原子力委員会の意見をお聞きしたい。

○職 業   :学生

○年 齢   :20歳以下

○性 別   :女性

○御質問の内容:

 はじめまして。姫路工業大学環境人間学部2回生・廣岡千春と申します。
 突然なのですが、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」について、国際環境保護団体Greenpeace Japanは「六ヶ所から日本各地へ世界へ放射能汚染を始めるのですか」という言葉を掲げ、「再処理工場は原発とは比較にならないくらいほど大量の放射能を日常的に環境中に放出する」ということを言っています。
 確かに、再処理工場は使用済み燃料をリサイクルするということで、もし事故が起こった場合、原発の事故よりも大変な被害になるように思います。
 しかし、Greenpeace Japanが言っているように、再処理工場は大量の放射能を“日常的”に環境中に放出するシステムになっているのでしょうか?
 私としては放射能の出さないようにするために使用済み燃料のリサイクルをするのに“日常的”に放射能を放出するようなことはあってはいけないと思います。
 原子力委員会の意見をお聞かせ下さい。よろしくお願いします。


○回答: 

 私たちは日常の生活において宇宙線や地中に存在する放射性物質から放射線を受けています。これによる被ばく線量は、年間約2.4 ミリシーベルト(世界平均)です。一方、原子力施設周辺の人々に影響を与えないために法令で定められている原子力施設周辺公衆の年間の被ばく線量の限度は1 ミリシーベルトです。
 六ヶ所再処理工場が運転を開始すれば、原子力発電所と同様に放射性物質が環境中に放出されることになりますが、この放出による年間の被ばく線量は、上で述べた、法令で定められている周辺公衆の年間の被ばく線量の限度を十分下回る値であることが安全評価で確認されています。
 六ヶ所再処理工場の再処理事業許可申請書によりますと、大気中に放出する放射性物質は、放出する前にフィルターなどを通してできる限り取り除かれ、安全を確認しながら、大気中で十分に広がり薄まる効果が見込める高さ150 m(約30階建てのビルに相当)の排気筒から放出されます。大気中へ放出される放射性物質はクリプトン85やトリチウムなどで、これらから再処理工場の周辺公衆の受ける線量については、それぞれの物質の特徴を考慮しながら、環境を経て人々が放射線を受ける道筋(被ばく経路)ごとに被ばく線量を評価し、合計で年間0.019ミリシーベルトと評価されています。これに海洋へ放出する放射性物質から受ける線量を加え、年間で0.022ミリシーベルトと評価されています。この値は、最初に述べた、天然に存在する放射線により私たちが1年間に受ける線量の約100分の1です。