今後の核融合研究開発の推進方策について

− 別冊 −

− 用語解説 −



平成17年10月26日


原子力委員会
核融合専門部会


 ●まえがき

・自己点火条件*1
 重水素(D)とトリチウム(T)を燃料としたプラズマを考えて、外部から加熱した場合、加熱入力により温度が連続的に上昇し、核融合反応で生じたアルファ粒子の加熱が、プラズマからのエネルギー損失とバランスする点に到達する。この条件が自己点火条件であり、この条件下では、外部からの連続的な加熱入力を遮断しても核融合反応を維持することが可能であると考えられる。この条件に到達するためには、プラズマエネルギーの閉じ込め時間、プラズマ温度、プラズマ密度がある関係を満たす必要がある。臨界プラズマ条件より、高い閉じ込め性能が要求される。

・長時間燃焼*2
 DとTを燃料とした核融合炉において、DT反応等が継続的に長時間維持された状態をいう。核融合反応を熱源と考えて、化学反応による燃焼に例えている。

・国際熱核融合実験炉(ITER)計画*3
 制御された核燃焼プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的・技術的実現性を実証することを目指したトカマク型の核融合実験炉計画。1992年から日本・米国・欧州・ロシアの国際協力として推進され、9年間の工学設計及び、主要機器の技術開発を行った。現在、建設に向けた正式な政府間交渉が、日本・欧州・ロシア・米・中・韓で行われている。





●第1章
1.1 エネルギー・環境問題解決への核融合の役割

・核融合エネルギー*4
 核融合反応によって発生するエネルギー。1gの重水素(D)とトリチウム(T)燃料の核融合反応から発生するエネルギーは、タンクローリー1台分の石油(約8トン)を燃やしたときの熱量に相当する。


1.2 原子力政策における核融合研究開発の意義・必要性

・トカマク方式*5
 トロイダルな形状の閉じ込め方式でプラズマは磁場により閉じ込められる。主たる磁場はトロイダル方向のトロイダル磁場であるが、これだけではプラズマを閉じ込めることができない。プラズマの圧力と磁力がバランスして平衡を保つためにはポロイダル磁場も必要である。ポロイダル磁場は、プラズマ中にトロイダル方向の電流を流すことにより作られる。プラズマ電流はオーム加熱の原理により、プラズマ加熱としての役割も果たしている。旧ソビエトのクルチャトフ研究所で考案され、その優れた閉じ込め性能のために世界各国の研究所で、この形式のプラズマ実験装置が建設され研究されてきた。

トカマク方式

・ヘリカル方式*6
 トロイダルな形状の閉じ込め方式でプラズマは磁場により閉じ込められるのはトカマクと同様である。しかし、トカマクと異なり、プラズマ閉じ込めに必要なポロイダル磁場をプラズマ電流ではなく外部コイルにより形成する。外部コイルとしては、螺旋状のねじれたコイル(ヘリカルコイル)あるいは複雑な形状をしたモジュラーコイル等が用いられている。このような方式よってプラズマを閉じ込める方式をヘリカル方式と呼ぶ。

・レーザー方式*7
 高強度レーザーを用いて、直径数mmの燃料小球を、等方的に爆縮(断熱圧縮)させ、瞬時に超高密度・高温プラズマを生成し、核融合反応を起こさせる方式をレーザー方式と呼ぶ。

・プラズマ*8
 温度の上昇とともに物質の状態は一般に固体から、液体、気体へと変化してゆく。さらに高温になると、原子核のまわりを廻っている電子がはぎとられて原子は正の電荷を持つイオンと負の電荷を持つ電子に分かれて(イオン化)、両者が高速で不規則に運動している状態になる。この状態をプラズマという。核融合では、温度が数億度に及ぶ超高温プラズマが対象となる。プラズマは雷やオーロラなど自然界に広く存在するが、身近な例としては蛍光灯などの希薄な気体中の放電によって作られるプラズマがある。

・臨界プラズマ試験装置JT-60*9
 臨界プラズマ試験装置JAERI Tokamak-60の略称であり、日本原子力研究開発機構那珂核融合研究所で稼働している世界最大級のトカマク装置(主半径R=3.4m、小半径a=1.0m、トロイダル磁場Bt=4.0T、プラズマ電流Ip=3.0MA)である。米国のTFTR(運転終了)、欧州のJET装置と併せて3大トカマクといわれた。JT-60で達成された5.2億度を越える世界最高温度は、ギネスブックにも登録されている。

・臨界プラズマ条件*10
 プラズマに注入したパワーと核融合反応で発生したパワーの比をエネルギー利得Q値として定義する。臨界プラズマ条件とはプラズマイオンが同数の重水素と三重水素で構成される時にQ=1となるプラズマであり、臨界プラズマ条件はプラズマ温度、及びプラズマ密度とエネルギー閉じ込め時間の積によって与えられる。JT-60(日本)とJET(欧州)では、臨界プラズマ条件を越えるプラズマパラメータが達成されている。

・炉心プラズマ*11
 核融合炉を目指した研究において作られるプラズマの総称。

・学術研究*12
 一定の理論に基づいて体系化された知識と方法としての学問と芸術の総称である学術に関する研究のこと。ここでは、自然科学としての核融合に関する学問の研究を意味する。核融合の実現を目指す上で、体系化された知識として確立することを優先することにより、研究の進展を図る。

・開発研究*13
 実用に供することを目的として系統的に実施する研究開発のこと。開発のための重要課題/達成目標の選定、その課題解決の手法分析、研究の実施による目標の達成を優先する。





●第2章
2.1 概要

・炉工学*14
 核融合炉を開発していく上で不可欠な工学開発(ブランケット技術、超伝導コイル技術、炉構造・遠隔保守技術、加熱・電流駆動機器技術、プラズマ対向機器技術、トリチウム燃料給排気・循環処理技術、計測・制御機器技術、核融合中性子工学技術、核融合材料技術、安全工学技術、等)の研究分野。

・ITER物理R&D*15
 ITER物理R&D活動は、各極が自主的に進めている研究開発の成果をITER工学設計活動(EDA)に提供するもので1994年から開始した。ITER所長および各局で指名された委員等で構成されるITER物理委員会の下に、7つの専門家グループ(輸送及び内部輸送障壁の物理、閉じ込めデータベースとモデリング、周辺及びペデスタルの物理、スクレイプオフ層及びダイバータの物理、MHD・ディスラプション及び制御、高エネルギー粒子・加熱及び定常運転、計測)が組織された。この活動では、物理課題の摘出と各極から提出される研究成果の検討・評価を行いITER計画に反映した。ITER物理R&D活動は、2001年7月で終了し、この活動はその後、国際トカマク物理活動(ITPA)へ引き継がれた。

・ITER工学R&D*16
 ITER設計活動においてITERの工学的技術を確証するための研究開発。七大工学R&D(ITER中心ソレノイドモデルコイル開発、ITERトロイダル磁場コイル開発、大型真空容器開発、ブランケット開発、ダイバータ開発、ブランケット遠隔保守技術開発、ダイバータ遠隔保守技術開発)を2001年に完遂。

・増殖・発電ブランケット*17
 重水素とトリチウムの反応を用いた核融合炉では、重水素とトリチウムが燃料である。しかし、トリチウムは天然に存在しないため、人工的に作り出す必要がある。そこで、核融合反応が発生しているプラズマを包むような構造体にリチウム化合物を入れて設置し、核融合反応によって発生する中性子を利用してリチウム原子を核反応によりトリチウムに転換することが考えられている。そのためのリチウム化合物及びそれを収納する構造体をトリチウム増殖ブランケットと呼ぶ。また、中性子の運動エネルギーを熱変換しその熱を発電に利用するブランケットを発電ブランケットという。


