公開質問書

○職 業   :主婦

○年 齢   :46歳〜50歳

○性 別   :女性

○御質問の内容:

公開質問書
2006年1月10日
原子力委員長 近藤駿介様

1月6日、電力会社から発表された六ヶ所再処理工場から取り出されるプルトニウムの利用計画について質問があります。回答を1月末までに文書でお願いいたします。

1)このプルトニウム利用計画が達成されず、余剰プルトニウムが発生したら、その責任はだれが取るのか。

2)再処理、プルサーマルという「政策」は、民間企業である電力会社の自主的な事業なのか、国の政策に民間企業が協力しているのか。

3)もし再処理・プルサーマル「政策」を強行におし進めることで、電力会社の経営が圧迫され、株主の権利が侵害された場合、その責任はだれがとるのか。

以上3点の責任を明確にしたうえで、その責任において、この計画の実効性をきちんと評価してください。

わたしたちは、今回の利用計画発表の目的は「余剰プルトニウムをもたない」という国の姿勢を内外に示すためのものと理解していましたが、今回具体的に示された計画は明確な利用開始時期も示せないもので、一部の電力会社では利用場所も特定できず、まったく説得力のない計画だと判断します。
この計画を簡単に承認し、六ヶ所再処理工場でプルトニウムを取り出すことはとても認められません。昨年10月、将来電力会社の株主がプルサーマルをしないという選択をして、余剰プルトニウムが発生した場合は、だれの責任かとの質問に、原子力委員会の事務局は「株主の責任」と回答しました。この回答はわたしたち電力会社の株主にはとても納得できるものではありません。

プルサーマルという選択は、普通の会社の経営者としてはありえない選択です。新長計の策定会議やコスト検討小委員会の数字をもとに計算しても、実に18倍ものコストをかけて、わずかなウラン資源を節約するためにプルサーマルをすることになっています。しかもこの数字はあくまでもフロントエンドにすぎず、使用済みのMOX燃料を処理するのに、どれほどのコストがかかるのか、新長計策定会議、技術小委員会でも検討されていません。
こんな状況で、いい加減な計画を示す電力の経営者にも問題があります。彼らは株主総会で再処理・プルサーマルは「事実上の義務」だと回答しています。つまり経営判断で自主的にプルサーマルを行うものではないということです。
国は国会でも「義務ということはない」と回答しています。だれにも責任がないということになります。
その中での余剰プルトニウムが発生したら「株主の責任」という原子力委員会の事務局の回答は決して見のがすことはできません。わたしたち株主は、将来このいい加減な計画や余剰プルトニウムの責任を負うことなど、とうていできません。
この責任をだれもとらない体質こそ、原子力の問題の根幹ではないでしょうか。

新長計策定会議で再処理路線の維持が決定されたとき、あなた方が、一番強調したのは「使用済み燃料の行き先がない」「原発のサイトで使用済み核燃料があふれる」「地元の信頼をなくす」ということでした。
しかし、使用済み核燃料の行き場がないからと、再処理路線を維持し、そのためにプルトニウムが生まれ、余剰プルトニウムができてはいけないので、無理やりプルサーマルの計画をつくる。プルサーマルをすれば、使用済みMOX燃料ができる。この処理についてはまだなにも決まっていないので、原発サイトにあふれる。そして地元の信頼をなくす。という悪循環については、なぜ考えないのですか。まずでてきたものをどうするかを考えてから、物事を始めるという当たり前のことが、なぜ原子力の世界ではできないのか、その答こそが「だれも責任をとらない体質」にあるのではないでしょうか。

余剰プルトニウムの責任はいったいだれがとるのか明確にしたうえで、今回のプルトニウム利用計画の実現性の評価を、その責任においてしてくださることを強く申し入れます。


○回 答: 

1について:
プルトニウム利用計画は、プルトニウムを保有する予定の電気事業者が自らの事業について説明を行ったものです。その具体的な事業については電気事業者の責任において行われるものと考えています。なお、プルトニウム利用計画は、その事業の実施の進捗を踏まえつつ毎年公表されるものと考えます。

2および3について:
昨年10月に原子力委員会が策定した「原子力政策大綱」は、平成16年6月に幅広い立場の方々を委員とした新計画策定会議を設置し、本会議、小委員会を合わせ42回計100時間を超える議論を全て公開で行い、案ができた段階で国民からの意見募集を行うとともに、全国5箇所で御意見を聴く会を実施し、それらの意見も踏まえ作成しています。新計画策定会議での議論を踏まえて、原子力政策大綱では、「我が国においては、核燃料資源を合理的に達成できる限りにおいて有効に利用することを目指して、安全性、核不拡散性、環境適合性を確保するとともに、経済性にも留意しつつ、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本的方針とする。」としています。
政府は、こうした方針を踏まえ、研究開発等の環境整備を行っており、電気事業者は、こうしたことを踏まえ、自らの経営判断に基づき、再処理やプルサーマルなどの事業を進めています。