浅地中処分を行うことが可能と考えられる。」(原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画、平成6年)とされている。
 RI廃棄物は、4.1で示したように、半減期が1年未満の放射性核種のみを含むものが廃棄物量の約半分を占めている。このような半減期が短い放射性核種のみを含むものは、事前に十分に放射能を減衰させることが可能であり、埋設処分を行う時点で放射能濃度が非常に低くなるものもある。従って、このような半減期の短いRI廃棄物については、極低レベル放射性廃棄物を対象としたトレンチ処分場等における処分が想定される。
 なお、RI廃棄物のうち放射能濃度が非常に低いものについては、原子炉の解体等で発生する放射性廃棄物のクリアランスレベルにおける検討状況を踏まえつつ、RI廃棄物の処分に関してもその導入について検討を行うことが必要である。
 半減期がある程度長い放射性核種を含むRI廃棄物については、埋設処分の被ばく評価で重要となる放射性核種は、原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物と同様な60Coや90Sr等である。従って、発電所廃棄物においてなされているような放射能濃度の低い低レベル放射性廃棄物、極低レベル放射能廃棄物に基づいて分類し、現行の発電所廃棄物を対象としたようなコンクリートピット処分場、極低レベル放射性廃棄物を対象としたトレンチ処分場等による処分が可能である。
 更に、密封線源等の廃棄物の一部については、βγ核種及びα核種の放射能濃度が高く、コンクリートピットでの浅地中処分には適さない廃棄物も存在する。このような廃棄物については、別途検討される「放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物」や「TRU核種を含む放射性廃棄物」と同様なものと考えられ、今後検討されるこれらの放射性廃棄物の処分方策に準じて埋設処分を行うことが必要である。

(2)廃棄物の性状からの検討
 RI廃棄物の性状の観点からは、施設の解体で発生し、廃棄物自体が安定であるコンクリート等の廃棄物については、その一部について既に原子炉等規制法で規定されているように、トレンチ型処分場への処分が可能であると考えられる。
 一方、焼却灰等を固型化した廃棄物や有害物質を含む廃棄物を無害化処理したものについては、廃棄物自体の安定性の確保や廃棄物からの環境負荷となる汚水の浸出を防止する目的から、コンクリートピットや例えば粘土等の遮水機能を有する適切な人工バリアを設置した処分場とすることが必要である。この場合、管理期間中は処分場内の浸出水の有無を確認し、浸出水中の放射能濃度等の監視を実施することが考えられる。
 また、将来的には、焼却灰等を対象として溶融固化処理のような技術開発が行われると思われる。この場合、廃棄体からの環境負荷の要因となるような物質の溶出性が長期にわたり十分抑制されることが担保され、環境への負荷が十分に低いことを示した上で、他の処分方策の可能性についても検討を行うことが必要であると考えられる。

 従って、上記のことをまとめると、RI廃棄物の処分方策としては、下の表のように整理される。また、密封線源等の廃棄物の一部については、βγ核種及びα核種の放射能濃度が高いものについては、別途検討される「放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物」や「TRU核種を含む放射性廃棄物」の処分方策に準じて埋設処分を行うことが必要である。

    廃棄物の区分        想定される処分場     推定される廃棄物量
                               (200Lドラム缶本数) 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
極低レベル放射性廃棄物以外の    コンクリートピット処分場              
低レベル放射性廃棄物                     約 1万6千本  
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
極低レベル放射性廃棄物のうち                 
コンクリート等の廃棄物自体が安定なもの  トレンチ処分場        約 3万  本  
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
極低レベル放射性廃棄物のうち焼却  適切な人工バリアを配置            
灰等を固型化したもの        した処分場        約25万3千本  
(有害物質を無害化したものも含む)                        
 (今後、100年間でセメント固化体として約30万本程度が発生すると推定した場合)