2.2 実験炉計画

・定常核融合炉*18
 連続的に核融合反応を持続する核融合炉。これに対して、ある一定の時間だけ反応を繰り返して起こし間欠運転するものをパルス炉という。

・主半径・小半径・プラズマ電流・Q値*19
 ドーナツ状のプラズマの大円方向の半径、すなわち、装置の中心からドーナツ状のプラズマの断面中心までの距離を主半径という。ドーナツ状のプラズマの小円方向の半径、すなわち、プラズマ断面の半径を小半径という。大周方向(トーラス方向)に沿ってプラズマに流れる電流をプラズマ電流と呼ぶ。また、核融合反応による出力とそのプラズマ状態を維持するのに必要な加熱入力(すなわちプラズマからの熱損失)の比(Q=出力/入力)をQ値という。

・核燃焼*20
 DDまたはDT核融合反応が起こっている状態を核燃焼という。臨界プラズマ条件や自己点火条件を満たしていなくても、核融合反応が起こっていれば核燃焼プラズマと呼ぶ。太陽では水素の原子核である陽子が4つ融合してヘリウムの原子核となる核融合反応が起こっており、核燃焼している。

・アルファ粒子*21
 DT核融合反応では、3.5MeVのアルファ粒子(ヘリウム原子核)が発生し、数10keVの炉心プラズマ加熱に供する。アルファ粒子は電荷を持つため磁場に閉じ込められ、そのエネルギーは衝突によって徐々にプラズマ粒子に移される。その結果プラズマが加熱される。

・超伝導磁石*22
 超伝導導体を用いた電磁石(コイル)のこと。超伝導導体は、ゼロ電気抵抗であるために、超伝導磁石を運転しても、通常の導体のようにジュール損(熱)が生じない。また、超伝導導体は、小さな断面積で大きな電流を流せるため、コンパクトな電磁石を作るのにも適している。

・真空容器*23
 プラズマを閉じ込めるトーラス状の中空な金属容器。

・プラズマ対向機器*24
 プラズマに直接面する位置に設置される機器の総称である。第一壁、ダイバータ及びリミタと呼ばれる機器等が含まれ、プラズマを取り囲む壁を構成する。


・遠隔保守機器*25
 真空容器の内部の構造物(ブランケットやダイバーターなど)は、核融合反応時に発生した中性子により放射化することから、その構造物が損傷した場合は遠隔操作により修理交換をする必要がある。この遠隔保守のための各種機器の総称のこと。


2.3 炉心プラズマ研究

・エネルギー閉じ込め時間*26
 いかに小さなプラズマ加熱パワーで、高温・高密度のプラズマが得られるかを表す効率。プラズマの加熱を停止した場合、プラズマが冷えて行く時間スケールと同じ。エネルギー閉じ込め時間が長いということは、プラズマが冷えにくいことを意味する。

・プラズマの安定性*27
 トカマクのプラズマは磁場によって閉じ込められているが、プラズマの圧力と閉じ込め磁場の圧力がアンバランスになったり、トロイダル磁場に対してプラズマ電流を大きくし過ぎたりすると、閉じ込め性能が劣化したり最悪の場合プラズマが消滅する。これをプラズマの不安定性と呼ぶ。高い圧力のプラズマを安定に保持するためには、プラズマの圧力やプラズマ電流の空間分布を最適化する必要がある。

・非誘導電流駆動*28
 トカマクは、変圧器の原理(誘導方式)で二次巻線に相当するプラズマに電流を流しプラズマを維持するが、この方法では長時間電流を流し続けることができない。トカマク型核融合炉を定常運転するためには、プラズマ電流を非誘導方式で流す(非誘導電流駆動)ことが必要である。非誘導電流には、プラズマの圧力勾配に応じて自然に流れる電流(自発電流)や、高周波(波乗りの原理による電子電流)や中性粒子入射(イオンによる電流)等の方法を用いて外部から流す(外部電流駆動)ものがある

・熱・粒子制御*29
 核融合炉では超高温プラズマ状態を長い時間保持しなければならない。プラズマを取り囲んでいる壁は著しく高い熱流束およびプラズマ粒子束にさらされるため、壁材料から構成原子が種々の相互作用(昇華、溶融、スパッタリング、昇温脱離等)により、プラズマ中に放出される。放出された粒子が高温プラズマ内にはいるとプラズマ温度が低下し核融合出力の減少につながるため、壁への熱流束を低減して放出量を減らしたり、周辺プラズマでの放出粒子の侵入に対する遮蔽効果を高めたりする必要がある。すなわち、核融合反応が十分起こる状態を長時間保つためには、これらの熱・粒子束を効果的に制御する必要がある。

・トカマク国際物理活動(ITPA)*30
 ITER/EDA 期間中に行っていた ITER 物理 R&D を継承し、2001年からEU、米国、ロシア、日本の4極の研究者が トカマクプラズマの物理解明およびITER 等の核燃焼プラズマの性能検討を行う国際的な研究活動。閉じ込め、輸送物理、ダイバータ、周辺、定常運転、MHD、計測に関連する7つの専門グループと調整委員会がある。

・JFT-2M*31
 高性能トカマク開発試験装置JAERI Fusion Torus-2Mの略称であり、日本原子力研究所東海研究所(那珂研究所所属)で稼働してきた(1982年4月運転開始、2004年3月運転終了)中型のトカマク装置(R=1.3m、a=0.35×0.53m、Bt=2.2T、Ip=500kA)である。Hモードの物理、閉ダイバータによる周辺プラズマ制御、MHDモード抑制、フェライト鋼適合性試験など機動性を生かした研究を実施し、JT-60のダイバータ設計、MHDモード抑制制御やITERの物理R&Dなどに貢献してきた。

・Hモード(高閉じ込めモード)*32
 中性子ビームあるいは高周波を用いた加熱時に、プラズマ表面付近で急激に温度と密度が高くなることで、エネルギー閉じ込め時間が通常の2倍程度に長くなる改善された閉じ込め状態をいう。ダイバータを持つASDEX装置(ドイツ)で最初に発見され、世界のトカマク装置で研究が進展した結果、ITERの標準運転モードとなっている。

・比例則*33
 プラズマの閉じ込め時間が、装置の諸元(主半径、小半径、トロイダル磁場、加熱パワーなど)やプラズマのパラメータ(密度、プラズマ電流など)によってどう変るかを表す関係式。多くの実験データから得られる経験則がよく使われる。オーミック加熱プラズマの閉じ込め、標準的なLモード閉じ込め及び高性能のHモード閉じ込めについて、それぞれ異なった比例則が得られている。ITERの概念設計活動、工学設計活動及び国際トカマク物理活動を通して、世界各国のトカマク型装置のプラズマ閉じ込めデータを集め、ITER設計のために予測精度の高い閉じ込め比例則を導出している。

・ディスラプション*34
 プラズマの内部で、磁場の構造が変化し、プラズマ電流が急速に減少してプラズマが消滅する現象。プラズマ中に大量の不純物が混入した場合等に発生する可能性がある。

・低域混成波*35
 電子サイクロトロン共鳴とイオンサイクロトロン共鳴の中間の周波数帯のプラズマ中の波で、トカマク型核融合炉では数GHz帯となる。高効率の電流駆動が可能であるが、高温、高密度のプラズマでは中心領域の電流駆動が難しいことや、アンテナ先端部の熱負荷が厳しいことから、ITERでは増力時のオプションとして検討されている。

