資料(専)9-2


高レベル放射性廃棄物処分懇談会・原子力バックエンド対策専門部会合同会合の議事要旨(案)




1.日時  平成9年3月12日(水)13:00-15:00

2.場所  有楽町朝日スクエア(有楽町マリオン11階)

3.出席者
  (招へい者)カナダ天然資源省モリソン局長(ウラン・原子力担当)
        スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)パップ研究開発局長
  (原子力委員)伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員、依田委員
  (専門委員)近藤座長、粟屋委員、加藤委員、川上委員、木元委員、小林委員、
    下邨委員、鈴木(篤)委員、竹本委員、松田委員、南委員、森嶌委員
    池亀委員、大桃委員、川人委員、小島委員、佐々木委員、鈴木(進)委員、
    徳山委員、鳥井委員、中尾委員、永倉委員、松浦委員
  (事務局)科学技術庁

4.議題
(1)講演
  −カナダ天然資源省 ロバートW.モリソン局長(ウラン・原子力担当)
  −スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB) テニス・パップ研究開発局長
(2)意見交換
(3)その他

5.配布資料
 資料1 講演メモ
    (カナダ天然資源省ロバートW.モリソン局長(ウラン・原子力担当))
 資料2 講演メモ
    (スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)テニス・パップ研究開発局長)

6.議事概要
(1)
冒頭、伊原委員長代理より、開会の挨拶とともに、前日に発生した動燃東海事業所での事故について言及があった。

(2)
カナダ天然資源省モリソン局長より、放射性廃棄物処分の政策的枠組み、取組みの現状、放射性廃棄物処分場立地の経験等について講演があった。

(3)
スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社パップ局長より、放射性廃棄物処分に係る組織、資金確保、立地プログラム、地下研究施設等について講演があった。

(4)
引き続き行なわれた質疑応答の概要は以下のとおり。

(資金確保について)

   1)
資金の積立額の決め方についての質問に対し、パップ局長から、スウェーデンでは、納付金水準決定の手続きについては、実施主体は建設、解体等の費用の推定値を算定し政府に提出することが義務づけられており、審査の後政府が最終的に額を決定する、その額は毎年改定が可能な制度となっている旨回答された。モリソン局長から、カナダでは、カナダ原子力公社(AECL)と協力して州営の電力会社であるオンタリオハイドロ社が、環境影響評価の一部として、今後100年で必要な処分場の総費用を現在の金額で約130億ドルと計算した。この額は必ずしも正確でないかもしれないが推計値としてはそれほど外れていないとしており、これに基づいてオンタリオハイドロ社は1kwhあたり約6セントの電気料金のうち約0.1セント、すなわち年間1億ドル相当額を廃棄物処理費用として徴収している旨回答された。

(処分実施に向けた組織、体制について)

   2)
カナダの1989年に設置された環境評価レビュー・パネルのメンバー及び与えられている権限についての質問に対し、モリソン局長からパネルのメンバーは環境大臣が天然資源大臣と協議して決め、信頼性のおける一般市民で専門能力のある人、先入観をもたない中立的な見解を持つ人が選ばれ、先住民もジャーナリストも含まれている。権限としてはAECLの提出した処分コンセプトに関する環境影響報告書の内容を拒否することもできる。位置づけとしては政府に対して提言・助言をする諮問委員会で、その答申を政府は真剣に受け止め、最終的な対応は天然資源大臣が決める旨回答された。

   3)
スウェーデンの放射性廃棄物処分調整官(ナショナル・コーディネーター)についての質問に対し、パップ局長からSKBと処分場受入コミュニティーとの話合いの際に近隣コミュニティーにも情報を提供する等の活動を行う旨回答された。

(社会的受容性について)
   4)
社会的、政治的な面が重要なのは技術者が信用されていないせいか、科学的事実が信用されていないせいか、研究成果が活用されないとの懸念があるせいかとの質問があり、パップ局長から研究開発の結果が納得いく内容でなければサイト選定はうまくいかないのは勿論であるが、地元の人々の中にはその研究結果を理解する科学的知識が十分でないことから科学を信頼していない人もあり、一般の人が何を考えているかを知ることが重要である旨回答された。

   5)
スウェーデンのオスカーシャムの若い人の処分場に対する受容レベルが相対的に高いことに興味をもったがどのような教育が行われているのかとの質問に対し、パップ局長から、高レベル放射性廃棄物のリスクの基本的な理解能力の養成が学校時代に得られるよう、原子力産業界は6年生から12年生くらいの層を対象に全国的に資料を提供している。その中には原子力産業界以外からのものも入れて比較してもらうようにしている。またローカルレベルでは学校の先生、PTAとの対話、相互交流が重要である旨回答された。モリソン局長から、カナダでは原子力産業界が先入観を持たせようとしているとの非難を避けるため、公の情報源により情報が公開されるようにし、原子力産業界や政府がつくったファクトシートに基づきマスコミや教員団体などがそれぞれ資料をつくっている旨回答された。

   6)
サイトの住民には「迷惑施設」が来るという意識があるかとの質問に対し、し、パップ局長から、スウェーデンには原子力施設だけではなく環境に被害を与え得るような施設の立地でも優遇税制措置等をとる伝統はない。施設の立地は国益には沿うが直接関わりたくないというのが人々の考えだが、ほとんどの国民はそれでも施設はどこかに必要だという認識をもっている、不都合が生じたときの何らかの保障、減税措置、教育投資等の必要性はまだ議論の段階である旨回答された。モリソン局長から、カナダでは基本的には優遇措置はないものの立地を受け入れる際の交渉で良い条件を引き出すことには関心をもっている。また、施設の雇用者は安全と思うから働くのであって犠牲者であるとの意識はない旨回答された。

(安全評価期間について)

   7)
一般に説明可能な安全性を保証できる期間は1万年なのか100万年なのかとの質問に対し、モリソン局長から、1万年以下で処分場の放射能レベルはウラン鉱床と同じくらいのレベルにまでさがる、サスカチュアンにある数百メートルの深さウラン鉱床では表面からは放射能が全く検出されない、1万年以上経って状況が悪くなることはないから1万年が妥当な期間である旨回答された。パップ局長から、国により安全性を保証すべき期間は異なるが、スウェーデンでは最初の1000年から1万年が最も関心があるとされている、また定性的であってもシガーレイクなどのウラン鉱床のナチュラルアナログ(類似した天然現象)の調査により、これらのアナログが何万年何百万年安定に推移してきたかが分かるのでナチュラルアナログと処分場の安全性評価との関連について理解が深まる旨回答された。

(その他)

   8)
スウェーデンの場合、2010年までに原子炉を段階的に廃止することが地層処分を進めることにプラスに働いているのかとの質問に対し、パップ局長から、この政策と地層処分の推進とは直接関連していないこと、また、この政策自体も経済的理由から反対している人も多く最終的な意思決定はなされていない旨回答された。


(5)座長の謝辞の後、閉会した。