6.RI廃棄物の処分場の管理

 RI廃棄物の処分の基本的考え方としては、前述したように昭和59年8月に原子力委員会で示された「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」に依るものである。RI廃棄物の処分場の管理の考え方についても、同報告書において示された放射能の減衰に従って段階的に管理を行うことが適当であると考えられる。
 同報告書に示された低レベル放射性廃棄物の段階管理は基本的には、以下の通りである。
1)人工バリアにより放射性物質のバリア外への漏出を防止し、所要の観測、測定(巡視点 検、施設のモニタリング等)によって漏出の無いことを確認する段階。
2)人工バリア及び天然バリアによって放射性物質の移行を防止し、所要の観測、測定(周 辺環境のモニタリング等)によって安全であることを確認している段階。
3)主に人間の特定の行為を禁止あるいは制約する段階。
4)管理を必要としない段階。

 RI廃棄物の処分場の管理期間については、処分すべき廃棄物中の放射能濃度及び処分場の条件等を勘案して合理的な管理期間を設定することが適切であると考えられる。
 RI廃棄物の大部分を占める極低レベル放射性廃棄物については、同報告書において3)の段階の軽微な管理のみを行うことが合理的であるとされており、当該RI廃棄物についても同様の考え方において処分場の管理を行うことが適当であると考えられる。




第2章 研究所等廃棄物の処理処分に関する基本的な考え方について

1.研究所等廃棄物の発生

 日本原子力研究所等の研究機関、大学、民間企業等においては原子力の開発・利用に関する研究のため、試験研究炉や種々の核燃料使用施設を設置して、材料照射試験、放射化分析、放射性核種の製造等が実施されている。また、一部の民間企業においては核燃料物質を金属触媒に使用する等、研究以外の目的でも使用されている。
 これらの研究等に伴い発生する廃棄物は、研究所等廃棄物として、そのほとんどは廃棄物を発生させている事業所で保管されている。このような研究所等廃棄物についても、RI廃棄物と同様に、後世代に負担を残さないよう研究所等廃棄物の安全な処理と処分方策を確立することが必要である。

2.研究所等廃棄物の発生形態

 放射性廃棄物の発生形態としては、施設の運転や試験・実験により発生する廃棄物と施設の解体により発生する廃棄物である。具体的な廃棄物の形態としては、液体廃棄物、雑固体廃棄物、金属廃棄物、コンクリート廃棄物等である。

3.研究所等廃棄物の廃棄物量等の推定

3.1 廃棄物量の推定

 試験研究炉や核燃料使用施設の運転に伴う廃棄物及び、それらの施設の廃止措置に伴って発生する廃棄物を対象とした。従って、現在稼働中の施設の将来の廃止措置も考慮し、今後50年間に発生すると思われる廃棄物量の推定を行った結果、200L容器換算で約100万本となった。
 なお、これらの廃棄物のうち、現在IAEAにより提案されているクリアランスレベル等を参考として、クリアランスレベル相当以下となる廃棄物量を推定すると、約59万本となった。

3.2 研究所等廃棄物中の放射性核種と放射能濃度

(1)放射性核種の種類
 廃棄物中の放射性核種は実験等で発生する汚染によるものと、一部であるが原子炉内構造物や照射試験設備の撤去材、照射後試験施設からの試験済試料のように中性子等の影響による放射化の形態で存在するものがある。
 試験研究炉や核燃料使用施設から発生する廃棄物に含まれる放射性核種は、現行の発電所廃棄物の運転に伴って発生する廃棄物中に含まれる放射性核種と同様な60Co、137Cs等である。核燃料使用施設から発生する廃棄物には、天然ウラン、天然トリウム等が含有されている。また、一部の研究施設からは、241Amや237NpのようなTRU核種を含む廃棄物も発生している。