・負イオン源*36
 高エネルギーの負イオンビームを生成する装置。アーク放電や高周波によりプラズマを生成し、プラズマ中での反応やプラズマに接する電極表面での反応を利用し負イオンを生成する。生成した負イオンは、通常複数枚の電極間に印加される電界によって引き出し加速され、負イオンビームとなる。高エネルギーの中性粒子入射装置では、正イオンビームに代わって負イオンビームを用いることにより中性粒子への変換効率を大幅に改善できる。JT-60Uでは400kV以上のエネルギーで試験を行い、プラズマの閉じ込め性能や電流駆動性能の改善が実証された。核融合の加熱装置としてだけでなく、半導体の薄膜作成にも利用されている。

・中性粒子入射装置*37
 中性粒子入射装置(NBI)とは、イオン源で高エネルギーのイオン(1次粒子)ビームを生成し、電荷を持たない高速中性粒子(原子)に変換した後、核融合プラズマに打ち込む装置である。NBIには、1次粒子として、正イオンを用いたものと、負イオンを用いたものがある。ITER等の高密度プラズマの加熱や電流駆動のためには、MeVクラスの高エネルギービームが要求されている。このような高エネルギー領域においては、イオンから中性粒子への変換効率が高い負イオンを1次粒子として用いることが不可欠である。

・電子サイクロトロン波入射装置*38
 電子の回転周波数(電子サイクロトロン周波数)あるいはその整数倍に近い周波数の電磁波をプラズマに入射し、プラズマ中の電子を加熱したり、プラズマに電流を流すための装置。電子サイクロトロン波帯周波数の電磁波(トカマク型核融合炉では100GHz帯)を発生させる大電力高周波源(ジャイロトロン)と、電磁波を伝送させる伝送系(導波管)、電磁波をプラズマに入射する結合系(ランチャー)から主として構成され、周波数が高く、波長がミリメートルレベルであることから、結合系に鏡を用いてレーザー光線のように遠方から入射できるのが特長である。

・燃焼灰*39
 重水素(D)とトリチウム(T)が核反応して発生する3.5MeVのエネルギーを持ったアルファ粒子(ヘリウム原子核)が、プラズマ粒子との衝突で次第にエネルギーを失い低温になったもの。核融合炉の燃焼生成物なので灰という。プラズマ中にこれが残留すると燃料密度が下がり出力が低下するので、効率的に排出する必要がある。


・プラズマ・壁相互作用*40
 トカマク型装置では、主プラズマから出たプラズマ粒子が真空容器壁(第一壁)を衝撃する。この結果、壁表面はスパッタリング、化学反応、蒸発などによって損耗される。また、壁面に入射した粒子は、反射、捕捉、拡散などを経て、プラズマ表面側に再放出される。これらのプラズマと壁との相互作用は、プラズマの不純物制御、密度制御、壁の損耗、壁における燃料滞留量などと密接に関係するので、核融合開発の重要な研究課題となっている。

・トリチウム(T)*41
 原子核が陽子1個と中性子2個からなる水素の放射性同位体。和名は三重水素。半減期12.3年で最大18.6keV、平均5.7keVのβ線を放出し、3Heに壊変。自然界では宇宙線と大気構成元素の核反応によって生成し、その評価量は年間160〜200g程度。

・JETトカマク*42
 EUの大型のトカマク装置(R=3m、a=1.25m、Bt=3.5T、Ip=3.0MA)で、英国・カラム研究所に置かれている。日本のJT-60、米国のTFTRと合わせ三大トカマク型装置と呼ばれている。1983年6月に実験を開始し、その後、装置各部の改良や補強をおこない、1991年の重水素放電で、DT等価Q値1.1を達成した。1991年には世界で初めてトリチウムを重水素中に約10%程度まぜる予備的なDT放電を実施し、1997年には1秒以下の短時間ながら DT反応出力16MWを実現した。その後、ITERの物理データーベース整備のため実験を継続している。

・TFTRトカマク*43
 米国・プリンストン・プラズマ物理研究所の大型のトカマク装置(R=2.4m、a=0.8m、Bt=5.0T、Ip=2.2MA)。TFTRは1982年末に実験を開始した。1988年の重水素放電では、DT等価Q値0.3を達成した。その後はトリチウム取扱施設として整備し、1993年からは重水素とトリチウム比率1:1のDT放電を行った。1994年には温度5.1億度、核融合出力10MWを得た。1997年4月に実験運転を終了した。

・TRIAM-1M*44
 九州大学応用力学研究所の強トロイダル磁場実験装置のこと。世界で初めてNb3Sn(ニオブ三錫)超伝導線材をトロイダル磁場コイル(トロイダル磁場8テスラ)に用いた超伝導トカマク装置。1986年から実験を開始。1987年以降、世界で唯一のNb3Sn超伝導システムの100日間連続運転を毎年実施し、Nb3Snを用いた超伝導コイルの耐久性・安定性を実証した。さらに、高周波のみ(低域混成波を用いた電流駆動)により、トカマクプラズマを長時間(5時間16分:世界最長)維持することに成功した。

・エネルギー増倍率*45
 核融合反応による出力と、そのプラズマ状態を維持するためにプラズマに直接供給される外部からの入力の比。この値が1のときを臨界プラズマ条件、無限大のときを自己点火条件と呼ぶ。JT-60は平成10年6月にこの値が1.25の世界最高値を達成した。

・負磁気シア運転*46
 トカマクプラズマの閉じ込め磁場配位において,内部磁気シアが負となる運転のこと。ここで,磁気シアは、隣り合う磁気面における磁力線の捻れ具合を表し,安全係数 q と体積平均小半径ρを用いてρ/q・dq/dρで定義される。通常のトカマクにおいては、電流分布は中心(磁気軸)で最大となる凸状の分布で、磁気シア はいたるところで正となる。何らかの方法で電流分布を凹状とすると、q が極小値qminを持つようになり、その内側は磁気シアが負の負磁気シア領域となる。このような配位を負磁気シア配位あるいは反転磁気シア(reversed magnetic shear)配位と呼んでいる。負磁気シア配位の運転は、高い自発電流割合との整合性がよく、定常トカマク炉に適した運転と考えられている。

・DT等価エネルギー増倍率QDT*47
 DD核融合反応の実験で得られたプラズマの温度と密度の下で、燃料の重水素の半分がトリチウムに置き換わったと仮定して、DT核融合反応で発生するエネルギーを計算し、それから評価したエネルギー増倍率のこと。


・自発電流*48
 トーラスプラズマにおいて、プラズマ圧力の小半径方向の勾配により磁場に平行方向に自発的に流れる電流。自発電流が多いほど、外部から駆動する電流を減らす事ができるので運転の経済性があがる。トカマク炉の定常化の中心ファクターの一つである。定常トカマク炉では全プラズマ電流の70-80%を自発電流でまかなう事を想定している。

・粒子ビーム*49
 プラズマの加熱や定常維持のための電流駆動を行うため、或いはプラズマの測定を行うために、中性粒子入射装置によって外部からプラズマに入射する原子(粒子)ビーム。中性粒子入射装置では、まず、イオン源でイオンを発生させ、加速してイオンビームとする。イオンのままではトカマクなどの強い磁場で偏向されてしまうので、イオンから電荷を取った中性の原子ビームに変換して入射する。

・高ベータ化*50
 プラズマを閉じ込める磁場の圧力に対するプラズマの圧力比、すなわちベータ値=プラズマ圧力/磁場圧力。ベータ値が高いほど弱い磁場で高い圧力のプラズマを閉じ込めることができる。核融合炉の出力は、プラズマ圧力の自乗×プラズマ体積に比例するため、ベータ値を高めることで、コンパクト(小さな体積)な炉心をつくることができる。すなわち、高ベータ化は、核融合炉の経済性を高める上で、必要不可欠な要素である。

