プルトニウム利用の基本的考え方とプルトニウム管理状況について

○職 業   :無職

○年 齢   :51歳〜55歳

○性 別   :男性

○御質問の内容:

 「我が国のプルトニウム管理状況」9月2日に公表されました。また、8月5日には「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」が発表されました。それらを見まして、プルトニウムの透明性の確保の観点から、お尋ねしたいことがでてきましたので、質問を提出させていただきます。質問は大きく分けて2つあります。

I) 8月に発表された「我が国におけるプルトニウム利用の基本的考え方について」では、平和利用に対する考え方で、余剰プルトニウムを持たない原則が確認され、利用目的の明確化のための措置では、利用計画の公表と、プルサーマルの進捗状況や再処理工場などの稼動状況などにより利用計画への影響が懸念される場合には、電気事業者および日本原燃が取るべき措置についての検討を行ない、必要があれば利用計画の見直しを行なうと明記されています。さらに、海外で保管されるプルトニウムならびに核燃料サイクル開発機構において分離・回収されるプルトニウムも上記に準じた措置を行なうとしています。そこで、
I-1) 余剰とはどういう状態をさすのですか? 10年ほど前、まだ利用計画のほころびが見えない頃、科技庁職員とのやり取りの中で、彼は燃料加工のためのランニングストックを超える分を余剰というと規定されました。現在ははどのように規定しているのでしょうか?
I-2) この発表文にみる考え方の中には、プルトニウム進捗状況から利用計画が影響を受けることが懸念された場合のとるべき措置の選択肢として、再処理量を調整するという柔軟さが含まれているのでしょうか?
II) 我が国の分離プルトニウム管理状況の区分は再処理施設から始まり、燃料加工施設へと続いているので、現状では、東海再処理工場内での動きを想定させます。他方、02年12月から高レベル放射性物質研究施設(CPF)で「先進湿式再処理試験」が行なわれ、そこでは常陽の照射済み燃料が使われています。そこで、「常陽」の照射済み燃料について、以下に質問します。
II-1) 常陽のこれまでの運転実績から炉心燃料およびブランケット燃料それぞれについて、これまでの発生量(照射済み燃料として炉外へ取り出した量)はどれほどに達したのでしょうか? 本数とトン数で教えてください。
II-2) それらの照射済み燃料(ブランケット燃料含む)はどこに保管されているのでしょうか?
II-3) それらのうち、再処理された照射済み燃料(ブランケット燃料含む)はどれだけですか? それぞれ本数とトン数で教えてください。
II-4) それらの再処理によって回収されたプルトニウムの量はそれぞれどれだけですか? 全プルトニウム、核分裂性プルトニウムの両方を教えてください。
II-5) それらの再処理によって回収されたプルトニウムは現在、どこに保管されているのでしょうか?
II-6) そのプルトニウムは「2002年度末における我が国の分離プルトニウム管理状況」の表のどの欄に計上されているでしょうか?
II-7) そのプルトニウムは「国際プルトニウム指針に基づきIAEAに報告するわが国のプルトニウム保有量」の民生未照射プルトニウムの年次保有量の1-4.に計上されていると理解してよろしいですか?
II-8) 未再処理の照射済み燃料(ブランケット燃料含む)に含まれているプルトニウム推定量はそれぞれどれだけでしょうか? 全プルトニウム、核分裂性プルトニウムの両方を教えてください。
II-9) それら未再処理の照射済み燃料(ブランケット燃料含む)に含まれるプルトニウムは、「国際プルトニウム指針に基づきIAEAに報告するわが国のプルトニウム保有量」のどの欄に計上されているのでしょうか?