(2)放射能濃度による区分
 研究所等廃棄物について、埋設処分に適する固型化処理等を実施した後の放射能濃度区分毎の廃棄物量を算出した結果、200L容器換算で以下のようになった。
1)α核種濃度が1.1GBq/tを超えるもの    :約3万   本*)
  (TRU核種を含む放射性廃棄物のうち区分目安値を超える廃棄物に相当する廃棄物)
2)放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物  :約   3千本
3)放射能濃度の低い低レベル放射性廃棄物  :約13万4千本**)
4)極低レベル放射性廃棄物         :約25万7千本
5)クリアランスレベル相当以下       :約59万  本
  *)日本原子力研究所においては、α核種で汚染された廃棄物と照射済試験片も混在して保管されているが、今後分別がなされる予定であり、数量について変更があり得る。
  **)天然ウラン等のみで汚染された廃棄物約3千本を含む。

4.研究所等廃棄物の処理に関する基本的な考え方

4.1 処理方法

 主要な発生事業者である日本原子力研究所においては、発生施設で所定の容器に収納した後、放射性廃棄物処理施設に廃棄物を集め、廃液についてはセメント固化、可燃物については焼却、不燃物については圧縮処理等行われた後、200L容器、金属容器、鋼製角形容器等への封入等が行われた後、保管されている。
 一方、大学のような小規模の使用施設・原子炉施設を有する事業所においては、一部の事業所において圧縮減容処理等が行われているものの、そのほんとんどは未処理のまま保管されている。
 従って、未処理の廃棄物については、今後、廃棄物の減容と安定化を目的として処理を行う必要がある。原子炉等規制法においては、原子炉施設から発生する放射性廃棄物の浅地中処分を対象として、濃縮廃液、廃樹脂等についてはセメント、アスファルト、不飽和ポリエステルを固型化剤として用いる固型化処理、金属等のような固体状廃棄物についてはセメントを固型化剤として用いる固型化処理が規定されている。研究所等廃棄物の大部分の性状は、発電所廃棄物と類似しているので発電所廃棄物の固型化処理方法に準じた処理方法が適用できるものと考えられる。
 また、日本原子力研究所東海研究所においては、研究所等廃棄物の減容と安定化を図るため、金属廃棄物の溶融固化処理、金属以外の雑固体廃棄物の溶融固化処理、高圧縮装処理を行う高減容処理施設の建設・整備が進められている。
 原研以外の事業所で保管されている放射性廃棄物に対しては、適切な減容・安定化処理を行う必要があるが、小規模事業所が多いことから、各事業所において処理施設を設置するよりも経済性等を考慮して集中的に廃棄物を処理する施設を整備することも必要と考えられる。
 また、処分における安全性の担保のため、廃棄体の健全性を損なうおそれのある物質は、廃棄体に含まれないようにするとともに、有害物質については適切な処理を行い、処分に際しては問題とならないようにすることが必要がある。

4.2 廃棄体の確認について

 研究所等廃棄物中の放射能濃度の確認としては、RI廃棄物と同様に、廃棄物の発生源が一様でないため、廃棄物の性状に応じた放射能濃度の確認技術が重要となる。
 研究所等廃棄物のうち試験研究炉の運転に伴って発生する廃棄物のように、現行の発電所廃棄物と同様な発生源を有する廃棄物も存在しており、このような廃棄物については、既存のスケーリングファクター法等の手法が適用可能である。また、核燃料使用施設等から発生する廃棄物については、施設の運転履歴、放射性物質の使用履歴等についての入手可能な情報を考慮に入れるとともに、試料の分析や外部放射線の測定等を適切に組み合わせ、放射性廃棄物中の核種分布を評価することが重要であると考えられる。
 また、環境負荷の要因となるような有害物質については、廃棄物中に混在しないように分別されていることが重要であるが、種々の処理に際して廃棄物中に含まれていないことを確認するとともに、有害な物質を含む廃棄物は処分に際して問題とならないような形態であることが必要である。
 なお、既に発生事業所において固型化がなされ、放射能濃度の確認が必要な一部の放射性廃棄物についても、上述の核燃料使用施設等から発生する放射性廃棄物と同様な確認手法が必要であると考えられるが、今後更に検討を進める必要がある。