・第一壁*51
 プラズマに直接面する壁の総称。機能的に分類すると、リミタ、ダイバータ板、高熱流防護壁、ブランケット壁等がある。狭義には、壁面が磁気面に平行な位置関係にあるブランケット壁を第一壁と呼ぶ。一般に第一壁はプラズマと直接作用し、大きな熱・粒子負荷を受ける。このため、第一壁から不純物が発生し、これがプラズマに与える影響も無視できない。第一壁の設計は、除熱、不純物放出、粒子リサイクリング率、表面損耗、照射損傷、熱疲労、電磁力等を総合的に評価して行われる。

・低放射化フェライト鋼*52
 核融合発電実証炉のブランケット構造材料の最も有力な候補である。鉄系の耐熱材料を基にして、長寿命の放射性廃棄物を低減するように設計したものであり、鉄に8%のCrと2%のWを添加したF82Hが原研を中核として大学等の協力を得ながら開発された。現在、実用化への最終段階である工学実証段階への移行を目指し、性能評価が進められている。また、強磁性体であるため、プラズマを閉じ込める磁場に悪影響を与えることが懸念されていたが、原研のJFT-2Mでの適合性試験により、大きな問題がないことが実証されてきた。

・強磁性体*53
 鉄、ニッケルのような磁場中で磁化する性質をもつ物質の総称。プラズマ装置に導入する場合、閉じ込め磁場の形状を変化させるので注意を要する。核融合発電実証炉のブランケット構造材料の有力候補である低放射化フェライト鋼も強磁性体である。

・規格化ベータ値*54
 トカマクのプラズマでは、ベータ値の上限はプラズマ電流に比例し、環状磁場強度とプラズマ小半径に反比例することが、広範な実験及び理論計算により示されている。その比例係数を規格化ベータ値と称し、βN(normalized beta value)と記す。このβN値を高めることで、コンパクトで高効率なトカマク核融合炉の実現が可能となる。

・大型ヘリカル装置LHD*55
 自然科学研究機構核融合科学研究所で稼動中の世界最大規模のヘリカル型実験装置。LHDとはLarge Helical Device の略。LHDは、プラズマの閉じ込めに、ねじれた磁場コイル(ヘリカルコイル)を用い、我が国で独自に開発された磁場配位(ヘリオトロン配位)を採用した。2本の超伝導ヘリカルコイルと3対の円環超伝導コイルから構成される。平成10年3月から実験が開始された。ヘリカル方式は本質的に制御性が優れており、将来の発電炉に必要不可欠な定常運転に適しているといわれている。トカマク方式と磁場構造が基本的に異なっていることなどから、トカマク方式と相補的な研究を行うことなどにより、ITER計画推進のための支援装置としての役割が期待されている。

・高速点火方式*56
 高密度に圧縮された燃料に、超高強度レーザーを照射して点火、燃焼させる方式である。中心点火よりもはるかに小さなレーザーで高い核融合利得が得られる。

・FIREX計画*57
 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターで進められており、爆縮プラズマを短パルス超高強度レーザーで瞬間的に加熱することにより、効率的な核融合点火と自己燃焼へのシナリオを明らかにし、高速点火核融合の原理を実証するプロジェクトである。

・CHS*58
 核融合科学研究所の小型のヘリカル型磁場閉じ込め装置(Compact Helical System)。主半径1m、副半径 0.2m、ヘリカルコイルのピッチ数(ひねりの回数)が8。小型装置の機動性を生かしてLHD実験を側面から支援。

・磁場リップル*59
 螺旋状のコイル(ヘリカルコイル)を用いて、ドーナツ状に螺旋状の閉じ込め磁場を形成する場合、コイル間よりもコイル直下で磁場が強くなるため磁場強度に強弱が発生する。このような磁場構造を磁場リップルという。

・高エネルギー粒子*60
 中性粒子入射で生成される高エネルギーのイオン、電場によって加速生成される逃走電子、核融合反応によって生成されるα粒子など通常の熱プラズマより高いエネルギーの粒子を総称する。

・Heliotron-J*61
 京都大学エネルギー理工学研究所のヘリカル型磁場閉じ込め装置。先進的磁場閉じ込め配位(ヘリカル軸ヘリオトロン)により磁場スペクトラムの基本因子(トロイダル、ヘリカル、バンピー)に対する制御自由度を拡大し、磁場配位研究における新しいパラメータ領域の開拓とフレキシブルな実験が可能。

・慣性核融合*62
 高強度レーザー、重イオンビームあるいはZピンチと呼ばれる装置を用いて、固体の燃料に大きなエネルギーを瞬時に注入し、燃料が慣性で止まっている間に、密度と温度を上げて核融合反応を起こさせる方法を慣性閉じ込め核融合という。

・レーザー核融合*63
 高強度レーザーをドライバーとして用いる慣性核融合をレーザー核融合という。

・激光XII号レーザー*64
 大阪大学のガラスレーザーを用いた慣性閉じ込め装置。レーザーのビーム数は12本、エネルギーは30kJ(レーザー波長1.05μm)、15kJ(同0.53μm)、10kJ(同0.35μm)である。

・爆縮*65
 慣性核融合において、強力なレーザー光あるいはレーザー光やイオンビームにより発生させたX線を直径数ミリ・メートルの固体燃料粒子(ペレット)に周囲から一様に入射すると、ペレットはまずその表面がエネルギーを吸収して加熱され、加熱された部分が半径方向に飛散するが、その反作用(ロケットが上昇するときの効果)でペレットは中心に向って圧縮される。この現象を爆縮と呼んでいる。

・中心点火*66
 燃料ペレットに多数の強力なレーザーを照射して、表面に発生するプラズマの圧力で超高密度に圧縮(爆縮)、ペレットの中心に出来る高温プラズマで核融合反応を点火し、周囲を取り囲む燃料を燃焼させる。

・NIF*67
 国立点火施設NIF(National Ignition Facility)は米国Lawrence Livermore National Laboratory (LLNL)研究所で建設中の中心点火方式の慣性核融合装置で、1.8 MJ、0.35μm、192ビームを予定している。

・LMJ*68
 LMJ(Laser Mega Joule)は1993年にフランスの原子力委員会(CEA)によって承認され、現在、建設中の中心点火方式の慣性核融合装置で、2MJ、0.35μm、240ビームを予定している。

・超高密度プラズマ*69
 慣性核融合では、まず強力なレーザー光をミリメートルサイズの球殻燃料ペレットに均一に照射する。高圧のプラズマができ中心に向けて球殻燃料が加速し、燃料が圧縮(爆縮)し固体密度の数100〜1000倍以上の超高密度状態が作られる。これを超高密度プラズマという。

・超短パルスレーザー*70
 超短パルスレーザーは、発光している時間が非常に短く(通常はパルス幅1psから数十fs以下:ps=ピコ秒=10-12sec、 fs=フェムト秒=10-15sec)、高いパワーをもつレーザーである。

・ペタワットレーザー*71
 出力が1PW(ペタワット、ペタは1015、1000兆ワット)を超えるレーザー装置。

・逆磁場ピンチ*72
 トロイダル方向に強い電界をかけ、トロイダル磁場に比べて大きなプラズマ電流を発生させることでドーナツ状のプラズマを形成する方式。プラズマの中心部と周辺部で磁場の方向が逆向きになるので、逆磁場ピンチ方式と呼ばれる。

・TPE-RX*73
 産業技術総合研究所の逆磁場ピンチ型装置。RFP装置では世界最大級。

・ポロイダル電流駆動*74
 逆磁場ピンチ方式では、プラズマに大きな電流を流すことができる利点がある反面、その閉じ込め磁場は、プラズマ中で発生する不安定性によって生成・保持されるため、エネルギー閉じ込め性能に課題がある。そこで、回転磁界を用いてポロイダル方向に電流を流すことで、不安定性に依存することなしに磁場構造を保ち、エネルギー閉じ込め性能を向上する研究が進められている。

