資料(専)8−3

原子力バックエンド対策専門部会報告書案に対する意見についての検討状況


1.研究項目の提案等について

(1)廃棄物が地下深部の地質環境に与える熱的な影響等の評価が行われようとしていな
   い
−第1次取りまとめにおいて熱的影響についても検討され、安全性の見通しが示されてい
 る。第2次取りまとめでも、より詳細な評価が行われることになる。

(2)TRU廃棄物処分の方針を示す報告が早く必要
−TRU廃棄物については、原子力長計に沿って、1990年代末を目途に具体的な処分概念
 の見通しが得られるよう技術的検討を進めることとされている。

(3)地質環境条件を絞って、より精度の高い地下水流動の解析と実測値との比較が必要
−第2次取りまとめに向けた研究開発は、原子力長計に沿って、当面、対象とすべき地質
 環境を幅広く想定して進めることになる。

(4)堆積岩についてスイスのデータなどの取得を検討すべき
−スイス等の海外の各研究機関とは共同研究を推進しており、海外施設を研究の場として
 活用している。

(5)「地層処分システムの安全評価上の要件」の項目にファーフィールドの評価が必要
−第2次取りまとめでは、ファーフィールドの評価についても行うこととしている。

(6)地球の温暖化現象による海水面上昇を考慮すべき
−温暖化についても考慮していることを明示する。

(7)埋め戻し後も超長期の管理が必要と予想されるため、そのシステムを研究すべき
−本報告書案の第1部第4章に、処分場閉鎖後の状況を必要に応じて把握し管理するため
の技術的な検討を行い、処分場の管理に関する技術的基盤を整える旨記載されている。

(8)キャニスターの耐久性に問題があった場合の対策の検討が必要
−キャニスターは数10年の貯蔵期間中健全性を保つと評価されている。また処分時にはオ
ーバーパック等の多重バリアにより安全性が確保されるよう、安全側に立ってその耐久性
を検討することとしている。

(9)地上からアクセスする沿岸海洋底下地層処分方法を提案
−沿岸海洋底下の地層も研究対象から除いていない。


2.研究方法等について

(1)まず候補地を限定してから詳細調査すべき
−対象地域を限定した詳細な調査については、2000年を目安に設立される処分事業の実施
主体によって、処分候補地や予定地でのサイト特性調査等として実施される。

(2)地質調査の場所は日本全土と処分場周辺といずれなのかが不明確
−第2次取りまとめに向けた研究開発においては、地域を特定することなく、対象となる
地質環境を幅広く想定して、わが国における地層処分の技術的信頼性を示すことが目標と
なっている。

(3)安全評価はどのような過酷な条件よりも安全側で行うのか特殊条件下の処分場を前
   提に行うのかが不明確
−地層処分における安全性については、保守的に評価することによって適切な評価が可能
であると考えられる。

(4)安全評価上の最悪シナリオにどのような事象をどう取り込んで安全評価シナリオを
   作成し、解析評価を行うのかの記述が曖昧かつ不十分
−本報告書案では、地層処分をわが国に適用していくにあたって基本となる技術的考え方
と第2次取りまとめに盛り込まれるべき主な事項について示し、さらに第2次取りまとめ
に向けて実施すべき技術的重点課題を示している。

(5)「気候・海水準変動の影響を被らない地質環境が存在し得る」の記述を削除
−気候・海水準変動による変化を考慮した評価によって安全性を確認することが重要であ
ることを示す。


3.長期的な信頼性、日本の地質学的特性について

(1)遠い将来を過去の履歴で外挿することは不可能
−規則性に基づいて評価することが可能と考えられる。

(2)日本の地質環境が長期的に安定だとは思えない
−天然現象は、それが起こる地域や間隔に規則性が認められ、規則性をより定量的に把握
していくことによって、将来の活動についても推論が可能と考えられる。

(3)処分地は地質学上安定性のより高い所にすべき
−本報告書案では、処分予定地の選定に資するための技術的拠り所として、第2次取りま
とめに盛り込まれるべき主な事項について示している。将来の処分予定地は、この研究開
発の成果も踏まえて適切に選定されるものである。


4.研究体制、実施組織について

(1)研究調整委員会はフルタイムで検討する強力な組織とすべき
−研究調整委員会(仮称)の実効があがるよう、その運営に配慮することは重要である。

(2)動燃事業団を研究開発の中核機関とすることには、国民の支持が得られない
−本報告書案に記載されている通り、国民の理解と信頼を得るために成果をわかりやすく
公表し、透明性を確保することが極めて重要であり、研究開発にあたっては、関係機関や
学会、研究者との幅広い協力を進めるべきと考える。

(3)国際的な専門家によるレビューを受ける必要性が不明確
−国際的なレビューは、客観的かつ透明性を持たせる1つのプロセスとして実施される。


5.地層処分以外の案について

(1)使用済燃料の直接処分は可能で、再処理、地層処分は不要
−わが国は核燃料サイクルの確立を基本方針としている。諸外国において、同じように再
処理路線をとっている国においても、使用済燃料の再処理を行わず直接処分するいわゆる
ワンススルー路線を採用する国においても、同様に地層処分の研究開発に取組んでいる。

(2)高レベル放射性廃棄物は半永久的に地上で管理すべき、処分までに長期の検討・評
   価期間が必要。
−原子力長計に沿って、高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年間から
50年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後、地下の深い地層中に処分することを基本的
な方針としている。

(3)群分離・消滅技術について考え方を示すべき
−群分離・消滅技術については、原子力長計に沿って研究開発を進め、1990年代後半を目
途に各技術を評価し、それ以降の進め方を検討することとされている。