5.研究所等廃棄物の処分に係る基本的考え方

 放射性廃棄物の処分は、種類、放射能濃度等に応じて、合理的に処分することが望ましい。研究所等廃棄物についても、第2章3.2で示したように、放射能濃度の極めて低いもの、低いもの、高いもの、TRU核種を含むもの、また将来的にクリアランスレベル以下になる可能性のあるものに分別が可能であり、処分方策の検討に当たっても適切に区分して、各々に適した方法を適用することが重要である。  従って、第2章3.2で示したような放射能濃度、種類等に応じて区分した研究所等廃棄物に適用する処分概念としては、現行の発電所廃棄物の処分等を参考にすると、以下のような方法が考えられる。

(1)放射能濃度の低い低レベル放射性廃棄物
 廃棄物に含有される放射性核種や放射能濃度は、現在コンクリートピットによる浅地中処分で対象となっている発電所廃棄物と類似している。従って、前述の昭和59年の原子力委員会の報告書「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」に従い、既に、原子炉等規制法で規定されたコンクリートピットによる浅地中処分が適用可能であると考えられる。

(2)極低レベル放射性廃棄物
 放射能濃度の極めて低い放射性廃棄物は、主に試験研究炉や核燃料使用施設の解体で発生するコンクリート等であって、発電所廃棄物の解体等に伴い発生する極低レベル放射性廃棄物と類似したものであり、放射能濃度は、原子炉等規制法で非固型化コンクリート等を対象としたトレンチ処分の埋設濃度上限値以下である。日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体から発生した廃棄物のうち極低レベル放射性廃棄物であるコンクリート等はすでに原子炉等規制法の下でトレンチ型処分により埋設実地試験がなされており、他の試験研究炉及び核燃料使用施設から発生する同様な廃棄物についても、トレンチ型処分における処分とすることが適当であると考えられる。
 また、焼却灰や廃液等を固型化したもので放射能濃度が極めて低い放射性廃棄物も存在する。このような廃棄物は、コンクリートピットによるほか、RI廃棄物について示したように例えば粘土等のような遮水機能を有する人工バリアを設置した処分も可能であると考えられる。
 なお、研究所等廃棄物についても、RI廃棄物と同様、より安全性の高い固型化技術の導入により、他の処分方策の可能性についても検討を行うことが必要であると考えられる。

(3)放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物及びTRU核種を含む放射性廃棄物相当の放射性廃棄物
 放射能濃度の高い低レベル放射性廃棄物に相当するもの、あるいはα核種濃度の高い廃棄物については、平成6年の原子力長計において、「放射能濃度の比較的高いものについては、発生の実態、関連研究開発の進展状況等を考慮しながら検討を進めることとする。α核種のような長半減期核種が主要であるものについては、TRU核種を含む廃棄物及びウラン廃棄物を参考に処分を検討する。」とされており、「放射能濃度の高い低レベル廃棄物分科会(仮称)」での検討結果や、TRU核種を含む放射性廃棄物及びウラン廃棄物の処分方策に関する今後の検討結果等に沿って処分を行うことが必要である。

(4)クリランスレベル相当以下の放射性廃棄物
 将来的にクリアランスレベルが設定された場合には、研究所等廃棄物についての半数以上の廃棄物がクリアランスレベル以下に相当するものと考えられる。従って、このような廃棄物については、クリアランスレベルの検討状況を踏まえつつ、研究所等廃棄物についてもその検討を行うとともに、適切な分別管理を行っておくことが必要である。

6.研究所等廃棄物処分場の管理

 研究所等廃棄物の処分としては、前述したように昭和59年8月に原子力委員会で示された「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」を基本として、既に実施されている低レベル放射性廃棄物の管理及び今後検討される予定のその他の低レベル放射性廃棄物の処分方策に準じるものであり、処分場の管理の考え方においても、これらの各処分方策において実施される段階的な管理に従うことが適切であると考えられる。