・ミラー閉じ込めプラズマ*75
 磁場閉じ込め方式の中で開放型装置と呼ばれる直線状の装置の一つ。2個の円形のコイルに同方向に電流を流すと、コイルの所で磁場が強く、コイルの中間で磁場が弱くなり、磁力線が2個のコイルの所で絞られた磁場ができる。磁力線に対して垂直方向に大きな速度成分を持った荷電粒子は磁場の強いところで反射され、2個のコイルの間に閉じ込められるので磁気ミラーと呼ばれる。一方で平行方向に大きな速度成分を持った荷電粒子は、磁気ミラーの両端から流失してしまう。両側にさらに磁気ミラーを設置し、電位の高いプラズマを形成することで流失を抑制できる。このように磁場と電位によってプラズマを閉じ込める装置をタンデムミラー型装置という。

・GAMMA-10*76
 筑波大学プラズマ研究センターで運転中の複合ミラー型装置。中央ミラー間距離は6m、全長約27m。
 軸方向閉じ込めを改善するため、装置両側に設置されているプラグ部において電子サイクロトロン共鳴加熱を行い、イオン閉じ込め電位を形成している。

・電位形成*77
 プラズマ中で形成される電位はプラズマの閉じ込め性能に関連することから、電位形成・電位によるプラズマ閉じ込め向上の機構解明が推進されている。

・コンパクトトーラス*78
 装置の簡素化・コンパクト化を図るため、トカマクのようなトロイダルコイルを用いずに、プラズマ中に電流を流すことによってはじめて閉じたトーラス状の磁場を形成しプラズマを閉じ込める装置。逆転磁界ミラー、逆転磁場配位、スフェロマック等がこれに含まれる。

・磁気リコネクション*79
 磁気リコネクションとは、プラズマ中の電気抵抗等に起因して、反平行成分を持つ磁力線同士がつなぎ換わることで、実験室や天体プラズマに自己組織化等の多彩な非線形時間発展・緩和現象を誘起する中心的な現象である。磁力線のつなぎ換えが生じると、異なる磁力線上のプラズマが混合し、磁気エネルギーがプラズマの熱・運動エネルギーに変換される。

・球状トーラス*80
 通常のトカマクでは、プラズマアスペクト比A(=プラズマの主半径/小半径)がA=3程度であるのに対して、プラズマアスペクト比が極端に小さい(A<2以下)装置を球状トカマクと称す。ベータ値が数10%のプラズマも実験的に達成されており、トカマクの高性能化に貢献する研究が行われている。

・TST-2*81
 東京大学で運転中の球状トカマク装置。Bt=0.2-0.4T、Ip=200kA, アスペクト比 A=1.6 (>1.5)。

・LATE*82
 LATE(Low Aspect ratio Torus Experiment)は、京都大学で運転中の低アスペクト比の球状トカマク装置(A=1.3、Ip=3kA、非円形度=1.3)。オーミック加熱を用いずに GHz 帯のマイクロ波だけを用いる球状トカマク装置で、特に、電子サイクロトロン波帯の高周波を用いた、中心ソレノイド無しでの低アスペクト比球状トカマクの生成・維持のユニークな研究を中心に行っている。

・TS-3/TS-4*83
 東京大学で運転中の装置で、単一装置で磁場反転配位、逆磁場ピンチ、スフェロマック、球状トカマクまですべての内部電流系球状トーラスの生成、相互比較が可能なユニークな核融合プラズマ実験装置である。特に、大きな特長となっているのは上記のトーラスを複数生成してそれらの軸方向合体・磁気リコネクションが検証できることである。

・内部導体装置*84
 プラズマ内部に置いた導体に電流を流して安定な閉じ込め磁場配位を作り、プラズマの閉じ込めを行う装置をいう。核融合炉への適用には工学的な難しさがあるが、電磁流体力学研究や閉じ込め物理などの核融合プラズマの基礎研究として重要な役割を果たすことが期待されている。

・緩和理論*85
 プラズマ中の緩和とは、巨視的な乱流状態を通して、磁場のエネルギーが最小の状態に落ち着くことである。これは、逆磁場ピンチプラズマにおいて確認された。

・Proto-RT/Mini-RT*86
 東京大学で建設・運転されている小型の内部導体装置(常伝導コイルのProto-RT と超伝導コイルのMini-RT)である。特にMini-RT 装置では、磁気浮上コイルに高温超伝導線材を用いている。

・CSTN-IV*87
 名古屋大学の小型のトカマク型プラズマ閉じ込め装置で、プラズマ電流1kA,電子温度10〜20eV程度のプラズマを生成することができる。世界でも稀な放電パルスの高繰返し特性を持ち、完全交流放電や運転責務50%の高繰り返しパルス放電が可能であり、長時間放電の模擬も可能となっている。

・NAGDIS-II*88
 名古屋大学の直線型ダイバータ・プラズマ模擬実験装置(Nagoya University Divertor Simulation)。プラズマ柱が長く大口径の高熱流プラズマ生成を目的として建設された。定常高熱流プラズマにより、ダイバータ領域におけるプラズマ・壁間相互作用の研究をすることができる。

・デタッチメント現象*89
 ターゲット板へのイオン束が消失し、プラズマ熱流束が大きく減少する状態であり、ガス注入により粒子リサイクリングを高めダイバータ部で高密度・低温プラズマを形成したときに観測される。プラズマ粒子の再結合や荷電交換反応による運動量の損失が原因である。デタッチメント状態では、中性粒子の電離される領域が、ターゲット板近傍から離れる。同時に、放射損失・荷電交換損失の強く発生する領域が上流に移動し、停留する。核融合炉では、ターゲット板への熱流束低減のためにこの現象を利用することが考えられている。


2.4 炉工学研究

・超伝導磁石*90
 超伝導導体を用いた電磁石(コイル)のこと。超伝導導体は、ゼロ電気抵抗であるために、超伝導磁石を運転しても、通常の導体のようにジュール損が生じない。また、超伝導導体は、小さな断面積で大きな電流を流せるため、コンパクトな電磁石を作るのにも適している。

・ニオブ・スズ*91
 超伝導コイル用線材のひとつで、化学式はNb3Sn。-260℃程度まで冷やすと、電気抵抗がゼロとなる超伝導状態になる。超伝導特性はニオブ・チタンに比べ非常に優れているが、金属間化合物であるため、化合物生成のために導体を熱処理する必要がある。材料としては非常にもろいが、近年の製作技術の進展により、磁場が高いコイルに用いられるようになってきている。ITERのトロイダル磁場コイル、中央ソレノイドに採用されている。

・遠隔保守*92
 真空容器の内部の構造物(ブランケットやダイバーターなど)等は、核融合反応時に発生した中性子により高度に放射化することから、直接、人が近付くことができない。したがって、それらの構造物が損傷した場合は、ロボット技術等を用いた遠隔操作による保守補修をする必要がある。この技術及び機器のことをいう。

・ブランケット*93
 核融合反応発生装置において、核融合が発生しているプラズマを包むように設置される構造体を、ブランケットという。ブランケットの機能は、真空容器やその外側の超伝導コイルを中性子から遮蔽、核融合反応によって発生する中性子を利用してリチウム化合物をトリチウムに転換、中性子をうけてその運動エネルギーを熱に変換する、などの機能のいずれかを担う。

