教えてください

○職 業   :学生

○年 齢   :20歳以下

○性 別   :男性

○御質問の内容:

 人工放射性核種の生物学的危険性が広く認識されるのが遅れたのはなぜですか?


○回 答:

 放射性核種は放射線を放出することから、取扱いを誤れば危険な面がある反面、その危険性を正しく理解した上で、上手にコントロールすれば安全に取り扱うことができます。
 そのため、放射線防護の基礎となる基本原理を検討する機関として1928年(昭和3年)に国際放射線防護委員会(ICRP:International Commission on Radiological Protection)が設置され、以後、ICRPは、放射線防護についての一般的指針を勧告として取りまとめて、各国の関係機関や専門家に提供しています。
我が国においては、戦後、放射性同位元素が輸入され放射線利用が進展し、放射線による障害を防止するための規制を行う必要が生じたことから、昭和32年6月に「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」が制定、公布されました。同法及びその施行令等については、その後の放射線利用形態の多様化などに伴い、ICRPの勧告を踏まえて、改正を行ってきています。
このような放射線防護の法規制の充実、さらには、放射線を安全に取り扱う技術の充実により、現在、放射線は、医療、工業、農業等の分野で身近な国民生活や産業活動に広く利用され、科学技術の発展や国民生活の向上に役立っています。
(放射線の利用及び人体への影響については、別の御質問へのお答えの中でも紹介しております。参考1のリンク先も合わせて御覧下さい。)

 放射線は、その存在そのものを人間の五感で直接感じることができないことや、放射線や放射線の健康影響に関する知識に触れる機会が十分でないことにより、国民には漠然とした「恐ろしさ」が形成されています。このため、国民に放射線利用や放射線についての正確な知識をもってもらうための努力が必要です。
 現在、国の取組みとしては、原子力安全委員会において安全面に係わる調査審議が行われるとともに、原子力委員会では、放射線専門部会を設置し、放射線利用のための研究開発及び利用促進のための調査・検討をする、などの取組みを行っています。また、関係省庁や研究機関においては、研究成果や放射線利用に伴う様々なリスク・便益について広く国民に向けて発信しています。

<参考1>関連する御質問とその回答
質問19「現在,放射線はどのように利用されているか?また、利用されていることで人体に影響は無いのか?」

以 上