第3章 RI・研究所等廃棄物処分の実施体制の確立について

1. 実施主体の設立に向けた準備組織の設置

 RI・研究所等廃棄物の処分対策は、多種多様な放射性廃棄物について、その特性を考慮し、合理的かつ経済的な観点から取り組むことが必要である。平成6年の原子力長計においては、RI廃棄物について「日本原子力研究所、(社)日本アイソトープ協会等の主要な責任主体は協力して、実施スケジュール、実施体制、資金確保等について、早急に検討を開始する」、研究所等廃棄物について「日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団等の主要な機関が協力して、実施スケジュール、実施体制、資金の確保等について、早急に検討を進める」とされている。
 現在の各事業所におけるRI・研究所等廃棄物の保管能力には限界があり、具体的な処理処分に向けての実施体制の確立が必要である。とくに、技術的事項の検討の進展に併せて、事業化に向けた制度的事項の検討を開始することが当面の課題となっている。このため、主要な責任主体及び機関においては、実施主体の設立を目的とした準備組織を設置し、事業化に係る予備的検討を開始することが重要である。
 本準備組織においては、主に以下の事項について検討を行うことが必要であると考えられる。
 (1) RI・研究所等廃棄物の実態把握と将来予測
 (2) 事業範囲、事業計画等の検討
 (3) 処分施設等についての検討
 (4) 費用試算、資金確保方策及び採算検討
 (5) 立地に係る予備的検討
 (6) 実施主体設立スケジュールの策定及び設立準備    等

2. 関係機関による協力と役割分担

 RI廃棄物の発生者は、日本原子力研究所等の研究機関、大学、企業等のRI使用施設等、全国で5,000事業所を超えてる。(社)日本アイソトープ協会は、廃棄業者として、RI使用者等からRI廃棄物を譲渡され、自ら保管廃棄している。
  研究所等廃棄物の発生者は、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団、大学及び企業等、原子炉を設置し、あるいは核燃料物質等を使用する研究所等、全国約 180事業所である。
 これらの関係機関は、廃棄物の発生者及び廃棄業者として処分を適切かつ確実に行う責務を果たす必要がある。しかしながら、前述のとおり、RI・研究所等廃棄物は、発電所廃棄物等と異なり、目的、事業規模、資金背景等の異なる大小様々な全国の事業所から発生していることから、今後実施主体を設立し、処分事業を円滑に実施していくためには、関係機関の意見を集約し、処分の進め方について共通の認識を形成しておくことが重要である。
 このため、現在、日本原子力研究所、(社)日本アイソトープ協会が中心となって設置を検討している準備組織においては、実施主体の設立準備を進めていく中で、関係機関との協力を図り、円滑な処分の進め方を検討することが必要である。





図ー1 RI及び研究所等廃棄物の発生

   RI廃棄物

   ○放射性同位元素等の使用施設から発生する放射性廃棄物         

   主な発生事業者:医療機関、研究機関、大学、企業等
           我が国における事業者数は、5、000を超える。  

   関連する法律 :放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律  
           医療法
           薬事法
           臨床検査技師法



   研究所等廃棄物

 ○試験研究用及び研究開発段階にある原子炉の運転、核燃料物質等の使用を行ってい
  る研究所等から発生する放射性廃棄物

  主な発生事業者:日本原子力研究所関、動力炉・核燃料開発事業団、大学及び
          企業等原子炉を設置しあるいは核燃料物質等を使用している
          研究所等(約180事業所)
          (動力炉・核燃料開発事業団の核燃料サイクル関連施設から発
          生する放射性廃棄物並びにRI廃棄物を除く)

  関連する法律 :核燃料物質、核原料物質及び原子炉の規制に関する法律