・炉内自走式保守システム*94
 「遠隔保守機器」のひとつ。保守時に真空容器内に敷設したレールを真空容器の回りから多点で支持し、支持されたレール上を移動可能な自走式ロボット(ビークル型マニピュレータ)などを用い、真空容器内の構造物の保守補修作業を行うシステムのこと。

・接合技術*95
 ここでは主として異種材料同士を接着するための技術を指す。プラズマ対向機器においては、ろう付けや拡散接合法などの接合方法が利用される。

・ダイバータ板*96
 プラズマ周辺の磁力線の形状を工夫して、主プラズマの外に流出した荷電粒子が直接近くの壁に当たらないように中性化板(ダイバータ板)あるいは排気部(ポンプ)に導くようにした装置で、特にプラズマ中の不純物を減少させるのに効果がある。

・トリチウムプロセス研究棟(TPL) *97
 日本原子力研究開発機構のトリチウムプロセス研究棟。核融合炉開発に向けたトリチウム工学技術の研究開発施設であり、国内唯一(核融合研究では現在世界最大規模)のグラムレベル大量トリチウム取扱施設(トリチウム貯蔵許可量は22.2PBq=約63g)。これまで、核融合炉燃料システムの主要プロセス(燃料精製・捕集・同位体分離・貯蔵)の基本特性を把握し、ITER等の次期核融合装置の設計に反映するとともに、15年以上にわたるトリチウム安全取扱・施設運転管理の実績を蓄積。最近では、ブランケット増殖トリチウム回収システム開発を重点とし、トリチウム汚染防止・除染等に関する研究にも幅広く利用されている。

・システム統合技術*98
 核融合炉の構成機器は、炉の運転中は単独の要素技術試験では経験することの無かった熱、粒子、放射線、電磁力負荷の複合的環境下での安全性と信頼性が求められ、これら機器が総合システムとして機能させるための技術をいう。

・核融合中性子源施設FNS*99
 FNS(Fusion Neutronics Source)は日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター 原子力科学研究所にある加速器型の核融合中性子源であり、重水素イオンを加速器で約400kVに加速し、トリチウムTを吸着させたターゲットに入射させて、DT反応により発生する14MeV中性子を発生させるものである。最大ビーム電流は20mA、最大中性子発生量は2×1012個/秒であり、現在世界最強である。これまで、トリチウム生成率、核発熱、誘導放射能、遮蔽性能の測定などDT中性子の反応に起因する各種物理量の測定実験や核設計コードの計算精度評価のための実験的研究等が行われてきたが、現在ではさらに機能材料の照射効果、材料損傷の核的現象の実験、核計装用検出器の開発等の研究にも盛んに利用されている。

・リチウム化合物*100
 リチウムの化合物。核融合炉では、天然には極く微量しか存在しないトリチウムを核融合炉自身で生産するための材料(トリチウム増殖材)として用いられる。酸化リチウム(Li2O)、チタン酸リチウム(Li2TiO3)、ケイ酸リチウム(Li4SiO4)、リチウム合金(Li17Pb87等)、溶融塩(FLiBe等)等が候補材である。

・固体微小球充填型固体増殖ブランケット*101
 トリチウム増殖材及び中性子増倍材を微小球として用いた固体増殖ブランケット。トリチウム増殖材及び中性子増倍材が受ける中性子照射効果によって、熱・機械特性が劣化しないように、増殖材及び増倍材を微小球にして充填する。

・照射損傷量(dpa)*102
 displacement per atomの略であり、中性子照射によって材料の構成原子が格子点からはじき出される割合を示す指標である。1dpaの照射損傷量は、材料の構成原子が平均すると1回格子点からはじき出されたことを意味する(あくまでも平均であり、個々には2度はじき出されたり、はじき出されない構成原子もある)。

・放射化*103
 核融合反応中性子との相互作用により、材料(特に真空容器内部の機器・構造材料等)は放射化する。その放射化生成核種の種類(半減期、放射線種、エネルギーなど)と濃度を総合して、放射化レベルを判断する。例えば、放射性廃棄物の処理処分については、放射化レベル(放射性核種の濃度レベル)に応じ、高βγ廃棄物・低レベル廃棄物・極低レベル廃棄物及びクリアランスレベルなどに分類し、レベル毎に適切に処分する。

・材料照射試験装置*104
 中性子照射による材料の損傷及びその結果生じる特性の変化を試験するための試験装置。現在利用できるのは、照射用のポートが設置されている原子炉が主である。材料特性は照射環境、特に温度に敏感であるため、照射装置では温度制御・計測が重要な機能とされる。

・中性子*105
 英語ではニュートロン(nとも書く)といい、素粒子の一つである。陽子とともに原子核を構成する。電荷は0、質量は1.6749×10-27kgである。単独では不安定で、半減期12.5分でβ-崩壊して陽子に変わる。電気的に中性で原子核内に容易に入ることができるので、核反応を起こすのに使われる。単位面積を毎秒通過する中性子の数は、中性子束(Neutron Flux)密度と呼ばれる。単位は中性子数/(m2・秒)である。ちなみに、単位体積に存在する中性子の数は中性子数密度、または中性子密度(Neutron Density)と呼ばれる。

・国際エネルギー機関IEA*106
 石油資源需給問題などを契機に発足したOECD傘下の国際エネルギー機関。供給構造を改善することを目的として1974年11月に設立。主要な任務の一つに代替エネルギー源の開発をするための加盟国間の協力の推進がある。

・国際核融合材料照射施設IFMIF*107
 IEAのもとで、日、米、EU、ロシアの協力で検討を進めている国際核融合材料照射施設。40MeVに加速した重水素イオン・ビームをリチウム標的に照射すると、核反応の結果、14MeV付近の中性子が効率よく発生するため、これを材料に照射して核融合炉環境を模擬した状態での特性の変化を試験する。

・ニオブアルミ線材*108
 近年開発が進められている超伝導コイル用線材のひとつで、化学式はNb3Al。-260℃程度まで冷やすと、電気抵抗がゼロとなる超伝導状態になる。超伝導特性はニオブ・スズよりも優れており、特に線材に印加される機械的歪みに対する劣化が少ないため、ニオブ・アルミ生成熱処理の後にコイル巻線を行うリアクト・アンド・ワインド法の採用などコイル製作を容易にすることができる。原研においては、ジェリーロール法によるニオブ・アルミ線材製作技術の開発を進めてきた。

・エネルギー変換効率*109
 電気エネルギーからレーザーエネルギーへの変換の効率、あるいはレーザーエネルギーから核融合エネルギーへの変換の効率。レーザー核融合炉が成立するためにはこの2つの効率の積が10以上必要である。

・レーザーダイオード励起固体レーザー(DPSSL)*110
 レーザーダイオード (LD) を励起源とした LD 励起固体レーザー (DPSSL) は、励起する相手の吸収スペクトルに合致した狭い線スペクトルの発光を利用するので、効率が良く、またそれにともなって不要な発熱も少ないため繰返し動作が可能である。LD 励起固体レーザーは一般的に10% 以上の効率、10Hz 以上の高繰り返し動作が実現されている。80年代後半から高出力・高効率なLDの出現によって、 LD 励起固体レーザー (DPSSL) は急速に出力レベルおよび動作性能が向上した。連続モードでは10kW以上のレーザー出力が得られるようになった。

・HALNAレーザー*111
 HALNA(High Average power Laser for Nuclear fusion Application)は、核融合炉用レーザードライバーとして開発中のDPSSLを使用したレーザーシステムであり、10Hz程度の繰り返し動作で、比較的高いエネルギー出力を目指している。

