地球温暖化対策に対する原子力エネルギーの平和利用推進に関する質問

○職 業   :その他

○年 齢   :31歳〜35歳

○性 別   :男性

○御質問の内容:

「地球温暖化対策には、原子力エネルギーの平和利用の拡大が不可欠」という主旨の委員会決定をニュースとこちらのホームページで拝見しました。これは主に温室効果ガスを排出しないということに基づいていると思います。
しかしながら人為的原子力エネルギーは、太陽起源以外のエネルギーを地球上にもたらします。核融合反応と核分裂反応という違いはありますが、地球上で太陽内部で起こっているようなエネルギー創出をしていると見ることができます。ところで、物理学の法則によりエネルギーは最終的に熱という形態になりますので、地球に降り注ぐ太陽光と同様に、原子力発電により産み出された電力を人類が生活の中で使用することによって、地球上の大気・地表などの温度を上げると考えられます。地球は水蒸気などの大気により温室効果を持っているわけですから、原子力発電は、直接人為的に地球を温暖化すると考えられます。この効果を例え話でいいますと、太陽の光が差し込んで暖かかった部屋の内部にストーブなどの暖房を炊いため暑くなるということと同様だと考えられます。
したがって、原子力エネルギーの平和利用を推進するということは、地球温暖化対策にはならないどころか、かえって温暖化を推進すると考えられます。
このような観点から私が上に書いたような考え方は、何か間違っているのでしょうか?また、地球温暖化対策として、原子力エネルギーの創出が地球の温暖化に直接影響するという点を考慮されたのでしょうか?
以上2点、回答して頂ければ幸いです。


○回 答: 

原子力エネルギーの利用が温暖化を推進するのでは、という御質問に関しては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書によれば、現時点で温室効果ガスとして蓄積された二酸化炭素による温暖化効果(放射強制力)は1.66W/平方メートルとされており、地球全体では約846,600GWとなります。これに対して、合計約370GWeの世界の原子力発電所が発生する熱は、効率を33%と仮定すると最大でも約1110GWであり、二酸化炭素による温暖化効果の約0.13%となります。
したがって、原子力発電所が発生する熱による地球温暖化への影響は、温暖化効果ガスの影響に比して、無視しうるほど小さいものと評価できます。
一方、合計370GWeの世界の原子力発電所の代わりに火力発電を利用したとすれば、最も温室効果ガス排出量が少ないLNG 複合サイクル発電を用いた場合でも、世界の二酸化炭素排出量は、年間11 億トン(2005 年の世界総排出量の4%)増大することにとなり、原子力エネルギーの利用が温暖化防止に貢献していると言えます。

 上記内容は、「地球環境保全・エネルギー安定供給のための原子力のビジョンを考える懇談会報告(案)」への意見募集において頂きました「原子力発電所の温排水が地球温暖化をもたらすのではないか」という趣旨の御意見への対応(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/vision/bosyu_taiou.pdfのP43〜44を参照ください)として評価したものであり、御指摘の点を考慮した上で原子力エネルギー利用の拡大に関する当該委員会決定がなされたものです。