原子力委員会研究開発専門部会革新炉検討会
高温高性能軽水冷却
原子力発電プラント
―貫流型超臨界圧軽水冷却原子炉―
平成14年3月13日
東京大学 岡 芳明
研究の目的
1.他電源に競合する経済性、単純化の追及
2.Pu利用、高速増殖炉の経済性向上
3.軽水炉と火力発電の経験の利用
特徴
1.規制緩和されたグローバル市場における新規建設での原子力発電の新型火力に対する競争力奪還の期待
2.日本で考案され欧米が研究中の炉概念


高温高性能軽水冷却炉
原子炉圧力容器、制御棒…PWRと類似
格納容器、非常用炉心冷却系…BWRと類似
タービン、給水ポンプ…超臨界圧火力と類似
熱中性子炉心:多数の水減速棒を持つ燃料集合体
高速炉炉心:稠密に燃料棒を配置した燃料集合体。炉心流量が軽水炉の1/8なので稠密燃料炉心と良い相性。
安全性
・安全設計、安全基準等は軽水炉と類似
・安全性は軽水炉と同等(事故による公衆の死亡ゼロの素晴らしい実績)
利点・特徴
・限界熱流束制限(バーンアウト)なし
・冷却水喪失事故(LOCA)時1次冷却水インベントリー保持問題軽減
・タービン負荷喪失時の加圧過渡挙動緩和
・苛酷事故時の被覆管酸化に伴う水素発生なし
・軽水炉で開発された受動安全系(例、静的格納容器冷却系)等も利用可能



超臨界圧火力発電の歴史
| 米国: | Philo#6 (125MWe 31MPa, 621C, 1957)
Eddystone# (325MWe, 34.5MPa, 649C, 1959)
最大容量プラント1300MWe
安価な化石燃料価格のため米国内ではあまり発展せず
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| 日本: | 姉ヶ崎#1 (600MWe, 24.6MPa, 538C, 1967)
広野#1 (変圧運転, 600MWe,1980)
川越#2 (31.0MPa, 700MWe, 1991)
橘湾#1 (610C, 1050MWe, 2001)
1990-2000年に28基運転開始(600〜1050MWe)
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日本は世界最高の超臨界圧火力発電技術を保有


超臨界水冷却の利点
- 単相流、気水分離・再循環不要
貫流直接サイクルによる単純化、炉容器と格納容器の小型化
計算による実験の代替と設計最適化の可能性
- 高温・高エンタルピー
熱効率向上、冷却水流量低減(軽水炉の1/8)、タービン・配管小型化
エネルギー製品(水素、高品質炭化水素)生産可能(化石燃料を熱源とし、タールを超臨界水中で分解するパイロットプラント稼動中)
- 冷却水密度変化大(出口密度 0.1g/cc以下)
水冷却高速増殖炉(高増殖比のためには高密度燃料を開発すれば良い)
- 応力腐食割れ問題なし水冷却炉の可能性(無沸騰、不純物炉水滞留無)
機器開発とプラント製作上の利点
- 出口冷却水温度は高温だが原子炉容器壁、配管、タービン、
ポンプ等は軽水炉、火力の経験温度以下
- 主要機器は軽水炉と超臨界圧火力と類似でその経験を生かせる。
動的機器の高信頼性が期待できる。
- 標準化拡大の可能性(既存機器の組合せ、カスタムメード最小化)
- 高温材料開発とともに火力のように性能向上が可能。
世界一の日本の素材(鉄鋼)産業の開発能力を生かせる。
主要研究開発課題
- 燃料被覆管、炉心材料:当面は既存の材料を試験して用いる。長期的
には専用被覆管材料を開発する。
- 腐食や水化学は長期的課題として継続研究必要。
- 熱流動:燃料束、炉内流動等実験で重点を確認しつつ単相流の利点を生かし
て計算コードでできるだけ実験を代替する方針。
- 設計:改良・合理化の追求、構造設計・製作性の検討等
- 機器開発で特に大きいものはないが、商品化のためには試験炉建設が
必要。
研究開発の現状(日本)
- 概念を開発し、その理論的成立性を計算で確認(東大1989−)
炉心設計、安全設計、プラント設計、過渡・事故解析、LOCA解析、熱効率・熱収支、制御、起動、安定性、確率論的安全評価、サブチャンネル解析(計算コードは核計算以外すべて開発)
- 超臨界水化学等の実験的研究(学振未来開拓事業、東大1999−)
- 熱流動、材料、腐食の実験、プラント設計(エネ総研公募事業、東芝、日立、東
大、九大、北大2000−)
研究開発の現状(米、欧)
米国:DOE-NERI
- 超臨界水放射線化学(ANL、1999−2002)
- 高速増殖炉の設計、材料腐食(INEEL、ミシガン大、東大、2001−)
- 被覆管試験(ウィスコンシン大、Global Nuclear Fuel、2001−)
- 腐食・欠陥成長(スタンフォード国際研、フィンランドVTT、2001―)
欧州:欧州共同体(EU)核分裂炉研究プログラム(2000年―)
- 高性能軽水炉(HPLWR)研究;設計、炉心、熱流動、材料腐食、経済性等(FZK, Framatome, EDF, CEA, PSI, VTT, KFKI, 東大)
HPLWRは東大の設計をリファレンスとして検討し、その大部分を採用した(独フラマトムにより東大の炉概念の妥当性が確認された)
この他にも興味のある研究者は世界中に大勢いる。
まとめ
- 高温高性能軽水冷却炉は軽水炉の理論的発展形態
- 経済性大巾向上の可能性
資本費低減(コンパクト化)、燃料費低減(高熱効率)、運転保守費低減(単純化)、高稼働率(応用腐食割れ問題からの開放、主要動的機器の運転経験)
- 熱中性子炉と高速炉を同一技術で実現
- 熱中性子炉に優る高速炉の可能性(高出力密度)
- 軽水炉と火力の経験を生かせる。
- 日本の技術で世界をリードし貢献できる。
- 最も小さく単純な原子炉
この後に、『エネルギーレビュー』誌の2002年1月号の記事の抜粋がありました
が、掲載しておりません。