・エキシマ(KrF)レーザー*112
 本質的に反結合性を持った基底状態にある分子の遷移で作用し紫外線(248nmなど)で発振する稀ガス・ハロゲン化物を用いたガスレーザー。エキサイテッドダイマーの破壊による発光現象を利用している。主に半導体製造(リソグラフィー)に用いられる。

・照射効果*113
 粒子線等の照射によって生じる材料の変化。核融合炉の場合は、14MeV中性子による照射効果が大きな問題となる。高エネルギーの中性子の照射は、直接・間接に材料に弾き出し損傷、核変換損傷、電子励起などの効果をもたらし、これによって材料の特性が変化する。

・材料照射損傷モデリング*114
 材料の照射効果のモデリングのこと。照射による材料の変化には、次のような特徴がある。材料の照射効果は弾き出し損傷や核変換損傷による点欠陥・異種原子の発生に始まり、これらの拡散による消滅、あるいは合体による欠陥集合体の形成等の過程によってミクロ組織的変化が引き起こされ、さらにはそれが、例えば変形のミクロ過程である転位の運動に影響を及ぼし、マクロな特性である強度特性が変化する。

・電磁熱構造解析*115
 核融合炉の真空容器や真空容器内構造物には、核融合に特有の電磁力(電磁応力)や核発熱に応じた熱応力が作用する。真空容器や真空容器内構造物は、これらの応力に対して十分な構造健全性を有するように設計する必要があるが、その設計のための電磁力・核発熱・応力等の評価解析手法の総称。

・中性子輸送*116
 核融合、核分裂またはその他の核反応によって発生した中性子が、エネルギーを変えながら空間的に移動していくこと。


2.5 核融合炉システム設計

・核融合炉SSTR*117
 75%を自発的に発生する電流でプラズマ電流を担う定常トカマク型核融合動力炉Steady State Tokamak Reactor の略称。自発電流を利用して定常運転を可能にする炉概念であり、原研が1990年に提案し現在の定常トカマク炉の原型となった。

・高経済性炉CREST*118
 コンパクト且つ低コストを目指した負磁気シアー配位のトカマク炉Compact Reversed Shear Tokamak の略称。電力中央研究所が1997年に提案した高経済性を追求した炉概念である。


2.6 安全性研究
2.7 学術基盤の構築

・遷移現象*119
 系がある特定の状態から別の状態に突然飛び移ること。

・リミットサイクル*120
 有限な長さを持つアトラクターのこと。遷移、逆遷移の繰り返しのことであり、周期運動に対応する。

・レーザー核物理*121
 超高強度レーザーの持つ強い電場により原子核に影響を与え、核の性質を調べる学問。

・高エネルギー密度科学*122
 星の中心部でしか得られないような非常に高い圧力の下での極限状態を調べる科学。

・第一原理*123
 物理現象を支配する法則のうち、より基本的な原理・法則のこと。プラズマ物理学では、荷電粒子の運動方程式、マックスウェルの電磁場の法則がこれに対応する。

・電磁流体不安定性*124
 プラズマを構成する多数の荷電粒子の集団運動により引き起こされる不安定性。プラズマ閉じ込め領域からのプラズマの消失等をもたらす場合がある。

・静電揺動*125
 磁場の変動を伴わなくても励起される揺動の総称。ドリフト波、イオン温度勾配不安定性、電子温度勾配不安定性等がある。

・ジャイロ運動論*126
 荷電粒子は磁力線に巻きついて運動するが、その旋回運動(ジャイロ運動)に注目してプラズマ粒子の運動を記述する理論モデル。荷電粒子の運動はプラズマ物理学における第一原理の一つと考えられるが、多粒子系である核融合プラズマの挙動を直接、粒子シミュレーションから予測することは不可能である。そのため、プラズマの挙動に対して重要なジャイロ運動効果を残しつつ、多粒子系の自由度を低減した理論モデル。

・MHD非線形ダイナミックス*127
 非線形効果が重要になる電磁流体力学的な挙動のこと。近年、不安定性の突発的発生や、実験で観測される不安定性の成長率等を説明するために重要と考えられている。

・内部輸送障壁*128
 プラズマ内部に局所的にプラズマ閉じ込めのよい領域が現れる現象。この障壁近傍では、密度分布、温度分布等が大きな勾配を持つことが観測される。

・核燃焼プラズマ統合コード*129
 複数の物理シミュレーションコードを組み合わせて使用することにより、単一の物理モデルや物理コードでは予測不可能な複雑なプラズマ現象を解明し、核燃焼プラズの定量的予測を行うシミュレーションコード。


2.8 産業界への波及効果

・選択排気技術*130
 プラズマを長時間安定して燃焼させるためには、核融合反応灰物質であるヘリウムを連続的に除去しなければならない。選択排気技術では、水素同位体燃料とヘリウムの各々に対するゼオライト吸着剤の吸着親和力差を利用して、混合排ガス中の未反応燃料とヘリウムを各々の成分に連続的に分離し、燃料成分は再度、炉心プラズマ中に注入して燃料利用効率を向上させる。具体的には、ゼオライト吸着剤を充填した分離管とターボ分子ポンプ等の機械式ポンプから構成される真空排気システムにより行われる。本技術は、吸着剤と混合ガスの組み合わせを適宜選べば、一般の混合ガスの分離にも適用することが可能であり、地球温暖化ガスの一種である全フッ素化化合物(PFC)ガスの分離・回収にも応用されている。

・ペレット技術*131
 レーザー核融合研究で開発されたペレットの生成技術。特に、エマルション法により製作される中心点火用燃料容器の真球性は99.98%に及ぶため、この高い精度を利用し、衝撃センサーに応用する研究がある。

・極紫外光源*132
 極端紫外光(EUV)は,エキシマレーザー (波長:〜200nm)よりも一桁以上短い波長を持つ光で、次世代半導体製造のリソグラフィー用光源として有望と考えられ、その開発が急務となっている。


2.9 人材育成
2.10 国際協力





●第3章
3.1 核融合エネルギー早期実現のための開発戦略

・電磁誘導を用いた間欠運転方式*133
 トカマク型実験装置が発明された当時は、トカマクはトランスの原理(電磁誘導)によりプラズマを発生させるため、間欠的な運転しかできないと考えられていた。このような間欠的な運転の方式を間欠運転方式という。

・定常炉心プラズマ*134
 定常炉心プラズマは、炉心プラズマ*11が定常に維持できている状態をいう。

・プラント効率*135
 核融合反応で発生する熱エネルギーを電気などの異なるエネルギー形態に変換するときの効率。

・トリチウム増殖率(TBR)*136
 核融合炉において、燃焼するトリチウム量に対する、トリチウム増殖ブランケットでのトリチウム転換量の割合をトリチウム増殖比(Tritium Breeding Ratio (TBR))という。

・中性子フルエンス*137
 中性子束(Neutron Flux)は単位面積を毎秒通過する中性子の数であり、これを一定時間積分したものが積算中性子束で英語ではフルエンスという。単位は中性子数/m2である。吸収線量(Gy)、たたき出し原子数密度(dpa)等とともに、材質劣化に対する中性子照射量を表すのに良く用いられる。

・熱流束(高熱流束機器)*138
 熱の大きさを入熱する部分の面積で除したもので、単位面積当たりの入熱の大きさを示す。プラズマ対向機器における負荷の指標の一つ。

・燃焼プラズマ制御*139
 ここでいう燃焼プラズマとは、DとTの燃料を用いて核融合反応を起こしているプラズマを指し、燃焼プラズマ制御とは、自己点火条件及びそれに近いパラメータ領域のプラズマ性能を定常に維持するために必要な制御手法をいう。

