平成14年7月12日
文 部 科 学 省
核 融 合 開 発 室

ITER計画について

  1. 国際熱核融合実験炉(ITER)計画について
     (平成14年5月31日 閣議了解)

  2. 第4回政府間協議について


国際熱核融合実験炉(ITER)計画について

平成14年5月31日
閣  議  了  解

 ITER計画への取り組みについては、別紙の総合科学技術会議「国際熱核融合実験炉(ITER)計画について」を基に、我が国は国際協力によってITER計画を推進することを基本方針とし、国内誘致を視野に入れ、協議のために青森県上北郡六ヶ所村を国内候補地として提示して政府間協議に臨むことを了解する。
 なお、政府としては、以下の点に留意するものとする。

  1. ITERの建設・運転等に対し立地促進のために特段の財政措置は講じないこと。

  2. ITER計画の実施に関連する公共事業については、その規模を通常の公共事業費の中での優先的配分により対処し得るものにとどめ、国庫補助負担率引き上げ等の国による特別の財政措置は講じないこと。

  3. 国は、ITER計画に関し、安全確保を図るとともに、国民への情報提供等を通じて一層の理解が得られるよう努めること。 また、誘致に当たっては、関係地方公共団体に対して、ITER計画の円滑な実施を実現するため、所要の措置を講ずるよう要請すること。


別紙

国際熱核融合実験炉(ITER)計画について

平成14年5月29日
総合科学技術会議

 ITER計画については、昨年12月、科学技術政策担当大臣と有識者議員により「ITER計画に対する考え方について」が報告されたところである。この中で、我が国は、「ITER計画に参加することが望ましく、さらにこれを国内に誘致することの意義がある」との判断が示された。その後、総合科学技術会議においては、欧州を初めとする関係諸国の状況把握に努めるとともに、計画実施における経費確保等の分析を行ってきたが、このたび以下の結論に達した。

 我が国は、ITER計画が国家的に重要な研究開発であることに鑑み、政府全体でこれを推進するとともに、国内誘致を視野に、政府において最適なサイト候補地を選定し、ITER政府間協議に臨むことが適当である。その際、参加極間の経費分担については、全ての参加極が一定規模以上の貢献を行う中で、経済規模を反映したものとすべきである。なお、参加極間で費用負担と得られる成果のバランスが取れるような枠組みの形成に努めることとする。
 最終的な参加ないし誘致は、政府間協議の推移や国内外の情勢の進展を踏まえ、費用対効果を考慮しつつ決定することが適当である。
 なお、ITER計画の推進にあたっては、次の項目に留意する必要がある。

  1. ITER計画については、政府全体でその推進に取り組むとともに、所要経費については、第二期科学技術基本計画を踏まえつつ、他の科学技術上の重要政策に影響を及ぼすことがないよう、既存の施策の重点化、効率化を図り、原子力分野の予算の範囲内で確保すること。

  2. 予定外の経費の増加や計画の進捗の遅れが無いよう、厳密な計画の管理と適切な評価を継続的に行い、必要に応じ、我が国の関与の在り方も含め、見直しを行うこと。

  3. 国内の核融合研究については、重点化、効率化を図りつつ、ITER計画と有機的に連携する体制を構築すること。この際、核融合研究開発を支える人材の育成、各種プラズマ閉じ込め方式の研究や、中性子による放射化の少ない材料等の開発等に配慮すること。

  4. ITER計画について国民の理解の促進に努めること。また、誘致する場合には、安全性の確保と放射化物の処理について、周辺住民への説明や放射化物の処理費用の必要十分な積立ても含め、十全に対応すること。

  5. ITER計画の実施に合わせ、核融合エネルギーの実用化に向けた研究開発を加速する議論がある。それとの関係で、材料開発を目指した国際共同研究計画が具体化する可能性があること。



第4回政府間協議について

平成14年7月12日
文部科学省研究開発局

1.開催日程:平成14年6月4日(火)〜6日(木)

