地下水による核融合について

○職 業   :

○年 齢   :

○性 別   :男性

○御質問の内容:

ご存知の通り、当地揖斐川上流には徳山ダムが完成?し、昨年から試験湛水がはじまっています。
こうした中、「6億6000万立方メートルの水が溜れば、その水が湖底に浸透し、その水が地下の金属(鉄鋼鉱脈)にふれるとそこで、水素ガスが発生する。そして、その水素が核融合反応を起こすことで膨大なエネルギーを放出し、大きな地震を誘発する」と唱える人がいます。
私の浅学な知識では、水素核融合は、普通の水素では反応速度が遅く、おおきなエネルギーを出さないため、重水素・三重水素を使用する。またその重水素は、海水から製造する。と認識しています。
お聞きしたいのは、地下水が金属にふれるとはたして重水素を放出するのでしょうか? また、これが地下で核融合をもたらし、地震の起爆剤と成得るのでしょうか?


○回 答: 

原理的には、水を電気分解することで、水素と酸素が発生することはよく知られています。
ある種の金属が触媒となって、水から水素が発生する反応もありますが、御懸念のような地下水との反応で地中で大量の水素が発生することはありません。
次に重水素は、天然の水素中に0.015%の割合で含まれており、この割合は水素の化合物である天然の水中でも変わりません。従って、仮に地下水中から水素が発生したとしても、その中には0.015%の重水素が含まれることになります。
しかしながら、御質問中にもありますように、最も起こりやすい核融合反応は重水素と三重水素との反応ですが、天然の水素中には三重水素はほとんど含まれていません。
ですから、天然の水素中に0.015%しか含まれていない重水素と、ほとんど含まれていない三重水素の核融合反応が天然の水素中で起こることはありません。
ちなみに、反応が容易な重水素と三重水素の反応でも、水素ガスを数百万度のプラズマ状態にする必要があります。重水素同士の場合には約250万度、水素同士の場合には約1000万度以上の温度が必要です。低温でもおこる特殊な核融合反応もありますが、極めて低い確率でしか起こらないため、御懸念のような大規模な核融合反応が地下で起こることはありません。