・電流拡散時間*140
 プラズマ中の電流は主に磁力線方向の粒子(電子またはイオン)の流れによって発生する。粒子は磁力線に巻き付いて運動しているが、衝突による散乱で粒子が異なる磁力線に移動すると、プラズマ中の電流も磁力線に垂直方向に広がる (拡散する)。電流拡散時間はそのための典型的な時間を表す。

・低スパッタリング*141
 高速粒子が固体に衝突した際、固体表面から構成原子がはじき出される現象をスパッタリング(はじき出し)といい、低スパッタリングとは材料のはじき出される割合が低い性質をいう。低スパッタリング材料は、スパッタリングによる損耗量が少ないため、プラズマ対向機器の保護材料(アーマ)に適する。

・アスペクト比*142
 環状磁場閉じ込め方式における特徴的なパラメータは、円環の半径(主半径R)と円環の太さ(小半径a)であり、この比をプラズマアスペクト比(A=R/a)という。一般的なトカマク装置ではアスペクト比がA〜3程度であり、ヘリカル装置ではA=5〜7程度である。また、最近では、アスペクト比が極端に小さい(A<2)トカマクが着目されており、これを球状トカマクと呼ぶ。

・プラズマ形状*143
 プラズマの閉じ込めや安定性において、断面形状(三角形度、非円形度)が大きく依存するため、プラズマ断面形状の最適化制御が重要となってきている。

・帰還制御*144
 一般的には、出力側の信号を入力側に戻し(帰還し)、出力を制御・修正することをいう。核融合実験装置においては、測定した密度、温度、プラズマ電流を用いて随時プラズマを制御することをいう。例えば、プラズマ密度の帰還制御では、プラズマ密度を測定し、プラズマ密度が下がったら(上がったら)、燃料ガスの注入量を増やし(減らし)プラズマ密度を一定に保つことをいう。

・燃料自給性*145
 核融合炉は、トリチウム増殖ブランケットでトリチウムをリチウム化合物から転換して生産し、燃料として使用することで、外部からのトリチウム供給をせずに運転を継続できることが特徴である。このように外部から燃料を供給せずに運転を継続する性能を燃料自給性という。

・科学技術・学術審議会学術分科会・基本問題特別委員会核融合ワーキング・グループ*146
 文部科学省の審議会である科学技術・学術審議会の学術分科会・基本問題特別委員会の下に設置されたワーキンググループ。平成13年7月〜平成15年1月まで活動し、当該研究分野を代表する研究者により研究の重点化・効率化についての審議が集中的に行われ、平成15年1月8日「今後の我が国の核融合研究の在り方について」を取りまとめた。


3.2 核融合に関する学術研究の意義・位置づけ

・複雑性科学*147
 流体力学等の物理学のみならず、菌類等の生物の増殖、経済等においても見られる“複雑な”現象のこと。決定論的な力学系においても解析的表現が不可能な複雑な挙動を示すことが知られており、その自由度の大きさと散逸過程の存在から流体運動がその典型例として研究対象となる。


3.3 人材育成と核融合基盤技術の持続的な発展
3.4 国際協力の推進
3.5 研究開発のバランスとチェックアンドレビュー





●第4章
4.1 トカマク方式による開発研究

・ITER国際核融合エネルギー機構*148
 国際共同プロジェクトであるITER計画の実施主体。燃焼プラズマの実現、工学技術の総合試験等を行うためITERの建設・運転を行う。

・核融合フォーラム*149
 核融合エネルギーの実現に向けた研究・技術開発の促進を支援することを目的に、大学、研究機関、産業界などの研究者・技術者並びに各界の有識者などの自主的参加の組織として2002年に設立された。特に、ITER計画への参加、及びITER計画に関連して研究開発を推進するための課題や構想等に関する活動に当面の重点を置いている。

・インパイル試験*150
 放射線(核融合炉においては主に中性子)照射環境下での材料及び機器の特性把握及び機能実証を目的として行われる試験。原子炉内に試験体を置いて、核融合炉内での中性子環境を模擬し、試験体の性能を調べる試験。試験実施として主に軽水炉または高速増殖炉等の核分裂炉が使用される。

・ニュートロニクス試験*151
 核融合炉の設計に必要な中性子の挙動に対する様々な開発研究がニュートロニクスであり、核融合ニュートロニクス(核融合中性子工学)のための実験をニュートロニクス試験と呼ぶ。具体的には、DT中性子の反応に起因する各種物理量の測定、核設計コードの精度に関する実験的評価、核融合炉用機能材料に対する照射効果、材料損傷の核的現象解明のための実験、核計装用検出器の開発、および核融合中性子の応用に関する研究等が挙げられる。

・重照射データ*152
 核融合発電実証プラントレベルでは、ブランケットの全寿命中の中性子壁負荷は、10-15MWa/m2 程度になると言われており、これは弾き出し損傷量では100-150dpaに相当する。dpaは弾き出し損傷の程度を表す単位(1dpaは全ての原子が平均1度ずつ弾き出しを受ける)で、既存の原子炉では高速増殖炉の燃料被覆管が100dpa程度の損傷を受ける。照射効果には蓄積的なものが多く、さらに核融合炉ではヘリウム等の核変換の効果が加わるため、材料の特性変化を精度よく予測し設計・許認可に反映するには照射データの取得が不可欠。

・D-Liストリッピング反応*153
 重陽子(重水素原子の原子核)を高速に加速してリチウム原子に衝突させたときに発生する原子核反応の一種で、重陽子を構成する陽子あるいは中性子の何れかがリチウム原子核によってはぎとられる(ストリップ)反応過程という意味でこう呼ばれる。この反応の結果、取り残された中性子(もしくは陽子)が重陽子の進行方向の狭い角度範囲に集中して出て行くことから、前方に強い方向性をもつ中性子源として有用である。国際核融合材料照射施設(IFMIF)計画では、この反応を用いて、核融合中性子(14MeV)の近似環境を模擬している。

・トリチウムプロセス*154
 分子状や水、メタンといった様々な化学形をとり、種々の物質と混在するトリチウムを処理すること。核融合炉の燃料循環システムでは、プラズマ排ガス中から未燃焼のトリチウムを回収・精製し、燃料として再生するトリチウムプロセスが行われる。

・トリチウム安全管理技術*155
 放射性物質であるトリチウムを安全に管理する技術。トリチウムは放射性気体として 拡散・漏洩しやすいことから、障壁で囲んだ空間内に閉じ込めた上で除去・回収する技術が基本となる。

・非線形・開放系プラズマ*156
 閉じ込められたトカマクプラズマといえども、プラズマはその外の系と粒子やエネルギー等を通して情報を遣り取りしており、実質的に開放系となっている。プラズマは非線形媒質であるので、このような情報の伝達において非線形過程が重要となり、開放系に特有の構造形成などの性質が現れる。

・数値トカマク実験*157
 トカマクプラズマの物理特性または物理現象を記述する各種の物理モデルに基づいた数値シミュレーションコードを用いて、トカマクプラズマの放電過程を計算機により数値的に仮想的に具現する。


4.2 核融合に関する学術研究

・非線形・遠非平衡媒質*158
 系が熱平衡状態にない媒質を非平衡媒質と呼び、熱平衡状態から大きく離れた系のことを遠非平衡媒質と呼ぶ。この定義に従えば、核融合プラズマは非線形媒質かつ遠非平衡媒質である。統計力学的ではなく電磁流体力学的には、磁場閉じ込めプラズマは一般的に安定な平衡状態にある。

・自律的な構造形成*159
 散逸系において非線形効果により現れる自律性。「自発的な構造形成」の意味を持つ。


4.3 核融合研究開発の分担
4.4 人材育成の方策と社会への発信
4.5 研究開発の全体像と実用化への道
4.6 チェックアンドレビュー項目と次段階への移行条件


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