「もんじゅ」とその他の原子力開発

○職 業   :無職

○年 齢   :71歳〜75歳

○性 別   :男性

○御質問の内容:

  1. 「もんじゅ」とFBRの商業化、プルサーマルの普及、および核融合炉の初臨界から原型炉までのスケジュールと、これらの研究・開発の整合性、並びにこれに要する費用の概念的な予想と、我が国のエネルギー供給計画での原子力の位置付けはどのようなものでしょうか。
  2. Puを核兵器に転用しないため、出来るだけ保有しない方が良いと国際的に言われていますが、FBRでPuを増殖するのはこれに逆行するのではないのでしょうか。
  3. 「もんじゅ」は「ふげん」や原子力船「むつ」と同じ運命(存在する時は必要性が強調されたが実用化に至らず廃炉になった)になるのでないのでしょうか。


○回 答

1.原子力委員会は、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成12年11月原子力委員会策定、以下「原子力長計」という)において、わが国の原子力研究開発利用の基本方針及び推進方策を示しています。
 その中で、高速増殖炉及びプルサーマル並びに核融合炉の開発に関する記載は、それぞれ以下の通りとなっております。

高速増殖炉: 「実証炉については、実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、具体的計画の決定が行われることが適切であり、実用化への開発計画については実用化時期を含め柔軟かつ着実に検討を進めていく」
プルサーマル: 「2010年までに累計16から18基において順次プルサーマルを実施していくことが電気事業者により計画されており、我が国としてもこの計画を着実に推進していく」
核融合炉: 「未来のエネルギー選択肢の幅を広げ、その実現可能性を高める観点から、核融合の研究開発を推進する。今後達成、解明すべき主な課題は、核融合燃焼状態の実現、核融合炉工学技術の総合試験等があり、国際熱核融合実験炉(ITER)計画はこの観点から重要である」


 また、わが国のエネルギー需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るために平成15年10月に策定された「エネルギー基本計画」においては、高速増殖炉及びプルサーマル並びに核融合炉の開発について、高速増殖原型炉「もんじゅ」における研究開発及び次世代の核燃料サイクルの早期の確立に必要な研究開発については、原子力に関する技術における重点的施策として位置づけられています。また、プルサーマルについては、「使用済燃料の再処理によって発生するプルトニウムの確実な利用という観点の中軸」として、核燃料サイクルの確立へ向けた取組として示されています。さらに、核融合炉については、長期的視野に立って取り組むことが必要な研究開発課題となっております。
 エネルギー技術の研究開発は、将来のエネルギー供給技術市場に公益性の高い選択肢を複数提供することを目指して行われるべきものです。現在は、高速増殖炉サイクルの確立に向けて、経済性・信頼性等社会の要請に応えられるよう、適切な実用化像と研究開発計画を提示する「実用化戦略調査研究」を行うとともに、もんじゅの運転再開に向けた取組みを行っております。また、ITER計画の参加及び、核融合実験炉の実現に向けた高度な工学技術の開発を実施中であるとともに、電気事業者によるプルサーマルを実施するための計画がされているところです。

2.原子力長計において、エネルギー資源の乏しい我が国は、エネルギー自給率の向上とエネルギーの安定供給に寄与するとともに、我が国の二酸化炭素排出量の削減に大きな役割を担っている原子力発電を基幹エネルギーと位置づけています。
 現在の原子力発電では、天然ウラン(ウラン資源)の中に0.7%程度しか存在しない燃えやすいウラン235を利用しているに過ぎません。一方、プルトニウムを原子炉においてエネルギー源として利用することにより、ウラン資源の消費を節約することができます。原子炉でのプルトニウムの利用方法としては、現在原子力発電所で一般に用いられている軽水炉での利用(プルサーマル)と現在実用化に向けて研究開発を進めている高速増殖炉での利用があります。高速増殖炉を用いると、天然ウランのほとんどを占める燃えにくいウラン238から燃料として利用できるプルトニウムを作り出すことができます。このように、プルトニウムを燃料として利用することで、ウランの利用効率を高めることができます。
 プルトニウムは、御質問のように核兵器への転用が懸念される物質です。そこで、我が国は核不拡散条約の締約国として、国際原子力機関(IAEA)と包括的保障措置協定を結び、IAEAの査察を受け、転用の可能性のないことを国際的に明らかにしております。また、核不拡散問題について国際的な懸念を生じさせないようにする観点から「必要な量以上のプルトニウムを持たない」という原則に従って運営されています。

3.高速増殖炉については、ウランの利用効率が飛躍的に向上し、エネルギーの安定供給に寄与する技術的選択肢の一つであります。「もんじゅ」は我が国におけるこの高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核に位置付けられており、実用化に向けた研究開発成果を「もんじゅ」において実証するといった、実際の使用条件と同等の高速中性子を提供する場として有効に活用することとされています。