以上です。よろしくご回答ください。


○回 答

I-1) わが国のプルトニウム利用に見通しについては、「利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムは持たない」との原則を堅持しつつ、プルトニウム利用計画の透明性の確保に努めているところです。その上で、これまでと同様にプルトニウムはプルサーマルによる発電と高速増殖炉などの研究開発に利用する方針の下に、適切にプルトニウム利用を図っていくことが必要であると考えております。
なお平成16年6月14日に、国際原子力機関(IAEA)の理事会において、エルバラダイ事務局長より、日本は未申告の核物質・原子力活動が存在せず、その保有する全ての核物質が保障措置下にあり、平和利用されているとの「結論」が得られた旨、公表されました。これは、我が国の原子力活動が、平和利用に限って行われていることについて、国際的に評価されたものと考えています。今後も引き続き、これまでと同様に我が国の原子力活動の透明性と信頼性を高め、原子力の平和利用に努める必要があると考えています。
I-2) 電気事業者のプルサーマル計画の進捗状況、日本原燃の再処理工場等の稼動状況により利用計画への影響が懸念される場合には、電気事業者及び日本原燃は、取るべき措置についての検討を行い、必要があれば利用計画の見直しを行うこととしています。
II-1) 炉心燃料集合体が486体で約6.8トン、ブランケット燃料集合体が220体で約7.7トンです。なお、ここであげた重量は核燃料物質(ウランとプルトニウム)の重量です。(平成15年10月1日現在)
II-2) 試験研究用のために常陽サイトから高レベル放射性物質研究施設(CPF)等へ搬出されたものを除き、常陽の照射済み燃料(ブランケット燃料含む)は常陽サイト内に保管されております。
II-3) 試験研究用のため、炉心燃料集合体から照射済み燃料を燃料ピン(多数の燃料ペレットを積み重ねて一本の被覆管に収めたもの)単位で取り出して再処理した小規模のものを除くと、常陽の照射済み燃料は再処理されておりません。また、ブランケット燃料集合体に由来する照射済み燃料は再処理されておりません。
II-4) 常陽の照射済み燃料(ブランケット燃料含む)の本格的な再処理はおこなわれておりません。 なお、常陽の燃料集合体や海外原子炉の燃料集合体から照射済み燃料を燃料ピン単位で取り出し、試験研究用のためにおこなった小規模の再処理により回収された全プルトニウムと核分裂性プルトニウムは、それぞれ1.3キログラムと1.0キログラムです。
II-5) 試験研究用などのためにおこなった小規模の再処理により回収されたプルトニウムは、プルトニウム燃料加工施設にてMOX燃料に加工されて常陽へ再装荷され、既に照射を終えて照射済み燃料として常陽サイト内に保管中のものと、試験研究用として高レベル放射性物質研究施設(CPF)等にて保管されているものがあります。
II-6) 「2002年度末における我が国の分離プルトニウム管理状況」において計上されているのはあくまで分離プルトニウム(照射済み燃料中に含まれるプルトニウムは対象外)のみとなっております。それに対し、常陽に再装荷された分については、既に照射を終えて照射済み燃料として常陽サイト内に保管中ですので、いずれの欄にも計上されておりません。
 一方、試験研究用として高レベル放射性物質研究施設(CPF)等にて保管されているものについては、「1.国内に保管中の分離プルトニウム量」の「原子炉等」の「研究開発」欄に計上されております。
II-7) 常陽に再装荷された分については、既に照射済み燃料として常陽サイト内に保管中ですので、「使用済民生原子炉燃料に含まれるプルトニウム推定量」の「1.民生原子炉における使用済燃料に 含まれるプルトニウム」欄に計上されております。
 一方、試験研究用として高レベル放射性物質研究施設(CPF)等にて保管されているものについては、「民生未照射プルトニウムの年次保有量」の「4.その他の場所で保管される未照射分離プルトニウム」欄に計上されております。
II-8) 常陽サイトに保管中の照射済み燃料(ブランケット燃料含む)に含まれているプルトニウム推定量は全プルトニウムで約1.2トン、核分裂性プルトニウムで約0.9トンとなっております。(平成14年12月末現在)
II-9) 「使用済民生原子炉燃料に含まれるプルトニウム推定量」の「1.民生原子炉における使用済燃料に含まれるプルトニウム」欄に計上されております。