2.開催場所:フランス・カダラッシュ

3.参加極:日本、EU、ロシア、カナダの4極
 
4.結果概要:
 (1)次の点について議論。

 (2)日本からの進捗状況報告等
 総合科学技術会議が5月29日に結論を出し、それを基に5月31日に閣議了解を行ったことを報告。

 (3)各極からの進捗状況報告等

 (4)サイト共同調査

 (5)日程

 (6)その他
 会議の冒頭に、仏国コロンバーニ原子力庁長官と英国キング政府首席科学顧問から歓迎と核融合の将来への期待についての発言があった。


(別紙)

第4回ITER政府間協議(N4)参加者

日本 委員 青江 茂  文部科学審議官(代表)
天野之弥  外務省大臣官房付(大使)
素川富司  文部科学省官房審議官
榊原裕二  内閣府政策統括官付参事官
大竹 暁  文部科学省核融合開発室長
岸本 浩  原研理事
吉川允二  原研顧問
EU 委員 ミトソス  欧州委員会研究総局長
フィンチ  欧州委員会研究総局顧問
ロシア委員 ヴィノグラドフ  原子力省第一次官
ヴェリコフ  クルチャトフ研究所総裁
カナダ委員  キャンベル  カナダ連邦天然資源省
スチュワート  ITERカナダ取締役
国際チーム エマール  国際チームリーダ
下村安夫  国際チーム共同リーダ

 


プレス・リリース(仮訳)

ITER政府間協議が大きく進展

−カナダに引き続き、EUと日本からサイト提案−


2002年6月6日、カダラッシュ(フランス)
カナダ、EU、日本及びロシア連邦の代表は今週、EUのホストのもとにカダラッシュで政府間協議を行い、ITER計画の共同実施に向けて大きな進展をみた。ITERは最も大きな国際的な科学技術協力プロジェクトのひとつであり、地球にとって魅力的なエネルギー源である核融合の開発において、重要なステップとなるものである。今回は政府間協議の第4回であり、ITERの実施協定に関する合意に至ることを目指している。

ミトソス欧州委員会研究総局長、コロンバニ・フランス原子力庁長官、ペラ・フランス原子力庁最高顧問が各極代表に向けて歓迎の挨拶をおこなった。

今回の協議での注目すべき事項は、EUがフランスのカダラッシュとスペインのバンデロスを、日本が青森県の六ヶ所村をサイトとして正式に提案したことである。これらの新しいサイト提案は2001年6月7日にモスクワにおいて表明されたカナダによるサイト提案に続くものである。これらの提案をもって、EUと日本はITER計画への正式の参加を表明した。

各極代表は一致して、本交渉でなされた進展によって明るい希望をもったことを表明した。

2002年5月27日にEU理事会が欧州委員会のITERの交渉権を拡大する提案を承認し、EU代表が他極に対してスペイン政府とフランス政府により提案された2つのサイトを伝えることが可能になった。欧州委員会はメンバー国によって提案された欧州のサイトを他極に伝える権限と、サイト提案に関連したコスト分担の交渉を行うとともに、(現在の活動から建設期への)移行措置に関する交渉を行う権限を与えられた。交渉団に対するカダラッシュサイトの提案はジャッキーノ・カダラッシュ研究所核融合研究部長により行われた。

サイト提案についての日本の決定は、ITERを誘致することの重要性と交渉に向けての費用分担の原則の重要性を示した総合科学技術会議の結論を基に、2002年5月31日に閣議了解された。今回の協議に対する六ヶ所村のサイト提案は日本交渉団の文部科学省からのメンバーによって行われた。

カナダは、EUと日本のサイト提案と交渉権の拡大を歓迎し、サイトを選定と共同実施協定の完成にむけて、サイト共同評価を早急に表明した。

ロシアはITER関連の活動は最も高い優先度をもっており、ITERの建設準備を目的とする2002年〜2005年の連邦計画に基づいて進めていることと、その活動がロシアの産業界と密接な関係をもって進められていることを述べた。ロシアもまたサイト提案を歓迎した。

今回の政府間協議において、各極代表は、ITER建設を開始するための共同実施協定の議論を進めた。さらに、サイト選定の手順、費用分担と調達配分、国際組織の構造等の技術的な事項についても議論を進めた。

会合の結論として、各極代表は、EUと日本のサイト提案と交渉権の拡大はITER計画の成功に向けて極めて重要な進展であると認識した。

次回の政府間協議はカナダのトロントにおいて、9月17日〜18日に開催される予定である。