「核燃料サイクルのあり方を考える検討会」での首長発言の詳細について

○職 業   :その他

○年 齢   :51歳~55歳

○性 別   :女性

○御質問の内容:

 2003年1月14日の第1回原子力委員会定例会議の議事録の激論を読み、原子力委員会の役割を再認識致しました。難題が山積している折、委員会の動向に希望と期待を寄せて注目しております。増々のご活躍をよろしくお願い致します。

 さて、昨年11月から始まった「核燃料サイクルのあり方を考える検討会」のこれまでの会議4回を傍聴し、原発立地市町村長の方々の率直なご意見や原子力と地域の共存共栄のため日々努力しておられることなど、とても勉強になりました。

 特に、施策や議論の前提としていつも発せられる日本の存立条件や基本政策は充分理解しており、MOX燃料についても前向きであるという印象を受けたことは、最初に予定していた3県が白紙に戻った状況のなかでは意外なことでした。ただ、MOXについては、経過もあり初めに決めた方針を変えるべきではないという東海村長の意見もありました。

 既定方針や政策の変更が、基本政策や原理・原則にかかわるものであるなら、安易な変更は混乱を生むだけですが、そうでないなら環境の変化に応じて、「柔軟かつ大胆に」対応してもいいのではないかと思います。

 そこで質問ですが、

①MOX燃料使用を3県から始めると決めた経緯と決定理由
②決定理由は基本政策、原理・原則に関係すると考えるかどうか
③決定に際し、原子力委員会はどのようにかかわったか
④上記検討会での意見を参考に、原子力委員会としてどのように考えるか

 質問③、④は、1月23日に検討会に原子力安全委員会と保安院についての意見があり、藤家委員長が、二組織の独立性に言及されたと記憶しています。

 1月27日の名古屋高裁のもんじゅ判決により、このことを痛感致します。

 原子力委員会と資源エネルギー庁の関係もまた同様であろうと思いお尋ねしました。

 以上、よろしくお願い致します。


○回 答:

  御質問を頂きました件につきまして、先ず、①~③について経緯を含めて説明いたします。

  • 1995年12月の「もんじゅ」事故を契機に、国民の間に原子力に対する不安や不信が高まり、「もんじゅ」の安全確保などに関し、多くの意見、要請、提言がなされました。中でも、我が国有数の原子力発電所立地県である、福島、新潟、福井の3県の知事から、1996年1月23日に「今後の原子力政策の進め方についての提言」(以下、「三県知事提言」という。)が内閣総理大臣、当時の科学技術庁長官及び通商産業大臣に提出されました。この提言では、国に対して、原子力に対する国民的合意の形成のための取り組みを求めるとともに、核燃料サイクル政策に関し、プルサーマル計画やバックエンド対策の将来的な全体像を具体的に明確にし、提示することを求めました。
  • 原子力委員会では、国民各界各層から幅広い参加を求め、多様な意見を今後の原子力政策に反映させることを目指し、「原子力政策円卓会議」(以下、「円卓会議」という。)の設置を決めました。円卓会議モデレーターは、1996年6月24日、原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進に関して必要な措置を取るよう原子力委員会に求めた提言に続き、10月3日に、第11回までの円卓会議の議論を踏まえ、さらなる提言を原子力委員会に提出しました。
  • これらの提言に対して、原子力委員会は、1996年9月25日に「原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について」を決定し、ついで、1996年10月11日には、「今後の原子力政策の展開にあたって」を決定しました。この中で、プルトニウムの軽水炉利用について、「総合エネルギー調査会の検討も勘案しつつ、その目的・内容を早急に明らかにし、関係行政機関とも連携を取りつつ、国民的な合意形成に向け、努力する。」こととしました。
  • 1996年6月14日より審議を開始した通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会原子力部会では、円卓会議での議論、立地地域での議論等も踏まえ、国民の視点に立った原子力政策、核燃料サイクルを巡る課題と対応等について、1997年1月20日に中間報告書を取りまとめ、公表しました。
  • この中では、「現段階における状況から見て、海外再処理によって既に一定程度のプルトニウムを回収し、MOX燃料加工の準備を行っている一部電気事業者により、2000年までには、3~4基程度でプルサーマルを開始することが適当。(中略)電気事業者の海外再処理状況、現時点での準備状況等を勘案すれば、2000年代前半にさらに数基程度プルサーマル発電が追加され、2000年代後半には、その時期の国内再処理工場の稼働状況、高速増殖炉等研究開発用の需要等に依存するものの、全体で十数基程度にまで拡大すると見込まれる。」とされました。
  • 原子力委員会は、この総合エネルギー調査会の検討結果も勘案し、当面の核燃料サイクルの具体的施策について審議を行い、その結果を1997年1月31日、「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」として決定、公表しました。この中で、軽水炉でのプルトニウム利用について、「プルサーマルは、安全性、経済性の観点及び海外や「ふげん」での利用実績から、現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であり、原子力発電所を有する全ての電気事業者が共通の課題として取り組み、プルトニウムの回収見通しから、2010年頃までには全電気事業者が実施する必要がある。具体的には、まず、海外再処理で回収されたプルトニウムを用いて2000年までには3~4基程度で開始し、その後、国内外でのプルトニウムの回収状況や個々の電気事業者の準備状況等に応じて2010年頃までに十数基程度にまで拡大することが適当である。このため、国における基本的な方針の下、まず、電気事業者は全事業者に係わるプルサーマル計画を速やかに公表することが必要である。」としました。
  • この決定を踏まえ、1997年2月4日、「当面の核燃料サイクルの推進について」が閣議了解されました。これにより三県知事提言や円卓会議モデレータ提言において対応が求められていた核燃料サイクル関連の諸課題について、その具体化に向けた国としての取り組みが確認されました。
  • 閣議了解を踏まえ、1997年2月14日、科学技術庁長官及び通商産業大臣は、三県知事に対して、プルサーマル計画への協力を要請し、同月27日、内閣総理大臣からも同様の要請を行いました。
  • 電気事業連合会は、同月21日に、2010年頃までに16~18基の軽水炉においてプルサーマルを順次実施するプルサーマル計画の全体計画を取りまとめ公表しました。さらに、同年3月6日に、東京電力(株)は、福島第一原子力発電所3号機において1999年から、柏崎刈羽原子力発電所3号機において2000年から、また、1998年2月23日に関西電力(株)は、高浜発電所4号機において1999年から、高浜3号機において2000年からそれぞれ実施することを公表しました。
  • 以上の経緯により、福島第一(福島県)、柏崎刈羽(新潟県)、高浜(福井県)の各発電所でプルサーマルを実施することとなりましたが、当時の電気事業連合会内の検討においては、1997年1月20日の総合エネルギー調査会の中間報告書にありますように、「海外再処理によって既に一定程度のプルトニウムを回収し、MOX燃料加工の準備を行っている電気事業者」からの開始となったと推察できます。
  • しかしながら、2001年4月の電気事業連合会会長の会見において、全電力が一丸となってプルサーマル計画の実現に向け、取り組むこととし、この計画にこだわることなく、地元の理解が得られた発電所から、順次実施していくことを公表しています。

 ④の質問に対する回答ですが、原子力委員会としては、プルサーマル計画を含む核燃料サイクルについての方針を推進するに当たっては、まず国民の原子力に対する信頼回復を図ることが必要であると考えています。このため、「核燃料サイクルのあり方を考える検討会」を開催し、各立地地域の市町村長、事業者などからお考えを伺っております。このような、御意見を踏まえつつ、核燃料サイクルの全体像について原子力委員会としての考え方をまとめ、わかりやすく示していくこととしており、さらに、この考え方について国内各地の方々と意見交換することとしています。このような活動が、政策に対する国民の信頼と理解を得るために役立つものと考えております。