6.処分全般について

(1)高レベル放射性廃棄物は原子力発電に伴って発生するので処分とともに原発につい
   ても国民に問うべき
−高レベル放射性廃棄物の処分は、避けては通れない課題である。

(2)地質の観点から地層処分が安全とは思えない
−地層処分については、わが国をはじめ各国で研究が進められ、安全性の評価方法が確立
されつつある。各国において2000年代初め頃から処分の実施が計画されている。

(3)十分な安全裕度をみるといっても想定以上のことが起こり得るのではないか
−地層処分では多重防護等により安全性をより確かなものにしている。

(4)処分施設の設計・施工技術のさらなる向上が近い将来認められるとは思えず施工、
   建設を中止すべき
−第1次報告書において、地層処分に必要な技術については基本的に現状技術が適用でき
る見通しが既に示されているとともに、第2次取りまとめに向けて研究開発を進めていく
ことにより、さらなる向上が期待できる。

(5)国は研究や事業に関与しないでほしい
−原子力長計において、国は処分が適切かつ確実に行われることに対して責任を負うとと
もに、処分の円滑な推進に必要な施策を策定するとされている。

(6)人工バリア及び処分施設の設定には経済的合理性だけでなく環境・人心・生業等を含
   めた検討が必要
−高レベル放射性廃棄物処分懇談会において、社会的・経済的側面を含む幅広い検討を進
めている。


7.情報公開について

(1)報告書案の公表の周知等情報公開が不十分
−昨年9月25日の原子力委員会決定に基づいて、情報公開及び政策決定過程への国民参加
の促進を図っている。

(2)これまでの分科会、ワーキンググループの議事録、資料の公開を求める
−専門部会は公開で審議されており、議事録及び資料についても公開している。分科会の
検討状況は、専門部会において公開のもとで審議されている。


8.委員構成、スケジュール等について

(1)部会等構成員の人材をもっと広い分野から求めるべき
−本専門部会はさまざまな分野の委員から構成されている。第2次取りまとめに向けた研
究開発にあたっては、関係機関や学会、研究者との幅広い協力を進めるべきと考える。

(2)研究開発の一層の促進、今世紀中に処分の見通しが得られるよう要望
−原子力委員会は、本報告書を踏まえて研究開発を一層推進するとともに、高レベル放射
性廃棄物処分懇談会での社会的・経済的側面を含めた幅広い議論を通じて、処分の円滑な
実施へ向けた処分対策の全体像をできる限り速やかに明らかにするべく、一層の努力を傾
注する旨を決定しており、今後これに沿って進められることとなる。

(3)長計のスケジュールにとらわれるべきではない
−本報告書案は、原子力長計に基づいて、今後の研究開発の進め方について検討したもの
である。

(4)「はじめに」の円卓会議の引用の趣旨が異なる。原子力開発利用を前提とした文を
   修正すべき
−円卓会議モデレーター提言「バックエンド対策の確立は原子力の総合安全性の向上とい
う意味できわめて重要であり、地層処分実施の手順の確立等、高レベル放射性廃棄物に関
わる処分の具体策を出来るだけ速やかに策定し、またその内容を国民にわかりやすく提示
することが必要である。」を引用する。


9.表記、言い回し、用語等の修正・データ等の記載について

(1)日本の地質環境の特性の項に現状の知見を追記すべき
−第1部第2章「1.日本の地質環境の特性」の項において日本の特性を明記する。

(2)深部の地質環境はすべて安全であると読めるところなどの表現を修正すべき
−第1部第1章8行目「深部の地質環境は、極めて長期の地質学的時間にわたり安定であ
ると考えられている。」の表現を一般的な表現に修正する。
(3)意図的な接近シナリオの考え方の表現がわかりにくい
−第1部第3章1(1)の「意図的なものについては保安上の問題と考えるべき」についてわ
かりやすく修正する。

(4)放射性廃棄物安全規制専門部会にも言及してはどうか
−安全規制の視点から、原子力安全委員会のもとで放射性廃棄物安全規制専門部会によっ
て進められる。

(5)いくつかの用語の解説を追加すべき
−一般の人にわかりやすいものにするため、『性能評価(シナリオ)』、『放射線量』等
の用語解説を追加する。

(6)廃棄物の量的前提が必要
−高レベル放射性廃棄物の総量等を示すため、ガラス固化体の発生量と高レベル事業推進
準備会報告書(平成8年5月)の処分場の想定データ等を記載する。

(7)用語集の「広域地下水流動系」の説明では、深層地下水も川や分水嶺で区切られ大
   きな水のやりとりがあるように読める
−深層地下水について、より正確な記述となるよう修正する。


   (別記)    高レベル放射性廃棄物対策分科会構成員

      飯 山 敏 道     東京大学名誉教授

      稲 葉 次 郎     放射線医学総合研究所研究官

      岡 田 義 光     防災科学研究所地震調査研究センター長

      小 出   仁     通産省工業技術院地質調査所部長

      小 島 圭 二     東京大学教授

      駒 田 広 也    (財)電力中央研究所部長

      桜 井 直 行    (財)環境科学技術研究所理事

   主査 鈴 木 篤 之     東京大学教授 

      鈴 木 康 夫     高レベル事業推進準備会専務理事

      田 代 晋 吾    (財)原子力環境整備センター理事

      辻 川 茂 男     東京大学教授

      徳 山   明     兵庫医科大学教授

      服 部 拓 也     東京電力(株)部長

      東   邦 夫     京都大学エネルギー理工学研究所長

      東 原 紘 道     東京大学教授

      増 田 純 男     動燃事業団環境技術開発推進本部副本部長

      村 岡   進     日本原子力研究所環境安全研究部次長

      渡 辺   隆     上越教育大学教授